20 / 28
体力測定 湊翔
体育館に入った瞬間から、京極湊翔は露骨にやる気のなさを隠そうともしなかった。
「はぁ……今日これかぁ」
ジャージの袖を引っ張りながら、天井を見上げて大きく息を吐く。
「湊翔、サボるなよ」
誰かの声に、彼は肩をすくめて返す。
「サボらないって。体育もこれだけは出ないといけないからね~」
そんな会話をしながらも、彼の周囲には妙に視線が集まっていた。
金髪、気怠げな立ち姿、軽い笑み。
やる気がないはずなのに、目を引くのが京極湊翔という男だった。
最初は反復横跳び。
「よーい、始め!」
笛が鳴ると、湊翔は一応動く。
一応、だが。
「……あ、普通に速い」
「え、何それ」
「さすが、湊翔様…」
テンポは軽い。
真面目にやっていないようで、足運びは意外と綺麗だった。
終了の合図。
「……まあまあだな」
満点ではないが、高得点。
湊翔は記録を見て満足そうに頷く。
「ほら、これくらいがちょうどいい」
立ち幅跳び。
助走なし、軽く膝を曲げて――
ひょい、と跳ぶ。
「……え」
「今の力でそれ?」
記録はしっかり上位。
「ちゃんとやったらもっと飛べるのでしょうか…!」
「やらないよ? 疲れるし」
握力測定では、片手で機械を持ちながら欠伸混じりに握る。
数値は、やはり高い。
「才能の無駄遣い……」
そんな声があちこちから漏れる。
上体起こしも、途中でペースを落としながら、
「はい、はい、もう十分でしょ」と言わんばかりに終了。
長座体前屈は、体を痛めない程度に前へ。
「柔らかいのも、ほどほどがいいんだって」
そして、問題のシャトルラン。
「……あー、これ嫌い」
ラインに立った瞬間から、やる気が明らかに下がる。
「もう諦めてます?」
「無理しない主義」
電子音が鳴り、走り出す。
最初の数本は、軽快だった。
フォームも安定している。
「いや、、すごいです…」
「……あ、でも」
回数が増えると、湊翔はわざとペースを落とす。
呼吸が乱れる前に、線を踏まずに止まった。
「はい、ここまで!」
教師が片眉を上げながら、
「京極、まだいけるだろ」
「無理すると午後だるくなるんで」
堂々と言い切る姿に、笑いが起きる。
「もったいない……」
「でも、らしいですよね」
結果は、最高ではないが十分に良い点数。
「才能は温存派」
そう言って笑う湊翔に、周囲の視線がまた集まる。
「チャラいのに優秀……」
「ずるい……」
「…そこがいい……!」
湊翔は気にした様子もなく、タオルを肩にかけて体育館を後にした。
(……頑張りすぎないのが、俺の流儀)
そんな京極湊翔の体力測定は、
全力ではないのに印象に残る、彼らしい一日だった。
あなたにおすすめの小説
光と瘴気の境界で
天気
BL
黒髪黒眼の少年・はるは、ある日下校途中にトラックに轢かれると、瘴気に侵された森で倒れていた。
彼を救ったのは、第二騎士団長であるアルバート。
目を覚ましたはるは、魔法や魔物も瘴気も知らず…
アルバートの身に危険が迫ったその瞬間、
彼の中で眠っていた“異質な力”が覚醒する。
古来より黒目黒髪は“救世主の色”であり、膨大な力を持っているとされている。
魔物と瘴気で侵されているエクリシア王国の国王ははるの存在を知るとその力を彼の体が壊れようとも思うがままに使おうとする。
ーー動き始めた運命は、やがて大いなる伝承の核心へと迫って行く。
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
風に立つライオン
壱(いち)
BL
BL非王道全寮制学園の生徒会役員の主人公。王道転入生によって学校内の秩序や生徒会の役割だとかが崩壊した。金、地位、名誉、名声、権力、全てを手にしている者になったつもりでいたのは誰だったのか。
王道を脇役に主人公は以前出会った生徒会長の父との再会、恋人だった義父の病んでそうなカンジに眩暈がしそうだった。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
魔性の男
久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。
最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。
そう、思っていた。