プライベート・スペクタル

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第三話 第六章

第一節

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高速で打ちあう門司とアトラス。新たな刀にして業物『桃源』を持っている門司に対してアトラスは素手の筈なのに、身体が切り裂かれた様子も無い。
TAP♪TAP♪TAP♪TAP♪TAP♪TAP♪TAP♪TAP♪TAP♪TAP♪
(鎧の様な自らの身体、そして【演目】の基になる大地の力で固め、切っ先をうまく逸らし打つ……祈祷の踊りながら兄弟に肉薄する白兵戦能力は顕在か…)

【演目】『巨神 響鳴の宴』

ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪
アトラスの『巨神』により波打ち始める大地。リズムに乗ってまるで踊るように揺れる。
幾重の大波へと化し門司を飲み込もうと迫る大地。
だが……。

【演目】『鬼震 小噺 五ノ太刀 天災』

門司の一刀。巨大な斬撃波によって斬り伏せられる。
「…相も変わらぬ威力。ならこれはどうだ?」
DAN♪DAN♪DAN♪DAN♪DAN♪DAN♪DAN♪DAN♪DAN♪DAN♪

【演目】『巨神 練武の響きビート

リズムを変えるアトラス。先程の『響鳴の宴』よりは波の振れ幅が少なく、その分等間隔で連続する。
振れ幅が弱いぶん楽?…否。
『……振動波で動きを止めたのですか!』
電動按摩器等の振動に指を置いたらいつもより離れにくくなる。その現象を応用しているのだと即座に察した睦美。現に固定された様に門司は一歩も動けなくなっている。
「…ッ、足だけでない手の指先一つに至るまで動かすのが難しくなっている」
「壊れろ…」
舞うように門司に向かうアトラス。ブレイクダンスのような踊りから繰り出される鞭の様な蹴りを放つ。
「スゴイな…確かに余程の奴じゃあない限り、全く動かせなくなって詰みだ…だが……」
抜刀しアトラスの蹴りを迎撃した門司。急に拘束が解けたようなそんな動きである。
「同じく【演目】で振動を扱う俺なら対応できる…」
同じく振動を起こしアトラスの振動を打ち消した門司。手にしている刀もリィィィンと強く震え始める。
「『鈴鳴』か…良いぞ、いよいよ本番だな」

【演目】『鬼震 小噺 玖ノ太刀 愛宕山あたごやま

リィィィンと鳴り続ける『桃源』を静かに下段へと構えた門司。
すると先程まで揺れていた大地もまるで凪いだ海の様に静かになる。
「揺れを乗っ取り治めたか!」
僅かな時間で大地は元の様子へと治まった。
「行くぞ」
今度はこちらから逆に門司は打って出る。

【演目】『鬼震 小噺 二ノ太刀変調 小烏丸 集』

弾幕の様な全方位に斬撃を放つ【演目】。それを一方向に集中させる。
隙間なき無数の斬撃がアトラスに襲い掛かる。
先程まで素手により対応していたアトラスも『鈴鳴』により増幅したそれには対応できず、壁上に操った大地を盾のようにして防ぐ。
壁は板チョコのように割れたが、アトラスはダメージを身体中を薄く切り刻まれるだけの最小限に抑えることが出来た。
「ぬんッ!」
壁の破片や瓦礫を蹴り飛ばすアトラス。横殴りの雨のように門司を襲う。
だが門司はその弾幕を軽々と躱しながらアトラスへと近づく。
そして一刀のもとにアトラスを切り裂いた。
「ぬ…ぐッ!?」
『よしッ!』
横腹を裂かれたアトラス。血が噴水のように噴き出す姿を見て通信機越しの睦美は歓喜の声を漏らす。
「終わらせてもらうぞ」
トドメを刺そうとする門司。リィィンと鳴る刀を鞘に納め抜刀術の構えを取る。
その時……。
「……ふッ、くく……良いぞ……」
ぼそりとそう呟き笑みを浮かべたアトラス。噴き出た血を掬い取ると自らの身体に塗り始めた。
何かを描く様に指で自らの身体をなぞるアトラス。そうして指を離すとアトラスの身体には紋様の様な模様が刻まれていた。
「俺がいた部族は…侵略者共との戦いの際にこの紋様を刻んだ。信じた大地の神と一体になる為に己を昂らせる為にな…」
紋様を刻むと共にアトラスの身体にある変化が起こる。褐色の肌が赤へと染まり、二回り身体が怒張する。切り裂かれた腹の傷はみるみる塞がり、何事も無かったかのように消える。
塗りつけた紋様は橙色に変わり輝き始めた。
「信心を失い、部族無き今、コレを行う事はないモノだと思っていたが……よもや再び娑婆に出て行う事になるとは……感謝するぞ『創世神』……感謝するぞ『鬼神』長船・門司……」
まるで喜ぶように大地が跳ねるとそこには真紅の魔人が居た

