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第一章
第六節
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「始めたか」
『ええ、たった今……』
爆発音や破砕音、聞こえる銃声や怒号と悲鳴により大和が陽動を始めた事を知る門司達別動隊。
音と姿を消し操車場建物内へ一気に近づく。
シャリン!
扉に近づくと持つ刀の柄に手をかけ一閃。不用意に扉を傷つける事なく鍵だけを両断する。
扉を押し込むと何の抵抗も無く開いた。
そのまま速やかに建物内に入る。
「師匠…大丈夫でしょうか……」
「心配する必要ないぞエイプリル。アイツにとってあのレベルの荒事、街を歩いていたら自動販売機に遭遇するぐらいに日常茶飯事だ。気にすることはない」
「うぃ……しかし今回は【星】が複数名いると聞きました。それで一人というのは……私程度の者でも一緒にいた方が良かったのでは?」
「囮にと考えているのか?そんなことアイツが許さんからやめておけ」
「そうですよぅエイプリル様。それにそのような事は従者である私のお役目です……それに【銘付き】でない【星】に後れを取るようなご主人ではありませんよぅ」
『チェルシーの言う通りですよエイプリル。今現在大和の様子をモニタリングしていますが、相対した二名【星】を完全に手玉に取っています。ですので、そちらの事は気にすることも無く先へと進んでください』
「だそうだ…鉄面皮の言う通りに先に進むぞ」
そうやり取りをしながら建物内を進んでいく門司達。要所に置かれた監視カメラや各種警報機は全てチェルシーが無効化の後、睦美が掌握していく。
「しかし…敵が見当たらないです。入ってここまで一人も遭遇しておりません」
「ご主人の陽動が上手くいっている証拠でしょうかねぇ?」
「人が居ないのはそれもあるだろう。だがこの場に居る【星】は三名、残りの一名が未だに出てきていない。おそらく必要最低限の場所に居るのだろう……例えば…」
言って刀を再び一閃する門司。丁度彼の隣にあった金属の扉はごとりと落ちる。
「【星具】を保管してあるであろう部屋の中とかな……」
その扉の部屋に入る門司達。
雑多な物置のような部屋の奥。そこには一人の男が事務机に腰かけていた。
「やぁハジメマシテ…来るとは思っていましたよ……」
「ッツ!?」
「落ち着けエイプリル」
即座に杖を構えるエイプリル。
そんな彼女に立ち塞ぐように門司は前に出る。
「お前がここにいる三名の【星】。そのうちの最後の一人か?外の連中と一緒に遊べなくて残念だったな」
「あははは……確かにそうかもしれませんね……」
門司の軽口に笑う男。だがよく見ると笑っているのは声だけで顔は全く笑っていなかった。
「……ですが、どう見ても外の方は陽動ですからね……覚醒したてのルーキーや頭パープリンの【星】なら可能性があるのでしょうが、『龍王』ともあろう方がそんな軽率さはありえませんからね」
「大和を知っているか」
「貴方もですよ『鬼神』…『龍王』、『鬼神』そして『爆炎』。この三つの若き【銘付き】は最近にこの界隈に属していれば嫌でも知る事です」
「それは光栄…外の奴らは知らなそうな素振りだがな…」
「アレは自衛のために歴戦の雰囲気を出そうとしておりますが、まだ覚醒して2ヶ月程度の何の箔も格もついていない半人前です……外の『龍王』も気づいているようですしね」
「辛辣だな…」
「それは当然。同じ【星】ですが、同じ【星団】でもなくたまたま別口で雇われただけの関係性ですから。特に何の感慨も持っておりません」
「別か………【星具】といいお前等といい。お前の雇い主はよっぽどのコネを持っているみたいだな」
「みたいですね、雇われとしてはどうでも良い部分ですが……そんなことよりそろそろ我らも始めましょう」
「ああ、そうだな」
そう言って立ち上がった男。
貫頭衣のようなものを身に纏った胴は太く短く。逆に四肢は異常に長く細い。さながら針金細工で出来た虫の様である。
手足の先が青銅のような金属光沢を放っているのもソレを拍車をかけるようだった。
「門司さん…あの方の……」
「【星】には異形のような肉体や見た目の奴もいる。慣れておけ…」
「う、うぃ…」
