問題児×問題児=大恋愛(1)

Taki

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STEP.05 最強のライバル出現

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体育祭も終わり。
冬真君との距離も当然のように縮まることもなく。

───早3日。


冬真君と私はあれからも何ら変わりない。

私が一方的に押しかけ続けているから、だからこそ繋がっているだけの私達の不安定な関係のまま。


しかし収穫はあった。


「ふふふふ」

「怖いよ」


ちゃっかり学校に持ってきた冬真君との写真。
2人だけで写った、大切な写真。

スマホのデータにしておくには勿体ないと印刷しておいたのだ。


「あー貴重すぎる!そして冬真君のこの顔最高」


私が写真を指差して「これ見て、ほら」と告げるとそれを覗き込むために髪を耳にかけた香奈枝が言葉につまってみせた。


「…この顔のどこがいいの」


写真を見た途端に首を捻って分からんという顔になった彼女がしぼりだした感想に私は笑う。


「だってこれ、本当の冬真君だよ」

「あぁ、確かにそうかもね」


私が写真を気に入っている理由に頷き、もう1度写真を覗き込んだ香奈枝は納得したように息をもらした。

私は変わらず満面の笑みで飽きることなく写真を眺める。

その写真には、これ以上ないくらいの笑顔の私と、後藤君からはかけ離れた引きつった笑顔を浮かべてキレてしまう寸前かのような冬真君が写っている。


「はぁぁ、宝物!」

「はいはい、良かったね」


写真を抱きしめるあたしを嫌そうな顔で見た香奈枝。

香奈枝はため息をついてから自分の鞄からフォトブックを取り出した。

彼女もスマホで撮った写真をわざわざ印刷したようだ。


「そんなのより、これの方が数段いいけどね」


最初のページを開いて鼻高々に私に見せてきたその写真。


「うわっ、マジで撮ってたの?」

「私がヒナのベストショットを逃すわけないでしょ」

「これのどこがベストショット!?」


ペンギン姿の私が明らかにイライラした顔で酔っ払いを追い抜かした瞬間の写真。

そしてその下の写真には顔を真っ白にして得意げに笑っている私がいて。

まさにある意味ベストタイミングで撮った写真と言えるものに驚きを隠せない。


私達のの騒がしい声が聞こえたのか「なになに?なんか楽しそうだなぁ」と井上君が近づいて来て、空いていた隣の席に腰かけた。

島村君も自然にその隣に立つ。


「井上君!ちょ、あっち行って!」

「あっ、ひっでぇ!」


笑いながら心臓を押さえた彼は「傷つくなぁ」なんて言いながら、「おっ、例の写真じゃん」と香奈枝のフォトブックをひょいっと手にとった。


「ペンギン可愛かったよなぁ」


なんてクスクス笑って。

それを見ていた島村君まで、


「よく撮れてんじゃん」

「でしょ?」


胸を張る香奈枝にそんなことを言って笑っている。


───体育祭以来、すっかり仲良くなったあたし達。

体育祭が終わってのこの3日間、教室では大抵一緒にいる気がする。

ページをめくる程に味のある写真が顔を出す香奈枝のフォトブック。
皆の眩しい笑顔が輝く写真の中でも目立つそれらを見て騒がしい程に笑う。

私の写真なんて何てことないのではと考え直すような井上君の衝撃的な顔や、必死の形相で応援するクラスメイトの姿。

やはりある意味で香奈枝はベストショットをおさめる腕を持つカメラマンなようだ。

しかし島村君だけは何をしていてもさまになっているのがすごいしずるい。


「そういえば、今日はまだ生徒会長んとこ行ってないの?」


島村君の写真に感心していた私に思い出したようにそんなことを尋ねてくる島村君。


「え?ヒナちゃん今日はストーカーまだなんだ?」


