魔王とは戦わず国王を捕まえる

颯馬

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5話 ブラックスパイダー

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 魔王城、執務室にて。

「魔王様。バルマミオン王国の城内にいる2人からの連絡です。5日前に勇者が召喚されました」
「勇者が召喚されただと!? ついに恐れていた事が起きたか・・・」
「ですが、召喚された勇者は必ずしも敵とは言い切れません」

「なに? 何故なにゆえそう言う?」
「何日か勇者の傍にいた1人が言うには。「魔王を殺せば、元いた世界に帰れない」っと言っていました。それに旅立つときも「魔王を殺すかわ僕が判断させてもらうぞ」っと言っていました」
「変わっている奴だな・・・。少なくてもバルマミオン王国の国王よりかは、話せる人か・・・。その勇者の強さは? あまりに弱いとこっちまで来れないだろ」

「威力で言うのであれば、拳でミスリル製の鎧を少しへこませるぐらいですね」
へこませる? ミスリル製の鎧を?」
「しかもまだ本気ではないとの事です」

「本気ではない!? そいつは本当に人間なのか? 化物の間違えじゃないのか?」
「人間でございます。勇者の顔を撮ってあります。拝見しますか?」
「あぁ見せてくれ」

 メイドのクレールは空間から魔道具を出す。それを我に見せる。

「この方が勇者タクヤです」
「コイツが勇者タクヤか・・・。勇者タクヤの顔を各地にいる、四天王たちに見せて伝えよ。『勇者タクヤとは一度は話をしろ』と」
「かしこまりました」

 クレールは部屋から出る。

 ・・・勇者タクヤが希望になるかもしれんな。その辺でくたばるなよ。

 一方タクヤたちは、最初の村に着く。

「アレは村か? この辺に村があって大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。あの村には引退した騎士団が、自警団として村を護っている。タクヤ。この白の手袋でもしてろ」

 シルビアから白の手袋を貰う。僕は左手にはめる。

「後はベラだが」
「私はこの眼鏡があります。これには魔法がかかっていて、眼鏡かければ他者からは他の人物に見えます。タクヤさんやシルビアさんには、普通の私の姿が見えます。これは私自身が許しているからです」
「それなら安心だな。よし行くぞ」

「待てよ。僕はまだ分かるが、何でベラまで隠すような事をするんだ?」
「ベラは殆どの人に認知されているからな。そのベラが村に来れば騒ぎになる、最悪老若男女問わずぶっ倒れる。それほど綺麗だからな」
「あぁそうだな。で、お前は何もしないのか? 僕から見ればお前も綺麗だが」

「――――――は? 何を戯言を言っている。サッサと村に入るぞ」

 シルビアは先の村に入る。

「動揺してますね。今まで『綺麗』っと言われたことがないので、照れているのでしょう。実際に彼女は綺麗です。周りの騎士からは言われてませんが、きっと騎士たちも綺麗だと思っているでしょう」
「随分と喋るな。あぁ言うのって見た事あるのか?」
「いくらでもあります。特に冒険者や騎士などと言った、女性が進んでやらないような仕事をしている女性が、綺麗と言われると大体あのようになります。見ていると可愛く思えます」

「そうかよ。じゃあ行くか」

 ベラは眼鏡をかけて、僕たちも村に入る。自警団の人に住民票を見せて中に入る。シルビアを探すと、知らない人と話している。

「遅いぞ。何をしていた?」
「いや特に何でもねぇよ。ところでどうした? 何か事件でもあったか?」
「あったぞ。今から話て―――」

「ここからは俺が話します。この村の自警団を務めています、ドミと申します。貴方方3人にお願いがあります。この村の近くにいる『ブラックスパイダー』を討伐してほしいのです」
「何故それを私たちに? そちらの自警団で対処できる魔物ですよね?」
「確かに出来ますが。俺たちは自警団はここを護らないといけないのです。自警団の数も少なくその半分の人が、ブラックスパイダーの討伐に行けば、村の護りが手薄になります」