「名乗らせていただきます。私は伽藍と申します。【銘付き】は賜ってはいませんが数十年以上【星】の方はやらさせていただいております」
「長船・門司だ。言われなくても知ってはいるんだろうが」
「ええ…ではッ!」
互いに名乗りを済ませ共に踏み出す両者。すれ違うように刀と腕が交差する。
交差後、伽藍は膝をつく。
「ぐっ!」
柄の部分で顔面を殴打され口と鼻から血を流す伽藍。
だが怯むことなく振り向きざまに打撃を数打見舞う。
その打撃を軽々と躱す門司。躱された打撃はしなる鞭のように壁を叩き、コンクリートをくり抜く様に穿つ。
「結構な手前の打撃だ……それがお前の【演目】か?」
「いえいえ、まだそこまではとてもとても…」
「【演目】?」
「【星】達が有する超常の技能の事ですよぉ」
【演目】【星】の個々が有する独自の技術。
超人的な身体機能を有する【星】達。彼らは既存の技能すらもそれぞれのモノに変える。
例えば格闘技や剣術等の武器術。超能力や魔法という異能の類。それらを自らの手に落とし込み超人向けに、自分流にアレンジを加え独自の技術になったモノを自らの様式としてそう呼ぶのである。
「しかし何故、様式と呼べばいい部分を漢字を変え【演目】とするのか…それだけはわからないのですけれどねぇ」
「しかしながら…まだ【演目】に至っていない我が打撃とはいえ…よく先程のを躱せましたね。あの連撃を初見で躱される方はそうはいませんよ」
「世辞をどうも…それよりもお前の金属製の腕の方が気になるな俺は…そいつを風車のように振り回すことであの威力を出しているという事か…」
「結構自慢の腕ですよ、産毛から骨の髄に至るまでみっちりと金属です。コレを傷つけられたことはほとんどありません……現に貴方も斬れないから柄での打撃に変えたのでしょう?」
「何が言いたい?」
「とぼけないで下さい。それほどまでに立派な刀を有している貴方が私に行ったのが柄による顔面の打撃が何よりの証拠。貴方は斬る前に察したのでしょう「コレは斬ること出来ない」と……」
「………………」
「私としては実に鼻高々ですよ、私の腕は『鬼神』ですら斬ることが出来ないモノだという判を押されたのですから」
「そうか、それは良かったな…」
「それは当ぜ…」
「だが残念だ」
伽藍の言葉と途中、シャリンと鞘鳴りを一つ響かせる門司。
次の瞬間、伽藍の首半分がぱっくりと割けた。
「なっ、なななななななななななななななななななななななななななななななッ!?」
気づいた様に噴出する血。それを伽藍は抑える。
「わざわざ腕のご高説をいただいたが……だったらそれ以外を斬ってしまえば良いだけの話だ。隙だらけだったぜアンタ…」
「ご尤もです…ね……」
呻く伽藍。手で抑えたことで噴き出していた血は徐々に勢いを失い。手を離した時にはぱっくりとした傷口が見えるのみで完全に止血されていた。
「ほぅ、筋肉で無理矢理血管を閉じさせ止血させたか…【星】だからこそ可能な荒業だな」
「恐悦至極です……『鬼神』殿…」
「思ってない事なら言わなくていい……それと……」
そこで門司は鞘に収まった日本刀を伽藍に突き付ける。
「コレは警告代わりだ。このまま忘れる様にこの件から手を引け…さもないと今度は首と胴体が別れることになるぞ…」
「……………」
「返答は?」
そんな門司の警告に目をぱちくりとさせた伽藍。その後、声を殺しながら笑った。
「申し出はありがたいのですがね…お断りさせてもらいますよ。こちらの商売、信用を失えば明日の糧すら得られなくなりますからね……それに…」
「何だ?」
「我々【星】にとって、この申し出は死に勝る屈辱だという事を貴方が知らないわけないでしょうッ!!」
そう叫び門司に突撃を仕掛ける伽藍。門司も居合で迎え撃たんと構える。
再び交差せんとする両者。だが、伽藍は刃の射程圏内に入ろうとする直前方向を変える。
変えた先、それは観戦していたエイプリルとチェルシーのいる方向であった。
「悪いですがッ!勝つために利用させていただきますよお嬢様がたッ!今この場で『鬼神』に勝利する為にはこうしなければなりませんからッ!!」
「くッ!」
掴もうと腕を伸ばす伽藍。エイプリルは再び杖を構える。
そんな伽藍の行動に門司は口元に笑みを浮かべる。
「まあ、そうするだろうな…」
鞘鳴りを一つ響かせる門司。
シャリン!
