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29話 成り行き

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 地下水路に入ってから何時間か経つ。魔物が現れたら殺して、現れたら殺してを続けてきた。それを繰り返しても、呪われた魔石を見つけることが出来ない。

「なぁ思ったんだがよぉ。さっきから同じ所に来てねぇか? 僕の気のせいか?」
「気のせいじゃ無いぞ。自分も同じ事を思っていた」
「やっぱり同じ所来てたんだ。てっきりボクの方向感覚が、可笑しくなったかと思ったよ」

「どうやって出る? 同じ所を行ったり来たりしてたら、野垂れ死にするな」
「魔法でここから脱出したいのですが。流石に転移魔法は使えません」
「使えたらちょっと驚くぞ。ならどうする? アルセルも言ったが、このままだと野垂れ死にするぞ」

「何処か攻撃してみる? 地下水路が壊れるかもしれないけど」
「それは最終手段だろ。壁とかに何か押したり出来る所があるんじゃないか?」
「壁に押したり出来るものか・・・。探しみるか」

 僕たちは壁を触りながら、先に進んでみる。

「無いな。それらしい物は無かったな」
「隠し部屋も無かったね」
「・・・一度戻ってみるのはどうでしょうか? ずっと進んでも変わらないのであれば、一度戻って確かめるのもアリかと」

「なるほど。やってみる価値はあるな」
「なら戻ってみるか。駄目だったら、一度休憩だな」

 僕たちは来た道を戻ってみる。すると。今まで道は1つだったのに、道が2つになっている。

「道が変わってるな。どうする? 一旦休憩するか?」
「サンセ~。そろそろ休憩しないと、ぶっ倒れるよ」
「俺も休憩したいな。連戦してたのと歩きっぱなしで、身体がクタクタだよ」

「自分たちも休憩したいな」
「なら休憩するか」

 少し歩いて休憩をする。僕はアイテムボックスから、食べ物を取り出す。

「うぇぇぇ。タクヤはよく食欲が出るね」
「少しでも食べねぇとやる気とかでねぇだろ」
「同感だな。食べられる時に食べないと、士気上がらないだろ」

「流石騎士だな。俺達にはちょっと無理だぜ」
「はい? 私も食べますが」
「アディシアも食べるんだ・・・。何か人間って可笑しいと言うか、怖いと言うか。エルフとかなり違うね」

「いやアルセルたちの方が普通じゃねぇか? 僕たちはまぁ色々鍛えてるからな。周りが死体だらけでご飯を食うより、マシだと思ってるぜ」
「そんな所で先ずご飯何て食わないだろ!? タクヤは一体どんなところで育ったんだ!?」
「至って普通の環境だぜ。ただちょっと運が無く、色んな物を仕込まれたってやつだぜ」

「タクヤが言う普通は、ボクたちにとっては普通じゃ無いんだよね」
「そうだな。自分もそんな環境にいたら、絶対に狂うと思う」
「私ならまだ平気だと思いますね。もしかしたら・・・」

「何でこの2人はとんでもない道に行ってるんだ? 人生何があったらそうなるんだ?」
「「成り行き」」
「少しはあらがえよ・・・」

「自分は至って普通の道を選べて、良かったと思う」
「ボクもそう思うよ。所で呪われた魔石って、何処にあるんだろうね」
「地下水路の奥にあるんじゃねぇのか?」

「奥と言うより、中央にあるかもな。奥に置くと全体的に汚染出来ないから」
「中央か・・・。ただ中央の場所が判らないな。地図を借りればよかったな」
「あぁ地図ね。ここの地図を持ってるのって、ここを造った人じゃないと持ってないんじゃない?」

「その人はもう亡くなっているかと。ただその地図が残っていれば話は別ですが。今更戻っても遅いのでは?」
「そうだよな。あの案内人に聞くべきだったな」
「もう仕方がねぇだろ。それよりお前たちは食わなくていいのか?」

「俺達がここで昼ご飯が食えると思うか?」
「・・・思わねぇわ。でも大丈夫何か? 腹が減って動けねぇ何て言っても。こっちは困るぜ」
「大丈夫だよ。エルフは1週間くらいは、飲まず食わず寝ずに動けるからね。休憩は勿論必要だけど」

「意外とタフだな。何かこき使われねぇか?」
「使われるときは使われるな。まぁそれは奴隷にならなければ、いい話だしな」
「奴隷か・・・。ここではそれが普通なのか」

「タクヤの方はどうなの? 奴隷ってあったの?」
「昔なら普通だったが・・・。あぁ今でもかもな。条約では禁止されているがよぉ。非合法な奴隷ならまだいるかもな。少なくても僕がいた国では、多分奴隷はいねぇな」
「へぇ~。そっちではほぼ奴隷っていないんだ」

「文化がかなり進んでいるんだな。こっちとは大違いだな」
「文化は進んでいるが、他の国はまだまだって所もあるな」
「そこは一緒なんだ」

「色々国の事情って言うのがあるからな。そろそろ行こうぜ。ずっとここにいたら、いつまで経っても終わる気がしねぇ」

 僕たちは立ち上がって。自分たちで出してゴミを回収をして、地下水路にある呪われた魔石を探す。

「違う道にはなっていますが。中々見つからないですね」
「何か魔石を見つけられる、魔法ってないの?」
「無いですね。アレアさんは無いのですか?」

「無いね。あまりにも時間がかかるなら、一旦戻らない?」
「そうだな。それも考えねぇとな。思ったんだがよぉ。地下水路と井戸の水とかって繋がってるのか?」
「全部の場所がそうじゃないらしいが。一部は繋がっている。その場所はちゃんと区別されているが。汚染が酷いからそっちの方まで、汚染されているのだろう」

「呪われた魔石はそこまで強力なのかよ・・・」
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