プライベート・スペクタル

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第三話 第五章

第六節

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「『愛』…?」
「そ☆」
一体お前は何を言っているのだと言わんばかりのリギル。だがエルマはお構いがない。
「貴方の持つ『愛』それにワガハイはダメージを受けなかったのだよ!」
「………貴方、頭大丈夫ですか?どこをどう考えたら、私が貴方に『愛』があると言えるんです?」
エルマとリギルはこの場が初対面で、それに相対戦の敵同士である。
もしかして対戦相手と言うだけで、『愛』の認定をされるのか…ますますわからなくなる。
「いいえ、違うわ、違い過ぎるわ!貴方が『愛』しているのはもっと別の方でしょ!★」
「別?」
「貴方のトワ様よ~ぅ!彼女を『愛』している貴方の攻撃に想いに、ワガハイはダメージを受けなかったの!☆」
「何ですかその理論ッ!?」
トンチキ理論に敵ながらも思わずリギルはそうツッコんでしまった。
「門司様。エルマ様が言っている事ですがぁ……」
「当然、出鱈目に決まっているだろそんな体質…アレはアイツの【演目】だよ…」
ハッタリブラフという事ですぅ?」
「それも違う。無意識に演じているんだよアイツは……」
「はいぃ?」
門司の回答に珍しく素っ頓狂な声をあげてしまったチェルシー。
【演目】と言うのは自らの異能や技術を自分独自の技術、様式に昇華させたモノだ。そうである以上、その【星】がそれをおこなうという意思が必要な筈である。
無意識になんて事はまずあり得ない。
「それにリギルだが、奴の【演目】は兄弟も言ったように中々に無体で強力であることは間違いない……だが、規則を操るといった時点でエルマとの相性は…」
「それじゃ、リギルっていう人。次はワガハイの『愛』を魅せてあげる!」
「最悪だろうな」
そう言って両手でハートを作ったエルマ。
瞬間、リギルの足元に火が点いた。
「なッ!?」
一瞬にして炎として燃え盛る足元。リギルは即座に懐のペットボトルで水をかける。

【演目】『杓子定規の支配者 万物の根源』

「炎は水により消える!」
【演目】により僅かな量から、足元どころか周囲全てを水場に変える程の水量を発生させたリギル。
だが炎は一切消える事無く増々燃え上がった。
「何故消えないッ!?」
炎は水で消火出来るこの世の規則ルールである。なのに、一切消えない事にリギルは焦りが産まれる。
「そりゃ当然だよ☆『愛』の炎は水程度で消える訳ないじゃん!」
「『愛』の炎…」
それがこのちんちくりんな【星】の【演目】そう考えたリギル。
焦っていて今気づいたが、この炎は熱くない。まるで湯たんぽの様な温もりの炎である。
(ひょっとして無害なのか?…なら問題ないッ!!)
そう断じたリギル。虚仮威しでコチラの戦意を挫くのであろうが、バレたら無意味である。
そうとわかれば容易い。懐に手を突っ込み、規則を発生させるための道具を手に取ろうとする。だが一向に懐の中にある物達が掴めない。
見るとなんと手が消えていた。
「なッ、なぁァァァァ!!?」
刃物で切り落とされた様にスパッと消えたわけでは無い。今ある部分を見れば蝋の様にドロドロに溶けているのだ。
それに手だけではない。よくよく身体を見渡すとなんと全身が手と同じようにドロドロに溶け始めていた。
(まさか、この炎の所為か!?)
「くッ、くそオオオォォォォォ!?」
即座に悟ったリギル。だがあまりにも遅すぎた。
まるで早送りの様にリギルの肉体は液状化したのであった。
(…………………あれ?なぜいしきが…ある?)
もはやピンク色の水溜まりの様な姿なのに状況を理解出来るリギル。目や耳等の感覚器すら無い筈なのに周囲を見渡すことが出来る。
目の前にはあのちんちくりんの【星】が笑みを浮かべて立っている。
そしてある物を手にしているのを見た時、リギルに怖気の様なモノが駆け巡る。
(しょ、正気か…ッ!?コイツ…っ!!?)
「ふんふんふ~ん♪」
手にしていた物、それは何とミキサー。
ミキサーを手にしたエルマは鼻唄交じりに水溜まりとなったリギルに近づくと、カップを使って掬い始めたのであった。
(やッ、やめろォォオオオオオオオオオ!!!?)
狂気の様な光景に思わず叫ぶリギル。だが声を発する事も身体を動かす事すらも叶わない。
あっという間にリギルの肉体は全てミキサーの中に納まった。
「スイッチ…オーン☆」
(おごごごごごごゴゴゴゴゴゴ………)
電源を入れられ勢いよく駆動するミキサー。リギルはまるで洗濯機に長時間入れられているかのような気分を味わう。
ようやく止まったミキサー、だがこれで終わりではない。
そのままボウルに流し込まれると今度は大量の小麦粉と混ぜ合わされる。
(おぎゅゥゥゥぅぅぅぅ……)
そしてそのまま型の様なモノに流し込まれると、いつの間にかそこに在ったオーブンの中に入れられる。
余熱は十二分、万全であった。
(おがぁあああああああアアアアアアアアアア!!)
そのまま灼熱に晒されるリギル。これまで自分が調理されるなんて感覚味わったことが無い。痛く辛く悍ましい感覚の筈なのにそれを仕方が無いと受け入れてしまっている自分もいるまるで不思議な感覚。それを永劫のように感じる時の中で余すことなく味わい続ける。
やがて焼き上がり用意されていたクリームと苺でデコレーションされたリギル。
切り分けられて口にエルマの口に運ばれる時には何も感じなかった。

