8 / 19
8 さらなる前進
しおりを挟む
キライトがミティアスに触れるという行為は日を追うごとに増えていった。はじめは戸惑っていたミティアスも、いまでは触れられることを堪能する余裕も出てきた。
そうなると、今度はキライトがどうして触れてくるようになったのかが気になり始める。自分のことを信頼し始めている証拠かもしれないが、それにしては急な変化だ。ほかにも何か変化があるかもしれないと考えたミティアスは、キライトのことを観察することにした。
観察を始めて三日が経った。触れる回数以外に変わったところはない。言葉数が増え、会話の回数が増えているものの驚くほどの変化ではなかった。
(じゃあ、触れるという行為だけ変わったってことか?)
何がきっかけで触れたくなるのかはわからないが、おずおずと手を伸ばしてくるキライトの姿は初めて会ったときの甥っ子たちを思い出させた。
(まるで確認しているような……いや、もしかして思い出しているとか?)
かつて生母と触れ合っていたときのことを思い出しているのかもしれない。触れ合うことで感じる心地よさに気づき始めている可能性もある。
(まるで幼子の成長のようだな)
あながち間違いではないかもしれないとミティアスは思った。話を聞く限り、これまでのキライトはシュウク以外と接触する機会が皆無だったのだろう。キライトを不憫に思っているシュウクも、さすがに侍従という立場を超えるような接触はしなかったはずだ。
そんな状態だったからこそ、ミティアスに抱きしめられ何か感じたのかもしれない。キライトの中に眠っていた何かが目覚めようとしているのだとしたら……。
(せっかくなら、僕を特別な存在だと思ってくれるといいんだけど)
つい焦ってしまうが、さすがにそこまでの変化はまだ望めないだろう。それでも自分に対して何かを感じてくれている可能性はある。昼寝をする前、少し寂しそうな表情を浮かべていたのを思い出すと否が応でも期待が高まる。
「殿下、ニヤニヤと鼻の下を伸ばしてどうしました?」
「そういうことを言うために、珍しく“捕リ篭”に入ったのか?」
ニヤリと笑っているダンをひと睨みしたミティアスは、ソファから立ち上がると扉近くに控えるダンとシュウクに近づいた。
「殿下がお呼びになったのでしょう」
「そうだよ。僕一人では間違えるかもしれないからね」
「おや、珍しく殊勝な」
もうひと睨みしたミティアスは、考えていたことを二人に話した。
「ミティアス殿下の邪心も、ときには役に立つということですか」
「ダン、さすがにそれは言い過ぎじゃないか? それに僕は邪な気持ちだけでキライト殿下に接してるわけじゃない」
「そうですか? 殿下の胸の内の大半は邪心だと、わたしは予想していますがね」
頭一つ分ほど上背のあるダンが、ニヤリと笑みを浮かべながら見下ろしている。さすがに生まれたときから共に過ごしているだけあって、ダンはミティアスの心を正確に読むことに長けていた。
(たしかに下心は持っているけど、そういうことだけ考えているわけじゃない)
自分の欲望を恥じることなどないミティアスだが、ここでそんな劣情の塊のような評価をされるわけにはいかなかった。ようやく心配な表情を見せなくなったシュウクに、キライトとの触れ合いは時期尚早だと邪魔をされてはかなわない。
そう思ったミティアスが反論しようと口を開きかけたとき、クスクスと笑う声が聞こえてきた。ゆっくりと視線を横へずらすと、口元を隠しながらも肩を振るわせているシュウクの姿が目に入る。
「……美人は、笑っている姿も美人だね」
「ふふ、くっくっ、ふ、……失礼しました。お二人は本当に仲がよろしくていらっしゃるのですね」
「ダンはほとんど兄みたいなものだからね。この世で頭が上がらないのは母上とダンくらいだ」
「左様でございますか」
「殿下、そこにいずれはキライト殿下も加わりますよ」
