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第71話キャウリー目線。3つの選択
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「本日わざわざ出向いたのは、お前達に、ああ、土下座はいらん。その必要はない。シャーリーがどうしても助けて欲しいと、懇願してきたから来たんだ」
サヴォワ家にやって来た。
かつては華やかだった応接室も、今は陰鬱な空気に支配されている。
カーテンは閉ざされ、薄暗い室内に、わずかな光が差し込むだけだ。
ソファに座る私の前に、サヴォワ伯爵と夫人が背中を丸め、小さく座っている。
床には膝を付き、虚ろな目をしたシャーサーがいた。
かつての美しさは影を潜め、髪は乱れ、顔色は青白い。
あれから半月。
サヴォワ家は自宅謹慎。
その罪は全て私に任された。
勝手に消えてくれるものと放っておこう、と高みの見物をするつもりだったが、
御義父様、1つお願いがあります。
シャーリーが、初めて頼み事をしてきた。
同じ事を返したいから、媚薬が欲しい、と。
なんとも面白い事を言ってきた。
理性を取り戻せるなら、それでいい、とシャーリーなりにまだ、この女を信じ、そして静かに怒っていた。
実際渡した媚薬はかなり軽いものだった。
一投がこれ程までに広がるとはな。
誰も信じまい。
スクルトの思惑通り、ケイトとつるんだおかげで、カミュセシ侯爵も潰せ、こやつらも潰せ、一石二鳥だ。
ケイトは廃嫡。
どこぞの辺境地で幽閉も決まっている。
カミュセシ侯爵は横領をしているが、証拠が掴めんとベジットが苦々しく言っていたが、これでどうにかなるだろう。
最悪、爵位返上となるだろう。
ヨークシャー伯爵家は、爵位返上。
細々と庶民として暮らす事を選んだ。
愚息は、あの乱行パーティには参加をしていなかった、と言うだけでもシャーリーにとっては救いのようだった。
そして、こいつら。
笑いが出る。
私は、何もしていない。
勝手に潰れてくれたのだ。
さて、始めるか。
「提案は3つだ。好きなのを選べ」
足を組み、見下ろす。
3つという数に、3人が顔を上げた。
目に、かすかな希望の光が灯る。
世の中、そんな甘くはないのだがな。
「1つ目は、爵位を返上し、何一つ持たず庶民として生きる」
息を飲む音が聞こえる。
だが、さほど驚きはしていないだろう。
本来ならそれしか、ないのだから。
「心配いらん。転覆した貴族など掃いて捨てるほど、存在する。楽しそうだぞ。いつもヘラヘラ庶民に笑い、安い賃金の仕事を探し歩く。ああ、そこの緩い娘がいるな。男どもが好きそうな体を丁度持っている。貴族の娘を好んで買う、お前らより裕福な商人が、こぞって金を払ってくれるな。それとも、ああ、夫人は妊婦だったな。いや、大丈夫だ。変わった趣味の男どもは腐るほどいる。おや、金の心配はいらんな」
やっと現実を知ったようで、3人の体が震え出した。
サヴォワ伯爵の顔が青ざめ、夫人は腹を押さえて俯く。
シャーサーの唇が、小刻みに震えている。
「さて、2つ目は、爵位は保留されるが、お前達3人は適当な貴族の家でメイドとして働くんだ」
「・・・!」
3人が一斉に顔を上げた。
目に、すがるような光が宿る。
「どうした?お前達がやった事と、同じ事を味わうだけだ。何の不都合がある。まあ、普通にいけば、只では済まんだろうな。サヴォワ殿なら、良くて御者、悪ければ、主人の捌け口に殴られるだろう。夫人なら、ああ、妊婦だったな。まずはその子をおろされ、使用人どもの夜の捌け口になるだろう。娘は元々、緩い女だ。夜会の余興にいいのではないか」
小さい悲鳴が上がる。
もはや誰のかなど興味が無い。
夫人が震える手で口を押さえ、サヴォワ伯爵の額に脂汗が浮かぶ。
シャーサーは床に両手をつき、肩を震わせている。
「3つめは、サヴォワご夫妻には全ての事から手を引き、隠匿生活を送って頂く。勿論、メイドも誰もいない。2人だけで、だ。そこの女には、私の遠い親戚を婿養子として迎えてもらう。サヴォワ家の持っている事業に興味があるとの事だ。良かったな、お前のような娘でも問題ないと言ってくれている」
一気に話が上がり、3人の目に希望の色が戻る。
怪訝そうに私を見るが、その目は希望に満ちている。
そんなはずは無いとわからんのか?
