自分文学【よるの短編小説🌙】

いとう はぶらし

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#1 【夢うつつ】

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-夢の中に君が出てきた気がしてならない。



ほんのり濡れた枕を手で踏み、アルコールに犯された体を無理やり起こした。

ぼんやりした夢の記憶を辿ろうとするが、一片の欠片も見当たらない。



とりあえず顔を洗うことにした。

洗面所に着くと、しばらく使われていない君の歯ブラシが寂しげにこちらを見つめていた。

その姿は主人を待つ犬のようにくたびれており、こちらに向かって首を傾げている。



ひとまず蛇口を捻り、冷たい水を手で掬って顔を洗う。

顔を上げると、鏡に映る自分の顔がひどく辛い表情をしていることに気がついた。

てっきり幸せな夢だったのかと思っていたが、そうではなかったのかもしれない。



眠たがる子供のように両の眼を手で擦ると、さっきよりも視界がぼやけた。

今日は何をしてもダメな気がする。






-それでも君がそこにいると信じて、仏間に置いた遺骨の前に座る。


両手を合わせて生前の君を思い返す。

思い返しているうちにまた涙が溢れそうになったが、僕はそれでも拝み続けた。



ー明日で四十九日。



君は僕に別れを告げに来たんだろうか。

そして、夢の中でも泣いている僕を見ていつものように微笑んでくれていただろうか。



僕は、そっと君が入った壺を抱き寄せた。


2人暮らし最後の1日。家を出るのは辞めにした。
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