Wizard Wars -現代魔術譚-

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セクション1『魔術学園2046篇』

第19話『Next Phase -ネクストフェイズ-』

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『魔術師協会・日本支部』
 全世界の魔術師を束ねる国際組織、その日本支部。魔術管理局や東帝魔術学園といった機関を下部組織として従える、日本魔術界の中枢である。



 そしてこの支部長室に、二人の人物が訪れていた。



「えーまァ、以上が今回の顛末になるワケですが…………何か質問あります?王我さん」

 一連の事件についての経緯を説明し終え、投影していた立体画像ホログラムを閉じる。召喚されていた内の一人は、魔術管理局『魔術捜査課』の沢村 秀一だった。



 ――――魔術連続殺人の首謀者は天城鎧であり、また彼こそが魔術師によって構成された犯罪集団の主犯格であった事。

 春川日向がこれを撃破するが、『刻印結社』最高幹部の一人である紅蓮の介入を受けた事。そして時を同じくして御剣伊織と藤堂天音も、結社による襲撃を受けていた事。



 沢村からの報告を聞いていた、その部屋の主である人物は口を開く。

「つーコトは……今この国には、番号刻印ナンバーズが三人潜んでるっつーワケか」

 鬼の如き威容を誇る体躯、龍の如き鋭い風格。その老年の男こそ、『魔術師協会日本支部』支部長、鬼龍院キリュウイン 王我オウガだった。



「えー、ハイ……まァそうなりますね」
「…………マジかよ~~~クソ面倒じゃねーかオイ~~~わざわざ来んなよこんな島国までよォ~~~」

 しかし王我は暫し沈黙した後、厳格な雰囲気を崩し露骨に気怠げな声を上げる。

「つーか大体水際対策はどォなってんだよ。セキュリティのガバが過ぎるんじゃねェのかオイ」
「ンなコト俺に言われましても…………」

 ぶつくさと文句を垂れながら、宙を仰いでいる王我。勝手気儘なその物言いに若干辟易しつつも、沢村は今回出現した番号刻印ナンバーズについての補足情報を空中へ映し出して行く。



紅蓮グレン
 3年前に刻印結社に加入したとされている、番号刻印ナンバーズNo.7セブン。結社へ合流する以前は、中東紛争地にてゲリラを率いるテロリストとして危険視されていた。各国で甚大な被害を齎しているNo.5ファイブNo.4フォーと同様に、凶悪な魔術犯罪者と目されている。

JOKERジョーカー
 番号刻印ナンバーズNo.?。幹部を自称している謎の人物であり、他の番号刻印と同時に目撃される事が多い。主に欧州での魔術テロを主導しているが、昨年の北米同時多発テロにも姿を現していた。

『ゼロ』
 番号刻印ナンバーズNo.?。これまで目撃情報は無く、使用魔術など能力の詳細は一切不明。



 世界各地でテロ行為を扇動している国際的犯罪結社、その幹部が三名も侵入している事は、由々しき国家問題だった。

「…………で、何でコイツらが学生三人をわざわざ狙って来たのかについては、調べ付いてんのか?」

 王我からの問いに、沢村は管轄外とばかりに肩を竦めながら隣を見やる。沢村に代わって口を開いたのは、彼と共に王我に招かれていた二人目の来訪者。東帝学園学長、神宮寺 澄香だった。



「御剣と藤堂に関しては、能力の希少性が要因と見て間違い無いでしょう。ですが春川については……目的は不明です」

 目的は愚か、思想や行動理念すらも不明瞭な刻印結社。そのような犯罪組織がここに来て初めて、明確な狙いを定めて来た事は、得体の知れない不気味さを感じさせた。

「……いやちょっと待て。春川?っつーコトは……」
「はい、そうですよ。らしいっス。俺も大和から聞かされて驚きました」
「マジか!てかあの人子供居たのか……」
「しかもアイツ、こないだ一人で末端組織にツッ込んでまるごと吹っ飛ばしてましたよ。あの人より遥かにアホですね」
「何だその龍臣タツオミみてェなエピソードは。学生のクセしてブッ飛びすぎてんだろソイツ」

