悪役令嬢断罪プログラム

朏猫(ミカヅキネコ)

文字の大きさ
6 / 21

5 作戦①王太子妃候補の辞退……を妨害するのは兄?

しおりを挟む
 秘密のお茶会はいつになくしんみりとしたまま終わった。「またお茶会をしましょうね」と微笑むオペラを、ホワイトが「どうかご無理はなさらないで」と今生の別れのように見つめる。そうしてオペラの手をぎゅうぎゅうと握り、なかなか離そうとしない。
 それに痺れを切らしたのは迎えに来たホワイトの侍女フィナーシェで、「お嬢様、お帰りの時間でございます」と言ってべりっと音が聞こえるほどの勢いで引きはがした。そのまま引きずるように庭の奥にある隠し扉へ向かうのだが、その間もホワイトは「お姉様~」と手を伸ばして別れを惜しむ。

「あの子はいつも大袈裟ね」
「それだけお嬢様を慕っておいでなのでしょう」

 フィナーシェを温室に案内したのは侍女マディーヌだった。昼食の時間が迫る中、さすがに食卓にオペラが姿を現さなければ誰かが温室まで様子を見に来る。それでは秘密のお茶会のことが露見してしまう。それを防ぐために、すべてを心得ているマディーヌがフィナーシェを呼んだのだ。
 いまや乳母よりもオペラのことをよく知るマディーヌは、まだ二十五歳と若手の侍女ながら機転が利きオペラのことをよく支えていた。オペラもマディーヌのことを信頼している。黙々とテーブルの上を片付けているマディーヌに「お兄様はどちらにいらっしゃるかしら」とオペラが尋ねた。

「本日は終日お部屋にて執務と伺っております」
「それはよかった」

 昼食後、すぐに使いを出してもらえば夕方までには返事が来るだろう。うまくいけば数日後には目的を果たすことができるかもしれない。

(本当なら直接お手紙を差し上げられるとよいのだけれど)

 いくら王太子妃候補とはいえ、女性であるオペラが直接王族である王太子に手紙を送ることは許されていない。父か兄に使いを出してもらうのが慣例だが、父に頼めば大騒ぎになる。「ようやく王太子のお心を掴みに動いたか!」と満面の笑みを浮かべるのは想像に難くなく、そこから一気に畳みかけようとあちこちに圧力をかけるに違いない。それはオペラが望むことではなかった。

(かといって、お兄様にお願いするのも本当は嫌なのだけれど)

 王太子絡みになると、途端に兄フリューは人が変わった。まるで自分事のように口を出し、最終的にはどれだけ王太子がすばらしいかを延々と語り始める。

「本当に困った人たちね」

 ため息をつくオペラに、拡げていたものをすべてバスケットに仕舞ったマディーヌが「心中お察しいたします」と頭を下げた。

「あなたにも苦労をかけるわ」
「もったいないお言葉でございます」
「昨日、例の本が届いたから、あとで取りにいらっしゃい」
「ありがとうございます」

 最後の言葉にやけに熱が入っている。オペラは「気にしないで、わたくしも読むのだから」と言って微笑んだ。
 早くて数日後だと考えていた王太子との面会だったが、その日のうちに「では、明日の午前中に」との返事があった。返事を見たオペラは「お目にかかることはできるのね」と密かに感想を抱く。てっきり面会すら叶わないものとばかり思っていたせいか拍子抜けに近い気持ちになった。

(では、神様はどうやって邪魔をなさるのかしら)

 そんなことを考えながら眠りに就いた。
 翌日、朝早くから侍女たちと支度をしていたオペラは、時間に余裕を持って屋敷を出ることにした。それを止めたのは時間にうるさい兄フリューだ。

「どうされましたの?」
「ちょっと来い」
「これから王城に行くのですけれど」
「知っている」
「王太子殿下をお待たせすることはできませんわ」
「わかっている」

 明らかに不機嫌な声にオペラが首を傾げる。

「おまえ、昨日の手紙に何を書いた」

 部屋に入るなりフリューが眉尻を上げながらそう尋ねた。

「何とおっしゃられても、“お目にかかりたいのでお時間を”とお伺いする文言ですわ」
「本当にそれだけか?」
「えぇ。それにお兄様のことですもの、中身は確認なさったのでしょう?」

 妹の指摘にフリューが表情を変えることはない。よく似た兄妹は互いの美貌を無言で見つめ合った。

「では、どうして殿下のご様子が違っていたんだ?」

 ソファに座ったフリューが顎を撫でながら気難しい表情を浮かべる。

(王城で殿下にお目にかかったのかしら)

 昨日は一日執務室にいる予定だったフリューだが、どうしても確認しなくてはいけないことがあるといって王城に向かったのは夕食の二時間前だった。そうして帰宅時にフリューが持って帰ってきたのが今日の面会時間を指定する手紙で、受け取るときに王太子と会ったのかもしれない。
 そういえば夕食のときも浮かない顔をしていた。一晩寝てもすっきりせず、それで出かける直前だというのに呼び止めてまで確認することにしたのだろう。

「殿下のことはわたくしよりお兄様のほうがよくご存知でしょう? わたくしに尋ねられても困りますわ」
「もちろん殿下のことはわたしが一番よく存じ上げている。そのわたしが不審に思うほど昨日の殿下は明らかに様子が違っておいでだった。頬を染めているというか、心ここにあらずというか、心奪われる何かがあったというか……」
「では、そうしたことがおありになったのではなくて?」
「いいや、そのような出来事もご予定も入っていらっしゃらなかった。陛下の元には午後、ボンボール領から使者が来るという話があるようだが、王弟殿下がいらっしゃるわけではないしな」