その瞬間、ポトリと落ちる伽藍の指先。そこから伝播する様に手首、肘、二の腕、肩と輪切りにされた野菜の様にどんどんと落ちていく。
「なッ、なななななななななななななナナナナナナナナナナナナッッ!!?」
困惑し、もう一方の腕を伸ばす伽藍。だがその腕も先の腕と同じようにポトリポトリと落ちていった。
「一体何が…起こっているんですぅッ!!?」
まるで薄くスライスされたハムのように地面に散らばる腕を見て叫ぶ伽藍。
「悪いな…こいつが俺の【演目】だ…」
刀に手をかけつつ門司は淡々と述べる。
【演目】『鬼震 小噺一太刀 首提灯』
「今に申告して悪いが、お前のご自慢の金属腕。アレは斬っていたんだ。一番最初にな…」
「一番最初……嘘ですッ!現にさっきまではくっついていた、感覚もきちんと存在した」
「それはそうだ、お前の感覚に…細胞にすら気づかれないように斬ったんだからな……斬られたと気づかず動き続ける細胞。だがさっきの鞘鳴りにより斬られたことを自ら気づき、そして落ちたんだ」
「~~~~~~ッッッ!!?」
淡々と述べられた門司の言葉に戦慄を覚える伽藍。
先程のすれ違いによる一合。刹那の瞬間に柄の殴打のみならず首と両腕を気づかれることなく斬り刻まれていたことに……。
更に自分がこの行動をとると踏んで保険をかけていたことに……。
「成程…コレが【演目】ですか…」
「ああ、これが【演目】だ」
これが本物の【演目】……。
自分の技を見てそこまで到底至っていないことを悟る伽藍。
膝を折ってはいるが、妙に清々しい完敗だ……。
門司は刀を抜くとそんなさっぱりとした表情の伽藍を袈裟斬りで一刀のもと斬り伏せた。
『ええ、たった今……』
爆発音や破砕音、聞こえる銃声や怒号と悲鳴により大和が陽動を始めた事を知る門司達別動隊。
音と姿を消し操車場建物内へ一気に近づく。
シャリン!
扉に近づくと持つ刀の柄に手をかけ一閃。不用意に扉を傷つける事なく鍵だけを両断する。
扉を押し込むと何の抵抗も無く開いた。
そのまま速やかに建物内に入る。
「師匠…大丈夫でしょうか……」
「心配する必要ないぞエイプリル。アイツにとってあのレベルの荒事、街を歩いていたら自動販売機に遭遇するぐらいに日常茶飯事だ。気にすることはない」
「うぃ……しかし今回は【星】が複数名いると聞きました。それで一人というのは……私程度の者でも一緒にいた方が良かったのでは?」
「囮にと考えているのか?そんなことアイツが許さんからやめておけ」
「そうですよぅエイプリル様。それにそのような事は従者である私のお役目です……それに【銘付き】でない【星】に後れを取るようなご主人ではありませんよぅ」
『チェルシーの言う通りですよエイプリル。今現在大和の様子をモニタリングしていますが、相対した二名【星】を完全に手玉に取っています。ですので、そちらの事は気にすることも無く先へと進んでください』
「だそうだ…鉄面皮の言う通りに先に進むぞ」
そうやり取りをしながら建物内を進んでいく門司達。要所に置かれた監視カメラや各種警報機は全てチェルシーが無効化の後、睦美が掌握していく。
「しかし…敵が見当たらないです。入ってここまで一人も遭遇しておりません」
「ご主人の陽動が上手くいっている証拠でしょうかねぇ?」
「人が居ないのはそれもあるだろう。だがこの場に居る【星】は三名、残りの一名が未だに出てきていない。おそらく必要最低限の場所に居るのだろう……例えば…」
言って刀を再び一閃する門司。丁度彼の隣にあった金属の扉はごとりと落ちる。
「【星具】を保管してあるであろう部屋の中とかな……」
その扉の部屋に入る門司達。
雑多な物置のような部屋の奥。そこには一人の男が事務机に腰かけていた。
「やぁハジメマシテ…来るとは思っていましたよ……」
「ッツ!?」
「落ち着けエイプリル」
即座に杖を構えるエイプリル。