 一方王我は日向の祖父である『旧知の人物』について、沢村の言葉を聞きながら古い記憶を辿っている。



「まァそれはともかく…………学生の中にこんなクソ野郎が紛れてたっつー方が問題だろ。しかもよりによって『天城』じゃねーか」

 結局思い出せなかった王我はその事を一旦放置し、学生でありながら犯罪に関与していた鎧について言及する。



 日本最大の魔術旧家である神宮寺家、その傘下である天城家の人間が凶悪な殺人犯であったという事実は、魔術界全体を震撼させていた。神宮寺宗家としても彼等の沽券と面子に関わる大問題であり、王我を始めとした非旧家の術師からの弾劾及び責任追及は免れない。



「まァ澄香、お前も分家だし言いにくいかもしんねーけど、神宮寺の本家連中に言っといてくれ。傘下のケツはお前らがキッチリ拭いとけよって」
「いやアンタが直接言やいいでしょ」
「ヤダよ俺あの当主ジジイ嫌いだし」

 澄香へ伝言を託ける王我に口を挟む沢村だったが、想像以上子供じみた理由に呆れた視線を向けている。

「あ、そう言や恭夜にも声掛けたのに何でアイツ来ねェんだ?……つかそもそも、今回の件は『視て』なかったのか?アイツ」
「いやァ、厳しかったんじゃないスか?アイツの『千里眼』は予知に関しちゃ、良いトコ五分でしょ」
「確かにソレもそうか……スバルの星詠みの方がまだいくらかマシだわな……」

 そこで王我は、沢村達と同じく呼び出していた恭夜が未だに姿を見せていない事に気が付いた。



「あー、恭夜君なら多分来ねェよ。さっき用があるとか言って『表』に出て行ったし」

 その時、王我の声に応えながら一人の人物が支部長室へと入って来る。

 東帝の制服を着崩した茶髪の少年。そこに姿を現したのは、紅蓮を撃退し日向を救出した張本人、天堂 蒼だった。



「『表』に出てっただァ?あンのバカ息子が……つーか蒼テメー、学生の分際でフラっとこんなトコまで入って来てんじゃねェよ」
「俺受付フロントのオネーサンとは顔パスだから♡それとさ師匠、さっきの話だけど……」

 協会施設の最上階であるこの部屋に平然と入室して来た蒼は、師匠と呼んだ王我へと言葉を続ける。



「春川 日向っつったっけ?敵さん方は、何かしらの明確な目的があってアイツを狙ってた……ような気がした。まーコレは俺の予想だけど……多分アイツも、なんか面白ェチカラ持ってるぜ」





 ◇◇◇



 東京某所、廃工場内にて。

「全く以て期待外れだった。あんなザコが属性人柱とか、何かの間違いじゃねェのか?」
「そんなん閣下ボスに直接文句言ってよ……ていうかさ、ボク最初に殺しじゃなくて生け捕りって伝えたよね?」

