魔王とは戦わず国王を捕まえる

颯馬

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61話 酷い事を言うのは

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「・・・確かアディシアさん。でしたよね?」
「そうですか。何か私に用でも?」
「何度も思い返しても。貴女がいた気がしないのですが」

「それはきっと私が教会にいた時期が短かったか、貴女の残念な頭をしているか。ですね」
「残念な頭はしてませんよ! ちゃんと人並みにありますよ」
「人並み? 人並みと言うのは多くの人と同じ程度ですよ。貴女の行動が人並みでしたでしょうか?」

「人並みでしたよ! 皆さんもそうですよね?」
「「「「・・・・・・」」」」
「何か言ってください!」

「人から外れた行動もしていたのかよ。んで。お前は聖女なんだよな?」
「はい。私は功績を認められ、神様にも認められて聖女になりました!」
「じゃあその聖女に聞きてぇが。何で聖女まで魔王討伐に来てるんだ? 普通なら王都にいるべきじゃねぇの? 旅の途中で聖女が死んだってなったら、教会の威厳が損なうじゃないか?」

「ごもっともな事を言いますね・・・。確かに聖女が旅の途中で死んでしまったら、教会の威厳は損なうでしょう。ですが大丈夫です。そんな事が起きても、きっと乗り越える事が出来ます!」

 あ、何で同行してるか聞けなかったなぁ。聞き方が悪かったな・・・。もう一度何処かで聞けるか?

「その乗り越えられると言う、根拠を是非教えてほしいものですね。それに分かってますか? そんな事が起きたら、貴女は死ぬのですよ」
「わ、分かってますよ! そんな事よりアディシアさん。貴女は本当は聖女ベラじゃないんですか?」
「ですから人違いと言いましたよね? 頭だけではなく耳までも駄目になりましたか。早急に病院に行った方が良いですよ。まぁ治せるかは分かりませんが」

「そうやって酷い事を言うのは、紛れもなくベラですよね!?」
「違いますよ。私は聖女ベラに憧れた、ただの追放された憐れなシスターですよ」
「ならその憐れなシスターが何故魔王の所に行くんですか? 行く必要は無いですよね?」

「これはただの試練ですよ。追放された憐れなシスターから、普通のシスターになる試練ですよ」
「普通のシスターになるのに魔王の所まで行くんですか!? 一体誰ですかそんな恐ろしい事を言ったのは!?」
「さぁ? 何せ顔をフードで隠していたので、よく分かりませんでした」

「・・・なぁシルビア。アイツよくあんな事をスラスラ言えるよな」
「練習でもしてたんだろ。自分はあんな風に喋れる気はしないぞ」
「僕もだ」

「―――ところでお2人さん」
「僕とシルビアの事か?」
「そうです。そのシルビアさんは何で一緒にいるんですか? 確か姫様の護衛の人でしたよね?」

「そう言えばお前は姫サマの護衛だったな。すっかり忘れていたぞ」
「忘れるな。自分は姫様に命令をされて、一緒にいるだけだが」
「命令されて一緒にいるんですね。ではそこの貴方。貴方は一体何者ですか? 少なくても王都出身じゃ無いですよね?」

「確かに王都出身じゃねぇな。だが教える義務はねぇだろ。知ったところで、お前に何か関係あるのか?」
「全く無いです」
「じゃあ聞くんじゃねぇよ」

「すみません。この人は無駄な事をよく聞く人なので。何かとイラつくと思いますが、そこはグッと我慢してください」
「やっぱりベラですよね!?」
「何度言ったら分かるのですか。貴女の頭の中には石かスライムが入っているのですか? そろそろ別人と思ってください」

「石もスライムも入ってませよ」
「残念です。・・・仮に私がベラだったらどうするんですか?」
「今すぐにワタシにした事に対して謝罪をしてもらいます!」

「そのベラ様は貴女に対して何をしたんですか?」
「ワタシが寝てる時に無理やり起こすわ、出来ない料理を押し付けられるわ、仕事を過剰に押し付けるわ、ワタシだけ物が無くなるわ。色々ベラには謝ってほしい事があるんですよ!」
「・・・・・・それは全部貴女の自業自得では? 私は貴女の行動を見てましたが。寝坊をするわ、全員必須の料理をしないわ、仕事は溜まって放置するわ。物に関しては知りませんよ。全部貴女の自業自得なのでは?」

「・・・あれ? 何か思い当たる節が沢山あるんですが。これは一体・・・」
「自業自得じゃねぇか。何でそのベラって人のせいになるんだよ」
「それはきっと現実逃避をするために、その対象をベラにしていたんです。きっと!」

「コイツ全然悪びれることなく言ったぞ」
「何故このルーリが聖女になったのか、分かりませんね。・・・あぁ厄介払いですか」
「そんな事無いですよ!」

「どうだろうな。変な理由を付けるより、聖女に仕立て上げて何処かに行かせた方が、教会にとって為になるかもな」
「そ、そんな事は・・・」
「話しの最中に悪いが。もう洞窟を抜けるぞ」

 僕たちは洞窟を抜ける。洞窟を抜けると、今まで通っていた道とは少し変わっていた。

「これで少しは近づけたのか?」
「だと思います。これがあと2か所あるので、そこを通れば山頂に着くかと」
「行くしかないよな。お前らも良いよな? それと公式勇者パーティ」

「異論はない」
「こちらもそれでいい」
「なら行くか」

 僕たちは次の洞窟の所に行く。
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