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第6話 変身
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「遅くなってすみませ~ん!」
公園の入り口から走ってきたのは、ダンスボーカルグループ「END」のリーダー、ONAGAだった。予定の時間を一時間近く過ぎている。しかもこの後には別の仕事が入っており、時間は限られているのだ。車の中で流れは入れてあるものの、撮影はかなり巻きになるだろう。
「あ、ONAGA君、おはようございます!」
プロデューサーの戸田が出迎える。
「遅れてしまい、申し訳ありません。えっと、小暮監督は?」
辺りを見渡すと、池を囲む遊歩道にその姿を見つける。
「あ、三栗谷さんもいらっしゃるんですね」
ONAGAがそう口にすると、戸田が「ああ、それなんですが」と言葉を濁す。
「なにか……?」
「急な話で申し訳ないんですけど、代役立てることになりまして」
「えっ?」
ONAGAの後ろから声を出したのは、マネージャーの檜山果歩だった。
「今日の今日で、代役? いくらなんでも急ですね?」
「ですよねぇ。実は……」
事のあらましを説明され、ONAGAが呆れた。
「なんだよそれ。プロ意識とかないわけ? 俺、撮り直しとか言われたら断固反対しちゃうなっ」
ENDはアイドルグループとして持て囃されているが、中身は完璧な体育会系。先輩後輩にも厳しいし、時間厳守や、仕事への取り組み方など、かなりキッチリしている。プライベートを引きずって仕事をドタキャンするなど、有り得ない事だった。そんなENDでリーダーとしてメンバーを纏めているのがONAGAだ。普段はニコニコしているが、仕事となれば他の誰よりも厳しい。
「檜山さん、今後ENDと三栗谷さんは一切仕事しないから」
プリプリしながら言い切った。
「……はいはい」
檜山が頭を掻く。話題の流れで言っているわけではない。本気で怒っているのだ。
「で、代役ってどこの誰なんですか? よく急な話で用意出来ましたね」
遠くにいる二人の女性を見遣る。あのうちのどちらかが相手役ということになる。眺めていると、小暮が手を振っているのが見えた。ONAGAが手を振り返す。
「監督~! 遅くなってすみませぇん!」
営業スマイルに切り替え、走る。
「ONAGA君、おはよう。朝早くからありがとうな」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします! 遅くなってしまってすみません」
「仕方ないさ。地方ロケから車だったんだろ? 忙しいもんな、今」
END自体も忙しい上、ここ最近は役者としての注目も集まっている。ドラマに出演すると、番宣のためにバラエティ番組に出ることもある。連鎖的に露出が増えるのだ。
「事情は聞きましたよ。朝から大変でしたね」
ねぎらいの言葉を掛け、チラ、と二人の方を見る。一人は長身でクールビューティー。一人はボヤっとした感じの冴えないタイプ。つまりこれは……
「共演してもらうことになった、イチゴ君だ」
小暮が地味な方を紹介してくる。
「えっ、そっち!?」
思わず声が出てしまう。
「どうも。松本イチゴです」
ギャル探偵ではない、雨歌の状態のまま松本イチゴを名乗った。雨歌的には違和感しかないが。
「あ、ども。ENDのONAGAです」
そう言って差し出された右手を、雨歌が握り返す。
「監督~! スタイリストさん到着してるんで!」
戸田が休憩所を兼ねている簡易テントの方から声を掛ける。
「わかった! ……じゃ、とりあえず着替えとメイク、やっちゃって。その後で立ち位置と動きの説明するからさ」
「わかりました」
「了解!」
雨歌とONAGAが頷き、テントの方へと向かった。
「……なんだかワクワクしてきたよ、佐伯さん」
二人の後ろ姿を見ながら、小暮が呟いた。