 工場内に口論の声を響かせていたのは、逃走し一時的に潜伏していた紅蓮とJOKERだった。

 その周囲にはゼロを含めた、彼等の仲間と思われる五人の人影が見える。



「疑わしかったんならさァ……取り敢えず両手両脚潰して、連れて来てから殺すなり何なりすりゃよかったんじゃねーの?その程度も出来ないくらい切羽詰まってたワケ?」

 紅蓮にそう声を掛けたのは、資材に腰掛けていた黒髪に紫の瞳を持った少年。



 彼等と同じく結社"最高幹部"たる称号を持つ彼の名は、番号刻印ナンバーズ"No.4フォー"、『ディエス』。



「テメェ……喧嘩売ってんのか」
「客観的な所見を述べただけですケド?」

 何キレてんの?と嘲笑っている、昏い眼をしたその少年を紅蓮が睨む。

「やーめなってディエス。キミが来てても多分結果は変わんなかったよ。桐谷恭夜が出て来たら、流石に一旦退くしかないでしょーが」
「だったらよォ…………」



 剣呑になりかけていた空気を諌めるべくJOKERが仲裁に入ろうとするが、今度は別の人物が会話に割り込んで来た。

「まずその桐谷恭夜を倒しちまえば、後は消化試合なんじゃねェのか?」

 威圧的なオーラを放つ、筋骨隆々とした肉体を誇る巨漢。



 番号刻印ナンバーズ"No.5ファイブ"。その名は、『バスター』。



「簡単に言ってくれちゃってるケドさァ……最初からそう出来りゃ今苦労してないのよ」
「大体なァ筋肉バカ。仮にもしアレを抑えておけたとしても、鬼龍院王我と土御門昴が出て来たらどォするつもりだ」
「ホラ!紅蓮の方がまだ解ってんじゃん!」

 その状況理解度にJOKERが苦言を呈するが、バスターは余裕の表情で主張を続ける。

「強ち不可能と言うワケでもないだろう。まず第一にこちらには…………俺がいる」
「ちょっとキミもう黙っててもらっていいかな?クロックからも何か言ってやってよ」

 うんざりとしたような声でJOKERは、その様子を見下ろしていた一人の女性を頼った。



「フフ、まぁいいじゃない。ゴリラさんのお話を聞きましょう」

 蠱惑的な笑みと共にそう応えたのは、妖艶なオーラを醸し出している妙齢の美女。

 番号刻印ナンバーズ"No.8エイト"の称号を持つ彼女は、『クロック』と呼ばれていた。



 そしてその隣には、白いマントを羽織り無貌の仮面を頭に乗せた、幼い少女が座り込んでいた。クロックに白金色の髪を撫でられている彼女もまた、刻印結社の一人。

 番号刻印ナンバーズ"No.6シクス"、『フェイスレス』の名を持つ少女だった。



「…………で、そのゴリラさんにはどういう勝算があんのさ。こっから更に、トライデントかダグラスでも増援に寄越してもらうつもり?」
「いやァ、アイツらを呼ぶ必要は無いさ。桐谷は俺が直接相手をしても良いが……ゼロが能力チカラを使えば、奴とも互角に渡り合えるだろう」

