プライベート・スペクタル

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「どうやら…護送途中で奪われたようです」
ボロ布のようなモノを纏った者が目の前の存在にそう告げる。
「そうか……」
目の前の存在はそう短く返すと溜息を吐く。黒いモヤの様な全身を覆い輪郭がぶれているため素性や顔色は窺い知ることは出来ないが、その声色には落胆の色が混じっていた。
「奪ったのは【星団】『創世神』だと伽藍からの報告を受けております」
「生きているのか?」
「ええ。両腕に胴体を袈裟の形での両断という状態でしたが生きているようです。ですが、治療に入る為、今回の件からは手を引くようですが……」
「そうか…しかし『創世神』。『龍王』それに『鬼神』か…連中が情報を握っていたという事は、つまるところ……」
「はい。どこかしらから情報が漏れたという事になります」
その解答を聞くと黒いモヤは大きな溜め息を漏らした。
「…面倒だ……折角バレずにコツコツと進めてきたというのに……それに何で漏れたのかも調べないといけないなんてさ…」
必要あれば漏らした者を裁かねばならないのが二重に面倒に感じていた。
「気持ちをお察し」するようなボロ布の表情。それだけで気が滅入る。

「まあいいじゃん別に☆」

そんなやり取りの中。2名とは別の声が割り込む。
声の方向の先現れたのはピエロのような道化の覆面を身に着けた軽薄そうな男であった。
気楽そうな対応に黒いモヤは即座に聞き返す。
「良いじゃん…とは一体どういうことだ?」
「『龍王』に『鬼神』。御大層だが要すると【銘付き】。【星】なのは確かなんだろ?【天使】の奴ら…世界に奪られたとなりゃあ溜め息モノだけれど同じ【星】なら取り返せば良いだけの話じゃん」
「そうは言ってもだな……」
陽気な口調でえらく単純に言ってくれる道化の覆面。彼が言った様に【星】は【星】でも【銘付き】言わば実力者だ。そんな連中から奪い返すのは骨が折れるとしか思えなかった。
そんな考えが先の声に出たのか、モヤに対し道化の覆面は「でもさ」と続ける。
「あそこで奪ってんらわなきゃあ。あの後【天使】達に奪われるのは確かだぜ…情報が漏れ戦力が劣る以上これは必然だ……現に撤退時雇った【星】の一人が捕まったらしいし」
「それは聞いている。面倒だからそいつは捨てるつもりだ…」
「だよな☆でもそれはチャンスじゃね?」
「どういうことだ?」
尋ねた黒いモヤ。道化の覆面は楽しそうに人差し指を立てる。
「だってウチのて…転…なんちゃら君が【天使】に捕らえられたんだ。今頃そいつは連中お得意の尋問タイムにかかっているはずだぜ。耐性も覚悟も半端な覚醒したてのそいつはすぐに自白ゲロるだろうね☆「【星具】は『龍王』に奪われた」って…」
「ああ、おそらくそうなるだろうな…」
「だったら【天使】の連中は俺達でなく『龍王』達の方に向くんじゃあねーかな?」
「「……ッ!!?」」
その言葉に共に反応する黒いモヤにボロ布。
確かにそうである。連中の行動法則は世界の為。その為に【星具】を回収するという目的を与えられればそれだけを優先する。
当初の敵であろうこちらの事は後回しにして…。
両名が理解したのを見て道化の覆面は「だろ?」と続ける。
「だったら俺達の警戒というのは少しは緩くなるはずだ。だったらその間に別の用事を済ませておけばいい。なんせ計画にはやらなきゃあいけないことが多いからな…」
妙案であった。
しかし懸念点もある。
「だが、最終的には【星具】は必要になる。奴ら、もしくは【天使】連中から奪い返すのはどうする?」
「アハハっ☆そりゃそちらも考えているさ、よく言われるだろう「目には目を歯には歯を」ってな……入って来いよ」
道化の覆面の指示で三名の人影が現れる。
「彼らは…?」
「コイツ等は奴らと同じ【星】。それも一部は【銘付き】という先に雇った連中よりもはるかに使える猛者ぞろいさ…【星具】はコイツ等に奪い返してもらえばいい」
佇む3名。
全員が灰色の外套を身に纏っており素性を窺い知ることは出来ない。
だが、放つ気配は空間が捻じ曲がるような錯覚すら感じるほどに濃いモノであった。
「結構な自信だな…使えるのか?」
「ああ当然。【銘付き】…且つ『龍王』『鬼神』双方に因縁を持つという。面白ネタの持ち主が1名いるからな。なぁ『爆炎ばくえん』」
「『爆炎』若手【星】の中での3名の【銘付き】のうちの一つ」

「『龍王』・『鬼神』ッ!!」

「アハハハハハハハハハっ!ほら、やる気満々だろ☆」
怨嗟に満ちた『爆炎』の声に呵々大笑する道化の覆面。
ある程度笑うと咳ばらいを一つして真顔に戻る。
「まあそんなこんなだ☆【星具】の奪い合いは彼らに、俺達は鑑賞しながら別の準備に勤しもうぜ。この計画が少しでも盛り上がるようにな☆」
「ああそうだな……」
「それじゃあ皆さんえいえいお~☆!!」
黒いモヤが頷いたのを見て、拳を天に突き上げた道化の覆面。
その言葉に返す者はおらず、不気味な静寂と共にその場にいた全員の姿は掻き消えた。
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