「心配するな、その者は女には興味が無いとの事だ。自分の気に入った男を連れてくると言っていた。お前は、この屋敷を1歩も出ることを許さん」
「・・・は・・・?」
シャーサーの顔から、血の気が引く。
その驚愕の顔を、シャーリーに見せたかった、と思った。
「・・・では・・・サヴォワ家は・・・」
その言葉に、夫人が腹を撫でる。
本当に愚かだな。
縋るものなど何も無いと理解出来ないとは。
「サヴォワ家には、我が娘シャーリーの子供を継がせる。その腹の子の認知などない。お前達、庶民となり、その子を必死に育てればいい」
「そんな・・・!」
夫人の声が震える。
「お父様!!私は庶民でいいわ!!私が働くわ!!この体でお金が貰えるなら、何でもするわ!!」
やはり、この女はそう言うだろう。
つまり、女として後継者を産むことも、女主人でありながら煌びやかな世界から遠のき、腐っていく事を意味する。
価値など存在しない、ただの、抜け殻。
そんなもの、この女が認めるわけが無い。
この女はある意味、いい強さを持っている。
シャーリーにさえ上に立てれば、それが全てという、1つの事に驚異的とも言える、執念。
そう、その瞳、その顔。
本当に勿体ない。
それがスクルトの言う、あざとさが足りないのだろう。
「何を言う!?それだとこのサヴォワ家が無くなってしまうのだ!!そんな事あってはならん!!」
そう、この男もそう言うだろう。
全て我が身の為。
我が身を守る為なら我が子でも売る。
そんな、男だ。
けれど腐っても当主。
そこに縋り付くのは、醜く、そして、ある意味人間くさい。
言い合う、3人を見ながら、冷静に思う。
声が重なり、罵り合い、責め合う。
夫人が泣き出し、シャーサーが叫び、サヴォワ伯爵が怒鳴る。
醜い。
実に、醜い。
結局は、主であるサヴォワ殿の言い分が通り、3つ目となった。
全てはシャーリーから始まった。
シャーリーが私の前に現れ、私の娘になり、私の癒しとなった。
戦にない、面白いものを見せてもらった。
さて、シャーリー、後はお前が誰を選ぶか、じっくりと観察しようとするか。
サヴォワ家にやって来た。
かつては華やかだった応接室も、今は陰鬱な空気に支配されている。
カーテンは閉ざされ、薄暗い室内に、わずかな光が差し込むだけだ。
ソファに座る私の前に、サヴォワ伯爵と夫人が背中を丸め、小さく座っている。
床には膝を付き、虚ろな目をしたシャーサーがいた。
かつての美しさは影を潜め、髪は乱れ、顔色は青白い。
あれから半月。
サヴォワ家は自宅謹慎。
その罪は全て私に任された。
勝手に消えてくれるものと放っておこう、と高みの見物をするつもりだったが、
御義父様、1つお願いがあります。
シャーリーが、初めて頼み事をしてきた。
同じ事を返したいから、媚薬が欲しい、と。
なんとも面白い事を言ってきた。
理性を取り戻せるなら、それでいい、とシャーリーなりにまだ、この女を信じ、そして静かに怒っていた。
実際渡した媚薬はかなり軽いものだった。
一投がこれ程までに広がるとはな。
誰も信じまい。
スクルトの思惑通り、ケイトとつるんだおかげで、カミュセシ侯爵も潰せ、こやつらも潰せ、一石二鳥だ。
ケイトは廃嫡。
どこぞの辺境地で幽閉も決まっている。
カミュセシ侯爵は横領をしているが、証拠が掴めんとベジットが苦々しく言っていたが、これでどうにかなるだろう。
最悪、爵位返上となるだろう。
ヨークシャー伯爵家は、爵位返上。
細々と庶民として暮らす事を選んだ。
愚息は、あの乱行パーティには参加をしていなかった、と言うだけでもシャーリーにとっては救いのようだった。
そして、こいつら。
笑いが出る。
私は、何もしていない。
勝手に潰れてくれたのだ。
さて、始めるか。
「提案は3つだ。好きなのを選べ」
足を組み、見下ろす。
3つという数に、3人が顔を上げた。
目に、かすかな希望の光が灯る。
世の中、そんな甘くはないのだがな。
「1つ目は、爵位を返上し、何一つ持たず庶民として生きる」
息を飲む音が聞こえる。
だが、さほど驚きはしていないだろう。
