【2025年再投稿版】蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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オープニング 世界を知らない女の子の旅立ち

後半

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 そんな、城下街で悲劇が起きている一方。



【イーリス王国内の森林】

「急いで! チーちゃん!」
「お姉ちゃんどーしたの~? わたしを連れて、どこ行くの~?」
「ごめんね、寝ていたところを起こしちゃって! でも、説明する時間がないのよ! 急いで走るわよ!」

 イーリス王国内にある森の中で、金色の髪と瞳を持つ女の子が、彼女よりも背の低い蒼い髪と瞳を持つ女の子を手を掴みながら走っていた。

 金色の髪と瞳を持つ女の子の話すスペースが早いに対し、蒼い色の髪と瞳を持つ女の子はゆったりとした話し方をする。

 二人が森の中を走っている際中、「ぽつん」と空から水滴すいてきが降ってきた。

「雨が降ってきそうだね」

 段々と降ってくる雨粒が強くなってきていった。

(まずいわ。今から向こう場所は、雨が降ったら都合が悪過ぎる。……だけど、あそこしかない)

「チーちゃん! もうすぐで着くから、それまで走ってね!」
「お姉ちゃん、危ないわ~」

 蒼い色の髪と瞳を持つ女の子が、急に飛び蹴りをし始めた。

「グゥガァァァァァァァァァ!!!」

 草むらから突如とつじょ、熊型の危険種きけんしゅが飛び出してきた。

 熊の体格は、女の子達の四倍以上の大きさを誇っていた。

 熊は女の子達に襲いかかった。

「しまった!」

 金色の髪と瞳を持つ女の子が慌てて、腰に掛けていた鞘から剣を抜こうとした。

 しかし。

 グッチャリ!!!

 とても、幼い女の子とは思えない程のパワーだ。

 蒼い髪と瞳を持つ女の子の蹴りが、熊の顔面がんめんに入り、さらに蹴りによって熊の首が粉砕ふんさいしてしまった。

「ありがとう、チーちゃん」

迂闊うかつだったわ。急ぐあまり、危険種の気配を感じ取れなかった)

「お姉ちゃんが無事でよかったわ~。でも、襲って来たとはいえ、熊さん死なせちゃったわ~」

 悲しみの表情で、熊の死骸を見つめる蒼い髪と瞳を持つ女の子。

「仕方がないわ。立ち塞がるものは強引でも通らないとだわ。わたしは、急いで、チーちゃんを連れて行かないと……」
「さっきから、わたしとお姉ちゃんを追いかけるように、足音が聞こえるわ~。もしかして、それと関係しているの~?」

(さすが、チーちゃん。チーちゃんは耳がいいから、遠くの音まで聞こえてしまったのね。できれば、気づかれたくはなかった)

「話している暇はないよ! 急ぐよ!」

 金色の髪と瞳を持つ女の子は、蒼い色の髪と瞳を持つ女の子の手を掴み走り出す。 

「お姉ちゃん~。そんなに強く引っ張らないで~」



 しばらく、森の中を掛け走っていたら、河原かわらが見えて来た。その河原の近くに小屋があり、その隣には小舟が置いてあった。

「着いたよ! ここが目的地よ!」
「どこなのここは~? 来たところがないわ~」
「チーちゃんは初めてだよね。川渡りで、移動するための小船なんだけど、本来はぐ人がいるんだよ。今はいないけど。チーちゃん! あなたは、この小舟に乗って!」
「お姉ちゃん~。話すのが早過ぎて、上手く聞き取れないわ~。もうちょっとゆっくり話して~」

(あ。……わたしの悪い癖ね。わたしはいつだって、喋るペースが早過ぎる。わたしは、人見知りが激しくって、早く会話を終わらせるため、早く喋る癖がついてしまった。チーちゃん相手には、ゆっくりと話さないといけないのに)

「ごめん。説明は抜きよ! 早く、小舟に乗って!」
「どーして~?」

(それはそうだよね。いきなり、チーちゃんをここへ連れてきてしまったから。だけど、この子にどう説明していいのか)

「チーちゃんは、今から旅たちよ」

(うん、下手な嘘の付け方ね。この子を逃す理由をどう説明をしたら、いいか、わからない。わたしは不器用ぶきよう過ぎる)

「何で、そんなに悲しいそうにしているの~?」

(そうだった。この子には、嘘は通じない。というか、チーちゃんには、もうすでに、わたし達が隠し事をしていることは、もうわかっているはず。どうしたら)

「もしかして、わたし、お姉ちゃんを困らせているの~」
「え!? い! いいえ! そんなことは……」
「何か、理由があるの~? わたしに言えない何かを~」
「それは……」
「……わかったわ~。お姉ちゃんの言う通りにするね~」

 そういうと、蒼い髪と瞳の女の子は何かを悟ったようで小舟に乗った。

(正直、雨の日の川は危険なのよ。まさか、雨が降るとは思っていなかったから、ここまで、チーちゃんを連れてきてしまった。だけど、チーちゃんの存在を奴らに知られるわけにはいかない。チーちゃんは、生まれつき命を狙われているから)

「……ごめんね」
「ううん、いいのよ~。お姉ちゃんは、わたしが心配なんだよね?」
「そうよ。……そうだ、これを持っていって。チーちゃんは、すぐに壊しちゃうけど、ないよりかはマシだよ」

 金色の髪と瞳を持つ女の子は剣が収めている鞘を、蒼い髪と瞳を持つ女の子に渡した。

「え? でも、それじゃあ、お姉ちゃんの武器がないわよ~」
「わたしなら、大丈夫だよ。いざとなれば、その辺の木を倒して、それを武器にするから。だから、心配しないで、行ってらっしゃい!」

 金色の髪と瞳を持つ女の子は、蒼い髪と瞳を持った女の子を乗せた小舟を蹴り飛ばした。
   
 ドーーーーーーン!!! ドボーーーーーン!!!

