10 / 33
英雄と親友と令嬢と
学園への基準値(2)~公爵の1日~
しおりを挟む
※三人称視点
常識、もとい知識を集めるための観察は翌日、つまり今日から開始された。
レイが寝泊りをしたのは公爵家の屋敷の一室。客用の部屋だ。
その部屋は、来賓用らしく、下手をすれば公爵本人よりも豪華な部屋に寝る事態も有り得る。
昨日、レイが男性と称していた人物こそ公爵当主で、名をステファニーという。
早速、早朝のステファニーがまだ寝ている時間から、レイは観察を開始した。
・・・・勿論、不審な目で見られたのは気の所為のはずである。
公爵家の朝は早い。
太陽の昇る前に起きたステファニーは、すぐに身支度を整え、部屋から出て行った。
残されたレイも、それに続くように部屋から出て、ステファニーの後ろに隠れるように歩き始めた。
「おはよう」
「おはようございます。旦那様」
『おはようございます』
ステファニーが年長のメイドに挨拶をし、それを返したメイドに続いて周りのメイドも挨拶をした。
この連携のような光景を見るのは初めてで、レイにとっては新鮮な出来事である。
途中、執事らしき男性がステファニーの隣に着いて歩き始め、時折振り返ったりとしている。
淡い緑の輝く瞳が一瞬見えて、次の瞬間には消えている。
_魔眼か。
魔眼とは、その名の通りに、魔力の篭った瞳のことを表す。
神話の時代、この魔眼の種類は数百を越えており、多彩な使い道をされていた。
中には隠蔽系の技能すら覆す強力な”眼”を持つ者もおり、レイは苦労したものだ。
何よりも、魔眼は発動しない限りは感知出来ない。という性質が厄介であった。
魔眼には、かつてのレイが苦戦するほどの可能性と力が秘められているのだ。
_この時代にも、魔眼があるとは驚きだ。
そう考えながら、手元の手帳に意見を書き込んでいく。
_「執事は有能」
続いてステファニーが向かったのは、屋敷の右側に位置する食堂だ。
長い廊下を歩き終わる頃には、太陽が顔を覗かせている。
「おはよう」
『おはようございます』
そう告げながらステファニーが入ると、四方から返事が返ってきた。
それに満足したように頷いたステファニーは、そのまま正面の長テーブルの縦に座った。
レイはその背後に立ち、食堂を見回していた。
ある者は座り、ある者は控え、ある者は料理をしている。
配膳をする者や、周囲に眼を光らせている者もいる。
_賑やかな食堂だな。
以前からは、想像も出来ない風景である。
_こんなにも、平和なのは。
此処にいる者の、その大半が心から幸せそうな顔をしている。
その光景が、レイには酷く驚愕する光景でいた。
胸の奥が、チリッ、と痛んだ気がした。
食事事態は、かなり静かに進んだ。
仮にも貴族であるため、賑やかな食卓は無いだろうと予想していたが、意外にも会話は飛び交っていた。
少女は学園についてを語り、シュンは自身の冒険を話していた。
ステファニーの隣に座っているのは、恐らくステファニーの妻であろう女性だ。
成る程やはり、美しい姿をしている、とレイにも感じられた。
一瞬、レイと視線が交差した気がしたが、それを確認する前に女性の視線は外れていた。
首を傾げるレイは、だがしかし、ステファニーが食事を終えたことで考えは打ち消した。
歩き始めたステファニーの後ろを、そのまま着いて行くと、ステファニーは執務室に入った。
一緒に執事も入ったことから、この執事はかなり地位の高い執事だと分かる。
気配を最大限に消したレイも、扉を透過して部屋に入った。
_無魔法<透明><霊化>
中では、ステファニーと執事の2人が書類を整理していた。
机の上に積まれた山のような書類の束を見て、レイは眉を潜めて苦い顔になった。
_ああ、貴族とは大変なのだな。
そんな感想を抱いたレイとは別に、ステファニーは眉を潜めた。
「魔物の増加、か………やはり、報告が必要になったか。至急、王宮に通達せよ」
ステファニーがそう言った直後、執事の姿は消えていた。
執事の居た場所をレイが注視すると、光の粒子が消え始めていた。
つまり、魔法が行使された、ということだ。
_この時代の執事とは、此処まで有能なのか?以前でも空間魔法を扱える執事なんて少なかったぞ?
執事の有能性に若干の疑問を残しながら、時間は過ぎていった。
太陽の暮れる夕方。
1日中を執務室の机の上で過ごしたステファニーは、やはり何処か疲れた様子だった。
それもそのはず。
今日一日だけで、王宮に報告すべき案件が4つも存在したのだ。
_____________
魔物による村1個体の全損について。
高濃度の魔法反応について。
外交について。
迷宮より確認された異常について
_____________
全ての書類を捌き切ったのが、夕方という訳だ。
立ち上がったステファニーの横に並ぶ執事の男性も、疲れの様子が見てとれる。
_ふむ。なら、これくらいの労わりは必要だろう?