本来ならそれしか、ないのだから。
「心配いらん。転覆した貴族など掃いて捨てるほど、存在する。楽しそうだぞ。いつもヘラヘラ庶民に笑い、安い賃金の仕事を探し歩く。ああ、そこの緩い娘がいるな。男どもが好きそうな体を丁度持っている。貴族の娘を好んで買う、お前らより裕福な商人が、こぞって金を払ってくれるな。それとも、ああ、夫人は妊婦だったな。いや、大丈夫だ。変わった趣味の男どもは腐るほどいる。おや、金の心配はいらんな」
やっと現実を知ったようで、3人の体が震え出した。
サヴォワ伯爵の顔が青ざめ、夫人は腹を押さえて俯く。
シャーサーの唇が、小刻みに震えている。
「さて、2つ目は、爵位は保留されるが、お前達3人は適当な貴族の家でメイドとして働くんだ」
「・・・!」
3人が一斉に顔を上げた。
目に、すがるような光が宿る。
「どうした?お前達がやった事と、同じ事を味わうだけだ。何の不都合がある。まあ、普通にいけば、只では済まんだろうな。サヴォワ殿なら、良くて御者、悪ければ、主人の捌け口に殴られるだろう。夫人なら、ああ、妊婦だったな。まずはその子をおろされ、使用人どもの夜の捌け口になるだろう。娘は元々、緩い女だ。夜会の余興にいいのではないか」
小さい悲鳴が上がる。
もはや誰のかなど興味が無い。
夫人が震える手で口を押さえ、サヴォワ伯爵の額に脂汗が浮かぶ。
シャーサーは床に両手をつき、肩を震わせている。
「3つめは、サヴォワご夫妻には全ての事から手を引き、隠匿生活を送って頂く。勿論、メイドも誰もいない。2人だけで、だ。そこの女には、私の遠い親戚を婿養子として迎えてもらう。サヴォワ家の持っている事業に興味があるとの事だ。良かったな、お前のような娘でも問題ないと言ってくれている」
一気に話が上がり、3人の目に希望の色が戻る。
怪訝そうに私を見るが、その目は希望に満ちている。
そんなはずは無いとわからんのか?
「心配するな、その者は女には興味が無いとの事だ。自分の気に入った男を連れてくると言っていた。お前は、この屋敷を1歩も出ることを許さん」
「・・・は・・・?」
シャーサーの顔から、血の気が引く。
その驚愕の顔を、シャーリーに見せたかった、と思った。
「・・・では・・・サヴォワ家は・・・」
その言葉に、夫人が腹を撫でる。
本当に愚かだな。
縋るものなど何も無いと理解出来ないとは。
「サヴォワ家には、我が娘シャーリーの子供を継がせる。その腹の子の認知などない。お前達、庶民となり、その子を必死に育てればいい」
「そんな・・・!」
夫人の声が震える。
「お父様!!私は庶民でいいわ!!私が働くわ!!この体でお金が貰えるなら、何でもするわ!!」
やはり、この女はそう言うだろう。
つまり、女として後継者を産むことも、女主人でありながら煌びやかな世界から遠のき、腐っていく事を意味する。
価値など存在しない、ただの、抜け殻。
そんなもの、この女が認めるわけが無い。
この女はある意味、いい強さを持っている。
シャーリーにさえ上に立てれば、それが全てという、1つの事に驚異的とも言える、執念。
そう、その瞳、その顔。
本当に勿体ない。
それがスクルトの言う、あざとさが足りないのだろう。
「何を言う!?それだとこのサヴォワ家が無くなってしまうのだ!!そんな事あってはならん!!」
そう、この男もそう言うだろう。
全て我が身の為。
我が身を守る為なら我が子でも売る。
そんな、男だ。
けれど腐っても当主。
そこに縋り付くのは、醜く、そして、ある意味人間くさい。
言い合う、3人を見ながら、冷静に思う。
声が重なり、罵り合い、責め合う。
夫人が泣き出し、シャーサーが叫び、サヴォワ伯爵が怒鳴る。
醜い。
実に、醜い。
結局は、主であるサヴォワ殿の言い分が通り、3つ目となった。
全てはシャーリーから始まった。
シャーリーが私の前に現れ、私の娘になり、私の癒しとなった。
戦にない、面白いものを見せてもらった。
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