プライベート・スペクタル

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第三話 第六章

第五節

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『大和、何時の間に!?』
「やはり来ましたね呉成・大和。いつかいつかと待ちくたびれていましたよ」
「ああ手前の姿が現れた瞬間にこっちに向かったのよ…仲間のピンチに間に合って良かったぜ」
飛び蹴りによる反動を利用し距離を取った大和。
砕いた礫を蹴り放つがトワにすべて防がれる。
高速で接近し格闘戦を仕掛けた大和。拳掌と蹴りを撃ち込む。
だがこれもトワは一撃も受ける事無くすべて防ぎ切った。
「ふむ…先に比べると基礎でありながら一撃一撃が重い。どうやら貴方も相応にレベルアップしてきたみたいですね」
受けた際の掌の感触を確かめながら呟いたトワ。
「ああ、コレから否が応でもその身に叩き込んでやるからよぉ~…楽しみにしてな」
大和も笑みを浮かべながら構える。
とそこで……。
「よっしゃあ!ワガハイ、イズバック!!」
吹き飛ばされ文字通りの星となっていたエルマも戻って来た。
原理も方法も不明だが、どうやらこの短時間で無事に戻って来れたようである。
「よくも吹き飛ばしてくれたねトワとやら!いくら大海の如き心の広さを持つワガハイもプンプンだよッ!」
「フフフっ…外野も五月蝿くなってきましたね……」
「エルマか」
「おおこっちに来ていたんだ門司きゅんの親友。ここでワガハイと共闘か~ァ!?まさかの展開にビックらこいだけれども、ワガハイはどうしたら良い?というか門司きゅんは何処へ!?」
「なら門司を連れてこの場を退いてくれ、頼めるか?」
「え、それはどういう?……ってキャァァァ門司きゅん!!?」
そこで負傷した門司の姿を見たエルマ。血相を変えて門司のもとに駆け寄る。
「門司きゅん!?大丈夫!?門司きゅん!?傷は浅いよ!?門司きゅん!?死んじゃやだよ!?門司きゅん!?」
「頼むから少しでも良いから黙れエルマ……痛みに加えその甲高い声で意識が遠のく……」
「門司きゅん!?」
「頼めるか、エルマ?」
「うんッ任せて門司きゅんの親友!門司きゅんは命に代えても死なせやしないから!」
そう言って門司を豪快に担いだエルマ。腕が千切れないように抑えている門司はどうすることも出来ず為されるがまま背負われる。
「兄弟……いつもいつもお前に任せてスマン……」
「何言ってんだよ、こういうのは適材適所…それにコイツは俺の獲物だぜ。いくら門司と言えどそいつだけは譲れんな~ァ」
「ああ、そうだったな……んじゃあ任せた」
「任された」
何時も通りの笑みと軽口、そしてVサインで返した大和。
「はいどぅ!アンビュランス!!」
こうして門司はエルマに担がれて戦線を離脱した。
「ご主人、たった今睦美様から『フツノミタマ』の医療班の派遣を依頼したと報告がありましたよぅ」
「そうか、通信機つけずに黙って出て来たのは怒ってた?」
「ええ愚痴が少々ですがぁ…ところでご主人。私はこれからどのようにぃ?」
「残っているからわかっているくせに~ィ、俺のお守りを頼むぜ!」
「クスッ…仰せの通りにぃ……」
嬉しそうな表情で恭しくお辞儀をしたチェルシー。
そうして大和は再びトワと対峙をする。
「終わりましたかね?」
「あぁ…待ちくたびれたか?」
「フフフっ…いえいえ、コレからの時間を考えるとこれぐらいは…」
軽く笑うトワ。笑いながらもゆったりと歩き始める。
同じように歩き始める大和。
二人で円を描く様な軌跡、だが凶暴で獰猛な二頭の獣が間合いを確かめ合っているようであった。
「世界に宣戦布告をしてからというモノ。思えば興味を持てたのは貴方だけだったと思います『龍王』呉成・大和……」
「そりゃどーも」
「ええ、先程の味見…それだけで先の戦いより強くなったと実感できた。ガラにもなくアツく昂って仕方がありません」
「また勧誘したい具合にか?」
「フフフフフっ…分かりきった答えを聞くために問いませんよ。それに……ィ!!」
「オラァ!!」
「貴方とはこうした方が何倍も愉しいとわかりましたから!」
互いに合わせたかのような高速の肉薄。まるでガンマンの早撃ち対決の様な緩急から大和とトワの戦いは始まったのであった。

超高速で体術の応酬を繰り返す大和とトワ。
トワの格闘戦能力は見た目に反してやはり高く。大和の打撃を受けつつも放つ手刀は掠った大和の右肩を衣服ごと容易に切り裂く。
しかし…。
「薄皮一枚だけだぜぇ!!」
大和の近接能力には及ばない。徐々に押し返し蹴りを叩き込む。
吹き飛ぶトワ。右肘が反対方向にひん曲がった。
追撃を仕掛ける大和。その瞬間、身体に妙な違和感を感じる。
「コイツは式典の時のッ……」
まるで溶かした鉛をかけられていくような感覚。身体の動きが徐々に重くなっていく。
「フフフっ…やはりもう接近戦では勝てませんよね……」
「……っ…だったら降参したらどうだい?その申請は未だに受付中だぜ」
「ご冗談を…それは当然の事でしたし、それに……」
ひん曲がった右肘が見る見るうちに元に戻っていく。
まるでテレビの逆再生の様に…。
「私の能力を使えば、その程度の差など……とるに足らないモノですから」
そうして完全に戻った右腕をかざしたトワ。さらに大和は自身の身体が重くなる。
「もうほとんど身体は動かせないでしょう?……尤も…もう聞こえていないのかもしれませんが……」
含みのある言葉を吐きつつ大和にゆっくりと近づくトワ。掌を手刀の形に変え振り上げた。
「では、あっけないモノでしたが…さようなら」
そうして手刀を振り下ろそうとした瞬間…。
「オラぁッッ!!」
掛け声と共に急に軽やかに動き出した大和。
そのまま驚く時すらも無い。無防備なトワの胴体に拳を叩き込んだ。
「……ぐぶッ…」
口端から初めて血を漏らすトワ。そのまま遥か後方に吹き飛ぶ。
「…なんと…まさか……」
再び右手をかざしたトワ。先の様に大和の動きも徐々にゆっくりになり始める。
だが…。
「かアッッ!!」
再び掛け声を発する大和。動きも同じく元に戻る。
それに先程とは異なり何か輪のようなモノが砕け散った。
「二度目……どうやら完全に理解したようですね、私の能力を……」
「ああ、未だにどうにも信じられないがな……」

「まさか『時間に手をかける』そんな無法なモンだとは思わなかったぜ…」
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