【演目】『巨神 宣唱の儀 神纏い』

「…ッ」
「初撃はサービスだ、きちんと耐えろよ……」
瞬間、姿が掻き消え門司の目の前に一瞬で現れたアトラス。門司の腹部に打撃を叩き込んだ。
「ぐッ!?…ォォォ……」
防御出来ず直撃した門司。視界が白黒に反転する。
ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪
続けて連撃を放つアトラス。先程と同じく踊りを基盤としたものであるが、先程までに比べると威力が違い過ぎる。
まるで一発一発が大地を割るようなそんな威力であった。
防御の機会も間に合わず、最後の蹴りを頭部にまともに受けた門司。吹き飛ぶと作り上げられた大地の壁に強く叩きつけられた。
「ふぅ、随分久しぶりだったが…やはりこの姿は気分が良いモノだ…」
「……………………………」
「まだこの良い気分を味わっていたいんだ。壊れるなよ『鬼神』…」
「………当然だ」
短くそう言って再び立ち上がった門司。
「お前が一段上にギアを上げたのなら…俺も上げてやる」
そして再び抜刀術の構えをとった。
「ほぅ……」
「こちらも初撃はサービスだ……これで斃れるなんて興が冷める事はするなよ……」
言った瞬間、門司の姿が掻き消える。

【演目】『鬼震 小噺 一ノ太刀 首提灯 錬』

そして一閃。通り過ぎ様にアトラスを斬る。
刃はアトラスの左肩を斬り裂いた。
「ぐッ…うぅ………」
苦悶の声を漏らしたアトラス。
だがこの後には笑みを浮かべた。
「ふッ、ふふふ……良いぞ、これだ……コレを待っていた」
楽しそうに笑うアトラス。門司に打撃を叩き込む。
「うッ!?……ふふふッ……」
受ける門司。吹き飛ばされないように踏ん張りつつ、返し刀で斬撃を叩き込む。
その表情はアトラスと同じように笑顔であった。
「ふ、ふふ…ふふふ……」
首筋を斬り裂かれても微動だにをせず打撃を叩き込む。
「…ッッ!?フフっ……フフフ」
「は~ははははははははははハハハハハハハハッ!!」
「ふはははははははははははははははははははッ!!」
そうして始まったノーガードの応酬。アトラスだけでなく門司も普段ではありえない様な笑い声を上げる。
『ちょ、ちょっと一号!?どうして急にそんな戦い方をッ!!?』
通信機越しに困惑する睦美の声も耳に入らなかった。
「「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」」
『門司!?』
(聞こえているさ鉄面皮。キャラでもないそんな心配した声を出すな…)
狂ったように笑いつつも心の中でそう呟いた門司。先程の声を実はきちんと聞こえていたのである。
(と言いつつも俺もキャラじゃあないか…だが今、ちょうど良いところなんだ……もう少し待っていてくれ)
直後、顎に一撃を受けた門司。


そこで少々時を巻き戻し、10日間のモラトリアム期間にまで遡る。
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