そんな彼女に立ち塞ぐように門司は前に出る。
「お前がここにいる三名の【星】。そのうちの最後の一人か?外の連中と一緒に遊べなくて残念だったな」
「あははは……確かにそうかもしれませんね……」
門司の軽口に笑う男。だがよく見ると笑っているのは声だけで顔は全く笑っていなかった。
「……ですが、どう見ても外の方は陽動ですからね……覚醒したてのルーキーや頭パープリンの【星】なら可能性があるのでしょうが、『龍王』ともあろう方がそんな軽率さはありえませんからね」
「大和を知っているか」
「貴方もですよ『鬼神』…『龍王』、『鬼神』そして『爆炎』。この三つの若き【銘付き】は最近にこの界隈に属していれば嫌でも知る事です」
「それは光栄…外の奴らは知らなそうな素振りだがな…」
「アレは自衛のために歴戦の雰囲気を出そうとしておりますが、まだ覚醒して2ヶ月程度の何の箔も格もついていない半人前です……外の『龍王』も気づいているようですしね」
「辛辣だな…」
「それは当然。同じ【星】ですが、同じ【星団】でもなくたまたま別口で雇われただけの関係性ですから。特に何の感慨も持っておりません」
「別か………【星具】といいお前等といい。お前の雇い主はよっぽどのコネを持っているみたいだな」
「みたいですね、雇われとしてはどうでも良い部分ですが……そんなことよりそろそろ我らも始めましょう」
「ああ、そうだな」
そう言って立ち上がった男。
貫頭衣のようなものを身に纏った胴は太く短く。逆に四肢は異常に長く細い。さながら針金細工で出来た虫の様である。
手足の先が青銅のような金属光沢を放っているのもソレを拍車をかけるようだった。
「門司さん…あの方の……」
「【星】には異形のような肉体や見た目の奴もいる。慣れておけ…」
「う、うぃ…」
「名乗らせていただきます。私は伽藍と申します。【銘付き】は賜ってはいませんが数十年以上【星】の方はやらさせていただいております」
「長船・門司だ。言われなくても知ってはいるんだろうが」
「ええ…ではッ!」
互いに名乗りを済ませ共に踏み出す両者。すれ違うように刀と腕が交差する。
交差後、伽藍は膝をつく。
「ぐっ!」
柄の部分で顔面を殴打され口と鼻から血を流す伽藍。
だが怯むことなく振り向きざまに打撃を数打見舞う。
その打撃を軽々と躱す門司。躱された打撃はしなる鞭のように壁を叩き、コンクリートをくり抜く様に穿つ。
「結構な手前の打撃だ……それがお前の【演目】か?」
「いえいえ、まだそこまではとてもとても…」
「【演目】?」
「【星】達が有する超常の技能の事ですよぉ」
【演目】【星】の個々が有する独自の技術。
超人的な身体機能を有する【星】達。彼らは既存の技能すらもそれぞれのモノに変える。
例えば格闘技や剣術等の武器術。超能力や魔法という異能の類。それらを自らの手に落とし込み超人向けに、自分流にアレンジを加え独自の技術になったモノを自らの様式としてそう呼ぶのである。
「しかし何故、様式と呼べばいい部分を漢字を変え【演目】とするのか…それだけはわからないのですけれどねぇ」
「しかしながら…まだ【演目】に至っていない我が打撃とはいえ…よく先程のを躱せましたね。あの連撃を初見で躱される方はそうはいませんよ」
「世辞をどうも…それよりもお前の金属製の腕の方が気になるな俺は…そいつを風車のように振り回すことであの威力を出しているという事か…」
「結構自慢の腕ですよ、産毛から骨の髄に至るまでみっちりと金属です。コレを傷つけられたことはほとんどありません……現に貴方も斬れないから柄での打撃に変えたのでしょう?」
「何が言いたい?」
「とぼけないで下さい。それほどまでに立派な刀を有している貴方が私に行ったのが柄による顔面の打撃が何よりの証拠。貴方は斬る前に察したのでしょう「コレは斬ること出来ない」と……」
「………………」
