Wizard Wars -現代魔術譚-

sorairo0628

文字の大きさ
32 / 53
セクション1『魔術学園2046篇』

第30話『1日目、終了』

しおりを挟む
 東帝戦1日目、終了。



【天堂強すぎて草すら生えない】
【はよプロ行け定期】
【アイツだけレギュレーションがおかしい】
【黒乃会長最高】
【他がもうかわいそう】
【斬界がシンプルにチートすぎ】
【神宮寺委員長大好きです】
【チートっつったら藤堂もだいぶよ】
【天音たんはかわいい】
【8号館ごとブッた斬ってた】
【やりたい放題かよwwwwwwwwww】
【ブッ壊れ性能wwwwwwwwww】

『……えーハイ、まァ総じてアイツがバケモンっつーコトでみんなの意見はほぼ一致してるっぽいケド……』

 夜間帯の学園ラジオにて、久世が学内SNSを眺めつつタッグロワイヤルの講評を行なっていた。

『どーも掲示板帝chとかからも質問来てるっぽいから……「斬界」について話してこうか』

 そうして術式技能指導員の久世は、蒼を最強たらしめるその魔術剣技についての解説を始める。

『……まァ結論からいくと、アレはメチャクチャよく斬れる「セイバー」だよ。スティーブとかも使ってる飛ぶ斬撃。アレと同じっつーか、ほぼ変わんねーの』

 モニターに映し出されるのは、タッグロワイヤルの戦闘ハイライト。蒼が斬界を使用した場面の、リプレイ映像が流れていく。

『……ただ違いとしては、メチャクチャ"硬くて""薄い"ってカンジかな。アイツ結構魔力もあるから、それを全部「一点収束」で押し固めて"何でも斬れる斬撃"にしてんだよ。な、シンプルな仕組みだろ?』

 久世の口から明かされる、『斬界』の術式としてのメカニズム。

 その接触面は極めて小さく、更にその硬度は極めて高い。驚異的な魔力密度を実現するのは、蒼が持つ膨大な魔力。超薄型かつ超硬質のブレード、それが斬界の正体だった。

 その斬撃は理論上この世界に存在している、形ある全ての物質を、またあらゆる術式を切断する事が可能である。その名の通り、まさしく世界をも斬る魔術にして防御不能の一撃。

『……だからもう、アレ撃って来られたら基本は詰みっつーかお手上げよ。学生は為す術無しなんじゃない?ガン逃げだよガン逃げ』

 プロですら真正面からは受けないだろうね、と補足する久世。

『…………えー何なにコメント…… 【S級だろコイツ】あーそうね。今年か来年くらいには行けるんじゃねーの?アイツ。



 あ、そうそう。コレ明日のオープニングで言われると思うけど……今回のトーナメントの優勝副賞で、「S級資格試験」の参加権利もらえるらしいよ』



◇◇◇



第一学年寮棟、談話室にて。

「だあああクソおおお敗けたあああ」
「……久世先生、今サラっととんでもないコト言わなかった?」

男子寮と女子寮の中間に存在するこの交流スペースで、日向が唸り声を上げながらテーブルに突っ伏していた。彼の横には天音、向かいには啓治と沙霧が座っており、今日のタッグロワイヤルでの戦闘を振り返っている。

その後ろでは創来・陣・凪が、ソファーに腰掛け久世の学内配信を視聴していた。



「オーイ春川お疲れェーィ。如月兄弟との1対2、相当盛り上がってたぜ~?」
「おーあんがとなー……」
「んな落ち込まなくてもいんじゃない?どーせ天堂先輩相手じゃ、誰が戦っても同じよ同じ」
「うるせーェそれでもこっちは勝つ気だったんでェーィ……」

通路を行き交う多くの生徒達の中、数人が日向達の健闘を讃えるように声を掛けて行く。しかし蒼の斬界に完全敗北し、日向はすっかり意気消沈してしまっていた。

「ったく……明日からはトーナメントも始まるんだぞ。いつまでも引きずってねェで、さっさと切り替えろ」
「いや……別にヘコんでるワケじゃねんだ。ただ……」

気落ちしているような日向に啓治が流石に声を掛けるが、予想だにしなかった角度からの返答が返って来る。



「……折角"新技"作ったのに、使うの忘れてたんだッ……!!」
「バカか。何だそのクソ下らねェ理由は」
「本戦まで無駄に手の内晒さずに済んだんだから、寧ろ良かったでしょ」

戦いに没入していたが故に失念していたが、その"奥の手"を使えば勝てる可能性もあった事を悔しがる日向。負け惜しみだと啓治は一蹴するが、天音は敗因を分析し次に繋げるべきと前向きなアドバイスを掛けていた。



「終わった事でいつまでもグダグダ言ってんじゃねェよ」

その時背後から声を掛けられると同時に、日向が後頭部を叩かれる。そこに立っていたのは、大浴場から戻って来ていた伊織だった。

「あの人に本気で勝とうとしてんなら、今そんなコト考えてても仕方無ェだろうが」
「それはそうだけどなー……」
「……あ、見て春川君」

伊織の発破にも煮え切らない声を返す日向だったが、端末を開いていた沙霧がふと口を開く。

「今日のタッグ戦で、活躍した人達が取り上げられてるみたい。みんなも載ってるよ」
「「「んん?」」」
「何ナニ、ボクにも見せてーや」

そこに表示されていたのは、新聞部の学内SNSによる東帝戦のニュース記事だった。日向と天音と啓治に続き、ソファーから立ち上がって来た陣も画面を覗き込む。

【御剣・藤堂ペア快進撃】
『一条・九重・湊を打ち破る活躍を見せた御剣・藤堂ペア。巧みな連携による遠近両対応戦闘で強敵達と渡り合った。』
【風雲児春川日向】
『前半戦で如月兄弟をも圧倒する大暴れを見せた話題のルーキー。最終盤のVS天堂戦では御剣・藤堂との連携も披露した。』
【天堂蒼、三連覇へ始動】
『盤石の強さでタッグロワイヤルを制覇した絶対王者。本戦トーナメントでの三年連続優勝に向け最高の状態でスタートを切った。』



