プライベート・スペクタル

点一

文字の大きさ
12 / 170
第二章

第二節

しおりを挟む
「…うぃ成程、私と師匠の間にそのような齟齬があったわけですね」
「そういうこった」
いつもの服装に戻し、訓練用の【領域】にてエイプリルの戦闘訓練に付き合った大和。
その休憩中に事の顛末をチェルシーに伝えたところ。デートで外食するだろうという理由から大和分の夕食の食材を用意していなかったらしく…食材の買い物を頼まれることになった。
そこで大和はエイプリルの社会勉強の一環として『領域』を出て大和のアパート近くまで一緒に買い物に行く事にしたのであった。
「では私は師匠を誘うような形になったというわけですね……お恥ずかしい」
「せやね、まあこっちも驚きつつも舞い上がっていたからな…おあいこってやつだ」
「うぃ…」
「………ちなみにだけれどよ、もし本来の意味でのデートはどうなんだ?」
「うぃ、そうですね……今の私は勉学中の身ですから、そのような事はまだ早いと思います」
「さいですか」
真っ直ぐに答えるエイプリルに少々、邪だったと大和は恥じる。
「それよりも師匠。先の訓練での私は如何だったでしょうか?忌憚ない意見をお願い致します」
「そうさな…基礎はきっちりしているな…うん」
初めてであったのでスパーリングのような形式で彼女の実力を見せてもらった大和。
言葉通り、戦闘での体裁きや杖道のような杖の扱い等の基本的な骨子はキチンと会得していた。
だがまだ基礎のみ、それらの応用には到底至っていない。
また大和は彼女には他の強みのようなものがありソレを把握しきれていないようにも感じられた。
「とりあえず、その基礎は疎かにせず自分自身を知る事から始めてみたらどうだ?」
「うぃ、わかりました」
だからこそそうアドバイスをした大和。しながらもチェルシーに頼まれた物のメモを片手に商店街を歩き回った。