「私としては実に鼻高々ですよ、私の腕は『鬼神』ですら斬ることが出来ないモノだという判を押されたのですから」
「そうか、それは良かったな…」
「それは当ぜ…」
「だが残念だ」
伽藍の言葉と途中、シャリンと鞘鳴りを一つ響かせる門司。
次の瞬間、伽藍の首半分がぱっくりと割けた。
「なっ、なななななななななななななななななななななななななななななななッ!?」
気づいた様に噴出する血。それを伽藍は抑える。
「わざわざ腕のご高説をいただいたが……だったらそれ以外を斬ってしまえば良いだけの話だ。隙だらけだったぜアンタ…」
「ご尤もです…ね……」
呻く伽藍。手で抑えたことで噴き出していた血は徐々に勢いを失い。手を離した時にはぱっくりとした傷口が見えるのみで完全に止血されていた。
「ほぅ、筋肉で無理矢理血管を閉じさせ止血させたか…【星】だからこそ可能な荒業だな」
「恐悦至極です……『鬼神』殿…」
「思ってない事なら言わなくていい……それと……」
そこで門司は鞘に収まった日本刀を伽藍に突き付ける。
「コレは警告代わりだ。このまま忘れる様にこの件から手を引け…さもないと今度は首と胴体が別れることになるぞ…」
「……………」
「返答は?」
そんな門司の警告に目をぱちくりとさせた伽藍。その後、声を殺しながら笑った。
「申し出はありがたいのですがね…お断りさせてもらいますよ。こちらの商売、信用を失えば明日の糧すら得られなくなりますからね……それに…」
「何だ?」
「我々【星】にとって、この申し出は死に勝る屈辱だという事を貴方が知らないわけないでしょうッ!!」
そう叫び門司に突撃を仕掛ける伽藍。門司も居合で迎え撃たんと構える。
再び交差せんとする両者。だが、伽藍は刃の射程圏内に入ろうとする直前方向を変える。
変えた先、それは観戦していたエイプリルとチェルシーのいる方向であった。
「悪いですがッ!勝つために利用させていただきますよお嬢様がたッ!今この場で『鬼神』に勝利する為にはこうしなければなりませんからッ!!」
「くッ!」
掴もうと腕を伸ばす伽藍。エイプリルは再び杖を構える。
そんな伽藍の行動に門司は口元に笑みを浮かべる。
「まあ、そうするだろうな…」
鞘鳴りを一つ響かせる門司。
シャリン!
その瞬間、ポトリと落ちる伽藍の指先。そこから伝播する様に手首、肘、二の腕、肩と輪切りにされた野菜の様にどんどんと落ちていく。
「なッ、なななななななななななななナナナナナナナナナナナナッッ!!?」
困惑し、もう一方の腕を伸ばす伽藍。だがその腕も先の腕と同じようにポトリポトリと落ちていった。
「一体何が…起こっているんですぅッ!!?」
まるで薄くスライスされたハムのように地面に散らばる腕を見て叫ぶ伽藍。
「悪いな…こいつが俺の【演目】だ…」
刀に手をかけつつ門司は淡々と述べる。
【演目】『鬼震 小噺一太刀 首提灯』
「今に申告して悪いが、お前のご自慢の金属腕。アレは斬っていたんだ。一番最初にな…」
「一番最初……嘘ですッ!現にさっきまではくっついていた、感覚もきちんと存在した」
「それはそうだ、お前の感覚に…細胞にすら気づかれないように斬ったんだからな……斬られたと気づかず動き続ける細胞。だがさっきの鞘鳴りにより斬られたことを自ら気づき、そして落ちたんだ」
「~~~~~~ッッッ!!?」
淡々と述べられた門司の言葉に戦慄を覚える伽藍。
先程のすれ違いによる一合。刹那の瞬間に柄の殴打のみならず首と両腕を気づかれることなく斬り刻まれていたことに……。
更に自分がこの行動をとると踏んで保険をかけていたことに……。
「成程…コレが【演目】ですか…」
「ああ、これが【演目】だ」
これが本物の【演目】……。
自分の技を見てそこまで到底至っていないことを悟る伽藍。
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