 思わず「調べたのですか」と呆れそうになった。ため息を呑み込みながらじとりと兄を見た。フリューのほうは妹にそんな眼差しで見られていると気づいていないのか、「殿下の心を惑わす何者かがいるのか?」とブツブツつぶやいている。

「では、予定になかったお兄様との面会にお喜びになられたのではなくて?」
「そ……んなこと、あるわけないだろう」

 顔をしかめながらも、フリューはまんざらではないという顔をした。しかも目元をやや赤く染め、その姿はまるで恋をする乙女のような様子だ。

(そんなにお慕いしているなら、いっそお兄様が王太子妃になればよろしいのに)

 オペラがついそう思ってしまったのは、最近読むようになった本の影響を受けているからかもしれない。そうした種類の本を知ったのは侍女マディーヌの愛読書を偶然見たのがきっかけで、いまではオペラも嗜む程度に読んでいる。

(たしかのほかの恋愛の本より興味深いけれど)

 本には美しい殿方同士の恋模様が綴られていた。時に激しく時に深く、家柄や立場に翻弄されながらも純粋な愛を貫こうとする物語は密かに人気を集めているようで、貴族令嬢の間でも話題になっているらしい。
 ホワイトも知っている口振りだったが、「それよりアン王女とレミリア侯爵令嬢の物語はお読みになられまして?」と目を輝かせていた。そちらは王女と侯爵令嬢の道ならぬ恋を描いた物語らしく、実在しない人物だというのにホワイトは涙ながらに語って聞かせてくれた。

(あの子はいつも全力で可愛らしいこと)

 可愛い妹のためにも二人揃って悪役令嬢にならなくて済む方法を見つけなくてはいけない。改めてそう決意したものの、フリューの話は一向に終わりそうになかった。気がつけばいつもどおり王太子を褒め称える話になり、耳にたこができるほど聞かされた王太子の人柄を熱く語っている。

(殿下のことになるとこうなっておしまいになるのがお兄様の悪い癖)

 三十歳のフリューは四歳年下の王太子と学友として親しくしてきた。そういうこともあるからか、フリューが語るのは幼少期から王太子の様子だ。それからいままでの話はあまりに長く、盛り上がる部分も毎回変わらない。おかげでオペラは一度も会ったことがない王太子の寝相のことまで覚えてしまった。

(だから初めてお目にかかったとき何も感じなかったのかしら?)

 それとも王太子の姿に口うるさいフリューの顔が重なって見えてしまうせいだろうか。公爵家の中でオペラが王太子妃になることをもっとも強く望んでいるのは兄フリューだ。熱心さは度を超す勢いで、耐えられなくなったオペラの家庭教師がこれまで三人も辞めている。

(お兄様はいったいどうなさりたいのかしら)

 いまは妹を王太子妃にすることに情熱を燃やしているが、王太子妃になった後はどうするつもりなのだろう。もしかして外戚として力を振るいたいのだろうか。それにしては公爵家の経営に熱心とは言いがたい。西南にある公爵家領の多くはいまだ父が管理し、フリューが受け持っているのは葡萄園ばかりだ。それも殿下に極上のワインを届けるためという理由で、経営能力があるかと問われれば実の兄でも平凡だと表現するしかない。

「おい、聞いているのか?」
「えぇ、聞いていますわ」

 暗記するほど聞かされてきた王太子への賛辞を右から左に受け流しながら、ちらりと時計を確認する。

(一時間前には王城に到着する予定だったのだけれど……)

 そろそろ屋敷を出なくては一時間を切ってしまう。それでは控え室でお茶を飲む時間もなく、そうした慌ただしい訪問は貴族らしくなく不作法だとされていた。
 それにしても……とオペラの瞳が兄を見た。フリューは時間に厳しく、こうして時間を気にすることなく延々と話をすることは滅多にない。フリューの癖といえば日に何度も時計を見ることで、それが高じていくつもの懐中時計を収拾しているほどだ。

(きっとご令嬢とおしゃべりしていても時計を気になさるのでしょうね)

 容易に想像できるものの、フリューが女性と親しくしている話は聞いたことがない。

(それに部屋に入ってから一度も時計をご覧にならないなんて本当に珍しいこと)

 そこまで考えたオペラはハッとした。「まさか」と思い、一旦は否定したものの「でも」と考え直す。

(これも神様がおっしゃっていた“ぷろぐらむ”の強制力とやらのせいかしら)

 それなら納得できる。なによりも大事な王太子と、なんとしても王太子妃にしたい妹が面会する時間をフリューが気にしないのは不自然だ。

(……なるほど、強制力とはこうして働くのね)

 それまですまし顔で兄の話を聞き流していたオペラの目が窓の外を見た。神は天上にいると言われているが、あの神もそうなのだろうか。そんなことを思いながら晴れ渡った空を見る。

「お兄様、このままでは慌ただしく王城を訪ねることになってしまいますわ。それはガトーオロム公爵令嬢としても、王太子妃候補としても許されないことです」

 オペラの言葉にようやく時計を見たフリューは、「わたしとしたことが何ということだ」と顔をしかめた。「続きは……」という兄の言葉を遮るように「行ってまいります」と優雅に腰を折ったオペラが部屋を出て行く。

(強制力とやらを少し甘く見ていたかもしれないわ)

 妨害はこれだけだろうか。美しく整えられた眉をわずかにひそめながら、やや急ぎ足で玄関へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話

鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。 彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。 干渉しない。触れない。期待しない。 それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに―― 静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。 越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。 壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。 これは、激情ではなく、 確かな意思で育つ夫婦の物語。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

処理中です...