僕は生まれて初めて君の為に泣く

tera

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08ー心遣い

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 さらに日は巡って、冬も終わりに近づいた時。

 僕は駆け足で商店へと向かい、注文していた物を受け取る。

 今日は手伝いはお休みの日だ。

 店頭に立っていた店主のおじさんが、綺麗に梱包された箱を奥から持ってきてくれた。



「あれ、こんな梱包ありましたっけ?」



 最近では発注もさせてもらえるようになったから知っているんだけど。

 卸売の業者に杖を頼んでも、なんか金ピカに光った装飾とか彫り物がされた箱で届くことはない。

 普通、無骨ななんの飾りっ気もない箱で届く物だ。



「クレイ。女の子へのプレゼントだろう? ならちゃんと飾り付けないと」



 そう言いながら、店主はグッと親指を立てる。



「よ、予算が……」



 商売の手伝いを続けていたからその辺もよくわかる。

 箱はタダじゃないってこと。

 天引きではなく貰って貯めたお金で払うと決めていたので、少し足りない計算になる。



「箱代はいいよ! とりあえず時間がないんだろう? 早く行ってやんな!」



「で、でも……」



「生真面目な性格はすごくいいが、融通効かないと女の子は捕まえれないぞ?」



「い、いや捕まえる訳ではないんですけど……」



 射止める、というよりも。

 僕はフィーナの門出を祝ってのことである。



 心配かけさせないように、プレゼントを送る。

 このプレゼントは……彼女を捕まえて置くものではない……。



 それでも、ありがたいと思った。

 ただ買うために必死に働いていたから、梱包のことにまで頭が回っていなかったのは事実。



「ほら、時間」



「あっ! す、すいません。このお礼は……働いて返します!」



「うん、期待してるよ。って言ってももう十分すぎるほどだけどね」



 そう言う店主のおじさんに頭を深く下げると、僕は駆け出した。

 なんとか間に合った。



 実は今日はフィーナがこの街を出て言ってしまう日なのである。

 本当はもっと余裕を持って旅立つ予定だったらしいんだけど。



 なんだか最近、モンスターのよくない話が街で噂されていて、その影響で早めに出ることになったのだ。
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