蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十二章 私の名は

12-1 エドナサイド

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「わー。首がないお馬さんが、いっぱいいるんだよ!」

 あたしは、現在滞在しているへルディアという国のお姫様のメリアさんに、連れられて、へルディア城内にある厩舎きゅうしゅと呼ばれるところに、カチュアさんと一緒に来ているんだよ。

 メリアさんの、お兄さんであるへルディアの王さんが、現在、コルネリアの八騎将の一人のガロンに、囚わられているんだよ。お兄さんが、大変な状態なんだけど、偵察に行ってくれている、アニーさんとソフィアさんが、戻ってくるまでは、動けないらしんだよ。だから、メリアさんは、気晴らしに、あたし達を場内に案内しているんだよ。というのも、あたしがお馬さんを育てている場所があるって、聞いたから見て見たかったから、メリアさんが案内してくれたんだよ。

 メリアさん、無理していないと、いいんだよ。たまに、ボーとしていることが、あるんだよ。

 厩舎きゅうしゅ内には、メリアさんと出会った時に、一緒にいた、首のない、お馬さんが沢山いたんだよ。それに他の動物も沢山いるんだよ。でも、何だか、危険種の分類に入りそうな動物も混ざっているんだよ。怖いんだよ。

 そう言えば、厩舎きゅうしゅの入り口前に『ギルティ立ち入り禁止』と書かれていた、立て札があったんだよ。ギルティさんはメリアさんのお友達なんだよ。でも、何で、ギルティさんは立ち入り禁止なのかな?

「あれは狼さんかな? 狼さんがいるんだよ! それにデッカい鳥さんも。ねぇ、メリアさん。この子達はどういう役割があるの?」

 メリアさんを尋ねるんだよ。だけど。

「カチュアはギルティよりも、圧倒的に大きいうえに、かなりの美人さん。しかも、あまり見かけない綺麗な蒼い髪に瞳を持っている。ここ最近、私は、お洒落をするようになりましたが、やはり、アニーには、負けている。アニーよりも、女性らしく、なろうとしていたのに、俺の目指すものは、カチュアが一番近い、ここは彼女を観察して……」

 小声で誰もいないのに、話しているんだよ。幽霊にでも、話しているのかな? それとも、メリアさんには、ナギさんのような人が、いるのかな? 気のせいかな? カチュアさんのことを怖い目をしながら、見ているんだよ。

「ここは、養殖所かしら~? ここでお肉とか、生産しているのかしら~?」

 すると、厩舎きゅうしゅ内の動物さん達はが、怯えた顔して、慌ててお部屋の端っこへ走っていったんだよ。それもあたし達から一番離れたところまで離れて行ったんだよ。
 
 何で、厩舎きゅうしゅ内の動物さん達は、怯えているように体が震えているのかな?

「やめろ! この子達が、怯えているよ!」

 さっきまで、見えない人と会話していた、メリアさんが怒ったように声をあげたんだよ。

「ところで、カチュアさん、養殖所って?」
「ん~、わたしが昔住んでいた近くにあったのよ~。その養殖所が。何でも、お姉ちゃんが建てたらしいわ~。何でも、食用のお肉を作るためらしいわ~」
「じゃあ、ここは、お肉を食べるために……」

 すると、また、養殖所の動物さん達が、悲鳴のよう声を上げながら、お部屋の端っこまで、逃げるように向かっていったんだよ。

「やめろ! 皆怯えているよ! それに、ここは、養殖所じゃないから!」
「そっか~」
「全く! あんたも立ち入り禁止にするか!?」
「じゃあ~、この子達からミルクでも取れるかしら~? 養殖所はお肉だけじゃなくって、卵や、ミルクも取れるらしいわ~」
「まあ、そういうところもあるね。でも、ここは、騎兵用よ」
「騎兵って、メリアさんとアニーさんが乗っていた馬で戦う人達の人?」
「でも、狼さんと、鳥さんもいるわ~。あの子達もなの~」
「そうです。ヘルディアは、様々な戦法を持つ傭兵が多くってね。馬上での戦法を得る者も結構います。さらに、乗っ手のスタイルに合わせて、狼や、鳥の背中に乗って、戦うんです。狼だったら、嗅覚を活用した偵察とかの活用ができます」
「はわわ。狼さんって、食糧だけじゃないんだね」
「確かに、肉はおいしいんだけど、あまり、食べる発言しないでくれません。この子達怯えているぞ」

