全寮制男子高校 短編集

天気

文字の大きさ
14 / 28

朝陽の過去2 *シリアス





「――あんたなんか、いなければよかったのに!!」

鋭い叫び声。

振り返ると、母・琉璃が立っていた。
目を吊り上げ、今にも手を上げそうな勢い。

世界が、止まったように感じた。

——あ。

その一言で、全てが崩れた。

元が慌てて間に入り、琉璃を別室へ連れていく。
怒鳴り声と、物が倒れる音。

キッチンに、朝陽だけが残された。

しばらく、動けなかった。
足が、床に縫い付けられたようだった。

気づけば、二時間ほど経っていた。
床や壁に、オムライスが飛び散っている。

朝陽は、無心で片付け始めた。

——ぼくが、我儘を言ったから。

——だから、こうなった。

雑巾を絞り、床を拭く。
壁を拭く。

何も考えないように、手だけを動かす。

部屋に戻ると、机に向かい、いつものように勉強を始めた。

夕方、二人がキッチンに戻ると、そこは綺麗になっていた。
元は、胸が締め付けられた。

そっと朝陽の部屋を覗くと、勉強に集中する背中。

「朝陽」

呼ばれて、肩がびくりと跳ねる。

「ごめんなさい。我儘言って、ごめんなさい」

反射的に、そう言っていた。

「違うの」

琉璃は言ったが、朝陽には届かなかった。

その夜は、ファミレスへ行った。
母と同じものを頼み、静かに食べる。


週末は、会話の少ないまま過ぎた。

平日。
朝、弁当を詰めていると、母が静かに言う。

「おはよう」

心臓が、跳ねた。
過剰に、驚いてしまう。

元は異変に気づきながら、一緒に家を出る。

「この間は、ごめんね。また料理しよう」

「違うんです。少しだったけど、楽しかったです」

目を合わせずに言い、朝陽は走り出した。

その日から、距離を取った。
母の声に、過剰に反応する日々。

三ヶ月後、冬休み。

元は考えた。
距離を置くことが、必要だと。

全寮制男子校、御影学園。

その話を聞き、朝陽は少し考えてから、頷いた。

「……行きます」

逃げるように。
でも、それは朝陽なりの、生きる選択だった。

こうして、
言えなかった心の傷を抱えたまま、
朝陽は中学2年生の春から御影学園へ入学し
蓮や千早、湊翔、悠真と出会っていく。




感想 0

あなたにおすすめの小説

光と瘴気の境界で

天気
BL
黒髪黒眼の少年・はるは、ある日下校途中にトラックに轢かれると、瘴気に侵された森で倒れていた。 彼を救ったのは、第二騎士団長であるアルバート。 目を覚ましたはるは、魔法や魔物も瘴気も知らず… アルバートの身に危険が迫ったその瞬間、 彼の中で眠っていた“異質な力”が覚醒する。 古来より黒目黒髪は“救世主の色”であり、膨大な力を持っているとされている。 魔物と瘴気で侵されているエクリシア王国の国王ははるの存在を知るとその力を彼の体が壊れようとも思うがままに使おうとする。 ーー動き始めた運命は、やがて大いなる伝承の核心へと迫って行く。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

風に立つライオン

壱(いち)
BL
BL非王道全寮制学園の生徒会役員の主人公。王道転入生によって学校内の秩序や生徒会の役割だとかが崩壊した。金、地位、名誉、名声、権力、全てを手にしている者になったつもりでいたのは誰だったのか。 王道を脇役に主人公は以前出会った生徒会長の父との再会、恋人だった義父の病んでそうなカンジに眩暈がしそうだった。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。