 バスターはJOKERへ声を返しながら、離れた場所で沈黙と共に佇んでいたゼロへと目を向ける。

 やはり一言も発する事は無く、目深に被ったフードの下の素顔は伺えない。



 未だに全容が謎に包まれた、彼の持つ数字は――――



 ――――その名と同じ、番号刻印ナンバーズ"No.0『ゼロ』"。



「そりゃそうかもしんないケドさァ……ゼロのはあくまで最終手段だ。それに人柱同士の力が干渉し合えば、春川日向を覚醒させてしまう可能性もある」

 しかしJOKERは、ゼロと日向が持つ"同じ力"についての懸念を示す。



 火の『属性人柱』、春川日向。
 光の『属性人柱』、ゼロ。



 ゼロの魔力によって、日向の能力に影響を与える恐れをJOKERは指摘していた。

「もし彼が人柱の力を自覚すれば、僕等が春川日向を狙ってる理由に気付かれるかもしれない。下手すれば協会の本部が出張って来る事も有り得るワケだ」

 それに、ここで日向が人柱の力を有している事が知られれば、刻印結社が彼を狙う目的も露見し兼ねない。

 三人ものS級を擁する、『七大支部』最強との呼び声高い日本支部。そんな魔境じみたこの国の魔術師達に加え、他国の戦力までも相手取っている程の時間は無い。

 その為、出来る限りゼロの人柱の力は伏せておくべきと告げようとした。しかし、



「何だ、隠しといた方が良かったのか?」
「え?」

 紅蓮の口から放たれた言葉に、JOKERは恐る恐る振り返る。



「俺ァ春川日向に話しちまったぞ。アイツが火の人柱だってコト」



 その告白に、JOKERは目眩を覚えたようにフラついていた。

「は……?ホントに何してんの……?何してくれちゃってんの……?」
「知らねェよ。言ったらマズいんだったら最初に言っとけや」

 一切反省する様子を見せない紅蓮の後ろでは、バスターやディエスが愉快そうに笑っている。

「ハッハッハ、良いじゃねェか。面白くなって来た」
「殺るコトがシンプルになったね」

 好戦的な二人を眺めながら、クロックもまた艶やかな笑みを浮かべていた。

「フフ………大変なコトになって来たわね」
「勘弁してよホント……早く計画立て直さないと……」

 他人事のような態度のクロックを傍目に、プランのズレを修正すべく考え始めるJOKER。



「でもまだ、手段カードは残ってるんでしょ?」
「…………まァねー……」

 クロックの声に応えながら、JOKERは一つの『仮面』を取り出す。



 ――――炎の紋様ファイヤーパターンが刻まれたその仮面は、天城鎧の部下だった謎の人物『陽炎ミラージュ』が着けていた物と全く同じだった。

「…………僕は死んだけど……まだ潜入用の"顔"は残ってるしね」



 陽炎ミラージュ――――又の名を、番号刻印ナンバーズ"No.EXエクストラ"『JOKER』。

 幾つもの貌を持つ道化師は、不敵に嗤い動き出す。



 蠢く悪意を宿した魔手は、再び日向達へと迫り始めていた。





 ◇◇◇





 The story moves to the next phase――――





 ◇◇◇



「ほんでその一年が獅堂クンに喧嘩フッ掛けたらしいねん。流石にクソ度胸すぎてオモロない?」
「どォでもエエけどオマエ原付の燃料入れ行っとけよ。もう無いなっとったで」
「は?先々週入れたやんけ。早すぎやろ」
「2ケツと移動距離とボロさ考えたら妥当やろボケ。ゴチャゴチャ言っとらんで早よ行って来いや」
「オレ一昨日お前にアイス奢ったよな?」
「チューペットの半分で奢ったて人をナメすぎやろお前」

 学園の廊下を歩く、三人組の男子生徒。

 取り留めの無い口論を続けている二人を、もう一人の少年は一歩引いて傍観していた。



 ウルフカットの黒髪に、赤い瞳を持つ彼の名はミナト 紅輔コウスケ。イチゴ牛乳のパックをストローで啜っているこの少年は、前を歩く二人の『目付役』を半ば強引に押しつけられている苦労人だった。



「まァとにかくオレ今日30円しか持っとらんから無理や」
「しょーもないパチこくなやお前……いやホンマやん。しかもコレよく見たら1つ5円混ざっとるから25円しか無いやんけ」
「明日からしばらくチャリ通やなー」
「いやお前は当たり前に歩きやぞ。チャリも一台しか無いやろ」
「はァ!?2ケツしたらエエやろ」
「クロスのどこにそんなスペースあんねん。アカンわコイツもうバカすぎて話通じひん」
「おっ、何やねんコラ戦るかオマエ」

 多くの生徒が往来しているにも関わらず、遂に取っ組み合いを始める二人組。翡翠色の髪を持った少年と金色の髪を持った少年、彼等の容姿は『双子』のように似通っていた。



 そして、湊も含めた三人の共通点。彼等は皆一様に、腕に『風紀』の文字が記された腕章を備えていた。



「…………おいバカ兄弟」
「何やベニ!止めんなよ、今日こそはこのタコシバき倒したんねん!!」
「コッチのセリフやボンクラがァッ!!」

 湊は冷めた目でその様子を眺めながら、淡々と二人へ忠告する。

「別にどこで暴れようと勝手だけど、また奏さんに半殺しにされても知らねーからな。もう俺はフォローしねーぞ」
「ハッ、その前に俺がコイツ殺したるわ!!」
「そっくりそのまま返すわッ!!」