「あーうん、もうすでにそんな感じかもなぁ」
ミティアスの言葉に再びシュウクが笑い、ダンは相変わらずニヤニヤと笑っている。
「僕がキライト殿下ともっと親しくなりたいと考えているのは間違いないけど、無理強いしたりはしないから安心して」
ため息をつきながらミティアスがそう告げると、優しい笑みを浮かべながらシュウクが「もちろんでございます」と答えた。
「ミティアス殿下は恋愛にとても真摯なお方だとお聞きしております。大切な我が主人を、どうぞよろしくお願い申し上げます」
「……ダン、何か余計なことを話しただろう」
「おや、これは心外な。わたしは余計なことも嘘も口にしてなどいませんよ。ただ、殿下のこれまでの恋模様と今回がどのように違うか、問われたことに答えたまでのこと」
「言わなくていいことまで話しているってことは、よぉくわかった」
ミティアスの苦々しい表情に再び笑ったのはシュウクだった。そんな麗しき侍従の姿に多少ムッとしたものの、不快な気持ちになることはない。
こうして心からの笑顔をシュウクが見せるようになったのは最近になってからだ。シュウクのほうも少しずつ変化してきているということだろう。
(少しは安堵しているってことか)
笑いながらダンと話しているシュウクを見て、ミティアスは美しき侍従の胸の内を慮った。
キライトを幼い頃から見てきたシュウクは長い間心を傷めていたに違いない。キライトの過去を話しているとき、自分を責めているような表情をしていたことからもそれは窺い知れる。
(つらい思いをしてきただろうシュウクだからこそ、ダンは気に留めていたんだろうな)
憐れという言葉では表現できない主人に仕え続ける姿に、同じ仕える者として感じるものがあったのかもしれない。もともと世話焼き気質のダンだから放っておけなかったのだろう。
(僕の護衛側近になったばかりに、ダンには苦労ばかりかけている)
苦労性の側近と不憫な侍従も、そろって安寧の地に連れて行こう――珍しく主人らしいことを思ったなと、ミティアスはわずかに口角を上げた。
ミティアスは、いまの状況に決して満足などしていなかった。キライトとも清い関係で終わらせるつもりはない。一番は皆が幸せになることだが、どうなるかはこれからの自分次第だと思っていた。
(僕は手に入れたいものは絶対に手に入れる)
いままでそう思わなくてもあらゆる物事が手に入った。しかし今回は自ら動かなくてはすべて手に入れることはできない。
そのためには埃を被った書庫の本を開き、宰相の目をかすめてあれこれ調べることも苦にならなかった。ダンに命じてタータイヤ王国の内情を調べることもすれば、父王に内緒でいわく付きの土地に使者を送ったりもしている。考えることをすぐに放棄していたのが嘘のようにミティアスは積極的に考え動いていた。
(ダンの同期に諜報員がいて助かった)
そんなことを思いながら、談笑する二人の背後にある扉を見る。あの扉を出れば自由になれる。こんな檻の中にずっといるつもりはない。
(いまはまだ篭から出られないけど、いずれはね)
陽の光の下で笑うキライトを想像したミティアスは、浮き足立つ気持ちのまま二人に背を向けキライトが眠る寝室の扉を開けた。
体力がないキライトは毎日必ず昼寝をする。ミティアスはその姿を眺めるのが好きだった。今日も、ふかふかのベッドで気持ちよさそうに眠る姿を飽きもせずにじっと眺めていた。
(ええと、どうしてこうなったんだっけ……?)
見ていたはずだったのに、いまは同じベッドに横たわっている。隣には華奢なキライトが寄り添うように眠っていた。そうかと思えば不意に瞼を開き、ミティアスを見てはほんのわずか微笑んだりする。もしや寝ぼけているのかと声をかけようとするが、口を開きかけたところで美しい瞳は再び瞼の奥に隠れてしまった。
(もしや、忍耐力を試されているとか……?)
