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第46話イエーガー侯爵様の誕生日3
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「シャーリー、待たせたな」
私の手に引かれるように、美しい私の片割れ、シャーサーを振り払った右手で、私の手を握った。
「いいえ、カルヴァン様」
「シャーリー!?どういう事よ!!」
さすがにこの場で大声を出すのは阻まれると思ったのだろう。
抑えながらも、歯がゆい顔でシャーサーは睨みつけてきた。
ギラギラと剣呑に光る青い瞳。
初めて見る顔だ。
それも、私に嫉妬している。
「シャーリー、この男は?」
「ヨークシャー伯爵家のご子息です」
「ああ、こいつか。ウインザー様とシャーリーを愚弄したヨークシャー伯爵の子息、ルーンと言う奴は」
低く威嚇の声でルーンを睨んだ。
ルーンは声を発する事も出来ず、離れていてもその威嚇におののいたのか、1歩後ろに下がった。
「シャーリー、ちょっと、いつの間にサーヴァント様とそんなに親密になってるのよ。私にも紹介してくれない?ねえ・・・?」
甘える声が、とても耳障りに聞こえる。
「大丈夫だ」
すっとカルヴァン様が私とシャーサーの間に立った。
「誰に声をかけている。ご当主同士の書面の内容を君も目の当たりにしている。関わり合いを持つことは、許されないはずだ」
シャーサーが息を飲むのが聞こえる。
「・・・何故・・・ご存知・・・なのですか・・・」
「何故?俺達の間柄では全てを共有する。ここにいる誰もが知っている事だ」
「間柄?何を仰ってるのですか?お父様同士が確かに約束はしましたが、私達双子である事には変わりないのです。ねえ、シャーリー、そうでしょう?そんなに冷たい子じゃないわよね」
扇子を持つ手に力が入る。
何処までも自分勝手。
「・・・カルヴァン様・・・参りましょう・・・」
声を聞きたくない。
「そうだな、もうすぐイエーガー様の挨拶が始まる。俺の父と母がシャーリーに会いたがっている」
カルヴァン様は振り向き、優しく微笑んだ。
「待ってよ、ねえ、シャーリー。私も一緒に行くわ、いいでしょう?これからも仲良くしましょうよ。だって、たった2人きりの姉妹よ」
背後から聞こえる、いつもながら自分勝手な言葉。
これからも?
いつからそんな仲だったの?
誰がこの歪な姉妹にしたの?
ざわりと、寒気が走る。
「・・・カルヴァン様・・・参りましょう」
もう無理。
「カルヴァン様、私とシャーリーは似てますわ。私ならカルヴァン様に相応しい振る舞いができますわ」
カルヴァン様の瞳が怒りに煌めき、シャーサーに向いた。
「誰にものを言っている。誰が俺の名を呼ぶ事を許した。お前のような輩が、軽々しく俺達に話しかける事など許されないのだ!」
「な、何をそれほど怒っておられるのですか?名前なら謝りますわ。もう少し、私の事を知って」
「くどい!誰か!こいつを連れて行け!!」
カルヴァン様の一声に、ざわめきが走り警備の者が、集まりだした。
「申し訳ありません!!それ以上は、お許しを!!この様な場に慣れていなくて、立場をわきまえておりませんでした!!シャーサー、謝るんだ!!」
急いでルーンがシャーサーの側に寄ると腕を掴んだ。
「謝る!?なぜ私が謝らなきゃいけないのよ!!ルーン離しなさいよ!!」
「シャーサー・・・。頼むから、静かにするんだ。すみません、すぐに連れていきます」
ルーンの庇う声がし、警備の足が止まった。
「・・・カルヴァン様、もうお止め下さい。・・・関わりたくありません・・・。ルーン連れて行って」
早くこの場を去りたかった。
分かっている、カルヴァン様が自分の為に怒ってくれているのは。
でも、この2人の側にいるというだけで、体が震える。
「・・・わかった。2人をここから離れた場所に連れて行ってくれ」
「嫌よ!離してよルーン!!」
「来るんだ!!」
「嫌よ!!シャーリー何してるのよ、早く私を呼びなさいよ!!」
「シャーサー来るんだ!!」
喚く二人の声が耳障りに聞こえる。
「行こうか、シャーリー」
「はい」
私の手を強く握ってくれるカルヴァン様に、心が落ち着いた。
シャーサーの喚き声が小さくなっていき、曲が、耳に入るようになった。
「最悪の2人だな」
吐き捨てるカルヴァン様に小さく頷いた。
「・・・もう関係のない人達よ・・・行きましょう」
