破邪ノ英雄は幸せを望むそうです(仮)

bakauke16mai

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英雄と親友と令嬢と

公爵家で決闘を

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「勇者様っ!!!」



「シュン殿。・・・・・・・・・隣のお方が、レイ様ですか?」



少女の声と、男性の声は重なった。男性は、すぐに俺に対して告げ、少女の場合はシュンを勇者様、と呼んだ。



「ん?そうだよ~僕の大親友で、チートの頂点、レイだよ!」



「その説明で大丈夫なのか?」



「大丈夫大丈夫」



ただシュンの親友という説明だけで納得出来るのだろうか。

仮にもこの場所は、国で二番目に偉い地位を持つ公爵家、その当主の前だろうに。

しかし、心配は杞憂だったようで、男性は俺に対して何も咎めなかった。



代わりに、少女が口を開く。



「勇者様の大親友?・・・・・・・・・・・・!!じゃあ、貴方があの、英雄様?」



_ふむ。シュンは俺の事を何て言ったんだ?



少し鋭い目でシュンを見ると、下手な口笛を吹きながら顔を背けていた。アイツ。



_さて、この質問にはどう答えようか。シュンのことはバレていることだし、何よりも肩書きが無いと面倒かもしれないな。



そう判断した俺は、少女の問いに頷いた。



「そうだな。俺は、ごく普通の、平凡な英雄だ」






◆◇◆◇◆






風がそよぐ中庭で、俺は前方に構える少年と対峙していた。



_何故こうなったんだ。



俺が普通の英雄だと告げた瞬間に、後ろの扉が開き、この少年が飛び込んできたのだ。

そして、開け口一番にこう告げた。



「俺と決闘しろ!」



もちろん、断ったし、シュンにも助けを求めたのだが、相手が悪かった。

対面する少年は、ピクリスト・レイニーン。この国の第二王子なのだ。



結局、シュンの頼みという事で引き受け、現状に至る訳だが、どうにも納得がいかない。

どうして、偽装、または隠蔽系の魔道具を譲ってもらいに来たのに、こんな少年の相手をしなくてはならないのだろうか。



勿論、戦う事が嫌いな訳ではない。戦闘狂に近い感性を持つ自覚もあるが、好き好んで青二才の相手をするのは面倒なのだ。



「決闘のルールを確認する。勝敗は、片方の降参宣言または審判による戦闘不能の判定。制限としては、相手に永続的な日常的害の残る傷を負わせることを禁止、また、剣技、魔法の使用も禁止とする」



最後の、剣技と魔法の禁止は俺に対する制限だ。この2つを可能にすると、勝敗など一瞬で付くだろう。



「それでは、試合を開始する。公爵家長女であるエリシアを賭けた決闘、始め!!!」



_んん!!?!?!



「おい、ちょっとまっ「貰ったあああ!!!」」



不穏な言葉を聞き、真意を問おうと振り向くと、それを好機と思ったのか、少年は突撃してきた。

普段の俺ならば、こんなものは無意識にでも反撃して沈められるだろう。



_仮にも、レイニーンの名を継ぐ者ではあるか。



そう考えらざるおえない状態だった。

なんと、少年の足は淡く輝き、瞬間的に俺の”素の身体能力”と同等まで引き上げられているのだ。

つまり、実質的には少年の元の身体能力の、およそ1万倍である。



_5階級技能<神速>



かつて、歩兵軍の隊長を務め、無類無き速度で敵を屠った人物だ。

彼の持っていた固有技能ユニークスキルが、その子孫にも受け継がれているのだろう。



「フッ!!」



咄嗟に右腕を高速で振り下ろし、回し蹴りを放った。

その速度に付いてこれなかった少年は、自身の速度も相まって、驚異的な速度で吹き飛ばされた。

ただ、外傷は0だ。全てのダメージが、蟻に噛まれた程度の傷にしかなっていない。



勿論、痛みはそのまま感じてしまうが、そこはあの一族だ。

期待を裏切らず、吹き飛ばされ、叩きつけられた壁から起き上がってきた。



「なるほど。興味が沸いた。少年、君の全力の力を見せてくれ」



「偉そうにッ!!」



事実、偉いのだから仕方無いだろう。

仮にも、世界で最も多く人を殺し、そして最強を誇ったのだ。

流石に、”人の身”では無理な敵も存在するのだが、その話はまた別の機会に。



苛立ちを隠さない少年は、先ほどよりも速くなって突撃してきた。

その速度に、攻撃の練度も合わさると最高なのに、と感じてしまうのは否めない。

この速度からの的確な一撃を繰り出せれば、最強の一角に立てるだろう。



少年の祖先がそうして敵を屠り続けたように。



そんな事を考えながら、拙い攻撃を防ぐ俺に対して、シュンは何時ものように輝いた視線を向けてくる。

公爵家の男性と少女は、驚きを隠せない状態で、放心しているようだ。



目と口を大きく開いて、その場に立ち尽くしている。




暖かな風と日差しが眠気を誘う中、中庭には、激しい攻撃と、眠そうな少年が立っていた。

もしかしたら、運動にすらなっていないのかもしれない。
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