 いよいよ殴り合いを始めた二人の周囲で、彼等の魔力が空間に影響を与え始めていた。

 廊下に吹き抜ける『風』、他の生徒達が異変に気づきちらほらと悲鳴も上がり始める。当の目付役である湊は日常茶飯事とばかりに、その様子を止めもせず眺め続けていた。



 しかし、二人は気付かない。すぐ近くまで、彼等の"上司"である少女が歩いて来ていた事に。



「「死ねや!!」」

 兄弟は互いの頭突きを相手の額へと叩き込む。魔力がぶつかり合い、一際強い突風が廊下へ吹き抜けた。



 ――――その一陣の風が、二人の前に立っていた少女のスカートを捲り上げる。



「「「あっ…………」」」

 思わず声を漏らす、湊と二人。



 そこに居たのは、三人が所属する『風紀委員会』の長、神宮寺 奏だった。



「廊下で乱闘とはどういう了見だ……?まだ、風紀としての自覚が足りないみたいだな…………」

 一切表情を変えず、凍てつくような視線を向ける奏。対して二人が取った行動は、単純かつ迅速だった。



「「スンマセンでしたアアアアアアッッッ!!!」」

 絶叫と共に頭を下げると、二人は奏に背を向け一目散に走り始める。



 風紀委員でありながら、学園に混乱を巻き起こす異端児。彼等の名は――――『如月兄弟』。



 二人は迷い無く校舎の窓を突き破り、逃走すべく空中へと飛び出した。



 ◇◇◇



 魔術管理局、局内にて。



「オーイ結城くーん、そろそろ行くよ~」
「はーい、了解でーす」

 名を呼ばれその声に応えたのは、フロアに居た一人の少年だった。

「お、結城ー。こないだの護送の時は助かったわ。ありがとな」
「あーいやいや、気にしないで下さい」
「結城、今度飯でも行こうや」
「お、マジっすか。ぜひ行きましょう。へへ」
「結城君、こっち来てたんだ!」
「はい、今日はちょっと時間無いんで、また今度ゆっくり」



 代わる代わる局員から声を掛けられているその少年は、東帝学園の制服に身を包んでいる。

「やー、ごめんね。こんなド平日に」
「大丈夫っスよ。学校は公欠扱いになってるんで」

 最初に彼を呼んだ青年は、黒のスーツに身を包んだ『魔術捜査官』だった。そしてこの少年は学生でありながら、魔術捜査課の人間と行動を共にしている。



 即ち彼は、管理局から直々に要請を受けた『捜査協力者』だった。



「でも、毎回こんな便利屋みたいに呼び出されてちゃ、流石に面倒にならない?」
「いやァ、沢村サンとかにはしょっちゅう世話になってるんで。俺の能力が役に立つなら、いつでも出て来ますよ」
「真面目だよねェ……」



 ◇◇◇



「…………ねぇテツくーん」
「どしたの風切さん」

 東帝の二年教室にて、会話を交わす二人の男女。

 スカジャンを着た少女の声に応えたのは、無気力に机に突っ伏している少年だった。

「もうすぐ"アレ"始まるね。『東帝戦』」
「あー、あの陽キャの祭典ね…………あんなん脳筋すぎて時勢に合ってねーのよ。全員で戦って最強決定戦とか……」

 バトル漫画の世界線かよ……と呟く少年に、少女は頬杖を突きながら楽しげに笑う。

「多分、蒼さんは本気でテツ君を倒しに来るだろうね」
「…………あの人は俺のコト買い被り過ぎてんだよ。俺の術式は無敵でも何でもねェっつってんのにさー……」

 全く意欲の感じられない、気怠げな表情で少年は声を上げた。



「マージで、憂鬱だわ…………」


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