少ししてイエーガー様の挨拶が始まった。
挨拶が終わっても、私達は奥の場所から動かなかった。
いや、カルヴァン様が気を使ってくれたのだ。
終わると曲が流れ出した。
「練習した?」
「一応・・・」
私の知っている曲は同じなのだが、ダンスのテンポが少しゆっくりなのだ。
指導してくれる先生が言うには、上級貴族のダンス、との事。
昨日も少ししたが、「まあまあですかね」と苦笑いされた。
「まあまあらしいな」
「なんで知ってるんですか?」
「なんでって、シャーリーを指導している人は、俺の家からの紹介だからな」
「え!?」
「大丈夫、俺がリードするから」
「・・・お願いします」
とりあえず、1回しか足は踏まなかったので、合格点でしょう。
「まあまあ、だ」
とカルヴァン様に笑われながら言われたが、ほっとした。
この後オーリュゥン様も合流し、こっちは2回踏んでしまったが、
「初めての割には次第点だ。俺の知っている女性は無駄に接触してこようと動いてくるが、シャーリーはまるで人形のように距離を置いてくる。いい感じだ」
とにこやかに言われた。
んん?
これは褒められてる?
貶されてる?
なんとも微妙な言い方に戸惑っていると、ぶはっ、とカルヴァン様が笑い出した。
「悪気はないんですよ。ただ、らしいですね」
「どういう意味だ」
「ほら、わかっていませんよね」
「今の流れでわかるわけないだろうが」
むっと眉を寄せ言うオーリュゥン様に、変わった方だと思った。
「でしょうね。とりあえずシャーリーを褒めたんですよね?」
「当然だろう」
真顔で言ってくれた。
「ありがとうございます」
私の答えに二人は、ふんわりと微笑んでくれた。
この二人も、温かい。
この後、また一曲ずつ踊り、ダンスが終わり、少し休憩していると、ノーセットが駆け寄ってきた。
「姉上!」
「ノーセット、どうしたの?」
「僕・・・僕・・・」
ノーセットの目が、涙で潤んでいる。
「僕、姉上を守れなかった・・・」
「え?」
「だって、ルーンとシャーサーが姉上に近づいた時、僕、気づかなかったんだ・・・。御義父様に言われたのに・・・姉上を守れって言われたのに・・・」
ノーセットの声が、震えている。
「ノーセット・・・」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・僕、ダメだ・・・」
ノーセットが、泣き出した。
小さな体が、震えている。
「ノーセット、大丈夫よ。カルヴァン様がいてくださったから」
「でも・・・でも・・・僕が守らなきゃいけなかったのに・・・」
「ノーセット、あなたはまだ子供よ。大丈夫。これから、少しずつ強くなればいいの」
「本当・・・?本当に、僕、強くなれる・・・?」
「ええ、本当よ」
ノーセットを、優しく抱きしめる。
小さな体が、私にしがみつく。
温かい。
「僕、強くなる・・・姉上を守れるように・・・御義父様みたいに、強くなる・・・」
「ええ、ありがとう、ノーセット」
背中を、優しくさすってあげる。
少しずつ、泣き声が小さくなっていく。
「僕、ハザードにも教えてもらう。御義父様にも教えてもらう。そして、絶対に、姉上を守れるようになる」
「ええ、期待しているわ」
しばらくして、御義父様が戻ってきた。
ノーセットを抱きしめている私を見て、少し驚いた顔をする。
「シャーリー、大丈夫だったか?」
「はい、御義父様。カルヴァン様が助けてくださいました」
「そうか。カルヴァン、ありがとう」
「いえ、当然のことです」
カルヴァン様が、軽く頭を下げる。
「ノーセット、泣いたのか?」
御義父様が、優しく聞く。
「はい・・・僕、姉上を守れなかった・・・」
「そうか。でも、次は守れるようになるさ」
「本当?」
「ああ。お前は、私のの息子であり、ウインザー家の嫡男だ。必ず、強くなれる」
御義父様が、ノーセットの頭を撫でる。
ノーセットの顔が、少し明るくなった。
その後、少し落ち着いたところで、
何気ない会話の中で、ふと話題が御義父様のことに及んだ。
「そういえばシャーリーは、キャウリー様の過去をご存じないのですか?」
オーリュゥン様のその一言に、私は首を傾げた。
「過去……ですか?」
すると、カルヴァン様が少し笑いながら言う。
「40年前の戦争で、前線に立っていた英雄だ。それも、剣一本で名を馳せた人だぞ。その友人達が今ここで、この国を支えているんだ。オーリュゥン様の祖父も俺の祖父もそのひとりだ」
……え?