「なるほど。それで私たちに頼ったと。どうしましょうか、私は助けたいのですが」
「自分も助けたい。困っている人たちがいれば、助けるのが騎士の務めだ」
「言われなくても分かってるよ。やりますよ。そのブラックスパイダーの討伐」

「ありがとうございます!! ブラックスパイダーは、ここから北東にいます。数は1匹です」
「北東ですね。分かりました」
「どうか怪我の無いように」

 僕たちは村から出て、北東に向かう。

「・・・・・・」
「・・・おいシルビア。言いてぇことがあるなら言え。怒ったりはしねぇぞ」
「きさ―――、いやお前が良くても。ベラが・・・」

「あぁそうだな。言いてぇことはさっきの言葉使いだろ。あれはししょーにそうしろって言われてるんだ。「見知らぬ人の場合は基本的に敬語で、相手から敬語は不要って言われるまで、ずっと敬語を使え」ってな。例外はあるがな」
「その師匠は真面目な奴なんだな。何があったらそんな口が悪くなる?」
「うるっせな。ししょーの修行が死ぬほどキツイんだよ・・・。平気で腕や足を斬りやがるし」

「腕と足が斬られる!? じゃあその腕と足は義手か!?」
「んなわけねぇだろ。ちゃんと生身の腕と足だ。腕と足が斬られたときは、いつも治してくれてるんだよ」
「タクヤさんの世界では、そこまで医術が発達しているのですか?」

「ここまで医術が発達はしてねぇよ。こんな傷1つ無く完全に治せるわけがない。ししょーが特別なんだよ。・・・今ならハッキリ分るが、アレは治癒魔法で治されていたんだよ」
「待て。お前の世界では魔法が使えない世界だろ。何でお前の師匠は魔法が使える?」
「さぁな。戻ったらゼッテー聞いてやる」

 僕たちは歩き、ブラックスパイダーを探す。

「あっ、ブラックスパイダーに傷とか聞くの忘れてた」
「自分は聞いたが、特に傷などは無いようだ」
「あぁそれなら。多分奴だな」

 僕はブラックスパイダーがいる方に指を指す。2人はその方向を見る。

「確かにブラックスパイダーですね。私が殺しましょうか?」
「お前は本当に聖女か? いいよ、僕がやる」

 僕は両手にすぐに籠手を装備する。そのままブラックスパイダーの方に行き、頭部まで近づいたら両牙を掴み引っこ抜く。その右足を上にあげて、そのまま頭部に踵落としを食らわせる。ブラックスパイダーの頭部は一部潰れて、そのまま痙攣して動かなくなる。

「っうし。後は解体だな」

 両手に装備している籠手を空間にしまい、アイテムボックスからナイフを取り出して解体をする。

「―――前から思ったが。タクヤは元の世界でも、魔物と戦った事があるのか?」
「あるわけねぇよ。魔物なんていてたまるか。初めて魔物を殺したときに、顔色を悪くしてただろ。ただ前から動物を狩っていたから、慣れているだけだよ」
「動物を狩っていただけで、そんなに慣れるものか・・・」

「タクヤさんは元の世界で。動物を狩っていたのですか?」
「あぁ。・・・聞きてぇのか?」
「はい」

「僕がししょーの所で修行を始めてから2年経って、長期間の休みの日に母の実家に行った時だな。実家は山の方で田舎ってやつだ。そこでじーちゃんに会った時によぉ、動物の狩りに連れられたんだよ」
「確かお前が修行を始めたのは、7歳だったよな。つまり9歳のときから動物を狩っていたのか?」
「そうなるな。最初のころはまぁ怯えたり竦んだりしたな。後は悪夢にうなされていたりな。とにかく色々ヤバかった。今じゃあ普通に狩れるな」

「よく心が壊れませんでしたね」
「僕もそう思うよ。とりあえず、ここまで解体できたから。これを持って報告しに行こうぜ」

 僕は解体してブラックスパイダーを、アイテムボックスに入れる。すぐに村に戻って、お願いしてきた自警団の人に報告をする。自警団の人は喜び、村の人たちに報告をする。
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