幸せバカップル短編集

おがこは

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壁目線

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「…お邪魔します」

「…うん。いらっしゃい。あの、狭いけど、好きなとこ座って。」

「うん。ありがとう。」


狭いなんて酷いこというなよな。
自分はこの家の壁。今回この部屋を借りたのは、こいつ。ひろきとかいうらしい。なんと男が好きなんだそうだ。いつの間にか壁になってた自分はそういうことに疎い。正直おっぱじめられたらたまったもんじゃない。でも最近付き合い始めたやつがいるらしく、今日はお家デートらしい。覚悟しとこう。

「ひろきくんの匂いがする!」

「あんまり嗅がないで…恥ずかしい///」

「えー?いい匂いだよ?」

はいはい。初々しいですねーいいですねー。自分はこんなの経験しないまま壁になったからな。あーあー恋してみてぇ。

「…」

「…」

お?どうした。話すことなくなっちゃったのかな?気まずいねーぇーこういうの好きだよぉ。最初の頃しかこの気まずさは味わえないからね。しっかり味わっときな。

「テテテレビでも見る?俺会員入ったからなんでも見れるよ!」

「あ、見たいかも。」

「あ、でもお菓子ないな。買ってくれば良かった。」

「な、なら!今から行く?お夕飯も一緒に作ろうよ!」

「あ、えっと…うん。そうしよっか。」


2人とも緊張しすぎだろ。いくつだよ全く。しかもなんでスーパー行く流れになってんだよ。そこはコンビニ行って隠れてゴム買って照れるみたいなそういうのだろ。
見ててもどかしいわもう。


そういえばひろきのやつベット汚いのでは?


あーやっぱり。脱ぎっぱなし、やりっぱなし、オマケにめっちゃティッシュ落ちてる。シコッてんじゃねーぞまじで。あーどうしよう。あいつの好感度上げてやってもいいんだけど、勝手に片付いてると怖がられるよな。お祓いなんてされたらたまったもんじゃない。どうしたもんかなぁ。まあいっか。恋を実らせてやろうじゃないか。片付けたるわもう!!!

うわくっさぁ。いつ脱いだんだよ洗えし!彼氏の方いい匂いとか言ってたけど本心か?!さすがだなぁ。恋愛フィルターかかってんだろーなぁ。てか、子供の恋を応援するお母さんてこんな感じかな。お節介やきたくなるのわかるわぁ。不安で仕方がない。あ!やべ!帰ってきた!

「ただいまー」

「…」

「ひろきくん?まだ拗ねてるの?」

「だって…まさかいるなんて…」


え?どうしたんだ?誰がいたんだ?まさか会社の上司とばったりとか?!気まずすぎんだろ。


「僕は会えて嬉しかったよ。だから大丈夫だって!お母さん理解ある人で良かったね!」

「でもちゃんとお付き合いしてるって言いたかった…」


え?!親?!実家近所なの?!ほんとなんでスーパー行ったんだよ馬鹿か!!!てか拗ねてんじゃねーよ!めっちゃ彼氏フォローしてるじゃん情けねぇな!!!



「それに…ゴム売り場でばったりなんて…」

「お母さんとお父さんの仲がいい証拠だよ。」


えー…お母さん。まじですかぁ。両親が今でもヤッてるなんて知りたくないよなぁ。そりゃ拗ねるわなぁ。そんで彼氏いいひとすぎる。逆に傷に染みる。同情するわこれは。可哀想に。

「知りたく…無かった…ごめんねせっかくのデートなのにこんな…」

「いやいや、なんか楽しいよ?ひろきくんといると飽きなさそう。お姑さんもいい人ってわかったし?」

「お姑さんて…結婚じゃないんだから///」

「僕は結婚してもいいと思ってるけど?」

「…心臓に悪いからちょっとタイム」


うわイチャイチャに持っていきやがった。ひろきの彼氏凄すぎる。なかなかいい男を捕まえたな!仕方ない。第三者目線で今後も応援してやるよ。ただし、セックスはしないでくれ。
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