一瞬、言葉が理解できなかった。
無意識に、周りを見回した。
そうだ。
その通りだ。
この方々の名前、
「……ええええええ!?」
思わず、間の抜けた声が出る。
戦争?
英雄?
剣が、すごい?
頭の中で、御義父様の穏やかな笑顔が浮かび、どうしても、今聞いた言葉と結びつかない。
「ウ、ウインザー家、という名前は、聞いたことはありましたけど、あの人は凄く剣の達人で古い名門……」
その人が、御義父様!?
同一人物!?
そんな"すごい人"だなんて、完全に意識の外だった。
「ご、ごめんなさい!」
慌てて頭を下げてしまう。
「御義父様はやっぱり、すごい人だったんですね!!」
驚きと、尊敬と、
そして素直な喜びが、そのまま言葉になった。
御義父様は、少し困ったように笑い、
「今はただの父親だよ」
そう言って、私の頭を軽く撫でてくれる。
カルヴァン様も、オーリュゥン様も、
どこか微笑ましそうにこちらを見ていて、
「無知の方が良い時があります」
「むしろ、今まで知らずに接していたのが、シャーリーらしい」
そんな風に、優しく受け止めてくれた。
責められることは一つもなく、
むしろ、温かな空気に包まれて。
嬉しい。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
改めて思う。
この方々は、本当に優しい。
私はすごい人の娘になったことを誇りには思わなかった。
この方の娘になれることに、
誇りに思った。
ここに捨てられた事が、
必然だったのだ。
私の手に引かれるように、美しい私の片割れ、シャーサーを振り払った右手で、私の手を握った。
「いいえ、カルヴァン様」
「シャーリー!?どういう事よ!!」
さすがにこの場で大声を出すのは阻まれると思ったのだろう。
抑えながらも、歯がゆい顔でシャーサーは睨みつけてきた。
ギラギラと剣呑に光る青い瞳。
初めて見る顔だ。
それも、私に嫉妬している。
「シャーリー、この男は?」
「ヨークシャー伯爵家のご子息です」
「ああ、こいつか。ウインザー様とシャーリーを愚弄したヨークシャー伯爵の子息、ルーンと言う奴は」
低く威嚇の声でルーンを睨んだ。
ルーンは声を発する事も出来ず、離れていてもその威嚇におののいたのか、1歩後ろに下がった。
「シャーリー、ちょっと、いつの間にサーヴァント様とそんなに親密になってるのよ。私にも紹介してくれない?ねえ・・・?」
甘える声が、とても耳障りに聞こえる。
「大丈夫だ」
すっとカルヴァン様が私とシャーサーの間に立った。
「誰に声をかけている。ご当主同士の書面の内容を君も目の当たりにしている。関わり合いを持つことは、許されないはずだ」
シャーサーが息を飲むのが聞こえる。
「・・・何故・・・ご存知・・・なのですか・・・」
「何故?俺達の間柄では全てを共有する。ここにいる誰もが知っている事だ」
「間柄?何を仰ってるのですか?お父様同士が確かに約束はしましたが、私達双子である事には変わりないのです。ねえ、シャーリー、そうでしょう?そんなに冷たい子じゃないわよね」
扇子を持つ手に力が入る。
何処までも自分勝手。
「・・・カルヴァン様・・・参りましょう・・・」
声を聞きたくない。
「そうだな、もうすぐイエーガー様の挨拶が始まる。俺の父と母がシャーリーに会いたがっている」
カルヴァン様は振り向き、優しく微笑んだ。
「待ってよ、ねえ、シャーリー。私も一緒に行くわ、いいでしょう?これからも仲良くしましょうよ。だって、たった2人きりの姉妹よ」
背後から聞こえる、いつもながら自分勝手な言葉。
これからも?