「草花の香 陽光の輝き 踊る妖精此処に在れ _<極上の心地>」
光が2人を包んだ。
同時に、ステファニーと男性の顔は心地良さに緩められた。
例えるなら、冬の一仕事終えた後の露天風呂だろうか?それと、最高級ベッド。
夕日が地平線に輝きを残して去り行く中、1日の終わりを感じた2人だった。
常識、もとい知識を集めるための観察は翌日、つまり今日から開始された。
レイが寝泊りをしたのは公爵家の屋敷の一室。客用の部屋だ。
その部屋は、来賓用らしく、下手をすれば公爵本人よりも豪華な部屋に寝る事態も有り得る。
昨日、レイが男性と称していた人物こそ公爵当主で、名をステファニーという。
早速、早朝のステファニーがまだ寝ている時間から、レイは観察を開始した。
・・・・勿論、不審な目で見られたのは気の所為のはずである。
公爵家の朝は早い。
太陽の昇る前に起きたステファニーは、すぐに身支度を整え、部屋から出て行った。
残されたレイも、それに続くように部屋から出て、ステファニーの後ろに隠れるように歩き始めた。
「おはよう」
「おはようございます。旦那様」
『おはようございます』
ステファニーが年長のメイドに挨拶をし、それを返したメイドに続いて周りのメイドも挨拶をした。
この連携のような光景を見るのは初めてで、レイにとっては新鮮な出来事である。
途中、執事らしき男性がステファニーの隣に着いて歩き始め、時折振り返ったりとしている。
淡い緑の輝く瞳が一瞬見えて、次の瞬間には消えている。
_魔眼か。
魔眼とは、その名の通りに、魔力の篭った瞳のことを表す。
神話の時代、この魔眼の種類は数百を越えており、多彩な使い道をされていた。
中には隠蔽系の技能すら覆す強力な”眼”を持つ者もおり、レイは苦労したものだ。
何よりも、魔眼は発動しない限りは感知出来ない。という性質が厄介であった。
魔眼には、かつてのレイが苦戦するほどの可能性と力が秘められているのだ。
_この時代にも、魔眼があるとは驚きだ。
そう考えながら、手元の手帳に意見を書き込んでいく。
_「執事は有能」
続いてステファニーが向かったのは、屋敷の右側に位置する食堂だ。
長い廊下を歩き終わる頃には、太陽が顔を覗かせている。
「おはよう」
『おはようございます』
そう告げながらステファニーが入ると、四方から返事が返ってきた。
それに満足したように頷いたステファニーは、そのまま正面の長テーブルの縦に座った。
レイはその背後に立ち、食堂を見回していた。
ある者は座り、ある者は控え、ある者は料理をしている。
配膳をする者や、周囲に眼を光らせている者もいる。
_賑やかな食堂だな。
以前からは、想像も出来ない風景である。
_こんなにも、平和なのは。
此処にいる者の、その大半が心から幸せそうな顔をしている。
その光景が、レイには酷く驚愕する光景でいた。
胸の奥が、チリッ、と痛んだ気がした。
食事事態は、かなり静かに進んだ。
仮にも貴族であるため、賑やかな食卓は無いだろうと予想していたが、意外にも会話は飛び交っていた。
少女は学園についてを語り、シュンは自身の冒険を話していた。
ステファニーの隣に座っているのは、恐らくステファニーの妻であろう女性だ。
成る程やはり、美しい姿をしている、とレイにも感じられた。
一瞬、レイと視線が交差した気がしたが、それを確認する前に女性の視線は外れていた。
首を傾げるレイは、だがしかし、ステファニーが食事を終えたことで考えは打ち消した。
歩き始めたステファニーの後ろを、そのまま着いて行くと、ステファニーは執務室に入った。
一緒に執事も入ったことから、この執事はかなり地位の高い執事だと分かる。
気配を最大限に消したレイも、扉を透過して部屋に入った。
_無魔法<透明><霊化>
中では、ステファニーと執事の2人が書類を整理していた。
机の上に積まれた山のような書類の束を見て、レイは眉を潜めて苦い顔になった。
_ああ、貴族とは大変なのだな。
そんな感想を抱いたレイとは別に、ステファニーは眉を潜めた。
「魔物の増加、か………やはり、報告が必要になったか。至急、王宮に通達せよ」
ステファニーがそう言った直後、執事の姿は消えていた。
執事の居た場所をレイが注視すると、光の粒子が消え始めていた。
つまり、魔法が行使された、ということだ。
_この時代の執事とは、此処まで有能なのか?以前でも空間魔法を扱える執事なんて少なかったぞ?
執事の有能性に若干の疑問を残しながら、時間は過ぎていった。
太陽の暮れる夕方。
1日中を執務室の机の上で過ごしたステファニーは、やはり何処か疲れた様子だった。
それもそのはず。
今日一日だけで、王宮に報告すべき案件が4つも存在したのだ。
_____________
魔物による村1個体の全損について。
高濃度の魔法反応について。
外交について。
迷宮より確認された異常について
_____________
全ての書類を捌き切ったのが、夕方という訳だ。
立ち上がったステファニーの横に並ぶ執事の男性も、疲れの様子が見てとれる。
_ふむ。なら、これくらいの労わりは必要だろう?
「草花の香 陽光の輝き 踊る妖精此処に在れ _<極上の心地>」
光が2人を包んだ。
同時に、ステファニーと男性の顔は心地良さに緩められた。
例えるなら、冬の一仕事終えた後の露天風呂だろうか?それと、最高級ベッド。
夕日が地平線に輝きを残して去り行く中、1日の終わりを感じた2人だった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】前世聖女のかけだし悪女
たちばな立花
ファンタジー
魔王を退治し世界を救った聖女が早世した。
しかし、彼女は聖女の能力と記憶を残したまま、実兄の末娘リリアナとして生まれ変わる。
妹や妻を失い優しい性格が冷酷に変わってしまった父、母を失い心を閉ざした兄。
前世、世界のために家族を守れなかったリリアナは、世間から悪と言われようとも、今世の力は家族のために使うと決意する。
まずは父と兄の心を開いて、普通の貴族令嬢ライフを送ろうと思ったけど、倒したはずの魔王が執事として現れて――!?
無表情な父とツンがすぎる兄と変人執事に囲まれたニューライフが始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる