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2章
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しおりを挟む二回目の過去への逆行も、あえなく失敗し。
俺は完全に打ちひしがれていた。
正直、今回の俺の発言に特に問題はなかったと思うんだ。
俺の発言だけを聞いたら、俺がちゃんとリフィを思ってるってことは伝わるだろうし、婚約者に対して関心がないなんて誤解を受けることもないはずだ。
なのに、今回もやっぱりリードの失言であらぬ方向へといってしまった。
なんでだ。一体何がいけないんだ。
婚約解消になるのは、避けられない運命だとでもいうのか。
「はぁぁぁぁ。チャンスはあと一回か……。うまくいく気がしない。どうすればいいんだ、もう。他になんて言えばリフィは泣かずに笑ってくれるんだ? どうすれば婚約解消なんて極端な話にならずに済むんだよ……」
半ば投げやりな気持ちで、クッションを壁に投げつける。
もし次で過去を変えられなければ、きっともう二度とリフィとやり直すチャンスなんて訪れない。そうしたらリフィは俺以外の男と結婚を……。
そんな絶望的な状況を思い描き、頭を抱えた。
「リフィに会いたい……。過去のリフィじゃなくて、今のリフィに会いたい……。会ってちゃんと話がしたいんだ。こんな形で終わるなんて、嫌だ……」
そう呟いた時、ふとリフィの父親の言った言葉が脳裏によみがえった。
『お前のようなへたれに娘をやるわけにはいかん。気持ちのひとつも伝えとらんどころか、分かり合う努力も怠るとは……。お前とリフィとの婚約は今この時を持って解消とする!二度とリフィの前に顔を現すな、いいな!』
あの時、確かそんなことを言っていたと思う。
あれは、俺がリフィと満足に話をしたこともどこにも誘ったことがないと言ったことに対しての言葉だった。
「気持ちのひとつも伝えず……分かり合う努力も……」
静まり返った部屋の中で、言われた言葉を繰り返し呟いた。
「そういえば俺、今まで一度も……」
この時俺は初めて気がついた。
ただの一度も、リフィに気持ちを伝えたことがないことを。
「いや、でも誕生日に好きだって花言葉の花束を贈ったことなら……」
花が好きだと言っていたからきっと花言葉を知っているだろうと思って、あえてそんな花言葉の花ばかりを選んで贈ったんだ。
でも、もし。
もしその意味にリフィが気がついていなかったとしたら?
「でも、言葉にして愛を告白するなんてそんなこと、俺にはとても……」
だって一緒にいるだけで心臓がバクバクして、顔を満足に見られないくらいなんだ。気持ちを伝えるなんて、そんなこと。
でも、婚約して五年だ。俺は五年もの間、リフィに気持ちも伝えずデートにも誘わず、一体何をしてきたんだろう。
過去の自分を振り返り、自問自答する。
「俺はばかだ……。だからって好きだって気持ちを……、これから結婚しようっていう相手に一度も伝えていなかったなんて……。しかもちゃんとつかまえておく努力さえしてこなかったんだ。そんなの……ダメになって当然じゃないか。俺はなんて……」
手に持っていた手鏡を、見下ろした。
鏡は、今にも泣き出しそうな情けない顔を写し出していた。
過去に戻ってあの時の会話をやり直せば、リフィは泣くこともなく、リフィの父親を怒らせて婚約解消になることもないと思っていた。
でも、きっとそれは違う。
もっと大事なことを、俺はしなきゃいけなかったんだ。
「俺……俺は……!」
そして俺は、手鏡をベッドの上に投げ出すと、慌ただしく上着だけを引っつかんで部屋を飛び出したのだった。
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