いつからそんな仲だったの?
誰がこの歪な姉妹にしたの?
ざわりと、寒気が走る。
「・・・カルヴァン様・・・参りましょう」
もう無理。
「カルヴァン様、私とシャーリーは似てますわ。私ならカルヴァン様に相応しい振る舞いができますわ」
カルヴァン様の瞳が怒りに煌めき、シャーサーに向いた。
「誰にものを言っている。誰が俺の名を呼ぶ事を許した。お前のような輩が、軽々しく俺達に話しかける事など許されないのだ!」
「な、何をそれほど怒っておられるのですか?名前なら謝りますわ。もう少し、私の事を知って」
「くどい!誰か!こいつを連れて行け!!」
カルヴァン様の一声に、ざわめきが走り警備の者が、集まりだした。
「申し訳ありません!!それ以上は、お許しを!!この様な場に慣れていなくて、立場をわきまえておりませんでした!!シャーサー、謝るんだ!!」
急いでルーンがシャーサーの側に寄ると腕を掴んだ。
「謝る!?なぜ私が謝らなきゃいけないのよ!!ルーン離しなさいよ!!」
「シャーサー・・・。頼むから、静かにするんだ。すみません、すぐに連れていきます」
ルーンの庇う声がし、警備の足が止まった。
「・・・カルヴァン様、もうお止め下さい。・・・関わりたくありません・・・。ルーン連れて行って」
早くこの場を去りたかった。
分かっている、カルヴァン様が自分の為に怒ってくれているのは。
でも、この2人の側にいるというだけで、体が震える。
「・・・わかった。2人をここから離れた場所に連れて行ってくれ」
「嫌よ!離してよルーン!!」
「来るんだ!!」
「嫌よ!!シャーリー何してるのよ、早く私を呼びなさいよ!!」
「シャーサー来るんだ!!」
喚く二人の声が耳障りに聞こえる。
「行こうか、シャーリー」
「はい」
私の手を強く握ってくれるカルヴァン様に、心が落ち着いた。
シャーサーの喚き声が小さくなっていき、曲が、耳に入るようになった。
「最悪の2人だな」
吐き捨てるカルヴァン様に小さく頷いた。
「・・・もう関係のない人達よ・・・行きましょう」
少ししてイエーガー様の挨拶が始まった。
挨拶が終わっても、私達は奥の場所から動かなかった。
いや、カルヴァン様が気を使ってくれたのだ。
終わると曲が流れ出した。
「練習した?」
「一応・・・」
私の知っている曲は同じなのだが、ダンスのテンポが少しゆっくりなのだ。
指導してくれる先生が言うには、上級貴族のダンス、との事。
昨日も少ししたが、「まあまあですかね」と苦笑いされた。
「まあまあらしいな」
「なんで知ってるんですか?」
「なんでって、シャーリーを指導している人は、俺の家からの紹介だからな」
「え!?」
「大丈夫、俺がリードするから」
「・・・お願いします」
とりあえず、1回しか足は踏まなかったので、合格点でしょう。
「まあまあ、だ」
とカルヴァン様に笑われながら言われたが、ほっとした。
この後オーリュゥン様も合流し、こっちは2回踏んでしまったが、
「初めての割には次第点だ。俺の知っている女性は無駄に接触してこようと動いてくるが、シャーリーはまるで人形のように距離を置いてくる。いい感じだ」
とにこやかに言われた。
んん?
これは褒められてる?
貶されてる?