思わずそんなことを思ってしまったのは、この状況を作ったのがキライト自身だったからだ。
くぅくぅと小さな寝息を立てていたキライトが、不意に目を覚ましたのは少し前だった。「目が覚めましたか?」と声をかけると、「ミティアス様も、寝ますか……?」と腕を引かれ、気がついたら並んでベッドに横たわっていた。
突然のことに固まったミティアスの胸にくっついてきたのはキライトのほうだった。離さないとばかりにキュッと上着の胸元を握りしめる姿はやけに庇護欲をかき立てる。まるで置いていかないでと言っているような仕草に胸がグッとなった。いまも胸元を握り締めているのを感じる。
(あぁ、そういうことか)
ミティアスは、ゆっくりとキライトを抱き寄せた。そうしながら切ない気持ちがわき上がる。
少しずつ変化しているキライトは、ミティアスが考えている以上に触れ合いを求めていたに違いない。温かな肌の感触を心地よく思い、忘れかけていた生母の愛情を思い出しつつあるのかもしれない。本人は気づいていないのかもしれないが、だからこそ夢うつつのいま、こうして行動に表れたのだろう。
キライトが求めるものは余すことなく与えたいとミティアスは思っていた。溺れるくらいの愛情を注いでやろうとも考えている。それができるのは自分しかいない――そう思うだけでミティアスの心は満たされ、喜びを感じた。
(僕も触れたいと思っているわけだし、問題は……まぁ、なくはないんだけど)
油断すると欲望が頭をもたげようとするが、そこは渾身の精神力でねじ伏せるしかない。ここでキライトを怯えさせたくはないし、こうした情欲の伴わない愛情もキライトに必要だとわかっている。「そのうち違った愛情も受け入れてもらえるといいんだけど」と思いながら、ミティアスもそっと目を閉じた。
キライトの小柄な体は腕にすっぽりと入って収まりがよく、自分よりも温かいのは意外だった。もう少し肉付きがよいほうがいいなと思っていたものの、これはこれで悪くない。そんな邪なことを思いながら、いつの間にかミティアスも眠りに落ちていた。
その寝顔をとろりとした瞳で見つめるキライトが囁くように名前を呼んだことに、残念ながらミティアスが気づくことはなかった。
そうなると、今度はキライトがどうして触れてくるようになったのかが気になり始める。自分のことを信頼し始めている証拠かもしれないが、それにしては急な変化だ。ほかにも何か変化があるかもしれないと考えたミティアスは、キライトのことを観察することにした。
観察を始めて三日が経った。触れる回数以外に変わったところはない。言葉数が増え、会話の回数が増えているものの驚くほどの変化ではなかった。
(じゃあ、触れるという行為だけ変わったってことか?)
何がきっかけで触れたくなるのかはわからないが、おずおずと手を伸ばしてくるキライトの姿は初めて会ったときの甥っ子たちを思い出させた。
(まるで確認しているような……いや、もしかして思い出しているとか?)
かつて生母と触れ合っていたときのことを思い出しているのかもしれない。触れ合うことで感じる心地よさに気づき始めている可能性もある。
(まるで幼子の成長のようだな)
あながち間違いではないかもしれないとミティアスは思った。話を聞く限り、これまでのキライトはシュウク以外と接触する機会が皆無だったのだろう。キライトを不憫に思っているシュウクも、さすがに侍従という立場を超えるような接触はしなかったはずだ。
そんな状態だったからこそ、ミティアスに抱きしめられ何か感じたのかもしれない。キライトの中に眠っていた何かが目覚めようとしているのだとしたら……。
(せっかくなら、僕を特別な存在だと思ってくれるといいんだけど)
つい焦ってしまうが、さすがにそこまでの変化はまだ望めないだろう。それでも自分に対して何かを感じてくれている可能性はある。昼寝をする前、少し寂しそうな表情を浮かべていたのを思い出すと否が応でも期待が高まる。
「殿下、ニヤニヤと鼻の下を伸ばしてどうしました?」
「そういうことを言うために、珍しく“捕リ篭”に入ったのか?」
ニヤリと笑っているダンをひと睨みしたミティアスは、ソファから立ち上がると扉近くに控えるダンとシュウクに近づいた。
「殿下がお呼びになったのでしょう」
「そうだよ。僕一人では間違えるかもしれないからね」
「おや、珍しく殊勝な」
もうひと睨みしたミティアスは、考えていたことを二人に話した。
「ミティアス殿下の邪心も、ときには役に立つということですか」
「ダン、さすがにそれは言い過ぎじゃないか? それに僕は邪な気持ちだけでキライト殿下に接してるわけじゃない」