「日向クンに、伊織クンと天音チャンの三人が注目されとるみたいやなァ。一年ボクらの中では」
「クソ……俺のはねーのか」

啓治がやや不服そうな表情を見せる中、ホログラム画面を下へとスクロールしていく陣。SNS上では今日の感想戦が展開されているだけでなく、明日以降に始まる本戦トーナメントの優勝候補や勝敗予想も飛び交っていた。

大本命として蒼、対抗馬には雪華や亜門の名が挙げられていたが、いかんせん最有力候補が飛び抜けている為言及すらあまりされていない。しかし一方で勝敗予想は、日向や伊織がベスト8など上位に食い込む可能性が取り上げられており盛り上がりを見せていた。

「アンタも載ってるわよ、御剣」
「そうか……興味ねェよ」

日向の隣に座った伊織に天音がそう伝えるが、当人はさしたる興味も示さずコップに入った水を呷っている。その時。



「あの……御剣君」

声を掛けられた伊織が振り返ると、そこには同学年に見える三人の女子生徒達が立っていた。

「今日の戦い、本当に凄かったです……!」
「明日も頑張って下さい……!」
「あー……そいつは……ありがとな」

どうやら彼女達は、今日の伊織の活躍を目にして心を引かれたらしい。面食らいつつも伊織が淡々と礼を返すと、応援の言葉を掛けた三人は嬉しそうにその場を後にしていた。



「…………え、なに今の」
「知らねェよ……」
「………………」
「……何だ。言いてェコトがあるなら言え」
「っ…………別に」

日向は唖然とした表情で口を開けており、天音は少しだけ不機嫌そうに伊織から顔を背ける。

「まァ伊織クン、愛想とガラはホンマに悪いけど顔はエエもんなァ」
「うるせェよ」
「オマケに師匠天堂サン兄弟子スティーブサンも女子人気高いし、案外モテるのも当然っちゃ当然……って啓治クンどないした?キミそない般若みたいな顔しとったっけ」

陣が持て囃すようにそう話していたが、ふと隣に座る啓治の異常に気付いた。血涙が吹き出さんばかりに血走った目、唇は今にも噛み千切られようとしている。

「殺す……お前だけは100殺す……」
「清々しいくらい逆恨みするやん。ガチ僻みすぎて普通に引くわ」
「だァまれ黙れェ!!どう考えてもこのクソ仏頂面がレディに人気なんざ何かの間違いだろォがァ!!俺は夢でも見てんのか!?」
「勝手に言ってろバカ……」

勢い良く立ち上がりながら啓治が叫んでいたが、伊織は一切取り合う様子も見せない。

「ちェー。俺も結構今日の戦い目立ってたと思うのになー」
「はは……そうだね……」

陣が啓治の目を覚ますべく顔面を張り飛ばしている中、日向は何の気無しに呟くが沙霧は乾いた笑いで応える。一方で創来は明日に備えて、凪にいくつか質問していた。



「天堂蒼の『斬界』、実際に喰らってみてどうだった?」
「マジでヤバかった。アレに真っ向勝負仕掛けんのはただのバカだよ」
「「聞こえてんぞ」」

日向と伊織が凪に言い返すが、その時談話室のモニターが突如切り替わる。そこには彼等のよく知る人物の姿が映し出されていた。



『よーォ諸君久しぶり。はもう夜か。初日終了お疲れさん』
「センセーじゃん。今どこで何してんの?」

声の主は、日向達一年生の担当教員である桐谷 恭夜。

『ちっとヤボ用でな。今は「本部イェルサレム」だ。所でどうだったんだ?タッグ戦は。お前ら全員蒼にノされたんじゃねーのか?』
「もう知ってるクセに……どうせ久世先生辺りから逐一聞いてるんですよね?」

恭夜は『魔術師協会』の本部が存在する、イスラエルへと出向していた。今日のタッグロワイヤルについて聞くと、天音から刺々しい声が返って来る。

『ハハ、その調子だと随分こっぴどくやられたみてェだな。まァ気にすんなよ、あと二年もすりゃお前らだってアレくらいには戦えるようになる』
「マジかよ……!?」

無茶にしか聞こえない恭夜の言葉だったが、日向や創来は少し楽しそうに笑っていた。

『で……明日からは本戦だろ?お前ら一年の中からは何人出るんだ?』
「……俺達は出ますよ」
「うん」
「俺も出場します」
「同じく」

そこで恭夜が彼等にそう問い掛けるが、応えたのは伊織と日向、そして啓治に創来の四人。

『おーそうか。お前らは出ねェのか?』
「私は後衛として連携戦闘でベストを尽くせたので」
「私はちょっと、1対1に自信が無くて……」
「ボクは今日だけで十分SWPポイント稼げたし、満足したからもうエエかなーて」
「みーつー」

天音・沙霧・陣・凪から各々の意思を聞き終えると、恭夜は一つ頷き日向達へと口を開く。



『成程ナルホド、OK分かった。んじゃ、明日から本戦を勝ち上がる為に……三つ、オマエらにアドバイスを授けよう。言わば、魔術戦闘の"極意"ってヤツだ」
「「「「極意?」」」」

日向ら四人の出場組は、恭夜の言葉に興味深そうな目を向けつつそう聞き返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...