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第6話 魔神の名を持つ男、さっさと結婚しろと叱られる
しおりを挟む夕暮れ時の、首都ルクセンバルグの【千年樹通り】を白髪の青年ガゼルは、秘書のエリザと歩く。
先程の商談を無事終えて、自身の商館に帰る途中だった。
「エリザ。これから更に忙しくなるぞ」
ガゼルは、秘書のエリザに嬉しそうに言った。
「ガゼル様。それは大変素晴らしいことですけど、それとは別に早くどなたかと結婚して所帯を持ってもらえませんかね」
ガゼルの後ろを歩く秘書のエリザは、少しうんざりしたように言った。
白髪の青年ガゼルは、困った表情を浮かべながら、エリザを見た。
「俺は、仕事があればいい。エリザ。お前が父上や母上から派遣された俺のお目付け役だという立場は分かる。だが、俺には、早く叶えないといけない夢がある」
エリザは、はぁ、とため息を一つつき、ガゼルのこれまでの素行を思い出す。
ガゼル・ロンド。今、飛ぶ鳥を落とす勢いで、成長を続けている新進気鋭のロンド商会を、その若さで、何の後ろ盾も無く、1代で築き上げた商売の天才だ。
社交界でも、今では、ガゼル・ロンドの名を知らない者はおらず、若い貴族の令嬢たちには、すこぶる評判が良いと聴いている。
元々、ガゼル・ロンドは、容姿にも優れ、育ちも良く品もあるのだ。
だが、ガゼル・ロンドは、過去に一度社交界に出たっきり、それ以降、頑なに行きたがらない。
(何か。過去に女性に対してトラウマでもあるのかしら。それともやはり単なる仕事馬鹿なのか)
エリザは、そんなことを思った。
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