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テスト
朝の寮は、テスト前特有の静けさに包まれていた。
廊下を歩く足音も、普段より控えめで、どこか張りつめている。
朝陽は、いつもより少し早く目を覚ました。
カーテン越しの光は柔らかく、外はまだ肌寒い。
(テスト……)
胸の奥がきゅっと締まる。
嫌いではない。むしろ勉強は得意な方だ。
けれど、「結果を出さなきゃ」という感覚は、どうしても拭えない。
身支度を整え、廊下に出ると、すでに生徒会室の灯りが点いていた。
「……早いですね」
中にいたのは、皇千早だった。
眼鏡をかけたまま、資料に目を落としている。
「おはようございます」
「おはようございます。朝陽、早いですね」
「千早先輩も……」
「私のは習慣ですよ」
それ以上の会話はない。
だが、不思議と落ち着く沈黙だった。
ほどなくして、湊翔が欠伸混じりに入ってくる。
「はよ~やば……今日数学あるんだっけ……」
「おはよう湊翔、あるよ」
「だよね~……」
悠真は窓際の席で、問題集の猫の写真が載ったページを眺めている。
ただ、気分が落ち着くらしい。
そして、最後に蓮が来た。
「おはよう」
低く落ち着いた声。
朝陽は反射的に背筋を伸ばす。
「お、おはようございます」
「緊張してるか?」
見抜かれて、朝陽は小さく頷いた。
「……少し」
「大丈夫だ。朝陽は」
その一言が、思った以上に胸に沁みる。
午前の授業は、どこか現実感が薄かった。
教師の声、チョークの音、紙をめくる音。
「じゃあ、この問題——」
朝陽は、ペンを走らせながらも、頭の片隅で確認する。
(落ち着いて……いつも通り)
昼休み。
生徒会の五人は、食堂ではなく、生徒会室に集まっていた。
静かな方が集中できる、という理由だ。
湊翔は机に突っ伏しながら言う。
「なあ、今日の昼、軽めでよくない?」
「それで夜に詰め込む気ですか」
「バレた?見透かされてる。」
「…それ、よくない……」
そんな会話を聞きながら
朝陽はおにぎりを一つ、ゆっくり食べる。
胃が重い気がして、量は控えめだった。
「無理すんな」
隣から、蓮が小さく言う。
「……はい」
短い返事。
午後は自習時間が多かった。
教室には、紙をめくる音とペンの音だけが響く。
朝陽は問題集を解きながら、ふと手を止める。
(間違えたら……)
頭を振る。
(違う。考えるだけ)
その時、前の席から、紙がそっと差し出された。
湊翔だった。
「この解説、分かりやすくない?」
端っこに戦ってる棒人間の落書きを見つけ、思わず笑いが込み上げる。
「……ふふ、ありがとう」
小さなやり取り。
小さく笑う朝陽に静かな教室が静かに騒めいていたのは当の本人は気づかなかった。
(…朝陽様が笑ってる…!尊い…)
放課後。
生徒会室で、最後の確認をする五人。
千早は要点をまとめ、湊翔は「ここ出る気する」と朝陽に勘を共有する。
「当たったら褒めて」
「…どうせ…外れるから、聞かなくていい…」
夕方、寮に戻る廊下で、蓮が朝陽の歩調に合わせた。
「今日はもう、早めに休め」
「……でも」
「でもじゃない」
強くはないが、拒否もできない声。
「目の下にクマができてる。テストなら大丈夫だから。」
「……はい」
部屋に戻り、机に向かう。
少しだけ復習して、ノートを閉じる。
布団に入る前、朝陽はスマホを見る。
特に連絡はない。
(明日……)
不安はある。
でも、それ以上に——
(大丈夫)
そう思えたのは、
同じ時間を過ごす人たちがいるからだった。
テスト前の一日。
張りつめているのに、どこかあたたかい。
そんな静かな夜が、ゆっくりと更けていった。
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