 厩舎きゅうしゅ内の動物さん達を見ると、怯えた様子で、体を震わせているんだよ。

「はわわ? どうしてなの?」
「本人達に目の前で、食べる関連のワードを出すからだ。ただでさえ、ここには脅威があるんだから」
「それにしても、こんな、いっぱい。誰がお世話しているの? 結構、大変そうなんだよ」
「主に調教師ですが、私も彼らの手入れをしているんだ」
「そうなんだ。でも、大変そうなんだよ」
「私は動物が好きなんだ。これくらいは苦痛はないんだ」
「だから、お馬さんに乗っていたり、お世話をしているんだね」
「とはいっても、魔物だけは無理だったな。昔仲良くしようと思ったんだけど、危うく、殺されるところだったよ」
「いや! 死なないだけ、大した人だよな! 敵側は手駒に仕切れなくって、食べられた輩がいる中で」

 突然、カチュアさんでも、メリアさんでもない声が聞こえたんだよ。この声はナギさんなんだよ。

「確か、ナギだっけ? カチュアに寄生している霊?」
「言い方!」

 反乱軍の戦いの後、、カチュアさんとナギさんの事情を、メリアさん達に話したんだよ。

「カチュアさんの口が動いていないんだよ!」
「何とか、カチュアを通さなくっても、喋れるようになったんだ」

 今までのナギさんは、カチュアさんの口を使って喋るんだよ。だけど、此間、ミラさんが作った髪飾りを髪に付けたら、髪飾りが喋ったんだよ。その声は、なんと、ナギさんの声だったんだよ。

「髪飾りが、喋るのは、おかしい気がする」
「仕方がない。予定だと、この髪飾りに、私の意思を移したら、人型になるはずだったんだ。一応、意思を移すことには、成功はした。今までのように、カチュアの口を使わなくっても、喋れるようにはなったの、幸いだった」
「あんたは何者なんだ?」
「それはこっちが聞きたいよ」
「あー。やっぱり、ここにいたんだね」

 声の人はギルティさんだったんだよ。ギルティさんが厩舎きゅうしゅに入ろうとしたんだよ。すると、メリアさんが、急に声を上げたんだよ。

「ギルティ! あんたは、ここに、入ってはいけないって!、何度か言っているでしょ」
「え~。いやー、だって、入らないと呼べないしー」

 また、厩舎きゅうしゅ内の動物さん達が声を上げながら、お部屋の端っこまで、逃げるように向かっていったんだよ。気のせいかな? 厩舎《きゅうしゅ》内の動物さん達はギルティさんを見ただけで、怯えていたような、それに怯え方も尋常じゃないんだよ。行き止まりにも、関わらず、部屋の端っこに突進しているんだよ。ここにいる厩舎きゅうしゅ内の動物さん達の習性かな?

「ほらー! 皆んな、怯えているよ! あんたが、厩舎きゅうしゅにいた、狼を食べたから」
「小さな時の話でしょー。あの頃は、ここを養殖所と勘違いしていたからー」
「だからって、勝手に食べるなよ! それに、それだけではなく、あんた! 以前の乗馬しての遠征時で、あんたを乗せてくれた、馬を食べたことあったでしょ!」
「その前日、何も食べていなかったからー」
「だからといって! 自分を乗せてくれた馬を食べることねぇだろ!! それ以降は、あんたに騎馬や騎狼を提供はしなくなったんだけど!」

 言い争いが始まったんだよ。これは仲がいい証なんだよね。村長さんが言っていたんだよ。喧嘩する程、仲がいい証拠だって。……でも、本当に仲がいいのかな?

「あの~。そろそろ、本題に入ってくれないか?」
「あ! そうだった! 何かあった?」
「アニーが戻ってきたよ」
「え! ということは、お兄ちゃんの行方が、分かったの? お兄ちゃんは?」
「アニーからで、皆んなを集めてだって。それから話すって~」
「分かった!」

 メリアさんとギルティさんは、厩舎きゅうしゅから、出て行ったんだよ。

「わたし達もいきましょ~」
「うん。分かったんだよ」

 あたし達も厩舎きゅうしゅから出ようとしたんだよ。

 ツルーーーン!!

「あ!」

 足を滑らして、その拍子で、動物さんがいる柵を、飛び越しちゃったんだよ。

 ドーーーン!!

「エドナちゃん~!!」
「はうう……臭いんだよ!!」

 あたしが、落ちたところは、臭い土の上だったんだよ。
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