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「茶々丸、どうして元吉原で遊女が殺されるってわかったの? ねぇ、茶々丸ってば」
店先の縁台で新聞の見出しを見た珠吉は、すぐさま足元にいた茶々丸を問いただした。ところが茶々丸は縁台にぴょんと飛び乗り前脚で顔を洗うばかりで何も言わない。その後も話す気がないのか、くわっと大あくびをして毛繕いを始めてしまった。
「茶々丸ってば」
珠吉の声に「うるさいぞ」と言わんばかりに尻を向けて三本の尻尾を揺らす。あまりの態度に「茶々丸!」と声を荒げたところで「やぁ」と声をかけられてハッとした。
「……リチャード様」
「太夫に聞いたとおり、やはりきみは猫と話ができるようだね」
「そういうわけじゃありませんけど……」
ちらりと茶々丸を見ると呆れたような眼差しで珠吉を見ている。それにキッと睨み返し、それとは真逆の笑顔でリチャードにお辞儀をした。リチャードの後ろにはいつもどおり茶髪の従者が付き従っている。
珠吉が顔を上げると従者と視線が合った。茶々丸より濃い緑色の目がじっと珠吉を見ている。睨むような様子には見えないものの好意的な雰囲気でもない。前にも睨まれたことを思い出した珠吉は、「何か粗相でもしたっけ?」と気にしながらもリチャードのほうを見た。
「伊勢太夫ならまだお休みです」
「いや、今日はきみに会いに来たんだ」
「わたしにですか?」
「この前話しただろう?」
そう言いながらリチャードが藤の花を模した簪を差し出した。差し込み部分は漆塗りで、先端から藤の花が豊かに垂れ下がっている。藤娘を想像させる簪は昔からあるが、花の部分がこれほどキラキラと光るものは見たことがない。光り方から、珠吉は「西洋の高価な石かな」と当たりを付けた。
(そういや最近は西洋の石がついた結婚指輪なんてものも流行ってたっけ)
結婚指輪にはダイヤという石をつけるのが流行りだと聞いた。光る石にも種類があるらしく、遊女たちがなんとか堂という店のチラシを見て騒いでいたのを思い出す。一番人気は一際きらりと光るダイヤで、真っ赤なルビーという石も人気らしい。そういえば大店のご隠居が孫にねだられて真珠の指輪を買ってやったのだという話も聞いた。
(この花が何の石でできてるかはわからないけど、きっと高価なものなんだろう)
そういうものは太夫に贈るべきだ。やはり断ろうと珠吉が口を開きかけたところで「挿してあげよう」と言ってリチャードが髪に挿してしまった。頭のてっぺんで団子のように結んだだけの髪にはもったいない代物だ。
「よく似合っている」
満足そうなリチャードには悪いが、ただの下働きがこんな高価なものを頂戴するわけにはいかない。
「お見受けするに、こちらは西洋の石でできた藤の花じゃありませんか?」
指先で垂れ下がる藤の花にツンと触れる。
「ほう、見ただけで宝石だとわかるのか?」
「いいえ。ただ、こんなに光り輝いているのは大層高価なものではないかと思っただけです。そのようなものを頂戴するわけにはまいりません」
「ひと目見ただけで宝石だと言い当てられるのは、きみの目がいいからだ。実は知り合いのご令嬢に見せたことがあるんだけれどね。素敵なガラス細工ですねと言われて笑ってしまったよ。しかしきみは違った。そういう人に使ってもらうのがこの簪も嬉しいんじゃないかな」
にこりと微笑むリチャードの様子から、返したところで断られるに違いないと悟った。困ったなと思いながら曖昧に微笑む。
(太いお客はとにかくいい気分にさせろっていうのが妓楼では当たり前なんだけど)
つまり珠吉の言葉には世辞が混じっていたということだ。そうするように下働きの珠吉でさえ躾けられているのが妓楼なのだ。
