【2025年再投稿版】蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

文字の大きさ
22 / 60
第一章 蒼髪の少女

1-18 別れ。そして、旅立ち

しおりを挟む
 戦いから数時間後。

 戦いで疲れたカチュアは、一休みをしたことによって動けるようになった。

 そして、彼女達はというと。



【ライム村】

「あの……ありがとう、ございます。村の皆の、埋葬まいそうを手伝ってくれて。疲れているのに、申し訳ないです」

 カチュア達の、目の前には無数のお墓が立っていた。

 これは、ヴァルダンの襲撃でなくなった村人とヴァルダンの兵達のお墓だ。

 あれから、カチュアとエドナは協力して、亡くなった者全員の埋葬をしていた。

 お墓一つ一つに名前は書かれておらず、一つの墓石に亡くなった村人全員の名前が刻まれていた。

(本来なら一人、一人のお墓に名前を刻んで置きたいところだったけど、そのためには、エドナに遺体を見せて身元を確認させなければならない。ヴァルダンの連中の行為は、あまりにも非道だ。遺体の中には、原型を留めていないものもあった。遺体とはいえ、そんな無惨むざんな姿を彼女には見せられなかった)

「いいのよ~。それよりも、エドナちゃんこそ、だいじょぶ? 辛くないかしら~?」

 エドナの目には涙を流ながれてはいたものの、笑顔で。

「今でも、大泣きしたいんだよ。でも、あたしは、元気が取り柄なんだよ。皆のためにも、元気でいないと、いけないんだよ」

 元気よく、ガッツポーズを取る。それを見たカチュアは笑顔を見せた。

「でも、無理はしないでね~。……!」

 笑顔だったカチュアの顔が再びに笑顔が崩れたんだよ。

「どうしたんですか?」
「……何かこっちに向かってくるわ~」
「え!? もしかして、まだヴァルダンの方々ですか?」
「わからないわ~。この足音の大きさだと、大軍だと思うわ~。そうなると、村に長くいるのは危険ね~。早くここから離れないとだわ~」
「あの~。カチュアさんと、一緒にいて、いいですか? あたし帰るところがなくなっちゃったから……」
「それは、もちろんよ~。七年間、今まで一人旅だったから、旅の友達が増えて嬉しいわよ~」
「ありがとうなんだよ。取り敢えず、近くの街まで行きませんか? あ! 街までの道が分からないんだよ」
「それなんだけど……」

 カチュアは一枚の紙きれを出した。

「さっき、村の皆さんの遺体を運ぶ途中で、地図を見つけたわ~。ナギちゃんに言われて拾ったのよ~」
『いや、村から出るなら、必要だろ?』
「この近くにあるのは……」

 エドナは地図を眺めた。

「地図読めるの?」
「村長さんに教えてもらったんだよ」
「凄いわ~。わたし、地図は読めないのよ~」

(だろうね。地図を見つけた時、「何かしら~これ?」って言ったぐらいだからね)

「あたしに任せて! 時々、地図見ても迷子になることもあるんだよ。」

(大丈夫なのか、それ?)

 エドナは、ガン見しながら地図を読む。

「ん~。このアウルというところが一番近い街見たいなんだよ」
「よーし~。そうと決まれば出発よ~」
『「出発よ~」じゃねえよ! その前に、旅の準備だろ?』
「あ! いけないわ~。旅に準備は必須だったわ~。街まで行く準備しないとだわ~」
「分かったんだよ。あたし、自分の家に必要な物を取りに行きます」
「なるべく急いでね~。出入口で待っているから~」
「うん」

 エドナは、すぐに自分の家まで走っていった。



 しばらくして。

「お待たせなんだよ!」

 旅の準備を終え、バックを背負ったエドナは、村の出入り口まで走って向かって行った。出入り口前にはカチュアが待っていた。

「もう、いいのかしら~?」
「はいなんだよ」
「それじゃあ~、行きましょーか~」
「あの~、大丈夫ですか?」
「何が?」
「カチュアさん、あまり休んでいないから」
「今は、ここから離れましょう~。後のことは、それからだわ~」
「あ! はい、なんだよ! あ! カチュアさん、これから、よろしくお願いします」

 エドナはお辞儀をした。

「あ! ナギさんもいたんですね! ナギさんもよろしくなんだよ!」
『あ! ええとぉ……よろしくお願いします』
「こちらこそ。あ、ナギちゃんも、よろしくっだって」
「はい! よろしくなんだよ!」

 エドナは、この場にいないナギに対してお辞儀をした。

 二人は村から出て行った。

 村が見えなくなるまで、エドナは村を見ながら歩いていった。

「村の皆さん、行ってきます!」



第一章  蒼髪の少女 完
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...