「でしょ? きっとこのCMは話題になりますよ」
志麻がニヤリと笑った。
◇
ONAGAはロケバスの中で、渡された服に着替えていた。黒のスラックスにグレーのワイシャツ。腕には、CMの商品である高級腕時計。よく見えるように、シャツは少しまくる。
「てかさぁ、ほんとにあの子とやるのか~?」
間の抜けた声で、マネージャーである檜山果歩に愚痴る。
「そうねぇ。随分地味だったけど……小暮監督、よくオッケー出したわよね」
「そりゃ、女は服とメイクである程度化けはするだろうけど……。ズブの素人だって話だぜ?」
「身内なのかしらね?」
「あーあー、そういうのマジやめてほしい。真剣に向き合ってるやつは星の数ほどいるのによ。なに特権だよ」
芸能界は世襲が強い。芸能人の親でなくとも、テレビ局に勤めている誰それの娘、とか、大きな広告代理店の重役の孫、なんていう話は多い。そういうやつに限って、プライドだけのハリボテだったりするのだから質が悪い。
「まあそう言わないで。相手が素人なんだったら、あなたが引っ張ってあげないと。ね?」
檜山に言われ、渋々頷く。
「メイクさん呼んでくるわね」
檜山がロケバスを降り、入れ替わりにヘアメイクの担当者が入ってくる。
いつものように軽い雑談を交えながらメイクをしてもらうと、ロケバスを降りた。
テントの中で紙コップ片手にスタッフと打ち合わせをしている小暮に声を掛ける。
「監督、できました~」
「おう、ちょうどいい。こっちに来てくれ」
手招きでONAGAを招き入れると、さっき見かけたもう一人の女性が立っていた。どう見てもこっちの方が美人だろう、と思うのだが、改めて見ると身長が高すぎる。これではバランスが悪いということなのだな、と勝手に納得する。
「彼女、佐伯志麻さん。今日だけ俺のアシスタントだ」
「どうも。佐伯志麻です。よろしくお願いします」
ペコ、と頭を下げる志麻。ONAGAは営業スマイルで返すと、
「アシスタントって?」
と小暮に訊ねる。
「ああ、事情は聞いたろ? ドタキャンに困り果ててたら、救世主が現れたのさ」
「やだな、監督ぅ、救世主だなんて~」
志麻が大袈裟に体をくねらせる。どんなノリなんだ? とONAGA,が身構える。たまたま居合わせた二人だと聞いたが、それが救世主だと言い切った小暮に引っかかりを感じる。
「でも、あの……素人さん……なんですよね?」
監督の愛人か何かですか? とは言えない。だが、身内でないならそっちの可能性もある、と疑う。
「ああ、彼女は『俺の』ファンだそうだ。しかも筋金入りだった」
嬉しそうな顔で小暮が笑う。
「……ファン、ですか」
そう言って近付いて、業界入りを狙っているという可能性もある。利用できるものはなんでも利用する。芸能界とはそう言うところだ。
「じゃ、早速ですけど板付きは私が!」
志麻が手を挙げ、ONAGAを見た。台本を手に、今日の流れを説明し始める。
「コンセプトやテーマなんかはもうお伝えしてるかと思います。まず、ONAGAさんの演じる男ですが、名前はシオン」
「へ? 名前?」
そんなの台本には書いていなかったように思うのだ。
「あ、ええそうです。なかったですよね? 名前」
「あ、なかった……デスネ」
CM撮影で名前を告げられたことは今までなかった。ドラマ仕立てだとしても、そんな細かな設定はない。名を呼ぶシーンがあるわけでもないのだから。
「彼女の名前はあまね。まずは前半、別れのシーンから撮りますが」
「え? 待って待って」
志麻の説明を思わず止める。
「前半って、泣きがある方? 逆じゃないのか?」
「ああ」
志麻が胸の前で軽く手を叩く。
「当初の予定から少し変更になりまして、元に戻ったんですよ」
「は?」
「わかりづらいですね。小暮監督が最初に出した方の設定で撮ることになったので、泣きは後半の『再会』の方になります」
「あ、そう……なんだ」
現場での設定変更はないわけじゃない。話しているうちにもっといいアイデアが出た時などはどんどん演出を変えるのが普通だ。特に小暮祐也はこだわりも強く、独特の世界観を出す注目株。キャストが変わったこともあり、変えてきたのだろうと推測した。
「まず別れ、はこの位置です。そう。あまねの手を取って顔を見つめる。台詞は予定通り。あまねはここでは泣きません。シオンは後ろ髪を引かれる思いで走り去る。ここでイメージ映像入りますけど、それは撮影関係ないので飛ばしますね」
サクサクと説明を進める志麻。
「あ、そういえばONAGAさん、シークレットシューズ履いていただいてますよね?」
「え? ああ」
スタイリストに渡された革靴は五センチのシークレットシューズだった。
「走りづらいかもしれないんですけど、よろしくお願いします」
「あ、はい」
丁寧な対応だ。随分若いし、監督のファンを名乗るミーハーな女だと思い込んでいたONAGAは、少し戸惑った。指示が的確で、丁寧。巻き決定で焦っているはずなのに、せっつく感じもなくとてもスムーズだった。
「後半のシーンでは普通の靴に変えますので」
それは「少女」時代のあまねを演出するためのものだと説明を受けた。大人になったあまねとの身長に差を付けたいのだという。
「後半は二人のすれ違いからです。ここで雨を降らします」
「雨……ってことは」
「ええ。泣き場ですので、できれば一発でいきたいところなんですけどね。テストしないわけにもいかないので、二回かな? 一度目は雨なし、涙なしでやってもらいますね」
「……はぁ」
雨降らしは衣装が濡れるし、泣きの芝居は化粧が崩れたりしてしまうから、何度も撮りたくないのだ、というのは聞いたことがある。
「ONAGAさん、あとが詰まってるって聞いてますので、手際よく進められるよう頑張ります。本日はよろしくお願いします!」
深く頭を垂れる志麻に、ONAGAが完全に言葉を失った。愛人説も払拭される。彼女は完全に舞台人だ。
「あ、もう一人も準備できたみたいですね」
志麻が視線を移す。ONAGAもつられ、顔を向けた。
そして、あんぐりと口を開けたのである。
公園の入り口から走ってきたのは、ダンスボーカルグループ「END」のリーダー、ONAGAだった。予定の時間を一時間近く過ぎている。しかもこの後には別の仕事が入っており、時間は限られているのだ。車の中で流れは入れてあるものの、撮影はかなり巻きになるだろう。
「あ、ONAGA君、おはようございます!」
プロデューサーの戸田が出迎える。
「遅れてしまい、申し訳ありません。えっと、小暮監督は?」
辺りを見渡すと、池を囲む遊歩道にその姿を見つける。
「あ、三栗谷さんもいらっしゃるんですね」
ONAGAがそう口にすると、戸田が「ああ、それなんですが」と言葉を濁す。
「なにか……?」
「急な話で申し訳ないんですけど、代役立てることになりまして」
「えっ?」
ONAGAの後ろから声を出したのは、マネージャーの檜山果歩だった。
「今日の今日で、代役? いくらなんでも急ですね?」
「ですよねぇ。実は……」
事のあらましを説明され、ONAGAが呆れた。
「なんだよそれ。プロ意識とかないわけ? 俺、撮り直しとか言われたら断固反対しちゃうなっ」
ENDはアイドルグループとして持て囃されているが、中身は完璧な体育会系。先輩後輩にも厳しいし、時間厳守や、仕事への取り組み方など、かなりキッチリしている。プライベートを引きずって仕事をドタキャンするなど、有り得ない事だった。そんなENDでリーダーとしてメンバーを纏めているのがONAGAだ。普段はニコニコしているが、仕事となれば他の誰よりも厳しい。
「檜山さん、今後ENDと三栗谷さんは一切仕事しないから」
プリプリしながら言い切った。
「……はいはい」
檜山が頭を掻く。話題の流れで言っているわけではない。本気で怒っているのだ。
「で、代役ってどこの誰なんですか? よく急な話で用意出来ましたね」
