プライベート・スペクタル

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第三話 第四章

第六節

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「お、お前等……?」
「うッ……うぐゥ!!?ぐぐぐうゥウ!!!」
顔以外が黒く変質した二人に問いかけるウルフ。その問いに二人は手にした剣と槍の攻撃により応える。
「ッ!!?」
「す、すみません……ウルフ卿……」
「私達を斃して下さい……容赦なく……」
苦悶の表情で乞うキィルとレェナ。言葉の間もウルフとミコに攻撃の手を止めない。
「ウルフさん応戦をッ!!?」
「うるせェ!あいつらは俺の大事な仲間なんだ!半人前が余計な意見するんじゃあねぇ!」
〈うーん…思った以上に速度が出ねぇな…そこの上司は兎も角、【星】未満の小娘すら止められるとは…〉
〈どうせ連中が抵抗しているんだろ?……いつもの事だ……〉
〈だろうな、だったら……こっちもいつも通りにするか……〉

【演目】『電波蟲 限滅拮抗オーバーリミット 出力120%』

「う、うぐゥ………ッ!」
介される黒装束の声と共に演られる【演目】。瞬間、二人の速度が急激に増す。
振るわれる剣と槍の速度も受けた時の威力も先程とは比べ物にならない程に鋭く重い。
「うぐぐグッググググぐぐ………」
「ぐッギギぎッギ…ぃ…」
攻撃と共に二人から漏れるミシミシと何かが軋む音と苦悶の声。それだけで二人の肉体が限界を超えた動きで酷使され、その痛みが全身を駆け巡っているのだとわかる。
〈おいおい…リミッターを外してこのレベルかよ……とんだ外れくじを引いたもんだぜこりゃ……〉
〈まあ良いじゃあねぇか…同じ【星団なかま】同士の同士討ち。これほど甚振り甲斐のある状況まずないぜ!〉
〈だなッ!〉
楽しそうな黒装束の声と苦悶の表情のキィルの相反する形からの斬撃。肉体を顧みない駆動と共に放たれたソレは吸い込まれるようにウルフへと向かう。
だが直撃の瞬間、ミコが横から割り込む。
ウルフと共に吹き飛ばされはしたものの防ぐことは出来た。
「あうッ!?」
「グッ……」
〈ちッ、一人落とせると思ったのに……無関係な小娘が余計な事をする〉
「ウルフさんッ!仲間に攻撃するのを躊躇するのはわかります!しかし戦わなければここで我々が!!」
「うるせぇって言っているだろうが!!絶対に何かある筈だ!あいつ等を助かる方法が…絶対に何か……ッ!!」
〈……プっ、あはははははは!!コイツはとんだ傑作だ!そこの【星】よりもそうじゃあない小娘の方が現実を見ていやがる!!〉
〈ボロボロになりながら自らを斃すように懇願しているのになァ!……ほら見てみな!〉
「………ぁ……ぅ……」
〈もう肉体は限界寸前で声を出す。体力すら無い状況だぜ!!〉
〈あ~あ…お前が渋らずに斃していればこんなにコイツ等は苦しむことは無いって言うのになァ!〉
自らの事は棚に上げ楽しく笑う黒装束の声。相反して生気すら無くぐったりしている二人からスピーカーの様に響き渡った。
〈さてと…それじゃあソロソロ終わらせてやるよ!〉
「ウルフさん……ッ!」
「違う……あいつ等は俺達『星炎騎士団』の大事な仲間なんだ……絶対に何か方法がある筈だ……」
〈くたばりなァ!〉
吊るされたマリオネットの様な様相で未だに迷うウルフに斬りかかる。
直撃したウルフ。
だが受けたのはキィルの攻撃ではなく、鞘入りの『月下の雫』から振るわれた巫女の一撃であった。
「ッツ!!?」
吹き飛び広場端まで転がるウルフ。そのままミコはキィルの斬撃を止め反撃を見舞った。
「て、手前ぇ、何しやがるッ!!?」

