何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫

文字の大きさ
67 / 72

第67話おつまみ8

しおりを挟む
季節は冬です。
やはり白ネギと白菜ですよねぇ。厨房の端にたっぷりおかれている。
 旬の野菜は甘くて美味しいもんね。
あとは、と厨房の中を一通り食材を確認していく。
ふむふむ、脂ののったブリのブロックが氷温で貯蔵されてますね。
ということは、アレですよねぇ。
「帰りが早くないですか?」
料理長が焦った声で何だかウロウロしている。
ああ、鬼の居ぬ間に、というやつですか。
本当なら、まだパーティーに参加している時間だし、ともすれば宿泊していたかもしれない。
「何食べようとしてたんですか?」
何だか色んな食材がテーブルに乗っている。
「シャーリー様が作ったのを作って、食べ放題、的な?」
それは嬉しいけど。
「今日はやめて下さい。イエーガー侯爵様が」
「何か手伝おうか?」
「わっ!!」
料理長、その驚きは失礼ですよ。
「オーリュゥン様。どうされました?」
「・・・いや・・・あの2人と一緒にいるのは居心地悪いだろ」
確かに。
ましてや今は御義父様に指導して貰っているという事もあるし、落ち着かないだろうな。
さっきの出来事もあるし、針のむしろだろう。
「それに、料理は少しは出来る。騎士団の合宿でやってるからな」
にこやかに微笑みながら近づいてきた。
ささっ、と料理長や他の皆は去っていった。
気を利かしたんだろう。
オーリュゥン様がそんな素振りの顔をしているもの。
だが!
今はいりません。
「では、この白ネギと白菜を、1センチの細切りにしてください」
「白菜もか?」
「はい」
さて、私は他の白ネギを、緑の部分と根っこの部分を切り、白い部分をそのまま高温のオーブンへ。
勿論洗ってからだよ。
鍋に水と昆布を入れ、火にかけます。
「・・・シャーリー・・・その・・・」
その声で、そうだった、いましたね、と思い出した。
「私は、シャーリーをもっと知りたいと思っている」
顔を赤らめながら一生懸命に言って下さるが、全く今はときめかないし、あまり頭に入ってこない。
「そうですか?」
えーと、鍋は?
お。いい感じの泡が出てきたな。
昆布を取り出す。
次はタレの準備。
まず、ポン酢。
小鉢に醤油とお酢を入れて、そこに搾りたてのレモン 汁を加える。
柑橘の爽やかな香りが立ち上る。
ふふっ、いい香り。
次は、白ネギのタレ。
白ネギを青い部分白い部分、全部をみじん切りにする。
細かく、細かく。
それをボウルに入れて、ごま油、醤油、少しのお酢、砂糖を加える。
よく混ぜると、白ネギの辛味とごま油の香ばしさが絶妙に混ざり合う。
うん、いい感じ。
「カルヴァンもいるのは知っている」
「そうですね」
あとは。そうだなあ。冬のかき揚げでいこうかな。
そうと決まれば、違う鍋に油を入れ温める。
白ネギがやっぱりメインだよね。
さっき確認した時に、ブロッコリー、春菊、れんこん、長芋、等などあった。
うーん、2種類で白ネギメインと春菊メインでいこうかなぁ。
それぞれに、人参、玉ねぎ、れんこん入れたらいいな。
あ、白菜があるから葉っぱの部分も入れよう。
長芋は今度ステーキにして出してあげよう。
「私は本気で」
「ちょっとうるさいです!黙ってそれ切って下さい!ちょっと、全然進んでないじゃない!手伝うんなら手伝いに集中して、手を動かして!!出来ないんなら帰ってもらえる!?邪魔!!」
「すまん・・・」
「その白菜の葉っぱ頂戴」
「ああ」
しゅんとなりながら、渡してきた。
「ありがとうございます」
さて、先に天ぷら粉の準備。
小麦粉に卵、冷水を入れてさっくり混ぜる。
混ぜすぎないのがポイント。
切っていきますか。
白ネギ、白菜の葉っぱ、人参、玉ねぎ、れんこんを全て千切り。
春菊はざく切り。
それを白ネギと春菊で分ける。
先に白ネギの方を天ぷら粉に混ぜる。
白ネギの甘い香りが立ち上る。