なんとも微妙な言い方に戸惑っていると、ぶはっ、とカルヴァン様が笑い出した。
「悪気はないんですよ。ただ、らしいですね」
「どういう意味だ」
「ほら、わかっていませんよね」
「今の流れでわかるわけないだろうが」
むっと眉を寄せ言うオーリュゥン様に、変わった方だと思った。
「でしょうね。とりあえずシャーリーを褒めたんですよね?」
「当然だろう」
真顔で言ってくれた。
「ありがとうございます」
私の答えに二人は、ふんわりと微笑んでくれた。
この二人も、温かい。
この後、また一曲ずつ踊り、ダンスが終わり、少し休憩していると、ノーセットが駆け寄ってきた。
「姉上!」
「ノーセット、どうしたの?」
「僕・・・僕・・・」
ノーセットの目が、涙で潤んでいる。
「僕、姉上を守れなかった・・・」
「え?」
「だって、ルーンとシャーサーが姉上に近づいた時、僕、気づかなかったんだ・・・。御義父様に言われたのに・・・姉上を守れって言われたのに・・・」
ノーセットの声が、震えている。
「ノーセット・・・」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・僕、ダメだ・・・」
ノーセットが、泣き出した。
小さな体が、震えている。
「ノーセット、大丈夫よ。カルヴァン様がいてくださったから」
「でも・・・でも・・・僕が守らなきゃいけなかったのに・・・」
「ノーセット、あなたはまだ子供よ。大丈夫。これから、少しずつ強くなればいいの」
「本当・・・?本当に、僕、強くなれる・・・?」
「ええ、本当よ」
ノーセットを、優しく抱きしめる。
小さな体が、私にしがみつく。
温かい。
「僕、強くなる・・・姉上を守れるように・・・御義父様みたいに、強くなる・・・」
「ええ、ありがとう、ノーセット」
背中を、優しくさすってあげる。
少しずつ、泣き声が小さくなっていく。
「僕、ハザードにも教えてもらう。御義父様にも教えてもらう。そして、絶対に、姉上を守れるようになる」
「ええ、期待しているわ」
しばらくして、御義父様が戻ってきた。
ノーセットを抱きしめている私を見て、少し驚いた顔をする。
「シャーリー、大丈夫だったか?」
「はい、御義父様。カルヴァン様が助けてくださいました」
「そうか。カルヴァン、ありがとう」
「いえ、当然のことです」
カルヴァン様が、軽く頭を下げる。
「ノーセット、泣いたのか?」
御義父様が、優しく聞く。
「はい・・・僕、姉上を守れなかった・・・」
「そうか。でも、次は守れるようになるさ」
「本当?」
「ああ。お前は、私のの息子であり、ウインザー家の嫡男だ。必ず、強くなれる」
御義父様が、ノーセットの頭を撫でる。
ノーセットの顔が、少し明るくなった。
その後、少し落ち着いたところで、
何気ない会話の中で、ふと話題が御義父様のことに及んだ。
「そういえばシャーリーは、キャウリー様の過去をご存じないのですか?」
オーリュゥン様のその一言に、私は首を傾げた。
「過去……ですか?」
すると、カルヴァン様が少し笑いながら言う。
「40年前の戦争で、前線に立っていた英雄だ。それも、剣一本で名を馳せた人だぞ。その友人達が今ここで、この国を支えているんだ。オーリュゥン様の祖父も俺の祖父もそのひとりだ」
……え?
一瞬、言葉が理解できなかった。
無意識に、周りを見回した。
そうだ。
その通りだ。
この方々の名前、
「……ええええええ!?」
思わず、間の抜けた声が出る。
戦争?
英雄?
剣が、すごい?
頭の中で、御義父様の穏やかな笑顔が浮かび、どうしても、今聞いた言葉と結びつかない。
「ウ、ウインザー家、という名前は、聞いたことはありましたけど、あの人は凄く剣の達人で古い名門……」
その人が、御義父様!?
同一人物!?
そんな"すごい人"だなんて、完全に意識の外だった。
「ご、ごめんなさい!」
慌てて頭を下げてしまう。
「御義父様はやっぱり、すごい人だったんですね!!」
驚きと、尊敬と、
そして素直な喜びが、そのまま言葉になった。
御義父様は、少し困ったように笑い、
「今はただの父親だよ」
そう言って、私の頭を軽く撫でてくれる。
カルヴァン様も、オーリュゥン様も、
どこか微笑ましそうにこちらを見ていて、
「無知の方が良い時があります」
「むしろ、今まで知らずに接していたのが、シャーリーらしい」
そんな風に、優しく受け止めてくれた。
責められることは一つもなく、
むしろ、温かな空気に包まれて。
嬉しい。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
改めて思う。
この方々は、本当に優しい。
私はすごい人の娘になったことを誇りには思わなかった。
この方の娘になれることに、
誇りに思った。
ここに捨てられた事が、
必然だったのだ。
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