私、作家になれない。

神永 遙麦

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私、作家になれない。

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 私、作家になれない。

 だって、才能がないから。「好き」という動機がなくなった時、続けられるか分かんないから。自分以外の人の気持ちがよく分かんないから。


 先週から、莫大な遺産を巡って殺し合いが始まる話を書いていたよ。
 だけど、12ページ書いたところで進まなくなった。何で遺産を巡って殺し合うのか分からなかったから。

 私だったら兄弟を殺せない、1人っ子だから兄弟いないけど。だって兄弟なんだよ。同じ親から生まれてきて、ずっと隣で一緒に育った兄弟だよ。ただ、一緒に笑い合っていたいし、一緒にくだらなくて記憶にも残らないような話をしたい。そんな思い出の残る兄弟を……思い出が残っていなくても殺せない。だって、無理だもん、考えただけでも指先がつんと冷たくなる。
 そもそもママの遺産に手を出せないかも。だって、ママがどれだけ切り詰めて節約しているのかを知っているから。ママは普段の買い物を、従業員割引の効くスーパーで済ませている。髪のカットは家で済ませる、服はギリギリまで粘る。夜は「電気をつけなくてもいいように」夜のパートに。なのに、私のお小遣いや美容は他の子に劣らないように、お金を出してくれている。
 だから、なおさら無理。せいぜいお葬式費用を出したら、あとは箪笥貯金にしてしまいそう。
 だいたい、莫大な遺産っていくらから? 百万くらい? 億?


 ううん、このままじゃあ話にならない。まずは主人公を私に近づけよう。
 まず、私だったらどうしたら大金が欲しくなる? 基本的にはお財布に野口さんが1人いれば安心できる。樋口さんがいる時は怖いから千円札5枚に両替して、4枚を家に置いていく。一万円札は誰だったっけ? 銀行関係の偉い人だった気が……。
 あ、話が脱線した。何について考えていたんだっけ? あぁ、そうそう、殺し合いについてだ。
 どういう時に大金が欲しくなる? コスメはだいたいママが誕生日やクリスマスに買ってくれる。服もサイズオーバーしてないし、破れてない。う~ん。

 よし、分かんないから典型的なので行こう。
 主人公は奥さんが3人いたけど全員亡くなってて、3人目の奥さんとの間に子どもが1人だけいて……。んでその子どもが病気になったけど、大金があれば治る可能性がある。そしてタイミング良く……良く? 父親が亡くなった。主人公は兄弟の中では最年長だけど、劣り腹の子だからちょっと不利。

 これならなんとか書けるかな?
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