 蹴り飛ばした小舟は、川まで飛んでいった。小舟は、転覆てんぷくすることなく川の流れに乗れた。

「じゃあ、行ってくるね~」

 そう言って、蒼い髪と瞳を持った女の子は微笑ほほえましい姿で手を振った。

 蒼い髪と瞳を持った女の子を小船は、川に流れに乗っていき、金色の髪と瞳を持つ女の子の視界から消えて行った。

「無事でいてね。……さてと、そろそろかな? 熊型の危険種の時は油断したけど……」

 少女が後ろを振り向くと、十人以上はいるであろう、コルネリア兵の姿があった。

「いたか!」
「こいつだな? 例の?」
「ああ、間違えない。後一人が見当たらないが、取り敢えず、こいつを捕らえよう!」
「お嬢ちゃん。痛いのが嫌なら、大人しく……」

 コルネリア兵の一人が、金色の髪と瞳を持つ女の子の元へ近づいていく。武器を所持しているはずなのに、武器を構えずに。

 グサッリ!!!

「ぐっへぇぇぇ!!!?」
「大人しくの後に続くのは、何?」

 少女は人差しと中指の二本でコルネリア兵の喉元を突き刺して穴を開けた。

「子供だからといって、あなどらないで」

 指を引っこ抜くと、コルネリア兵は倒れて行った。

「何だ! こいつは!? 化け物か!?」
「ひ、怯むな! 所詮しょせんは、子供一人。数で掛かれば!」

 金色の髪と瞳を持つ女の子が見せた異様な光景で震えてはいるもの、コルネリア兵一斉に武器を構えた。

「子供でも容赦はしないようね。なら、もう手加減はできない」

 金色の髪と瞳を持つ女の子は、先程、仕留しとめたコルネリア兵の腰に掛かっていた鞘から剣を抜き取った。

「わたしに襲い掛かって来るってことは死ぬ覚悟があるってことでしょ? チーちゃんとの再会のために、わたしは、死ねないのよ!!!」




 数分の時が流れ。

 フードを被った男性が森の中をかけ走っていた。地面に付いた足跡あしあと辿たどりながら。

(結局、城下街には生き残りはいなかった。雨が降ってくれたお陰で、城下街に広がった火の海は鎮火ちんかはできそうだ。それに、雨で地面が濡れて人の足跡が付くようになった。これを辿るれば、その先に誰かしらいるはずだ。帝国兵か市民かは不明だが、行くしかない)

「ぎゃぁぁあああ!!!」
「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!」
「お、お、俺は、上の命令で! ……バカめ! 油断した……ぐぅわわぁぁぁぁ!!!」
「こんな小娘相手に……ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「こ、こ、この!! ぐぅぉぉぉぉぉ!!!」
「よりによって、何で勇能力を持った者がいないんだ……いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ば、ば、化け物……がはぁ!」

 複数の男性の悲鳴が、森中に響き渡った。

「この方角から聞こえてきたな」

 フードを被った男性は、悲鳴が聞こえた方向へ走っていった。

「はあ、はあ、はあ……片付いたわね」

 フードを被った男性が、辿たどり着いた先には、全身血塗れの金色の髪と瞳を持つ女の子が立っていた。そして、その周りには数人のコルネリア兵の死体があった。

(まさか、この子がやったのか? 子供一人で? いや、それよりも、この子、よく見たら……)

 金色の髪と瞳を持つ女の子が体がふらつき出した。今にでも倒れそうだ。

「大丈夫か!」

 金色の髪と瞳を持つ女の子は、フードを被った男性のふところへ倒れて行った。

「あなたは? ……敵ではないようね……」
「分かるのか?」
「あなたからは……敵意を感じられない……」
「それなら、話が早い。そうだ。私は彼らの仲間ではない」
「そうですか……それなら、早く……わたしには、まだやることがある。だから、行かないと」
「無理はするな」
「無理でもしないと……あの子が危ない……」
「そっか。おじさんも手伝う。だから、無理はするな」
「ありがとう……ございます……」

 少女は、フードを被った男性の懐で眠ってしまった。

「寝たか。疲れているようだな……それにしても」

 フードを被った男性は、周りを見渡す。表情は段々と険しくなっていった。

「くっそ! こんな子供に、人を殺さないといけない選択を取らせるなんて……ふざけいやがって! これが帝国、いや、人のやることなのか!?」

 フードを被った男性は、大きく深呼吸をし、そして。

「……チ、チクショぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 フードを被った男性の苦痛の叫びが、森中に響き渡った。



 それから、七年の時が立った。
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