それを聞いた井上君が珍しそうに目を大きく広げ、香奈枝が井上君の素朴な疑問に面白そうに肩を揺らした。


「ストーカーって言わないでよー」


一応、失礼極まりない発言をした井上君をジロリと下から睨みつけておく。


「今日はね、昼休みに行こうと思って。写真一緒に見たいし」


冬真君と撮った写真を手に持ち、にっこり島村君に答えると、「どれどれ?」と許可なく井上君の手に取られた写真。


「あー!」


手にしていた宝物を一瞬にして井上君に乱暴に奪い取られ。


「ちょっと!もっと丁寧に扱えよ!」


本当に本当に念願だったやっと手に入れたその写真がもし破れでもしたら…そう思って。
思わず中学の時のような口調で至って真剣に低い声で叫んでしまった。


「え?ヒナちゃん?」

「あっ…」


きょとんとした表情を浮かべた2人を見て、ようやく無意識に出した言葉が今の久遠雛乃っぽくはないという事実に気付き笑って誤魔化す。

それを横で見ていた香奈枝は、私を助けようなんて優しい考えはないらしく「ぷー!」と心底楽しげに吹き出していた。

   
「ご、ごめん…だって2人の顔…ぷっく』


私がジロリと睨みつけても中学からの親友の香奈枝にその睨みが通用するはずもなく。

私達の様子を見て2人はポカンと固まったままだ。


「あ、あぁ、ごめんね。あのさ、あれなの」


2人に何とか言い訳をしようと手を動かし思いついた言い訳は、


「私写真に指紋付くの許せないタイプなんだよね!」


今更の神経質アピール。


それを聞いた香奈枝が更に大きく吹き出した。


─この野郎、香奈枝!
親友なら親友のピンチに手助けしろ!


もう1度ジロリと睨みつけたが効果はやはり微塵も感じられない。


「あー、じゃなくて…いやそれもあったりなかったり、いや違う、いや…」


他に何かいい言い訳がないか必死で考えていると、「なる程ね!」納得!とでも言いたげに手をポンっと叩いて見せた井上君。


「写真はなぁわ指紋嫌だよな。悪ぃことしたなぁ」


目を瞑り、顔をしかめる井上君。
猛省するその姿にこちらが申し訳なくなる。


「こりゃヒナ並の馬鹿だ」


そんな声が隣から聞こえたがスルーしておいた。


「ていうか別に中学の時のこと言ったらいいじゃん」


香奈枝が井上君を見る私にそっとそう耳打ちしてきて、私は素直に頷いた。


「うん、別に言ってもいいんだけどさ。むしろ学校の人、知ってる人のが多いだろうし」

「じゃあなんであんな言い訳したの」

「…性格直したはずだったのに咄嗟に怒鳴った自分に焦ったから、かなぁ」

「焦ったってゆうよりショック?」

「うーん…半々、かも?」


島村君は井上君を見て呆れながらため息をついていて、私達の様子には気づいていないようだ。

そんな彼の姿に、


─島村君、いつも苦労してんだろうな。


ぼんやりそう思っていると、


「え?これ生徒会長だよな?」

「珍しい顔してんなぁ」


2人からそんな声が聞こえてきて香奈枝と同時に顔を上げた。

どうやら先程私から取り上げた写真に指紋がついていないかじっくり見ていた時に冬真君らしからぬ表情に気付いてしまったようだ。


「ヒナちゃん。これ生徒会長超顔引きつってんじゃん。どうしたの?」

「こんな顔もするんだな。初めて見た」


2人はまじまじと写真を眺めている。

極上の笑顔で写る私の隣で魔王を少し出している冬真君の顔。

普段見ることのない彼の表情に首を傾げるのは当然かもしれない。


「く、くしゃみ出そうだったみたいなの!」

「あぁ、確かになんか相当我慢してる風な顔だよな」


今度はナイス言い訳ができた。

が、しかし、それに「なるほど」と頷いた井上君の言葉に、


─私と写真撮るのそんなに嫌だったのね…


激しくショックを受けた。

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