破邪ノ英雄は幸せを望むそうです(仮)

bakauke16mai

文字の大きさ
14 / 33
英雄と親友と令嬢と

令嬢と勇者の試練(2)

しおりを挟む
 遥か古。

 神話の時代には、人の心に溶け込み、幸せを糧にする魔族がいた。

 その種族の名は、淫夢魔。

 対象の夢を叶えてくれる、最悪の悪魔だ。



 ______________________________________

 ※三人称視点




 何時の間にか、日差しは途絶えていた。

 窓から見上げる空は、まるで不穏を知らせるかのように黒い雲に染まっている。

 暗闇の廊下は、全ての松明が消え、今では闇が支配していた。



 向き合うリィナとシュン。



「これから話すのは、呪いの話だよ?絶対に、幸せからは掛け離れた結末が待っている。こんな話知らないで、リィナは幸せに生きても良いんだよ?この呪いは、僕達だけが__」



「そうやって……そうやって、隠すんですか?勇者である貴方が、呪いなんかのために隠すんですか?」



 何かを隠すように喋るシュンに対して、リィナはそれを遮って喋った。

 その瞳から流れる涙を見て、シュンは持ち上げた手の力を抜いた。

 何が分かる!そう言いたかった自分に対して、シュンは自嘲気味に笑った。



 _ああ。神様。貴方が下さった人生。どうしてこんなに難しいのですか?



「分かったよ。『これは、古き古の話だ___』」



 ________________

『遥か昔。それこそ、神話と呼ばれる時代よりもさらに昔。未だ神々がこの世界で生きていた頃の話だ。

 ある所に、1人の少年と、その家族が幸せに住んでいた。

 でも、その幸せは必ずしも続く訳では無いんだよ。



 少年が、夜、眠った後だった。

 彼の家族、そして少年には、神々とはまったく別の因子が眠っていたんだ。

 それこそ、世界が破壊されるような、恐ろしい因子が。



 神々はそれに気付いていたんだよ。

 それでも、最初はこんな幸せな家庭が壊れるはずも無いと。大丈夫だと。

 そう考えて見守っていた。



 でも、駄目だった。



 日々が経つにつれて、その家族の存在が世界を狂わせていった。

 木々が枯れ始め、川が乾き始め、大地に亀裂が起き始めた。

 神々は自分たちが住んでいた場所が破壊されていく様を、ただ見ているだけしか出来なかったんだ。



 神々なんて言っても、その頃は僕達と変わらない人間だったんだから。

 やがて、その出来事全てに対する感情は憎しみや怒りに変わり、そしてそれは少年の家族に向かった。



 遂に暴走が始まったのが、最初の少年が眠った夜のことだよ。

 神々はそのほとんど全員で少年の家に襲い掛かった。

 周辺の草花も、川も、大地も破壊して、少年の家族を捕らえた。



 反抗した家族の力は、制御できなかったのもあって、それはもう大破壊が起きたんだ。

 神々はその大半を失うほど、と言えば理解出来るかな?



 でも、それが駄目だったんだろうね。

 その破壊が、失った命が、神々の怒りに火を点けた。



 少年が朝起きた時、目前にあったのは何だったと思う?



 少年が愛した。大好きだった両親の、傷つけられ、無残に刈り取られた生首だったよ。

 血が垂れ落ち、少年の部屋には血痕が大量に残り、肉片が飛び散っていた。



 戦争なんて、戦いなんて、すり傷でも泣いてしまうような子供が、両親の生首と、大量の血痕。そして肉片を見たら、どうなると思う?



 でも、少年は賢かった。

 自分に流れる血の因子にも、原因も、そして、何故両親がこうなったのかも理解出来た。



 _理解出来たからこそ、許せなかった。



 __運命が、神々が、世界が、平和が、血が。



 ___始まったのは、世界規模の、大虐殺だった。




 神々の9割をも殺した少年に対して、残った神々は全てが協力して、幾つかの神となった。



 創造神



 戦神



 魔法神



 武神



 最高神



 女神



 それぞれが世界の各地に散らばり、その地にて命を代償として魔法を発動させた。



「世界ごと、少年を封印した」



 それぞれの神は、命を失ってなお、魂を削って神という存在を創り上げた。

 それを、基点として、運命、世界、生物、空気、魔法、戦い、感情、それらも創造したのだ。

 これ等を創ることによって、神という絶対の存在を創った。



 そこからは、平和な世界が続いた。

 数々の世界で少数の神が生まれ、それらを下級神として世界を担当させる。

 そうやって、創り上げられた世界の1つが此処なんだ。



 最初の神々を、原始の六神、として呼ばれているね。




 でも、少年の力は、その原始の六神全てを合わせて尚極一部の余力が残っていた。

 ただ、少年にもう破壊と虐殺の意思は無い。

 あったのは、神々への対抗だけだった。



 発動させたのは、全ての世界の仕組みに干渉する魔法。

 それによって、最も適したこの世界に、2つの呪いを掛けた。



 魔王と、勇者の呪いだよ。



 それによって、この世界は何時の時代も戦争が勃発するようになった。

 魔王との戦いには勇者が誕生し、魔王が勝てば魔族が世界に蔓延る。

 勇者が勝っているから、人間が蔓延っている。



 代わりに、人間達は同志打ちを繰り返す。

 この混沌とした世界に対して、神々は2人の使徒を送り込んだんだ。

 誰よりも圧倒的な存在であるように、と。

 そして、誰よりも不幸で、厳しい人生を歩むように、と。

 少年の呪いがさらに掛かり、一生死なないからだにもなった』



 _____________________________



「それが、僕とレイだよ。僕達は、誰よりも強い存在であり、誰よりも悲しい存在。何よりも、この話をした相手にも、同じ呪いが掛けられる。一生死なない呪いと、不幸の続く呪いが」



 話し終えたシュンが窓から空を見ると、同時に強烈な音が鳴った。

 雷だ。



 上空で旋回する雷が、まるで今この状況を怒っているようで、そして、これが運命の起点だということを、証明していた。




 物語は、まだ始まらない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】前世聖女のかけだし悪女

たちばな立花
ファンタジー
 魔王を退治し世界を救った聖女が早世した。  しかし、彼女は聖女の能力と記憶を残したまま、実兄の末娘リリアナとして生まれ変わる。  妹や妻を失い優しい性格が冷酷に変わってしまった父、母を失い心を閉ざした兄。  前世、世界のために家族を守れなかったリリアナは、世間から悪と言われようとも、今世の力は家族のために使うと決意する。  まずは父と兄の心を開いて、普通の貴族令嬢ライフを送ろうと思ったけど、倒したはずの魔王が執事として現れて――!?  無表情な父とツンがすぎる兄と変人執事に囲まれたニューライフが始まる!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...