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side story
Twilight of God①~ピクニックは亜竜討伐~
しおりを挟む「ピクニック?」
「はい」
それは、夕暮れ時の太陽が沈む前だった。
俺の部屋で寛いでいたミュアが、そう切り出したのだ。
ちなみに、カレンは俺の夕食を作ると張り切ってキッチンへと行っている。
それにしても――
「なんで突然ピクニック?」
その問いに、ミュアは一度頷いてから答えた。
「今日、クルスさんが休憩時間に呟いているのを聞いたんです。どうやら、東街に亜竜が出たらしいんです。それで、冒険者を派遣したのですが、どうやら行方不明になったようで・・・・・・・」
「それで、どうしてピクニックに?」
「ええっと・・・・・・」
俺の問いかけに、少しだけ苦笑して、ミュアは言った。
「リュウなら、仕事を理由にピクニックに行けるかなぁ、って」
その、漠然の自信に若干の苦笑を漏らすが、それよりも嬉しさが勝る。
こうやって、頼ってもらえることは嬉しいものだ。
(確か、今度の休日は空いてたな・・・・・・?)
此処最近、意外と平日は色々な場所に行っていた俺だが、この後の休日は取れていた。
それを考えて、俺はミュアに頷く。
「じゃあ、次の休日かな。まずは、明日ギルドの方に行ってみるよ」
「はい♪」
心の底から嬉しそうに返事そくれたミュアに嬉しくなり、自然と笑みが浮かんだ。
「じゃあ、夕食に行こうか?そろそろカレンの料理も完成するだろうし」
「分かりました」
窓から外を見て、夕日がほとんど沈んだのを確認した俺は、そう言った。
同意したミュアと一緒に、食堂へと向かう。
「それにしても、珍しいね。ミュアが自分から意見を出すなんて」
「えっと…最近・・・・・・リュウとあんまり過ごせなかったから」
「あ~~、ごめん」
思わぬ答えに、俺は返事に詰まった。
確かに、仕事というよりかはする事があったから家を空けたのは確かだが、ミュアが数日でそうなったのには驚きだ。
(どちらかといえば、カレンの方が我慢は出来なさそうに見えるんだけどな~)
そんな事を呑気に考えてから、俺はミュアを軽く抱きしめた。
軽い身体は何の抵抗も無く抱きしめられ、その暖かさが俺に流れ込んでくる。
少し驚いたようなミュアも、すぐに抱きしめ返してくれた。
「ごめん。今度は気をつける」
「はい」
それだけ告げて、俺はもう一度、しっかりとミュアを抱きしめた。
「あ~!!また私のリュウを取ったのね!?」
そこへ、そんな叫びを上げながらカレンが突撃してきた。
ミュアの身体を大きく引っ張り、俺から引き剥がしたのだ。
少し残念そうで、面白そうに、ミュアはそれを見ていた。
(妹と姉みたいだよね、この2人)
それを言うとカレンに怒られるのだが、そんなことを思ったのだった。
ふと、カレンの姿を見ると、その姿はエプロンに包まれていることに気付いた。
料理を終えたその足で俺を迎えに来てくれたようだ。
「迎えに来てくれたの?」
「え?あ、えっと、その、うん・・・・・・」
若干頬を赤く染めてそう答えたカレンを、今度も俺から抱きしめる。
耳元へ口を近づけて、囁くようにお礼を言った。
「ありがとう」
「ひゃっ!?」
可愛らしい悲鳴を上げたカレンを、離さないという意志も込めて抱きしめる。
すぐに、カレンの抵抗は無くなった。
それと同時に、抱きしめてくることは無かったけれど、身体を俺に預けてきた。
随分と軽いその重みがしっかりと腕の中に感じられて、先ほどとは違った暖かさを感じる。
「夕食では?」
「あ・・・・・・!」
そんな中、そう告げたミュアに、思い出したようにカレンは反応した。
素早く俺から離れ、真っ赤な顔を背けながら告げた。
「ご、ご飯作ったから・・・・・・食べて、くれない?」
「・・・・・分かった」
その姿を酷く可愛らしく感じながら、俺はそう答えた。
それを聞いて、花が咲くように顔を輝かせるカレン。
どうやら、先ほどのカレンが妹だというのは間違いでもなさそうだ。
そんな事を考えながら、今度こそ食堂へと向かう。
「そういえば、ニーチェ子爵が男爵に爵位したのって、リュウが関係してない?」
歩いている最中、カレンがそう切り出した内容は、確かに俺が関係している。
どちらかといえば、俺の所為で爵位したといっても過言では無いほどに。
「確かに俺だね」
「やっぱり・・・・・・・」
「どういうことですか?」
俺の答えに納得したように溜息を吐いたカレンに、ミュアは不思議そうに尋ねた。
そういえば、ミュアは貴族社会については無関心だったからだろうか。
若干苦笑しながら、俺が答えた。
「前に、ニーチェ子爵の領地で銀鉱を発掘してね。それで爵位したんだと思う」
「へぇ、また変な事してきたのね」
呆れ気味にそう言ったカレンに、苦笑いする俺。
そんな俺達を見て、ミュアがぷくーっと頬を膨らませた。
「私の前で2人だけの空間は創らせません!」
そう告げながら、俺とカレンの間に割り込み、カレンに対して威嚇するように頬を膨らませた。
その顔は、ただ可愛いだけなのだが、本人は気付いているのだろうか?
「むぅ~!!折角イチャイチャ出来たのに!」
そう言って、カレンも頬を膨らませて対抗し始めた。
そうやって、2人で戦う様子を見ながら、俺は食堂へ行った。
ちなみにだが、この2人はかなり仲良しだ。
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