「そうですか? 殿下の胸の内の大半は邪心だと、わたしは予想していますがね」
頭一つ分ほど上背のあるダンが、ニヤリと笑みを浮かべながら見下ろしている。さすがに生まれたときから共に過ごしているだけあって、ダンはミティアスの心を正確に読むことに長けていた。
(たしかに下心は持っているけど、そういうことだけ考えているわけじゃない)
自分の欲望を恥じることなどないミティアスだが、ここでそんな劣情の塊のような評価をされるわけにはいかなかった。ようやく心配な表情を見せなくなったシュウクに、キライトとの触れ合いは時期尚早だと邪魔をされてはかなわない。
そう思ったミティアスが反論しようと口を開きかけたとき、クスクスと笑う声が聞こえてきた。ゆっくりと視線を横へずらすと、口元を隠しながらも肩を振るわせているシュウクの姿が目に入る。
「……美人は、笑っている姿も美人だね」
「ふふ、くっくっ、ふ、……失礼しました。お二人は本当に仲がよろしくていらっしゃるのですね」
「ダンはほとんど兄みたいなものだからね。この世で頭が上がらないのは母上とダンくらいだ」
「左様でございますか」
「殿下、そこにいずれはキライト殿下も加わりますよ」
「あーうん、もうすでにそんな感じかもなぁ」
ミティアスの言葉に再びシュウクが笑い、ダンは相変わらずニヤニヤと笑っている。
「僕がキライト殿下ともっと親しくなりたいと考えているのは間違いないけど、無理強いしたりはしないから安心して」
ため息をつきながらミティアスがそう告げると、優しい笑みを浮かべながらシュウクが「もちろんでございます」と答えた。
「ミティアス殿下は恋愛にとても真摯なお方だとお聞きしております。大切な我が主人を、どうぞよろしくお願い申し上げます」
「……ダン、何か余計なことを話しただろう」
「おや、これは心外な。わたしは余計なことも嘘も口にしてなどいませんよ。ただ、殿下のこれまでの恋模様と今回がどのように違うか、問われたことに答えたまでのこと」
「言わなくていいことまで話しているってことは、よぉくわかった」
ミティアスの苦々しい表情に再び笑ったのはシュウクだった。そんな麗しき侍従の姿に多少ムッとしたものの、不快な気持ちになることはない。
こうして心からの笑顔をシュウクが見せるようになったのは最近になってからだ。シュウクのほうも少しずつ変化してきているということだろう。
(少しは安堵しているってことか)
笑いながらダンと話しているシュウクを見て、ミティアスは美しき侍従の胸の内を慮った。
キライトを幼い頃から見てきたシュウクは長い間心を傷めていたに違いない。キライトの過去を話しているとき、自分を責めているような表情をしていたことからもそれは窺い知れる。
(つらい思いをしてきただろうシュウクだからこそ、ダンは気に留めていたんだろうな)
憐れという言葉では表現できない主人に仕え続ける姿に、同じ仕える者として感じるものがあったのかもしれない。もともと世話焼き気質のダンだから放っておけなかったのだろう。
(僕の護衛側近になったばかりに、ダンには苦労ばかりかけている)
苦労性の側近と不憫な侍従も、そろって安寧の地に連れて行こう――珍しく主人らしいことを思ったなと、ミティアスはわずかに口角を上げた。
ミティアスは、いまの状況に決して満足などしていなかった。キライトとも清い関係で終わらせるつもりはない。一番は皆が幸せになることだが、どうなるかはこれからの自分次第だと思っていた。
(僕は手に入れたいものは絶対に手に入れる)
いままでそう思わなくてもあらゆる物事が手に入った。しかし今回は自ら動かなくてはすべて手に入れることはできない。
そのためには埃を被った書庫の本を開き、宰相の目をかすめてあれこれ調べることも苦にならなかった。ダンに命じてタータイヤ王国の内情を調べることもすれば、父王に内緒でいわく付きの土地に使者を送ったりもしている。考えることをすぐに放棄していたのが嘘のようにミティアスは積極的に考え動いていた。
(ダンの同期に諜報員がいて助かった)
そんなことを思いながら、談笑する二人の背後にある扉を見る。あの扉を出れば自由になれる。こんな檻の中にずっといるつもりはない。
(いまはまだ篭から出られないけど、いずれはね)
陽の光の下で笑うキライトを想像したミティアスは、浮き足立つ気持ちのまま二人に背を向けキライトが眠る寝室の扉を開けた。
体力がないキライトは毎日必ず昼寝をする。ミティアスはその姿を眺めるのが好きだった。今日も、ふかふかのベッドで気持ちよさそうに眠る姿を飽きもせずにじっと眺めていた。
(ええと、どうしてこうなったんだっけ……?)