たしかに珠吉は大門の外にいる同い年の子たちに比べれば目が肥えている。新吉原の牡丹楼といえば昔から何人もの太夫を生んだ妓楼で、調度品一つにしても相当値打ちのあるものばかりだ。とくに太夫が身に着けるものは豪華絢爛で、小さい頃からそれらを見てきた珠吉には本物か偽物かの区別がなんとなくわかる。
(だからって、それをそのまま口に出したりはしない)
そういう鼻持ちならない女は嫌われる。とくに妓楼では可愛げのある女のほうが生きやすい。そのことをよく知っている珠吉は「リチャード様がくださるものですから、きっと高価なものに違いないと思っただけです」と答えたが、すぐさま「嘘はよくないな」と返されてしまった。
「どういう意味でしょうか?」
「きみは目利き並の目をしていると、この間伊勢太夫が教えてくれたんだ。それを確かめたくてこの簪を持って来た。あぁ、試すなんてひどい男だと思わないでくれ」
「そんなことは思いませんけど、目利きなんて大袈裟です。太夫はきっとリチャード様を楽しませようとそんな話をしたんだと思います」
「いいや、きみは本物を見る目を持っている。牡丹楼には優れた調度品があるから自然と見る目が養われるとはいえ、生まれ持った才能もあるのだろう。この間の狐の話といい、きみは太夫が話していたとおりおもしろい子どもだ」
「それは……どうも」
「きみが太夫になったら、きっとすぐに人気者になるだろうね」
(太夫どころか遊女になる予定もありませんけどね)
胸の内でそう答えながらも「そのときはぜひいらしてください。うんとおもてなしさせていただきます」と頭を下げた。
「その頃にはきっとわたしはおじさんだ」
「リチャード様はお年を召されてもきっと素敵でいらっしゃいます。それに異国人の殿方は大歓迎です」
滅多に口にしない世辞だからか頬が引きつり始めた。それをごまかすように微笑むと、どこからか茶々丸の「にゃあ」という鳴き声が聞こえてくる。
振り返ったものの縁台に黒猫の姿はない。きょろきょろと見回すと、再び「にゃあ」と聞こえてきた。もしやとリチャードの足元を見ると、その奥に立つ従者の足元に座っているのが目に入る。しかも靴を前脚でちょんちょんとつついていた。
「こら、茶々丸」
客のなかには猫を嫌う者もいる。従者がそういう人なら蹴られてしまうかもしれない。そう思って慌てて注意したものの、茶々丸はなぜか従者から離れようとしなかった。もう一度「茶々丸」と口にしたところで、珠吉は首筋がぞわっとするような感覚に襲われた。
慌てて顔を上げると、従者の緑色の目がじっと珠吉を見ていた。やはり猫を嫌っているのかと思ったが、足元の茶々丸を気にしているようには見えない。それでは主人のほうが猫嫌いかとリチャードを見てもニコニコと笑っている。それなのに従者は厳しい表情を珠吉に向け続けていた。
(この前といい、どうしてそんな目で見るんだろう)
見られているからといって不躾に見つめ返すわけにもいかない。この場を離れるのがいいだろうと判断した珠吉は、「大層なものをありがとうございました」と深々と頭を下げて話を切り上げることにした。
「また今度おもしろい話を聞かせてくれ」
「リチャード様が満足してくださるような話ができるかわかりませんが、太夫に言ってくだされば座敷にお伺いします」
「いや、夜の席じゃなくて昼間にしよう。さすがに子どもをああいう場所に呼ぶのは気が引ける」
「昼間のほうが忙しいんだけどな」と思いつつ「では、機会がありましたら」と微笑んだ。
「楽しみにしている」
機嫌よくそう告げたリチャードは、本当に簪を持って来ただけなのか大門のほうへと歩き出した。「金持ちの考えることはわからないな」と若干呆れながら背中を見送る。
(いまのは遊女の睦言と同じだったんだけど、リチャード様、気づいてなさそうだなぁ)
