魔王とは戦わず国王を捕まえる

颯馬

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11話 護衛

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 次の日。夜寝ないで先に進み、次の街に目指す。僕とシルビアは空中移動に慣れてきた。

「お2人は慣れるのが早いですね」
「あぁ。コツさえ掴めばすぐに慣れるな。これなら早く街に着くどころか、追い越しそうだぜ」
「別に追い越してもいいんじゃないか? その街で何かしなければいけない、って事は無いからな」

「そうですね。ならそのまま追い越して、魔族に占領されている村に行きましょう」
「・・・村の人たちは大丈夫だろうか?」
「さぁな。僕たちが心配したところで、状況が変わるわけねぇだろ。そんなに心配なら、早く行けばいいだろ」

「―――そうだな! 先に進もう!」

 シルビアは先に進む。

「はぇ・・・。アイツ自分が宙に浮いてる事を、忘れてねぇか?」
「忘れていると思います。あのまま行くと、またどこかでぶつかる気がします」
「こっちも早く行かねぇとな」

 僕とベラはシルビアに追いつくために、加速する。加速して、シルビアの所まで行くと。シルビアは知らない人と話していた。僕とベラは地面に着地する。

「どうしたシルビア?」
「来たか2人とも。実はこの商人の馬車が、壊れてしまってな。荷物が運べなくて困っているそうだ」
「そうなのですか」

 ベラは商人の方に顔を向ける。

「失礼ですが、空間収納魔法かアイテムボックスはお持ちで?」
「どちらも持っていません。わたしは商人になってから日が浅く、アイテムボックスはまだ貰えてません。空間収納魔法に関しては、努力をしても中々使えなくて・・・。その・・・、勝手なお願いですが。わたしが運ぶ荷物を持って、次の街まで護衛をしてくれませんか?」
「っと、言われてますが。どうしましょうか?」

「別にいいじゃねぇか? その人は困ってるんだろ。なら助けるぜ」
「あ、ありがとうございます! 早速荷物をお願いします!」

 僕はベルトに付いている、アイテムボックスを外して地面に置く。商人の人は荷物を持ってくる。僕はアイテムボックスを開けて、商人の人から荷物を受け取って、アイテムボックスの中に入れる。それを繰り返してると、荷物は全部アイテムボックスの中にしまい終わる。

「後はこの壊れた馬車ですが。この辺に捨てておきましょう」
「あぁ捨てなくていいですよ。これもアイテムボックスの中にいれます」
「えっ、馬車をアイテムボックスの中に入れる? 無理ですよ」

「何とかなるので、馬を自由にしてください」
「は、はい」

 商人の人は馬を自由にさせる。僕は力を入れて、壊れた馬車を持ち上げる。

「なっ!? 壊れた馬車を持ち上げだと!?」
「まぁ」
「す、凄い!」

 僕は壊れた馬車を、すぐにアイテムボックスの中に入れる。

「ふぅー。流石にこれは重いぜ・・・」
「お前、なに普通に馬車を持ち上げているんだ!?」
「あぁ? こうでもしねぇと、アイテムボックスに入らねぇだろ」

「自分かベラの空間の中に入れればいいだろ!」
「それだと駄目なんだよ」

 僕はアイテムボックスを閉めて持ち上げる。

「えっと・・・。貴方のお名前は?」
「あ、言うのが遅れました。わたしはデュと言います」
「僕はタクヤ。眼鏡をかけてない人がシルビアで、眼鏡をかけてる人が・・・」

「アディシアです」
「よろしくお願いします」

 自己紹介が終わったら、僕はアイテムボックスをデュに渡そうとする。

「これを次の街まで預けますよ」
「え、そんな事をしたら。わたしがこれを盗む可能性がありますよ」
「分かってますよ。ただ僕が持っていても、そのまま盗む可能性がありますよ。だったら貴方に預けて方がいいですよ。商人は『信用』が最も大事なものですよね」

「・・・分かりました。次の街まで、このアイテムボックスは持っておきます」

 デュさんはアイテムボックスを受け取って、ベルトにアイテムボックスを通す。デュは馬に乗る。僕とシルビアは前で、ベラはデュさんの後ろで護衛をしながら街を目指す。

「なるほど。だから自分やベラには、空間の中に入れさせようとしなかったのか」
「あぁそうだよ。こうしておけば、両方とも損するだろ。こっちはアイテムボックスの中身が、全部盗まれる。向こうは商人にとって大事な『信用』が無くなる。こうしておけば、お互いに盗むようなことはしないだろ」
「タクヤにしては考えてるな」

「いや、これはししょーの教えだが」
「お前の考えじゃないのか」
「僕がここまで考えられると思ってるのか?」

「全く思ってないが」
「だろ」
「・・・お2人は仲がいいですね。幼馴染ってやつですか?」

「「全く違う」」
「いやハモッてますよ。やっぱり仲がいいじゃ無いですか」
「たったこれだけで、仲がいいと判断するな!」

「そうです。こんな奴と仲がいいなんて、死んだほうがマシですよ」
「その通りだ。こんな化物と仲がいいなどあり得るか!」
「テメェ! 誰が化物だって!?」

「お前だタクヤ! お前以外に誰がいる!?」
「・・・オーケー。テメェは一度ボコさねぇといけねぇようだな」
「良いだろ。かかってこい。返り討ちにしてやる」

 僕は両手にすぐに籠手を装備する。シルビアは鞘から剣を抜く。

「まままま待ってください! ここで喧嘩しないでください! わたしが悪かったです。すみませんでした!」
「「もう遅い!!」」

 僕とシルビアはお互いに近づき、僕は拳でシルビアに殴りかかる。同時にシルビアは剣で僕を刺そうとする。だが、僕とシルビアの目的は違う。お互いの後ろから飛び掛かってくる、魔物を攻撃をする。僕の拳では届かないが、風魔法で魔物を殺す。

「よし」
「こっちも始末したぞ」
「え? え?」

「そう言う事です。魔物が襲ってくるので、そこから動かないでください」
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