全寮制男子高校 短編集

天気

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非王道 生徒会長×庶務

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生徒会室の窓から差し込む午後の光は、いつも穏やかだった。
磨かれた床に反射するそれを眺めながら、
小鳥遊 朝陽(たかなし あさひ)は書類の端を揃え、静かに判を押す。

「……次は、文化祭の出店申請ですね」

独り言のように呟き、ファイルを開く。
生徒会室には書類をめくる音や判を押す音、
書類を探しに歩く音、役員それぞれが動く音が静かに響く。

「朝陽、全部1人でやらなくていいって言ってるだろ。
1人で無理するな。」

少し低く、落ち着いた声。
顔を上げると、生徒会会長道明寺 蓮(どうみょうじ れん)が腕を組んでこちらを見ていた。
長身の影が、朝陽の机にかかる。

「いえ、大丈夫です。会長も他の仕事がありますし」

即座に返すと、蓮は小さく苦笑した。

——まただ。
内心でそう思いながらも、責める気持ちは湧かなかった。

朝陽はいつもこうだ。
自分の負担を負担だと思わない。
頼らないわけではないが、「自分でできること」を人に預ける発想が、最初から欠けているようだ。



「……真面目すぎる」

ぽつりと漏らした言葉は、朝陽には届かなかった。

蓮は朝陽が好きだった。
それも、軽い憧れや気まぐれではなく、胸の奥に沈殿するような、どうしようもない感情。

会長として、先輩として、距離を間違えないように。
触れすぎず、離れすぎず。
そうしているうちに、もう何度目かわからない「伝わらなさ」に、蓮は内心で肩をすくめる。

——また、ダメだったか。

それでも、朝陽の前では笑っていられた。
無理に迫ることも、言葉を選びすぎることもなく、穏やかな日常を続ける。それが今の最善だと、蓮は信じていた。


他の生徒会役員たちも、同じだった。

「朝陽くん、これチェックしてくれる?」

副会長の皇 千早(すめらぎ ちはや)はいつもと変わらず丁寧な口調で書類を差し出すし、
会計の京極 湊翔(きょうごく みなと)は椅子にだらしなく座りながらも「あさちゃん~ここどうしたらいい?」と朝陽を頼っている。
書記の一 悠真(にのまえ ゆうま)は無言で朝陽の机に仕分け終わった資料を置き、去り際に一度だけこちらを見る。

それぞれが、朝陽に好意を持っていた。
誰もが「どうせ伝わらない」とどこか諦めつつも滲みでる好意だった。

朝陽は気づかない。
好意を向けられていることも、視線が少しだけ長く留まる理由も。
それを咎める者はいない。
彼が悪いわけではないと、皆が知っているからだ。



——そんな均衡が崩れたのは、
 10月に入ってすぐのことだった。









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