推し活ぐー!

明日葉

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豪華な夕食を食べ終えたら、ゲーム大会が開催された。
ゲーム機は男の子組と二湖ちゃんが持ち寄ってきてくれてた。
オープンスペースに同じゲーム機が4台揃っている様子は壮観だ。
そして、この大画面でする、クラゲのゲームも。

「ちょっとちょっと、何でこっちにしかいけないのーーー!!?私まっすぐ進みたいのにーーっ!!同じ所ぐるぐる回ってるーーっ!!」
「穂香、モモオカートもまっすぐ進めないもんねー。あれ?李衣菜のは、調味料でてこないよ?品切れ?」
「杏果ちゃんっ、これどうしたらっ!?」
「ふふっ、これ、楽しいー!!」
「逆になんでそんなことになんのよっ!!ふつうにこのスティックをまっすぐ押せばまっすぐ進めるのにっ!!李衣菜は、ボタンの色推し間違えてるから!!って、なんか日向はじめてなのに上手いし!!ちょっと、男子、私一人でポンコツ初心者二人組教えきれないからっ!手伝ってよっ!!」
杏果ちゃんにレクチャーをうけて、まずは女子からゲームを始めたんだけど……私と李衣菜ちゃんの物覚えの悪さに杏果ちゃんは早々に音を上げた。
入れ替わり立ち代わり、いろんな管理人さんが挨拶に来てくれるから、男子はオープンスペースの入り口付近で、対応してくれていたんだけど、李衣菜ちゃん一人では手に負えないようだ。
「じゃー、久臣が一番しっかりしているから、管理人さん達に挨拶頼むわ。俺と学がゲームの方な」
「……おー。頼んだ」

「なんで、まっすぐ進めないのーー?穂香、実は方向音痴とか?」
「いや、実社会では、全然方向音痴じゃなっ!!ってまた壁にしか進めないよーーー!!?」
「瀬口さんは、ちゃんとボタン押せるようになったけど…今度は力強すぎ!!スティック壊れ……ってちょっと待ってて!!」
学君はどこかに走っていった。
「えへへ、李衣菜できるようになったっ!」
「おう、スティック折れそうだけどな」
しばらくして、学君が持ってきたのは……ピンク色の丸いゴムみたいな丸いパーツを持ってきた。
「……ぜぇぜぇ。瀬口さんっ、このパーツ、スティックにはめよう?そしたら、狙いつけやすくなって、そんなに折れそうになるまで……スティック押さなくて済むからっ」
「え、何それ秘密兵器っ??わーー、つけてつけてっ!!……おーーー。やりやすいーーー!!」
「ねえねえ、学君、私相変わらず、前に進めないんだけど」
「俺には手に負えねえ。頼んだぞ、学」
「えと……うん、頑張る」
「実質私と日向のたたかいじゃないっ!持ち主の私よりはじめてやる日向が上手ってどういうことよ」
「このゲーム楽しいです!」
こんな調子でなんだかんだ、皆が仲良くなれた気がする。

今度は男子のみでゲームをし出している。
高度すぎる戦いで、まったくついていけない。
結局私、まっすぐ進めるようにならなかったし、最終的に学君が遠い目をしていたからね。
申し訳ないことをした。
私は杏果ちゃんと連れ立ってトイレに行っていた。
トイレはエレベータースペースのほど近くにある。
手洗い場で杏果ちゃんを待つのも微妙かなと思って、エレベーターホールで待つことにした。
6機あるエレベーターは色んなへと動いている。
管理人さんがいろんな階を見て回っているみたいだし、人の移動も盛ん何だろう。
そう思ってみていたら、ここ、15階で1機のエレベーターが止まった。

中から出てきたのは、見たことのない管理人さんだ。
那賀さんと同じ服を着ている。
私はペコっと頭をさげてこんばんわーと挨拶をした。
そうしたら、もう一人、背の高い男の子がーーーーーって。
「やっと、やっっっと会えたっっ!!」
私はいつのまにかその男の子の腕の中にいた。
柔軟剤なのか、香水なのかわからないけど、今まで嗅いだことのない香りがする。
なんていうか、異国の香り?オリエンタルな匂いだ。
「ほら、行こう?」
ぱっと、拘束を解かれて、手を繋がれて、力強く引っ張られる。
「……!!!」
嫌なのに、三歩位でエレベーター前に着いてしまうから、私の抵抗なんてまるでないも同然のようだ。
「あの……放してください。手。」
極力刺激しないように、普通の声で話しかける。
彼が、手を離してくれることを願って。
「どうして?やっと会えたんだからいいじゃない、手くらい。ほら、エレベーター着いたよ?」
「……いやっ」
私の声が聞こえてないのか、聞いていないのか。
私は手を引かれてエレベーターに乗り込まされてしまった。
「……どうして、こんなことするんですか?」
「ふふっ、それはついてのお楽しみ」
繋いでいないほうの手で、人差し指を立ててシーというポーズを取っている。
こんな時なのに嫌になるくらいに様になっている。
「こんな人さらいみたいなこと、する人だと思っていませんでしたーーーーーー樹林君。」
樹林君は色素の薄い瞳を細めて、まぶしいものでも見るようにこちらを見ていた。


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