本当に呼ばれたらどうしようとため息をついたところで従者が振り返った。相変わらず冷たい眼差しで珠吉を見るが、珠吉のほうはそんな目を向けられる理由がわからない。「何かしたかなぁ」と首を傾げつつ、リチャードに挿してもらった簪を懐に仕舞いながら店の入り口へと足を向けた。
『今夜抜け出すぞ』
「え?」
見ると珠吉の足元で茶々丸が三本の尻尾をゆらゆら揺らしていた。
店先の縁台で新聞の見出しを見た珠吉は、すぐさま足元にいた茶々丸を問いただした。ところが茶々丸は縁台にぴょんと飛び乗り前脚で顔を洗うばかりで何も言わない。その後も話す気がないのか、くわっと大あくびをして毛繕いを始めてしまった。
「茶々丸ってば」
珠吉の声に「うるさいぞ」と言わんばかりに尻を向けて三本の尻尾を揺らす。あまりの態度に「茶々丸!」と声を荒げたところで「やぁ」と声をかけられてハッとした。
「……リチャード様」
「太夫に聞いたとおり、やはりきみは猫と話ができるようだね」
「そういうわけじゃありませんけど……」
ちらりと茶々丸を見ると呆れたような眼差しで珠吉を見ている。それにキッと睨み返し、それとは真逆の笑顔でリチャードにお辞儀をした。リチャードの後ろにはいつもどおり茶髪の従者が付き従っている。
珠吉が顔を上げると従者と視線が合った。茶々丸より濃い緑色の目がじっと珠吉を見ている。睨むような様子には見えないものの好意的な雰囲気でもない。前にも睨まれたことを思い出した珠吉は、「何か粗相でもしたっけ?」と気にしながらもリチャードのほうを見た。
「伊勢太夫ならまだお休みです」
「いや、今日はきみに会いに来たんだ」
「わたしにですか?」
「この前話しただろう?」
そう言いながらリチャードが藤の花を模した簪を差し出した。差し込み部分は漆塗りで、先端から藤の花が豊かに垂れ下がっている。藤娘を想像させる簪は昔からあるが、花の部分がこれほどキラキラと光るものは見たことがない。光り方から、珠吉は「西洋の高価な石かな」と当たりを付けた。
(そういや最近は西洋の石がついた結婚指輪なんてものも流行ってたっけ)
結婚指輪にはダイヤという石をつけるのが流行りだと聞いた。光る石にも種類があるらしく、遊女たちがなんとか堂という店のチラシを見て騒いでいたのを思い出す。一番人気は一際きらりと光るダイヤで、真っ赤なルビーという石も人気らしい。そういえば大店のご隠居が孫にねだられて真珠の指輪を買ってやったのだという話も聞いた。
(この花が何の石でできてるかはわからないけど、きっと高価なものなんだろう)
そういうものは太夫に贈るべきだ。やはり断ろうと珠吉が口を開きかけたところで「挿してあげよう」と言ってリチャードが髪に挿してしまった。頭のてっぺんで団子のように結んだだけの髪にはもったいない代物だ。
「よく似合っている」
満足そうなリチャードには悪いが、ただの下働きがこんな高価なものを頂戴するわけにはいかない。
「お見受けするに、こちらは西洋の石でできた藤の花じゃありませんか?」
指先で垂れ下がる藤の花にツンと触れる。
「ほう、見ただけで宝石だとわかるのか?」
「いいえ。ただ、こんなに光り輝いているのは大層高価なものではないかと思っただけです。そのようなものを頂戴するわけにはまいりません」
「ひと目見ただけで宝石だと言い当てられるのは、きみの目がいいからだ。実は知り合いのご令嬢に見せたことがあるんだけれどね。素敵なガラス細工ですねと言われて笑ってしまったよ。しかしきみは違った。そういう人に使ってもらうのがこの簪も嬉しいんじゃないかな」
にこりと微笑むリチャードの様子から、返したところで断られるに違いないと悟った。困ったなと思いながら曖昧に微笑む。
(太いお客はとにかくいい気分にさせろっていうのが妓楼では当たり前なんだけど)
