きみの一番星になりたい~男娼オメガと人気野球選手が結ばれるまで~

東雲ゆめ

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第二章:たとえるなら 夜空の一番星

4:大好きと大好きがかさなって

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「た……達さま……い――いつまで、こうしてますか……?」

 次に会ったとき、達は部屋のなかで三つ指をついて座っていた結愛を力いっぱい抱きしめた。
 裾に丸いボンボンのついた白いベビードール姿の結愛。
 もこもこしたファー素材のTバック。
 そのファーとお揃いの白いカチューシャ。
 首には、蝶々の飾りのついた白いチョーカーが巻かれている。

 結愛を抱きしめたまま、あまりにも動かない達に、結愛はそんな言葉を口にした。

「……ずっと――」
 達は、結愛の背中に回した手に力を込め、
「ずっと――こうしてたい――」
 結愛の左耳に口を近づけ、言った。

「……達さま……」
 腕のなかで身じろぐ結愛に、
「あっ、もっ、もしかして痛い? ちょっと強すぎたかな? ごめん……」
 達は慌てて腕の力をゆるめる。

「いえ……大丈夫です」

 結愛は、おずおずと達の背中に腕を回す。

「結愛も達さまとお会いできて――とても嬉しいです……」

 結愛の平らな胸が、達の逞しい胸筋と触れあい、その大きなからだにすっぽりと包みこまれる。

「おれも――会いたかった。すごく――すごく――会いたかった……」

 泉のようにあふれ出す愛おしさ。
 結愛の髪から、甘いベビーパウダーのような香りが漂う。

「……野球のシーズンが終わったら考えようと思ってたけど――」
 結愛の顔を正面から見つめ、
「やっぱりもう待てない。一日でも早く、きみをこんな日常から連れ出したい」
 達は言った。
「――お店を辞めて、おれと結婚してくれないか?」

「えっ……!?」
 突然のプロポーズに、結愛は目を丸くする。
「けっ――結婚……?」
「身請け? というのかな。身請け金はこれからお店に聞いてみる。正直、お金はいくらかかってもいいんだ。きみがこんな世界から縁を切れるならそれで――」
「……で、でも、ぼくはまだ――」
 達の胸にそっと手を添えた結愛は、
「達さまに何も――お伝えできていません……自分の――気持ち……」
 ためらいながら達を見る。

「だったらいま……おしえてくれる?」
 結愛の髪を撫でた達は、ふっと微笑む。
「結愛ちゃんの気持ち――聞かせてくれたらうれしい」

「……た――達さま……」
 ぼっと耳たぶまで真っ赤になった結愛は、「あ――あの……」と達の胸の厚みをさすりながら、
「す……す……す――好き――です……」
 と打ち明ける。

「達さまのことが――――大好きです……」

「――おれも」
 これ以上ないくらい明るい笑顔を結愛に向けた達は、
「おれも――すげぇ、好き。世界一とか宇宙一とか――そういうのも全部超えて――ただ、もう、大好き」
 結愛をぎゅっと抱きしめる。
「ありがとう……なんかもう気持ちがふわふわして――このまま空も飛べそう――」
「ぼくも――」
 結愛は、達の首にしがみつく。
「うれしい……なんだか夢みたい――」
「夢じゃない。夢じゃないから」
 念を押すように繰り返した達は、
「一緒に幸せになろう。……もうこれ以上、きみにつらい思いはさせたくない。笑顔のきみをずっと見ていたい」
 結愛の頬に親指と人差し指でそっと触れ、その目を覗きこむ。

「……一生幸せにするから――結婚してください」

「……うっ……ううぅっっ……」

「えっ……!? なっ、なんで泣いてっ……!?」

 両手を顔で覆い、泣き出した結愛に、達はオロオロする。

「ごっ、ごめんなさっ……ちがっ――くっ……てっ……うれしいが――とまらなくっ――てっ……」
「ああ――なんだ」

 嬉しくて泣いているのだと理解した達は、結愛の頭を優しく撫でる。

「いいよ……泣きたいなら泣いて。落ち着いたら笑顔を見せてくれたらうれしい」

「……は――は……い……」

 しゃくりあげる結愛の両手をぎゅっと握りしめた達は、
「……キス――してもいい?」
 と聞く。
「……は――い……」
 結愛は、涙で濡れた睫毛を瞬かせ、目を閉じる。
 達は、濡れた頬をそっと親指でぬぐってから、結愛の唇に唇を合わせる。

 ほんの一瞬――ふれるだけの、短いキス。

「えっ……もっ――もうっ……?」
 あまりの短さに目を開けた結愛がびっくりしたように言う。
「あまりしちゃうと止まらなくなりそうだから――今日はこれくらいにしておく」
 達は照れくさそうに微笑む。

「あ……あの――達さま――」
「なに?」
「今日はどうされますか? ぼくの体はもう大丈夫ですので――」

 握り返した達の手を胸の前に運んだ結愛は、

「――よろしければ――達さまのお好きなようになさってください……」
 と言った。

 







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