枯れない花

南都

文字の大きさ
84 / 123
第四章 「戦闘」と「曼殊沙華」

第十八話

しおりを挟む
「何で……」

 モノクロームも目を見開いただろう。警戒すべき相手を俺たちは間違えていたのだ。

 状況を理解するより前に、栖は淡々と話を進めていった。

 彼女は俺たちに状況を掴ませるつもりなどなかった。むしろ俺たちの理解をうやむやにするように、手早く全てを進めていったのだ。

 俺たちは惨劇の傍観者でしかない。理解できぬまま、ただ繰り広げられる悲劇を見る観客。

「あーあ、もう演技疲れちゃった。だってそうよ、無理だもん。こんなきれいな容姿になったって、『佳穂、佳穂』ってさ。何? 何なの? そう思えば佳穂も能力者になっちゃって。寝首を掻かれる前に始末するしかないじゃない」

「モノクロームっ!」

「分かっていますよッ!」

 心なしか怒りが籠った声、ここまで攻撃的な声を耳にしたことなどなかった。いつも余裕を見せていたモノクローム、彼女が怒りに震えている。

「ねぇ、私が無能力者だと思った?」

 にやりと歯を見せた栖、同時に後方から発砲音が夜空に響く。

 モノクロームの腕を掠めた銃弾、発砲したのは他でもない暎だった。
 先ほどまで戦意を喪失していたはず、しかし彼はモノクロームに真っすぐ銃口を向けている。

「俺じゃない……俺の意思ではないんだ……」

 栖と呼ばれる女……人間を操っている。しかしおかしい、この女に『花の入れ墨』はないはずだ。何故能力が使える?

 その答えは今も銃を構え続ける男にあった。

 この男性、能力は変身だった。女性はそれを利用している。
 栖は暎を操り、『変身』で自分の姿を変えている。花の入れ墨も容姿を変える時に書き消していたようだ。

 暎の能力が変身。そんな彼を栖が能力で操っているということか。

 むごくややこしいことをしてくれる。

 モノクロームが顔をゆがめ、使っていた隔離が解ける。それを絶好の機会と捉えてか、繰り返し発砲させられる暎。その銃弾を見逃すわけにはいかない。

「くそっ! 能力者は軽々しく人に発砲するっ!」 

 手首に着けたアクセサリーから、モノクロームを囲うように『障壁』を発生させる。
 弾かれる銃弾。それでも栖は怯むことはない。それどころか悪びれもせず、俺たちへと背を向けその地を蹴る。

「逃げましょう、暎?」

「俺は……俺は……ッ!」

「うーん、身体だけ操るのはダメか」

 言葉では抵抗しようとも、暎も栖と共に駐車場の外へと駆け出している。
 この様子、操る範囲は自在だ。心から操ることもできれば、身体だけ操ることもできる。ろくでもない能力を与えられたものだ、栖という女は。

「先に佳穂さんを治療します! シオンは二人をッ!」

「分かりましたっ! 必ずその子を助けてください!」

「ええっ! おそらく人を操作できる範囲は短いっ! 射程から外れて戦闘をっ! あなたが操られたら私、戦えませんからッ!」

「そこは遠慮せず戦ってくださいッ! 俺のためにもっ!」

 手持ちのアクセサリーは浮遊、障壁、機械生成の三つだった。

 十分だろう、栖を追い詰めるには。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神楽坂gimmick

涼寺みすゞ
恋愛
明治26年、欧州視察を終え帰国した司法官僚 近衛惟前の耳に飛び込んできたのは、学友でもあり親戚にあたる久我侯爵家の跡取り 久我光雅負傷の連絡。 侯爵家のスキャンダルを収めるべく、奔走する羽目になり…… 若者が広げた夢の大風呂敷と、初恋の行方は?

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか

サクラ近衛将監
ファンタジー
 レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。  昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。  記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。  二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。  男はその未来を変えるべく立ち上がる。  この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。  この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。    投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...