プライベート・スペクタル

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第三話 第一章

第三節

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―頭の中で『魔女』の言葉が響く。
―『果たせ果たせ…約束を果たせ…』
―頭の中で『魔女』の呪詛が響く。
―『果たせ果たせ…大いなる目的の為に…』

「外交会談への出席ねぇ…」
「ああ、数日後国民には極秘で開催される合衆国との会談に出席して欲しいとの事だ。なんでも先の集団脱獄の一件。その際の『創世神おれたち』の活躍が向こうの耳に入ったみたいでな…「是非ともお会いしたい」と元々開催予定であった会談の場でセッティングをしたらしい」
「アタシ等に知名度もそこまで来ちゃったかぁ…」
とんでもない内容を言った門司に複雑な表情を浮かべる晴菜。自分達が一定の立場まで来てしまったことを嫌でも自覚する。
よく見ると晴菜の他、以外にも大和も同じような表情をしていた。
「何よ珍しいわね。アンタの事だからもっと喜ぶと思っていたけれど……」
「こういうお堅そうな場所はどうもなぁ…国同士の場なんて絶対に面倒くせぇぞ…」
「有名云々はどんと来いなわけね…」
「ああ悪名でも一向に構わないぜ!」
少しでもシンパシーを感じた自分を恥じる様に晴菜は溜息を吐いた。
「ふむ、では日はヒミコに聞くとして、誰が出ましょうか?…馬鹿2名は一応個々のトップだからマストとして…後は広告塔としての晴菜。それと腹芸要員の私でしょうか…」
「おいおいオイオイ何参加は当然になっているんだ睦美さんやぃ。超が付くほど乗り気じゃあありませんよおじさんは!」
「同意なのは腹立つけれどそうよ!あと広告塔って何ッ」
「シャラップ馬鹿。それと晴菜」
ブーブー文句を言う大和と晴菜をぴしゃりと黙らせる睦美。
「国家間の政争に巻き込まれる可能性はありますが…他国に我々の存在をアピールする格好の場になるはずです。【星具】を蒐集する我々にとって存在感は必要不可欠なもの……諦めて参加しなさい」
「うっ、正論…」
「そこまで言われるとしゃーないかぁ…」
諦めた大和と晴菜。
睦美は「全く…」と呟くと共にいつもなら騒ぎ立てるであろうもう一名の馬鹿の方を見た。
「今回は二号に乗らなかったのですね一号。てっきり乗りかかってゴネるモノだとばかり思っていましたよ…」
「何だ?そうして欲しかったのか鉄面皮?なに今回の会談…俺も必要だと思ったからな…俺達的にも……俺的にも…」
刀の刀身を覗きながら答える門司。
「……おそらくアイツも出てくるだろうからな……アイツに頼むか…」
最後の一部分は誰にも聞こえないように門司は呟いた。