油は?
お、いい感じ。
スプーンにすくって投入。
じゅわあああ、といい音がする。
「シャーリー、切り終わった」
「じゃああの鍋に半分入れてください。残りはお皿にのせて下さい」
「わかった」
かき揚げを全部作り、オーブンの白ネギを見る。
おお!!いい感じに真っ黒け。
取り出し、ちゅるりんとその黒焦げを剥く。
これが綺麗に剥けるのよね。
中からとろりと甘い香りと白ネギ独特のつゆが光る。
くううううう、絶対美味しい!
それをハサミでちょっきん、と1口より大きめに切る。
包丁でもいいんだけど、中からにょっ、と白ネギが出てくるから切りにくいし、見た目も悪くなる。
お皿にのせる。
「オーリュゥン様、人数分のお皿をワゴンにのせて。お皿はそこを開けたら、そうそう、そこそこ。あと、深めのお皿もお願いね」
「分かった」
さて最後は、氷温されているブリを薄く切ってお皿に円を描くように置いていく。
ピンク色に輝く脂ののったブリ。
美味しそう。
よし!!
「出来上がりです。さ、持っていきましょう」
「分かった」
ワゴンに乗っているものを確認する。
まあ、足りなかったら取りに来ればいいか。
サロンで待っている御義父様とイエーガー侯爵様は程々に飲んでいた。
すぐに暖炉の上に鍋を置いた。
「今日は、ブリのしゃぶしゃぶです。鍋の野菜を一緒に食べてくださいね。あとは冬野菜のかき揚げに、白ネギのそのまま焼きです」
タレの入った小鉢を並べる。
「こちらがポン酢で、こちらが白ネギのタレです。お好みでどうぞ」
「待ってたぞ」
「これか・・・シャーリーの・・・料理は・・・」
お2人は、いやいや、オーリュゥン様もいるから3人は、とても美味しそうに食べてくれました。
まず、御義父様がブリを鍋に入れる。
さっと湯にくぐらせ、表面がほんのり白くなったところで引き上げる。
ポン酢につけて、口に運ぶ。
「・・・うむ。脂がのっていて、美味い。ポン酢の酸味が、脂を引き立てるな」
次に、かき揚げ。
サクッと噛んだ瞬間、白ネギの甘みがじゅわっと広がる。
「これは・・・白ネギが、甘いな」
「はい。冬の白ネギは甘みが増すんです」
イエーガー侯爵様が、焼き白ネギを口に運ぶ。
「おお・・・これは・・・中が・・・とろとろだ・・・」
黒焦げの皮の中から、とろりと溶けた白ネギ。
甘くて、柔らかくて、口の中でとろける。
「この・・・白ネギの・・・タレも・・・いいな・・・。ごま油の・・・香りが・・・たまらん・・・」
オーリュゥン様も、ブリをしゃぶしゃぶして、
「これ、本当に美味いな。脂がしつこくなくて、いくらでも食べられる」
今度は白ネギのタレで食べる。
「おお、このタレ、ブリによく合う。白ネギの辛味がアクセントになってる」
かき揚げも、
「サクサクで、野菜の甘みが引き立ってる」
えへへへへへ。
その顔、その皆さんのほころんだ顔は嬉しいですね。
「シャーリー、お前はもう休みなさい。色々あって疲れただろうから」
「え!?」
御義父様の優しい言葉に、勿論オーリュゥン様が驚き声を出した。
「何だ、何か不都合であるのか?今日はこれ以上シャーリーに近づくな。媚薬が効いてないとはいえ、もしや、の事を考えるだろう?」
痛い所をつきますね、御義父様。
さっきの料理の時は忙しくて、甘い雰囲気にならなかったけれど、今2人きりになったら、どうなるのか分からない。
「・・・そうですね。また、次回シャーリーとは話をしましょう」
「そうか……?別に……構わんの……じゃ……ないか?」
「グリニジ、余計なことを言うな」
憮然とした顔で御義父様が言った。
「分かりました、御義父様。では、私はこれで失礼致します。皆様、あまり飲みすぎないようにして下さいね」
にっこりと微笑み、ここはあえてオーリュゥン様を見ることなく部屋を出た。
確かに疲れたな。
うーん、と背伸びし、部屋に戻った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