遠くにいる二人の女性を見遣る。あのうちのどちらかが相手役ということになる。眺めていると、小暮が手を振っているのが見えた。ONAGAが手を振り返す。
「監督~! 遅くなってすみませぇん!」
営業スマイルに切り替え、走る。
「ONAGA君、おはよう。朝早くからありがとうな」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします! 遅くなってしまってすみません」
「仕方ないさ。地方ロケから車だったんだろ? 忙しいもんな、今」
END自体も忙しい上、ここ最近は役者としての注目も集まっている。ドラマに出演すると、番宣のためにバラエティ番組に出ることもある。連鎖的に露出が増えるのだ。
「事情は聞きましたよ。朝から大変でしたね」
ねぎらいの言葉を掛け、チラ、と二人の方を見る。一人は長身でクールビューティー。一人はボヤっとした感じの冴えないタイプ。つまりこれは……
「共演してもらうことになった、イチゴ君だ」
小暮が地味な方を紹介してくる。
「えっ、そっち!?」
思わず声が出てしまう。
「どうも。松本イチゴです」
ギャル探偵ではない、雨歌の状態のまま松本イチゴを名乗った。雨歌的には違和感しかないが。
「あ、ども。ENDのONAGAです」
そう言って差し出された右手を、雨歌が握り返す。
「監督~! スタイリストさん到着してるんで!」
戸田が休憩所を兼ねている簡易テントの方から声を掛ける。
「わかった! ……じゃ、とりあえず着替えとメイク、やっちゃって。その後で立ち位置と動きの説明するからさ」
「わかりました」
「了解!」
雨歌とONAGAが頷き、テントの方へと向かった。
「……なんだかワクワクしてきたよ、佐伯さん」
二人の後ろ姿を見ながら、小暮が呟いた。
「でしょ? きっとこのCMは話題になりますよ」
志麻がニヤリと笑った。
◇
ONAGAはロケバスの中で、渡された服に着替えていた。黒のスラックスにグレーのワイシャツ。腕には、CMの商品である高級腕時計。よく見えるように、シャツは少しまくる。
「てかさぁ、ほんとにあの子とやるのか~?」
間の抜けた声で、マネージャーである檜山果歩に愚痴る。
「そうねぇ。随分地味だったけど……小暮監督、よくオッケー出したわよね」
「そりゃ、女は服とメイクである程度化けはするだろうけど……。ズブの素人だって話だぜ?」
「身内なのかしらね?」
「あーあー、そういうのマジやめてほしい。真剣に向き合ってるやつは星の数ほどいるのによ。なに特権だよ」
芸能界は世襲が強い。芸能人の親でなくとも、テレビ局に勤めている誰それの娘、とか、大きな広告代理店の重役の孫、なんていう話は多い。そういうやつに限って、プライドだけのハリボテだったりするのだから質が悪い。
「まあそう言わないで。相手が素人なんだったら、あなたが引っ張ってあげないと。ね?」
檜山に言われ、渋々頷く。
「メイクさん呼んでくるわね」
檜山がロケバスを降り、入れ替わりにヘアメイクの担当者が入ってくる。
いつものように軽い雑談を交えながらメイクをしてもらうと、ロケバスを降りた。
テントの中で紙コップ片手にスタッフと打ち合わせをしている小暮に声を掛ける。
「監督、できました~」
「おう、ちょうどいい。こっちに来てくれ」
手招きでONAGAを招き入れると、さっき見かけたもう一人の女性が立っていた。どう見てもこっちの方が美人だろう、と思うのだが、改めて見ると身長が高すぎる。これではバランスが悪いということなのだな、と勝手に納得する。
「彼女、佐伯志麻さん。今日だけ俺のアシスタントだ」
「どうも。佐伯志麻です。よろしくお願いします」
ペコ、と頭を下げる志麻。ONAGAは営業スマイルで返すと、
「アシスタントって?」
と小暮に訊ねる。
「ああ、事情は聞いたろ? ドタキャンに困り果ててたら、救世主が現れたのさ」
