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第四章 「戦闘」と「曼殊沙華」
第九話
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「何かしら手は施すのでしょう。それでも……」
愚行だ。
彼らは自ら戦闘を望む。復讐の連鎖に飲まれているのかもしれない、歯止めが利かない状態になっているのかもしれない。
それでも……このままでは能力者は居場所を失ってしまう。
モノクロームが顎に指をあてる。そうして彼女は意味深にぶつぶつと独り声を漏らす。
おそらく自身の考えを整理しているのだろう。考え事をしているとき、彼女はよく独り言を口にする。
口出しするわけにもいくまい。俺は目の前の道路に集中すればいい。
そうして時間が経過し、考えがまとまったころに彼女は俺の方を見た。
「……いや、違う。狙いはアスピレーションの本拠地です。おそらく、ですが」
「本拠地、というと? 関東南部でしたっけ」
「はい、そうです。表明した地はおそらく囮。そこで争っている間に、おそらくフォーチュンはアスピレーションのリーダーがいる拠点を叩くのでしょう。私たちは……そちらに向かうべきです」
強気にそう声にしたと思えば、続けてモノクロームは目をそらし「確証は……あまりありませんが」と弱気なことを言う。
その様子が可笑しくて、つい顔をほころばせた。何も言わなければ、モノクロームは勝手にあたふたしてしまいそうだ。
「分かりました。その日に向かうのはアスピレーションの本拠地ですね。仮に間違っていたとしても、モノクロームの能力者の探知で気がつくでしょう。その時に行き先を変えればいい」
するとホッと胸を撫でおろす。呟かれた「それもそうですね」の言葉、その声色に焦りはなかった。
その後もひたすらに能力者に関わるニュースが続く。しかしそれを聞いていようと、この現状が変わるわけではないのだ。
画面に触れ、テレビを消す。代わりにミュージックプレイヤーを立ち上げ、J-POPを車内へと流す。
モノクロームの趣味はわからなかったものの、そもそもこの自動車自体がモノクロームのものなのだ。
おそらく入っている曲は彼女の好みに合っているのだろう。
無難なものをインプットしておいた、という可能性もあるが。
車内を満たすJ-POP。夜には丁度いい音楽だ、映画のエンディング、スタッフロールなどに掛かりそうな、どこか美しく壮大な音楽。
夜の深さ、切なさを際立たせるようだ。雰囲気に酔うとはまさにこのことだろう。
「こういう雰囲気に飲まれて男性についていかないように気を付けてくださいよ」
「心配せずとも、あなた以外にはついていきませんよ。あなたこそ、他の女性への線引きはしっかりしてくださいね」
「わかっていますよ。そもそも他の女性と関わることすらほとんどない」
そんな軽いやり取りを交わせば、ふと気になっていたことをモノクロームに問いかけてみる。
先ほどから頭の片隅に引っかかっていた話だ。
「そういえばなんですけど……モノクロームって俺の能力をアクセサリー化しているんですか?」
するときょとんと目を丸める。俺からすればそんな顔をされる義理はないのだが、彼女にしてみればその質問は意外なものだったらしい。
不意打ちを食らったかのように、ただ茫然とするばかりだ
しかしその表情は長くは続かず、にへらとモノクロームは挑発的に笑って見せた。
「どうだと思います?」
「濁さないでくださいよ」
それでも答えを口にはしない。むしろ次には「アクセサリーって何なのでしょうね」と、俺に新しい話題を振るうばかりだ。
自身の太ももをスッとなぞる彼女に対し、釈然としない感情を覚えていた。
愚行だ。
彼らは自ら戦闘を望む。復讐の連鎖に飲まれているのかもしれない、歯止めが利かない状態になっているのかもしれない。
それでも……このままでは能力者は居場所を失ってしまう。
モノクロームが顎に指をあてる。そうして彼女は意味深にぶつぶつと独り声を漏らす。
おそらく自身の考えを整理しているのだろう。考え事をしているとき、彼女はよく独り言を口にする。
口出しするわけにもいくまい。俺は目の前の道路に集中すればいい。
そうして時間が経過し、考えがまとまったころに彼女は俺の方を見た。
「……いや、違う。狙いはアスピレーションの本拠地です。おそらく、ですが」
「本拠地、というと? 関東南部でしたっけ」
「はい、そうです。表明した地はおそらく囮。そこで争っている間に、おそらくフォーチュンはアスピレーションのリーダーがいる拠点を叩くのでしょう。私たちは……そちらに向かうべきです」
強気にそう声にしたと思えば、続けてモノクロームは目をそらし「確証は……あまりありませんが」と弱気なことを言う。
その様子が可笑しくて、つい顔をほころばせた。何も言わなければ、モノクロームは勝手にあたふたしてしまいそうだ。
「分かりました。その日に向かうのはアスピレーションの本拠地ですね。仮に間違っていたとしても、モノクロームの能力者の探知で気がつくでしょう。その時に行き先を変えればいい」
するとホッと胸を撫でおろす。呟かれた「それもそうですね」の言葉、その声色に焦りはなかった。
その後もひたすらに能力者に関わるニュースが続く。しかしそれを聞いていようと、この現状が変わるわけではないのだ。
画面に触れ、テレビを消す。代わりにミュージックプレイヤーを立ち上げ、J-POPを車内へと流す。
モノクロームの趣味はわからなかったものの、そもそもこの自動車自体がモノクロームのものなのだ。
おそらく入っている曲は彼女の好みに合っているのだろう。
無難なものをインプットしておいた、という可能性もあるが。
車内を満たすJ-POP。夜には丁度いい音楽だ、映画のエンディング、スタッフロールなどに掛かりそうな、どこか美しく壮大な音楽。
夜の深さ、切なさを際立たせるようだ。雰囲気に酔うとはまさにこのことだろう。
「こういう雰囲気に飲まれて男性についていかないように気を付けてくださいよ」
「心配せずとも、あなた以外にはついていきませんよ。あなたこそ、他の女性への線引きはしっかりしてくださいね」
「わかっていますよ。そもそも他の女性と関わることすらほとんどない」
そんな軽いやり取りを交わせば、ふと気になっていたことをモノクロームに問いかけてみる。
先ほどから頭の片隅に引っかかっていた話だ。
「そういえばなんですけど……モノクロームって俺の能力をアクセサリー化しているんですか?」
するときょとんと目を丸める。俺からすればそんな顔をされる義理はないのだが、彼女にしてみればその質問は意外なものだったらしい。
不意打ちを食らったかのように、ただ茫然とするばかりだ
しかしその表情は長くは続かず、にへらとモノクロームは挑発的に笑って見せた。
「どうだと思います?」
「濁さないでくださいよ」
それでも答えを口にはしない。むしろ次には「アクセサリーって何なのでしょうね」と、俺に新しい話題を振るうばかりだ。
自身の太ももをスッとなぞる彼女に対し、釈然としない感情を覚えていた。
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