数日後、会談当日となりいつもの作戦室に集まる大和達。
「こんなもんかね…」
普段の格好とは異なり礼服としてスーツを身に纏う大和と門司。
「ん~なんか落ち着かねぇ…」
ソワソワする大和。普段のフォーマルな格好に近い門司とは異なりいつもとは全く違う恰好でどうにも居心地が悪いようである。
トレードマークのバンダナだけは長めの腕章という形で何とか死守していた。
「フフっ…バンダナがないとご主人の影が薄くなりそうですからねぇ…」
「その事だけは言うのやめてくんね?……しっかしどうにも堅苦しくていけねぇや。いつもの一張羅でも良いんじゃあねぇの?ありのままに…」
「良いわけないでしょこの馬鹿」
「礼式必要な場にいつも通りは逆に品性を疑われます。今後の事を考えて馬鹿な顔で馬鹿みたいに着ていて下さい二号」
とそこで別室にて支度をしていた晴菜達女性陣が入ってくる。
「いやぁわかっているけれどよ…言い方酷……」
いつもの辛辣さに返そうとした大和。だが言葉が止まった。
大和達と同じく普段と異なり、化粧を施し綺麗に髪を結いあげ。それぞれの特色を有した礼服やドレスを身に着けていた晴菜達。
そのあまりにも美しさに動きを止めてしまったのだった。
「ん?どうしたのよ馬鹿?普段より数段締まりのない顔をして……」
「キレイだな」
「なぁッ!!?」
シンプルそして最強の言葉が思わず漏れた大和。あまりに直球ど真ん中な言葉に晴菜は思わず爆撃した。
「ななななッツ!!?何言ってんのよいきなりッ!!?」
「ゲッホ!いや余りにもだったから俺も本音が…」
「ッツ!!?」
顔を紅潮させる晴菜。続く大和の言葉もさらに爆撃した。
「大丈夫でしょうか?大和さん」
「ふむ、もんだいありませんよミコ…見れば晴菜も礼服を狙わない程度の理性は残っていますから…」
「みたいだな鉄面皮…中々に新鮮なモノを見ているな…」
「同じく……それにしてもそちらも見違えましたね…いかにも馬子にも衣装の例文のような姿で…」
「鏡を見てみろ。それよりも正確な姿が見えるぞ」
爆発音をBGMに心配するミコと互いに皮肉る門司と睦美。
そんな中、照れ隠しの爆撃の連撃に流石の大和も我慢の限界を迎えた。
「ゲェッほ!手前ぇ晴菜!流石にやり過ぎだろうがよぃ!!俺をパンチパーマにイメチェンさせる気か!?」
「うっゴメン…でもアンタもそんなこと言うから…」
流石にバツが悪いと感じたのか、目を泳がせながら明後日の方向でぶつぶつ言う晴菜。
「ったく…褒めたぐらいで慌てる照れ屋さんめ…別に良いけれど……」
「師匠!私はどうですか?」
「エイプリルも良いよぉ…すんげぇ似合ってる」
「うぃ、えへへ…」
嬉しそうなエイプリルの頭を撫でながら、「ここまで正直に受け止めりゃあ良いのに…」と思う大和。
とそこに『フツノミタマ』の構成員が入って来た。
「『創世神』の皆さま!会場の方の準備が整いました!移動の程お願いいたします!!」
「そろそろ時間か…チェルシーも一人だが留守は任せたぜ」
「承知いたしました~ご主人もお気を付けて行ってらっしゃいませぇ」
恭しく頭を下げたチェルシー。大和も手で応じつつ会場の座標へと繋がっている扉の前に立つ。
「そういやぁ普通に座標を繋げて直接行くんだな…俺ぁてっきりどっかのホテルの一室かで待たされるものかと思ったぜ」
「別次元を用いた移動や居住は【星】の持つ技術の中でもウケの良い内容みたいよ…興味を持つ内容だしそれを見せつける形をした方が良いんじゃあない?」
「そういうもんか…成程ねぇ」
「そう言えば、ヒミコはどうした?」
「うぃ、ヒミコ様は不参加らしいと先程言っておりましたよ門司さん」
「シャラップ。行きますよ」
「お待たせいたしました【星団】『創世神』の方々ですッ!!」
『フツノミタマ』の構成員の合図と共に扉をくぐった大和達。
その瞬間割れんばかりの拍手と歓声を身に浴びた。
その中を敷かれたレッドカーペットの上を大和達は歩く。
(うっひゃあ、すげぇ歓待よう…)
(ううっ、緊張で吐きそう)
(間抜け面だけは晒さないで下さい)
小声でやり取りする大和とミコにそう釘を刺しておく睦美。
凛とした態度を崩さずに足を進める。
そのまま会場の司会に促されるまま壇上へと上がった大和達。
壇上には二人の男が待っていた。
その面での情報の疎い大和達もテレビで見ているから知っている。合衆国大統領と日本の現総理大臣である。
「よくぞいらっしゃいました…」
「カンゲイイタシマス…『イザナギ』ノミナサン…」
「…我々の歓迎の為に慣れない日本語を学んで頂いた大統領には感謝の念を禁じえません。ですが今後は母国の言葉で大丈夫です」
「……驚いた。来るにあたり何名かのこの国の【星】と会話したが…まさか全員がネイティブクラスの語学力を有しているとは…」
「【われわれ】の特性のようなモノです。こちらにも貴方の声が日本語に聞こえておりますよ…いわば同時翻訳のようなものです」
「成程…興味深い……」
顎に手をやり頷く大統領。「恐縮です」と睦美は頭を下げた。
「ところで、貴方がたの代表はどちらに?」
「俺達です」
手筈通り同時に前に出る大和と門司。
「我々『創世神』は私長船・門司とこちらの呉成・大和の2名を総長という形で活動しております」
「ツートップというわけですか、どちらもトップでありどちらもナンバーになる柔軟な対応が可能…中々に良い組織形態ですな」
此方も納得した大統領。組織の長である為、この形態の組織の長所も短所もすぐに理解した事であろう。
「うん。中々に良い機会だ。長故の警護の観点から貴方がた【星】と面を合わせて話す機会は中々得ることが出来ない。だが、隣人としていた貴方がたと話すことで新たな知見も得られそうだ…これを機に我が合衆国の【星】達ともじっくり対話の機会を求めても良いのかもしれんな」
「大統領。ソロソロ……」
「おおっと、ついつい話し込んでしまった…では『創世神』の諸君。続きはまた後ほど、一応は式典を進めよう」
総理大臣の耳打ちに失念していたような大統領。改めてまじめな表情で大和達と向き合う。
「では【星団】『創世神』の諸君。この度は我が国の問題を解決していただき誠にありがとう。国の長として我々合衆国の国民の代表として礼を述べさせていただく」
胸に手を置きそう告げた大統領。同時にお付きの者が大和に礼状を手渡した。
「君達にとっては紙切れにしか思えないだろうが感謝の印だ…受け取ってくれ」
「ありがたく頂戴いたします」
「それに我々合衆国も国益を損なわない範囲で君達に協力しようと約束しよう。さしあたっては君達の欲する【星具】の情報も現在所持する範囲内で提供しよう」
「お心遣い感謝いたします大統領」
「そして最後に個人的に言わせてくれ…どうもありがとう」
言葉と共に差し出された手を代表として握った大和。二人の握手に会場からは再び歓声と拍手が巻き起こった。
「ついては細やかながらも宴席を用意させてもらった。ぜひ楽しんでくれ」
言葉と共に大量の料理が運ばれてくる。
その合図と共に宴が始まったのだった。

※来週は休筆します。次回は3/25更新予定
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