そうして店を回る事数十分。大体の物を買い揃えることが出来た。
「うし、こんなもんだろ(むしゃむしゃ…)」
「うぃ……(もぐもぐ……)」
途中で購入したコロッケにパクつきながら、残りの物を買おうと大和とエイプリルは商店街を巡る。
「そういえば師匠…門司さんはどうしたのでしょうか?……あの作戦の後から姿は見ておりませんが……」
「ああ、アイツは睦美の頼み事で別件だよ……俺もアイツも普段は別々に動き回っているからな…」
「そうなのですか?てっきり同じ【星団】ゆえ行動を共にするものかと……」
「そりゃ偏見だ。俺もアイツも大切な仲間で絆は感じているが…俺達の目指す場所は色々必要で尚且つ少数だからな、別々に動かないと時間がかかっちまう」
「そうなのですか……それはちょっと心配ですね…」
「意外と心配性なんだな…先の時も俺の陽動を心配してくれたんだろう?門司から聞いたぜ」
「うぃ、何故か気になってしまいまして…」
「その気持ちだけで絶頂するぐらいに嬉しいが大丈夫だぜ…それに門司も門司で次に大きく動く時にゃあ戻って来るさ」
とそこで懐に入れていた大和のスマホが着信で震える。
手にとって宛先を見てみると何と門司からであった。
「ほら噂をすれば、ってな…もしもし、どしたい兄弟?」
『大和…今時間は大丈夫か?』
「問題ねーよ、どしたい?」
『少々マズイことがわかった』
「マズイこと?」
単刀直入な門司の言葉に大和は首を傾げる。
『今俺が別件で動いているのは知っているよな?具体的な内容で言えば先の奪った『月下の雫』、折れていたアレのもう片割れを情報収集なんだが…』
「ああ睦美から聞いているぜ、大変なら手ぇ貸そうか?」
『手は足りている。それよりもその際にある情報を得てな…』
「ある情報?」
『【天使】が俺達を嗅ぎ回っているらしい』
「連中がか?」
『ああ、どうやら連中。俺達が件の【星具】を奪い取ったとことを知ったらしい。それで俺達へ矛先を変えたというわけだ……』
「目標を定めちまえば相手が誰だろうとお構いなしだな連中……それに知ることが出来たのはおそらくあの場所で戦った【星】(だれか)が連中に捕まり、そこで自白ゲロったってところか……」
『おそらくな……とりあえずお前も警戒だけはしておいてくれ』
「………………いや、どうやらちいっとばかし遅かったみたいだぜ」
『まさか…』
「ああ、後でかけ直す」
そう言って一方的に電話を切る大和。
向き直った目の前。そこには似たようなスーツを着た大柄の男と小柄な男がいた。
「師匠、門司さんからの電話の内容は?……それに目の前の彼らは?」
「詳しい内容は後から話すが…大雑把に言えば目の前の連中【天使】についてだよ」
「……!?彼らがッ!!?」
買い物袋を置き即座に杖を構えるエイプリル。
そんなエイプリルに一瞥することも無く大柄なスーツの男は大和に問いかける。
「貴様が『龍王』呉成・大和だな?」
「…だとしたら?」
「奪った【星具】。それをこちらに渡せ」
単刀直入に言ったスーツの男。
それを聞いて大和は大笑いする。
「ぷっ…あははははははははははははははははははははははははッ!おいおいオイオイおいおいオイオイ!出会って数秒の間柄で即座に要求?今時の強盗でもしなさそうなことをテンプレみたいにするたァ!【天使】諸兄は世界を守ることに精一杯で今の時勢にすら疎いと見られる!」
「持っていることを否定はしないのですね?」
「何でそうする必要があるんだ?俺達が持っている事の裏は取れているんだろ?ただの機構であるおたく等とそんな問答を繰り広げたところで意味があるとも思えんしな」
「確かにその通りだな……聞いたこちらが間違いだった」
「無用な問答ついでに聞きますが…ちなみに返事は?」
「そいつも聞くのかよ。だったらきっちりと答えてやる。NOだ!おたく等みてーなただの機構には死んでも渡したくないねっ!!」
そう言い切る大和。その言葉でスーツの男は軽く息を吐いた。
「対象の要求の拒否を確認……これより実力行使に入る」
「了解」
そう言い臨戦態勢を取り始めるスーツの男達。まるで大波のような威圧感が発せられる。
「師匠…私はどちらに応じればよろしいでしょうか?」
ソレに呑まれまいと前に出るエイプリル。杖を構える。
「そうさな…お前のその想い。身包みを質に入れてでも買ってやりたいけれどな……チェルシー」
「はぁい」
【領域】と繋がったのか、近くの店舗から突如として現れるチェルシー。現れると同時にエイプリルを抱える。
「え?…え?」
困惑するエイプリル。それを他所にチェルシーは自らが現れた扉の中へ彼女を投げ入れた。
「まだ役不足だ。悪いが戻って睦美の手助けをしてやってくれ」
「師匠……私はッ!!」
言葉の途中に閉じた扉。
同時に大和は近くに停車していた乗用車を蹴り飛ばし扉を完全に破壊したのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ
ファンタジー
 ハートとお気に入り登録、ぜひぜひお願いいたします!  ↓簡単なあらすじは''もっと見る''へ!↓  ここは、剣と魔法の異世界グリム。  ……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。  近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。  そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。  無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?  チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!  努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ! (この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)

【完結】純白のウェディングドレスは二度赤く染まる

春野オカリナ
恋愛
 初夏の日差しが強くなる頃、王都の書店では、ある一冊の本がずらりと並んでいた。  それは、半年前の雪の降る寒い季節に死刑となった一人の囚人の手記を本にまとめたものだった。  囚人の名は『イエニー・フラウ』  彼女は稀代の悪女として知らぬ者のいない程、有名になっていた。  その彼女の手記とあって、本は飛ぶように売れたのだ。  しかし、その内容はとても悪女のものではなかった。  人々は彼女に同情し、彼女が鉄槌を下した夫とその愛人こそが裁きを受けるべきだったと憤りを感じていた。  その手記の内容とは…

処理中です...