私と義弟の安全は確保出来たので、ゆっくり恋人を探そうと思います

織り子
恋愛
18歳で処刑された大公家の令嬢、セレノア・グレイス。 目を覚ますと――あの日の6年前に戻っていた。 まだ無邪気な弟ルシアン、笑う両親。 再び訪れる“反逆の運命”を知るのは、彼女だけ。 ――大公家に産まれた時点で、自由な恋愛は諦めていた。だが、本当は他の令嬢達の話を聞くたびにうらやましかった。人生1度きり。もう少し花のある人生を送りたかった。一度でいいから、恋愛をしてみたい。 限られた6年の中で、セレノアは動き出す。 愛する家族を守るため、未来を変えるために。 そして本当の願い(恋愛)を叶えるために。

数多の令嬢を弄んだ公爵令息が夫となりましたが、溺愛することにいたしました

鈴元 香奈
恋愛
伯爵家の一人娘エルナは第三王子の婚約者だったが、王子の病気療養を理由に婚約解消となった。そして、次の婚約者に選ばれたのは公爵家長男のリクハルド。何人もの女性を誑かせ弄び、ぼろ布のように捨てた女性の一人に背中を刺され殺されそうになった。そんな醜聞にまみれた男だった。 エルナが最も軽蔑する男。それでも、夫となったリクハルドを妻として支えていく決意をしたエルナだったが。 小説家になろうさんにも投稿しています。

夫に用無しと捨てられたので薬師になって幸せになります。

光子
恋愛
この世界には、魔力病という、まだ治療法の見つかっていない未知の病が存在する。私の両親も、義理の母親も、その病によって亡くなった。 最後まで私の幸せを祈って死んで行った家族のために、私は絶対、幸せになってみせる。 たとえ、離婚した元夫であるクレオパス子爵が、市民に落ち、幸せに暮らしている私を連れ戻そうとしていても、私は、あんな地獄になんか戻らない。 地獄に連れ戻されそうになった私を救ってくれた、同じ薬師であるフォルク様と一緒に、私はいつか必ず、魔力病を治す薬を作ってみせる。 天国から見守っているお義母様達に、いつか立派な薬師になった姿を見てもらうの。そうしたら、きっと、私のことを褒めてくれるよね。自慢の娘だって、思ってくれるよね―――― 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

家族の靴を磨いていた私が、実は【神の加護を磨き上げた聖女】だった件。隣国の冷徹皇帝に「君の献身は世界を救う」と誘拐、24 執着されています

唯崎りいち
恋愛
「お前は一生、靴でも磨いていろ」 家族に虐げられ、靴を磨き続けた私。 実はその靴、磨くたびに『神の加護』が宿る聖具になっていました。 噂を聞きつけた隣国の冷徹皇帝に、出会い頭にさらわれて―― 「君は俺のものだ。24時間、指一本触れさせない」 靴を履かせてもらえず、移動は常に皇帝の腕の中!? 磨き上げた加護のせいで、皇帝の執着が神レベルに育ってしまう溺愛物語。

一度目で黒狼公に討たれた私ですが、二度目の夜はお父様のそばでしか眠れません

師走
恋愛
八歳の冬、リリア・ヴァルグレイは父に殺された。 王国最強の討魔貴族――黒狼公レオンハルト・ヴァルグレイ。 人にも魔にも容赦のないその男は、黒花の災厄に呑まれかけた実の娘を、自らの手で討ったのだ。 けれど次に目を覚ました時、リリアは赤ん坊に戻っていた。 もう二度と、お父様に剣を向けられたくない。 そう願うのに、夜になるとまた黒花の囁きが忍び寄る。甘くやさしいその声は、孤独な心に触れて、静かに破滅へと導こうとする。 そして、その囁きがぴたりと止むのは――世界でいちばん怖いお父様のそばだけだった。 一度目の父は、同じ城で暮らしていても遠い人だった。 リリアを見ない。抱かない。呼びもしない。 そのくせ二度目の父は、相変わらず冷たいまま、なぜか夜ごとリリアを放っておいてくれない。侍女を替え、部屋を守らせ、怯えて眠れない娘を黙って自分の近くへ置いてしまう。 人にはあれほど容赦がないのに、リリアにだけ少しずつおかしくなっていく。 怖い。近づきたくない。 それでも、その腕の中でしか眠れない。 またあの冬が来る。 また同じように、黒花はリリアを呑み込もうとするかもしれない。 今度こそ囁きに負けないために。今度こそ父に剣を抜かせないために。 一度目で父に討たれた娘は、二度目の人生でもっとも恐ろしいその人のそばへ、自分の意志で手を伸ばしていく。 小説家になろう様でも掲載中

エミリーと精霊

朝山みどり
恋愛
誰もが精霊と契約する国。エミリーの八歳の誕生日にやって来たのは、おもちゃのようなトカゲだった。 名門侯爵家の娘としてありえない恥。家族はエミリーをそう扱った。だからエミリーは居場所を得るために頑張った。役に立とうとした。

処理中です...