「いい加減にして下さい!?」

「……ッ!?」
怒声を交えたミコの返答。これまで見たこと無い彼女の豹変にウルフは思わず押し黙る。
「さっきから何をやっているんですか…ッ!苦しんでいる仲間を目の前にウジウジウジウジ……そうしている間にも仲間は苦しんでいるというのに!」
「…でも、アイツ等は俺の大事な仲間なんだよ…ッ!」
「だったら余計に腹を括りなさい!!」
「………ッ!!?」
「おこがましいかもしれませんが私はあの二人の気持ちがわかります。私も受け入れてくれた仲間がいます。まだ【星】でもなく足を引っ張る事の方が多い私を快く受け入れてくれた大切な人達が居ます……だからこそ、最初から自滅すると踏み台になると言い、操られたら即座に斃す事を願う二人の気持ちが痛いほどわかりますッ!貴方とウォーロックさんを大切な人達を信じ託せるからこそ覚悟を決めたんです!!大切な仲間ならその覚悟を受け入れなさい!!」
「お前…ッ……!」
〈ちッ、部外者だからか中々うぜェなあの小娘……〉
〈全くだ……折角、同士討ちショーも良い所だったのによォ…〉
〈だがどうするんだ小娘!?刃を納めた状態で応戦しているのを見る限り、その剣の【星具】を完全に持て余しているんだろ!?そんな不殺気取った状況でリングアウトでもさせる気かァ!?〉
〈別にそれでも良いけれどなァ!?ぶっ飛ばされるのはそこの役立たずの身体……俺達じゃあねェ!!?〉
試合には負けるだろうが勝負には勝てると勝ち誇る黒装束の声。
その二人にミコは高速で抜き放った【月下の雫】の一閃により応えた。
〈〈は?〉〉
瞬いた様な白銀の一閃。だが斬撃はキィルとレェナの身体ではなくその後方に振るわれる。
しかし、二人はガクリと力なく倒れた。
「『一太刀 首提灯』…何とか上手くいきました……」
〈おい…ッ!それは聞いた事があるぞ!それは『鬼神』の【演目】だろ!?なんでただの人間のお前が使える!!?〉
〈それよりも小娘!そこを狙ったのはまさかお前……ッ!?〉
「ハァハァ……はい、糸の様なモノを見えましたので…それが操る為のコードで…貴方達の卑劣な【演目】の生命線だと思い……斬りました……」
【月下の雫】に吸われ息も絶え絶えになりながらも、ミコはしてやった顔で答える。
それにより二人を介した声は完全に消え、黒装束の声は直接聞こえるようになった。
「ありえないだろッ!?これまで見えた奴は【星】でもいないんだぞッ!?それをただの人間が…ッ!?こうも容易く!??」
「……推測ですけれど…ハァハァ……この生命力を吸う【月下の雫】コレを使用していたおかげでそう言った類を感知出来る程に鋭くなったのでしょうね……」
「馬鹿な…ッ、そう言った感覚が優れている奴も相対したが、これまで気づかれた事なんて無いぞ!!」
「ええ私だけじゃあおそらく無理でしょう…ですが、今回はキィルとレェナさんがいました……お二人が限界まで抗ってくれたおかげでその隙が綻びの様に気づかせてくれたのです…」
「ちッ、運良くピースが集まったという訳か……ッ!」
「ええ、私は本当に美味しい所を搔っ攫っただけ……お二人の覚悟と思いの勝ちですッ!」
「くッ……!?」
堂々の勝利宣言のミコ。
苦虫を噛み潰したような黒装束の声が漏れる。
だが、直ぐに平静を取り戻す。
「だけど……だけどよぉ、それがどうした小娘?お前がやったのはただ操り人形の役立たずを解き放っただけ…俺達は何も被害が無いんだぜ!」
「ああそうだ…ッ!こいつらが戦闘不能な以上、ここは俺達チームの負けになるが、元々予定調和だ!何の意味もねェ!!」
「そして小娘!お前の顔も覚えた!【星】にも覚醒っていないただの人間が、俺達に恥をかかせたんだ……絶対に復讐してやる!」
「へへへ…覚悟しておけ!」
下衆な笑い声が響く広場。だがそのような言葉にミコは一切気にせず、握りこぶしを掲げる。
周囲や隣にいるウルフすらその行動はわからないだろう。だが黒装束の二人はそれだけで十二分に理解出来る。
そのミコの手の中に先程切断された【演目】のコード。黒装束二人の身体に繋がったその先端を握っている事を…。
「そ、それは…」
「ハァハァハァ……何故未だに【月下の雫】を納めていないか…生命力を吸われるがままにされているか……理解出来ますか…?」
「ま、まさか……何てことしようと考えているんだこのクソガキィ!!?」
「…理解出来ましたね……おそらくその【演目】で他人の身体を借りてさんざん好き勝手したんでしょ?…だったらそのツケぐらいはきっちり払わないと……」
「や、やめろ!?」
「私が取り立て役なのは皆さん納得されるかわかりませんが……今は私しかいませんからね……謹んでその大役引き受けさせて頂きます……」
「た、助け……ッッ!!」
懇願を聞き入れる事無く。コードの先端を【月下の雫】の柄に結んだミコ。
「「オゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴGGGGGGGG……」」
際限なく命を吸い取る魔剣に黒装束は干からびながら断末魔の様な叫びをかき上げた。

「ハァハァハァ……やりましたよぉ……私初勝利です…」
【月下の雫】を鞘に納めながらそう呟いたミコ。力尽きそうに膝から崩れそうになる。
それをキィルとレェナも抱えたウルフが優しく支えた。
「ウルフさん…?」
「ああ、これぐらいしか出来なかったからよ…」
「……何言っているんですか…ウルフさんの人望もあってこそですよ」
「…それと色々悪かったな…ミコ……助かった…」
少しはにかんだ表情のウルフ。二度三度ミコの顔を伺うとスッと頭を下げる。
「別に良いですよ…即席でしたけれどコンビ、困った時はお互い様です」
そんなウルフにミコは笑顔でそう返した。

※次回は2週の間を頂きます。次回更新は2月10日予定です。
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