破邪ノ英雄は幸せを望むそうです(仮)

bakauke16mai

文字の大きさ
1 / 33
物語は、此処から始まる――

プロローグという名の説明会

しおりを挟む
 戦歴73年。

 100年以上も続く国々の戦いは、今も尚、収まりを見せなかった。



『わああああああああ!!!!!!!!』



 戦場に木霊する兵士達の叫び声と、剣が衝突する金属音。魔法の飛び交う光景。

 鮮やかな色を見せる魔法は、衝突した途端に災害を齎す。

 1万人に1人の割合でしか存在しない魔法を操る人、魔道師。その存在が戦場を大きく左右するのは、想像も容易い。



「我が敵を大いなる炎の柱にて焼き尽くせ!炎柱!!」



 炎を散りばめた球体は、衝突とともに炎の柱を築いた。荒れ狂う炎の柱は、周囲にも絶大な熱気を撒き散らしながら、その姿を薄くしていった。

巻き込まれた兵士は、そのほとんどが命を散らしていく。この一発だけで、1軍の半数から全てが死に絶えてしまうのだ。



「ぎゃああああ!!」

「熱い!!熱いよぉっ!!!」



 生き延びた兵士達も、その後死に絶える運命しか待っていない。

 魔法に対する耐性は、何一つとして確立されていないのだ。



 衝突する2つの軍の片方、右側の兵士達には、剣と馬の紋章が鎧に刻まれている。この紋章は、帝国を表す紋章だ。

 対して、もう片方の左側の兵士達の鎧には、杖と盾の紋章が刻まれている。此方は、教王国を表す紋章だ。



 兵士の数が多く、主に騎兵によって戦場を駆け抜ける帝国に対し、教王国は、魔道師と重鎧の大盾兵を使って戦っている。

 戦況は、教王国が優勢だ。



 なにしろ、帝国の騎兵は盾に拒まれ、そこを魔法の範囲攻撃で潰されている。

 これは、圧倒的に帝国には不利な戦いだ。

 しかし、魔道師が圧倒的に有利かというと、兵士達にも特徴がある。



斬撃スラッシュ!!」



 1人の兵士がそう叫ぶと同時に、その手に握る剣が淡く水色に輝いた。

 その直後、一瞬で剣が振り下ろされ、盾は真っ二つに割れた。

 輝きも同時に失せ、兵士は一瞬の硬直の後、盾兵に止めを刺し、その屍を超えて進んだ。



 これは、魔法に対を成すように存在する、剣技ソード・スキルと呼ばれるものだ。基本的な兵士達は、斬撃、刺突、の2つの技が使用されている。

 この2つ以外にも、様々な剣技が存在するが、主にこの2つを取得しているのだ。



 この2つ以外の剣技には、全てにおいて長い鍛錬が必要となる。よって、その取得出来た剣技には、全ての国公認の階級が設定される。

 斬撃と刺突を1として、設定されるその階級は、最高で10まで存在している。しかし、斬撃の1つ上である、2の剣技の中で最も取得が簡単な『テューク』という技の取得に、早くても1年は掛かるのだ。



また、剣技の中には盾による技も含まれている。



「おりゃあああああ!!!」



叫び声をあげながら剣を振り上げた兵士は、盾を持つ兵士に向けて振り下ろす。

それに対して、盾を持った兵士は、その盾に淡い紫の光を灯した。



「フンッ!!」



気合の入った短い息が零れると同時に、盾と剣は衝突した。

結果、盾には1つも傷が付かず、剣はその刀身から折れ曲がったのだった。これは、盾によって攻撃を防ぐ、『パリィ』という技。剣技の階級で表すと、2に部類される技だ。

この技も、取得はかなり難しく、取得出来る者は少ない。



「ハッ!!」



剣を折られた兵士は、なす術無く、盾の突きによって吹き飛ばされた。



剣技にも、弱点は存在する。それは、発動後の硬直だ。

剣技は、その”剣技”として1つの決められた動作が設定されている。

斬撃の場合は、素早く振り下ろす、が動作だ。剣技というのは、その動作を補正してくれるのだ。

勢いを速く。威力を高く。剣筋を確かに。



その補正によって生まれるのは、身体への反動。一瞬で高速に動いた身体は、その速度と時間に比例して硬直してしまうのだ。




混沌とした戦場。荒れ果てた大地。欲望渦巻く国内。殺意飛び交う魔の森。

命の価値がほとんど考えられていないこの時代、この年。

107年続いたこの戦争に、英雄は現れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

処理中です...