見ていたはずだったのに、いまは同じベッドに横たわっている。隣には華奢なキライトが寄り添うように眠っていた。そうかと思えば不意に瞼を開き、ミティアスを見てはほんのわずか微笑んだりする。もしや寝ぼけているのかと声をかけようとするが、口を開きかけたところで美しい瞳は再び瞼の奥に隠れてしまった。
(もしや、忍耐力を試されているとか……?)
思わずそんなことを思ってしまったのは、この状況を作ったのがキライト自身だったからだ。
くぅくぅと小さな寝息を立てていたキライトが、不意に目を覚ましたのは少し前だった。「目が覚めましたか?」と声をかけると、「ミティアス様も、寝ますか……?」と腕を引かれ、気がついたら並んでベッドに横たわっていた。
突然のことに固まったミティアスの胸にくっついてきたのはキライトのほうだった。離さないとばかりにキュッと上着の胸元を握りしめる姿はやけに庇護欲をかき立てる。まるで置いていかないでと言っているような仕草に胸がグッとなった。いまも胸元を握り締めているのを感じる。
(あぁ、そういうことか)
ミティアスは、ゆっくりとキライトを抱き寄せた。そうしながら切ない気持ちがわき上がる。
少しずつ変化しているキライトは、ミティアスが考えている以上に触れ合いを求めていたに違いない。温かな肌の感触を心地よく思い、忘れかけていた生母の愛情を思い出しつつあるのかもしれない。本人は気づいていないのかもしれないが、だからこそ夢うつつのいま、こうして行動に表れたのだろう。
キライトが求めるものは余すことなく与えたいとミティアスは思っていた。溺れるくらいの愛情を注いでやろうとも考えている。それができるのは自分しかいない――そう思うだけでミティアスの心は満たされ、喜びを感じた。
(僕も触れたいと思っているわけだし、問題は……まぁ、なくはないんだけど)
油断すると欲望が頭をもたげようとするが、そこは渾身の精神力でねじ伏せるしかない。ここでキライトを怯えさせたくはないし、こうした情欲の伴わない愛情もキライトに必要だとわかっている。「そのうち違った愛情も受け入れてもらえるといいんだけど」と思いながら、ミティアスもそっと目を閉じた。
キライトの小柄な体は腕にすっぽりと入って収まりがよく、自分よりも温かいのは意外だった。もう少し肉付きがよいほうがいいなと思っていたものの、これはこれで悪くない。そんな邪なことを思いながら、いつの間にかミティアスも眠りに落ちていた。
その寝顔をとろりとした瞳で見つめるキライトが囁くように名前を呼んだことに、残念ながらミティアスが気づくことはなかった。
21
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
【短編】売られていくウサギさんを横取りしたのは誰ですか?<オメガバース>
cyan
BL
ウサギの獣人でΩであることから閉じ込められて育ったラフィー。
隣国の豚殿下と呼ばれる男に売られることが決まったが、その移送中にヒートを起こしてしまう。
単騎で駆けてきた正体不明のαにすれ違い様に攫われ、訳が分からないまま首筋を噛まれ番になってしまった。
口数は少ないけど優しいαに過保護に愛でられるお話。
ルピナスの花束
キザキ ケイ
BL
王宮の片隅に立つ図書塔。そこに勤める司書のハロルドは、変わった能力を持っていることを隠して生活していた。
ある日、片想いをしていた騎士ルーファスから呼び出され、告白を受ける。本来なら嬉しいはずの出来事だが、ハロルドは能力によって「ルーファスが罰ゲームで自分に告白してきた」ということを知ってしまう。
想う相手に嘘の告白をされたことへの意趣返しとして、了承の返事をしたハロルドは、なぜかルーファスと本物の恋人同士になってしまい───。
【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。
cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。
家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。
番だと言われて囲われました。
桜
BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。
死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。
そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。
白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
花びらは散らない
美絢
BL
15歳のミコトは貴族の責務を全うするため、翌日に王宮で『祝福』の儀式を受けることになっていた。儀式回避のため親友のリノに逃げようと誘われるが、その現場を王太子であるミカドに目撃されてしまう。儀式後、ミカドから貴族と王族に与えられる「薔薇」を咲かせないと学園から卒業できないことを聞かされる。その条件を満たすため、ミカドはミコトに激しく執着する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる