上 下
71 / 71

71話 帰還

しおりを挟む
 国王たちを捕まえて1週間後。

 国王たちが牢屋にいられた事によって、国のトップが失い国内が荒れると思ったが、姫サマがすぐに女王として即位した。その後が面倒だった。姫サマから女王陛下になったのは良いが、人が足りねぇから先ずは人材探しをしたり、汚職や横領や偽装や違法賭博などと言ったものも見つけたから、それを逮捕するために駆り出された。まぁこれは一部の貴族が腐っていたから、すぐに逮捕と粛清をして終わらせた。
 問題は外交だ。前国王があんな事を言うから、他国との仲がワリィ状態になっている。勿論ワリィのは前国王たちであって、女王陛下がワリィ訳じゃねぇ。だが全員が全員そう素直に受けいれらる訳じゃねぇ。これはもう地道な努力で信頼を得るしかねぇよな。勿論魔王サマも協力をしている。因みに公式勇者パーティは解散。魔王サマに剣を振るった男は、今でも牢屋にいる。
 まだまだ課題は山積みだが、良い方向に進んでいるだろう。さて僕たちはと言うと、今魔王城にいる。

「―――僕はそろそろ帰ってもいいか?」
「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」
「えっ? じぇねぇよ。僕はもう用なしだろ。魔王サマと話しをしたし問題も解決をした。これ以上僕がいる必要はねぇだろ」

「そ、そうですけど。今そう言われてもこちらも困りますよ」
「僕は前々から言ってたんだがなぁ・・・。現状僕に何が出来るんだ? 自慢じゃねぇけど、女王陛下たちみたいなことは出来ねぇぞ」
「ボクも全く出来ないよ。いる意味なんて無いよ」

「俺もだぜ」
「いやお前たちは何だかんだで狩りとかしてるだろ。僕なんか逮捕以降特に何もしてないぜ」
「騎士たちの訓練をしたり、盗賊などを捕まえたりしてるだろ。荷物運びもな」

「それは僕じゃなくても良いだろ。これ以上部外者をここに置くわけにいかねぇだろ」
「タクヤ様は部外者ではないで無いですよ! 寧ろこんな事をした張本人の1人ですよ!」
「うぐっ。それ言われるとぐうの音も出ねぇよ・・・。でも僕は元いた場所に帰るために、旅をして来たんだ。その旅が終わり今帰れるんだぞ」

「そうだが。もう少しいたらどうだ? まだいてくれないと、自分たちも困るんだ」
「んな事言ってると、僕はいつまで経っても帰れねぇだろ。僕は何て言われようと帰るぞ」
「タクヤ。そう答えをすぐに出さなくても良いだろ。皆あれこれ理由みたいなことを言っているが、帰ってほしくないんだ。今まで共に旅をして来た仲間と離れたくないんだろ」

「だが別れって言うのは必ずあるだろ。それが早かっただけだろ」
「・・・っ貴様! よくそんな事が言えるな!」
「あぁ言うよ。こうでも言わねぇと僕は一生帰れねぇよ。それにお前たちには家族がいるだろ。僕の家族はここにいねぇよ。いるのは元いた場所だ。今まで言わなかったがよぉ。親やししょーたちは僕の事を心配してるだろ。特に親はぶっ倒れるかもしれねぇだろ」

「そ、それは・・・」
「だから僕は帰らせてもらうよ。ここからはお前たちの仕事だろ」

 皆何も言わずに無言になる。たださっきまでいたベラの姿が見えない。僕はちょっと嫌な予感がした。

「――――――元いた世界に帰そう。タクヤの言っている事は全て間違っているわけじゃない。これ以上こちらの世界に縛りつけ訳にはいかんだろ。タクヤはもう答えを出している。それにタクヤも本心から言ってる訳じゃ無いだろ」
「おいおい何で分かるんだよ?」
「顔を見れば分かる。悲しそうな顔をして言っているのはすぐに分かる」

 聞いたシルビアたちは驚く。メイドたちは特に何も驚かなかった。どうやら気付いていたようだ。

「・・・・・・これでも必死に隠していたんだが、やっぱりバレるか。そりゃそうだろ。僕だって別れたくねぇよ。でも僕は元いた場所には家族がいるし友達もいる。帰る場所がちゃんとあるんだ」
「それは分かるが。何もそんなキツイ言い方をしなくてもいいじゃないか」
「さっきも言っただろ。こう言わねぇと帰れねぇって」

「だとしても。もう少し言い方があるだろ」
「優しい言い方をしていれば、お前たちが必死に引き止めるだろ。そうしねぇように、きつく言ってるんだよ」
「タクヤ・・・」

「湿っぽいのは無しだ。タクヤ。悪いが帰すのは明後日にしてくれ。こちらで色々準備をする」
「分かった」
「再開するぞ。やる事はまだあるんだ」

 僕たちは今やっている仕事を再開する。

 2日後。僕たちは帰還の塔に集まる。

「やはり帰りますか・・・。せめてもう少し延長してくださると嬉しいですか」
「んな事ってると、永遠に帰れねぇよ」
「陛下。彼はもう決めています。ならこちらからは心よく送り返して方が、彼の為になります」

「そうそうシルビアの言う通りだぜ。その方が僕も楽になる」
「そう・・・ですね・・・」
「見送りは良いけど、あんまり人がいないね」

「そりゃまぁ朝早くだからな。それに知り合いなんてほぼいねぇしな」
「四天王の皆さんにも声をかけたのですが、皆さん忙しいので来れませんでした。血涙を流しながら謝罪をしてました」
「血涙を流すほどなのか?」

「流すほどでしたよ。しかしもう帰るんですね。帰る前に色々弄り倒せばよかったですね」
「弄り倒す? は?」
「妹がすみません。それと四天王の皆さんから借りていたものは、全て四天王の皆さんに返却してきました」

「ワリィな。んでベラは何をしてるんだ?」
「記念に何か残しておこうと。この魔道具を持って来たのです」

 ベラが持って来た魔道具を見ると、ただの球体にしか見えない。

「何だこれ?」
「タクヤさんの所で言うと、しゃしんですね」
「マジか! これで撮れるのかよ」

「はい。では皆さん並んでください」

 僕たちは並び出す。ごたごたになったが、僕が指示を出して並ぶ事が出来て、最後にベラが来て写真を撮る。撮り終わったらすぐに写真が出てくる。それを皆渡していく。

「よく撮れてるな」
「そうですかね。私はあまり撮らないので、分かりませんが」
「逆に撮られる側か」

 俺は制服の内ポケットに入れる。僕は魔法陣の所に行ってそこに立つ、

「タクヤ様。この度は最悪の状態を回避していただき、ありがとうございました。タクヤ様が来ていなければ、きっと悲惨な戦争になっていたかもしれません」
「それはどうだろうな。後は頑張ってくれよ。再び僕を呼び出すような事はしねぇでくれよ」
「はい!」

「シルビア。ちゃんと女王陛下を護れよ」
「言われなくても解っている」
「だな。アルセルとアレアはサッサと結婚しろ」

「急にそんな事言うな!」
「そんな事言うなら、ボクたちが結婚するまで残ってよ!」
「無理。魔王サマ。無駄な戦争を起こさねぇでくれよ。またここに来た時、戦う何て事はねぇよにしてくれよ」

「解っている。今後とも友好関係を築いていく」
「メイドの2人は・・・。言う事ねぇわ」
「「でしょうね」」

「んでベラは何処に行った?」
「ありゃ? いつの間にかいなくなっている」
「別れるのが辛くて、もう戻って行ったんじゃないか?」

「あり得る」
「あぁベラは自分が言っておく」
「・・・いいや。本人がいねぇなら仕方ねぇよ」

「それじゃあ起動させるぞ」

 魔王サマは魔法陣を起動をさせる。魔法陣が起動すると、周りは前に魔法陣と現れた時と同じように光出す。皆は笑顔で僕を見送る。僕も笑顔で返して光に包まれる。
 光が無くなると。そこは道場の門前だった。つまりちゃんと戻って来たって事だ。

 戻って来たか。ちゃんと戻って来れたのかぁ?

 僕はスマホを出して電源を入れる。画面が光ってすぐにパスワード入力画面になる。そこに表示されている時間と日にちを見る。

 ・・・あれ? 何か変わってねぇような、変わってるような・・・。

「―――ちょっとタクヤ。中に入らないならどきなさいよ」

 僕は声がした方を見ると、学校から帰って来た由佳がいた。

「由佳! 何か久しぶりだな!」
「はぁ? ちょっとアンタ大丈夫? まだ若いのにもうボケ始めたの?」
「ボケてねぇよ! ただ本当にそう思っただけだ!」

「何かちょっと雰囲気が変わったような気もしなくも無いけど、もうアタシたち高校生なのよ。しっかりしなさいよ」
「解ってるって」

 僕は左にズレると由佳が先に門をくぐる。

「今のはお友達で?」
「道場の仲間だよ。って何でベラがここにいるんだよ!?」
「ついてきました。無事ついて来れて良かったですよ」

「僕はよくねぇ! 嫌な予感はしていたんだ・・・。まさか付いて来るとはなぁ
。どうやって説明すればいいんだよ・・・?」
「ありのまま話せばいいかと」
「話せるか!」

 ほんっとどうすればいいんだよ!?
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...