「やだな、監督ぅ、救世主だなんて~」
志麻が大袈裟に体をくねらせる。どんなノリなんだ? とONAGA,が身構える。たまたま居合わせた二人だと聞いたが、それが救世主だと言い切った小暮に引っかかりを感じる。
「でも、あの……素人さん……なんですよね?」
監督の愛人か何かですか? とは言えない。だが、身内でないならそっちの可能性もある、と疑う。
「ああ、彼女は『俺の』ファンだそうだ。しかも筋金入りだった」
嬉しそうな顔で小暮が笑う。
「……ファン、ですか」
そう言って近付いて、業界入りを狙っているという可能性もある。利用できるものはなんでも利用する。芸能界とはそう言うところだ。
「じゃ、早速ですけど板付きは私が!」
志麻が手を挙げ、ONAGAを見た。台本を手に、今日の流れを説明し始める。
「コンセプトやテーマなんかはもうお伝えしてるかと思います。まず、ONAGAさんの演じる男ですが、名前はシオン」
「へ? 名前?」
そんなの台本には書いていなかったように思うのだ。
「あ、ええそうです。なかったですよね? 名前」
「あ、なかった……デスネ」
CM撮影で名前を告げられたことは今までなかった。ドラマ仕立てだとしても、そんな細かな設定はない。名を呼ぶシーンがあるわけでもないのだから。
「彼女の名前はあまね。まずは前半、別れのシーンから撮りますが」
「え? 待って待って」
志麻の説明を思わず止める。
「前半って、泣きがある方? 逆じゃないのか?」
「ああ」
志麻が胸の前で軽く手を叩く。
「当初の予定から少し変更になりまして、元に戻ったんですよ」
「は?」
「わかりづらいですね。小暮監督が最初に出した方の設定で撮ることになったので、泣きは後半の『再会』の方になります」
「あ、そう……なんだ」
現場での設定変更はないわけじゃない。話しているうちにもっといいアイデアが出た時などはどんどん演出を変えるのが普通だ。特に小暮祐也はこだわりも強く、独特の世界観を出す注目株。キャストが変わったこともあり、変えてきたのだろうと推測した。
「まず別れ、はこの位置です。そう。あまねの手を取って顔を見つめる。台詞は予定通り。あまねはここでは泣きません。シオンは後ろ髪を引かれる思いで走り去る。ここでイメージ映像入りますけど、それは撮影関係ないので飛ばしますね」
サクサクと説明を進める志麻。
「あ、そういえばONAGAさん、シークレットシューズ履いていただいてますよね?」
「え? ああ」
スタイリストに渡された革靴は五センチのシークレットシューズだった。
「走りづらいかもしれないんですけど、よろしくお願いします」
「あ、はい」
丁寧な対応だ。随分若いし、監督のファンを名乗るミーハーな女だと思い込んでいたONAGAは、少し戸惑った。指示が的確で、丁寧。巻き決定で焦っているはずなのに、せっつく感じもなくとてもスムーズだった。
「後半のシーンでは普通の靴に変えますので」
それは「少女」時代のあまねを演出するためのものだと説明を受けた。大人になったあまねとの身長に差を付けたいのだという。
「後半は二人のすれ違いからです。ここで雨を降らします」
「雨……ってことは」
「ええ。泣き場ですので、できれば一発でいきたいところなんですけどね。テストしないわけにもいかないので、二回かな? 一度目は雨なし、涙なしでやってもらいますね」
「……はぁ」
雨降らしは衣装が濡れるし、泣きの芝居は化粧が崩れたりしてしまうから、何度も撮りたくないのだ、というのは聞いたことがある。
「ONAGAさん、あとが詰まってるって聞いてますので、手際よく進められるよう頑張ります。本日はよろしくお願いします!」
深く頭を垂れる志麻に、ONAGAが完全に言葉を失った。愛人説も払拭される。彼女は完全に舞台人だ。
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