「………………………はッ!!?」
ふと我に返ったリギル。
自分の身体を見るとそこには何もない自分の身体があった。
「……これはいったい?」
あの痛みも自らが食される感触も確かにあった。それなのにその部分が丸々カットされたように何も無かった。
(もしや先程の光景は幻覚?…恐ろしい程のリアルな幻覚を相手に見せる事で相手を壊し再起不能にさせるのが目に居る【星】のやり方ですか……)
そうでなければ食された時点で終わりな筈だ。先程の非現実な光景も合わさり思えば思う程そうとしかありえない。
(だとしたら恐れるに足りず!超リアルとは言えど幻覚なら対処のし甲斐がある!)
思った瞬間今度は足元が崩れ去る感覚を味わうリギル。次は文字通り天地が逆転し空へと落ちた。
(またしても超リアル!?だが幻覚なら感覚だけ…問題ないッ!)
上空に放り出されながらも冷静に懐から乾電池を取り出し、気付け代わりの電撃を自らに浴びせる。
だが空に落ちて行く感覚は消えなかった。
(何故だッ!?)
自傷行動は幻覚を解くのに最も適している。幻覚を駆ける術者が予想が難しく綻びが生じるからだ。メジャーなもので夢で頬をつねるのもそれにある。
(私の自傷すらも幻覚によりでっち上げたモノ?……それか考えたくは無いが、この現象自体が現実?)
「ありえない!こんなことが実際に起こる訳がない!?」
「…頭が固い奴ほど、この袋小路に嵌りやすいよな……」
叫んだリギルを見ながら呟く門司。同じように彼も浮いていた。
よく見ると門司だけでない。リギル自身は気づいてはいないが、この場にいる全員がリギルと同じように空に落ちていたのだ。
それはつまり幻覚ではなく実際に起こっていることを意味する。
「支離滅裂で無茶苦茶な混沌。文字通り何でもありな【演目】。『WITCHCODE:CHAOS』アイツの思い付きを現実へと反映させる。俺が知る限り尤も最凶に近い【演目】だ」
だからこそ『愛』の有無によって攻撃の有効が決まる。ケーキに変えられ食される。空に落ちるなんて荒唐無稽な現象を引き起こすことが出来るのである
「それはそれは…かなり万能な【演目】ですねぇ。門司様はどのように勝たれたのですぅ?」
「実際に起こされるとはいえ元はアイツの発想の産物……あの時はアイツの【演目】に最後まで付き合ってやった。正直紙一重に近かったし、次に同じ手でと言われたらもう無理だろうな…あいつに惚れられてしまったし……」
「成程ぅ」
「リギルの規則を基にした【演目】は確かに強力だが、だからこそ女児の様な柔軟な発想のアイツの【演目】を破ることが難しいだろうな…」
規則を基にしたと言えば聞こえは良いが、実質規則に縛られている。そういう意味でリギルにとっては最悪。まさしく天敵に近いモノなのである。
(い、何時になったら…何時になったら終わる!?)
未だに幻覚であると信じて疑わないリギル。そのまま上空の雲に突っ込む。
すると雲はまるで綿のように優しく全身を包み込む。
(雲は大気中の水分、こんなこともあり得ない!?いったい…一体何時になったら)
「いつになったらこの幻覚は終わるんだぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
そのまま包み込んだ雲は手へと形を変えるとリギルを更に上空高くまで放り投げた。

【演目】 『WITCHCODE:CHAOS LOVE&PIACE』

門司達よりも高く星になったリギル。そのまま彼は地上に帰って来ることは無い。
それにより相対戦第一戦は場外によりエルマの勝利と相成ったのであった。
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