つまり珠吉の言葉には世辞が混じっていたということだ。そうするように下働きの珠吉でさえ躾けられているのが妓楼なのだ。
たしかに珠吉は大門の外にいる同い年の子たちに比べれば目が肥えている。新吉原の牡丹楼といえば昔から何人もの太夫を生んだ妓楼で、調度品一つにしても相当値打ちのあるものばかりだ。とくに太夫が身に着けるものは豪華絢爛で、小さい頃からそれらを見てきた珠吉には本物か偽物かの区別がなんとなくわかる。
(だからって、それをそのまま口に出したりはしない)
そういう鼻持ちならない女は嫌われる。とくに妓楼では可愛げのある女のほうが生きやすい。そのことをよく知っている珠吉は「リチャード様がくださるものですから、きっと高価なものに違いないと思っただけです」と答えたが、すぐさま「嘘はよくないな」と返されてしまった。
「どういう意味でしょうか?」
「きみは目利き並の目をしていると、この間伊勢太夫が教えてくれたんだ。それを確かめたくてこの簪を持って来た。あぁ、試すなんてひどい男だと思わないでくれ」
「そんなことは思いませんけど、目利きなんて大袈裟です。太夫はきっとリチャード様を楽しませようとそんな話をしたんだと思います」
「いいや、きみは本物を見る目を持っている。牡丹楼には優れた調度品があるから自然と見る目が養われるとはいえ、生まれ持った才能もあるのだろう。この間の狐の話といい、きみは太夫が話していたとおりおもしろい子どもだ」
「それは……どうも」
「きみが太夫になったら、きっとすぐに人気者になるだろうね」
(太夫どころか遊女になる予定もありませんけどね)
胸の内でそう答えながらも「そのときはぜひいらしてください。うんとおもてなしさせていただきます」と頭を下げた。
「その頃にはきっとわたしはおじさんだ」
「リチャード様はお年を召されてもきっと素敵でいらっしゃいます。それに異国人の殿方は大歓迎です」
滅多に口にしない世辞だからか頬が引きつり始めた。それをごまかすように微笑むと、どこからか茶々丸の「にゃあ」という鳴き声が聞こえてくる。
振り返ったものの縁台に黒猫の姿はない。きょろきょろと見回すと、再び「にゃあ」と聞こえてきた。もしやとリチャードの足元を見ると、その奥に立つ従者の足元に座っているのが目に入る。しかも靴を前脚でちょんちょんとつついていた。
「こら、茶々丸」
客のなかには猫を嫌う者もいる。従者がそういう人なら蹴られてしまうかもしれない。そう思って慌てて注意したものの、茶々丸はなぜか従者から離れようとしなかった。もう一度「茶々丸」と口にしたところで、珠吉は首筋がぞわっとするような感覚に襲われた。
慌てて顔を上げると、従者の緑色の目がじっと珠吉を見ていた。やはり猫を嫌っているのかと思ったが、足元の茶々丸を気にしているようには見えない。それでは主人のほうが猫嫌いかとリチャードを見てもニコニコと笑っている。それなのに従者は厳しい表情を珠吉に向け続けていた。
(この前といい、どうしてそんな目で見るんだろう)
見られているからといって不躾に見つめ返すわけにもいかない。この場を離れるのがいいだろうと判断した珠吉は、「大層なものをありがとうございました」と深々と頭を下げて話を切り上げることにした。
「また今度おもしろい話を聞かせてくれ」
「リチャード様が満足してくださるような話ができるかわかりませんが、太夫に言ってくだされば座敷にお伺いします」
「いや、夜の席じゃなくて昼間にしよう。さすがに子どもをああいう場所に呼ぶのは気が引ける」
「昼間のほうが忙しいんだけどな」と思いつつ「では、機会がありましたら」と微笑んだ。
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