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セクション1『魔術学園2046篇』
第38話『セカンド・ブレイズ』
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新たな技を作り出す足掛かりは、これまでの戦いに散らばっていた。
獅堂へ放った爆皇破による、魔力密度の『凝縮』。
蒼の『斬界』からイメージを得た、刃の如き『斬撃』の魔力性質。
そして最後の1ピースは、徹彦の『絶対防御』、創来の『ダークナイト』、亜門の『風神』のように全身へ展開した魔力を纏う『形態』。
溢れ出す閃炎のエネルギーを、全身へと張り巡らせていく。
迅く、鋭く、研ぎ澄まされていく炎。その色はーーーー鮮やかな蒼へと変わっていた。
日向が辿り着いた新たな領域、それは魔力の『性質進化』。"第二の炎"、その力の名は――――
――――『斬蒼炎』。
◇◇◇
東帝戦のLIVE映像は魔術都市全域へと中継されており、管理局内のモニターでも放送されていた。
「……どう思いますか?」
北斗からの問い掛けに、沢村と速水は少なからぬ驚きの見える表情で声を返す。
「……そんなワケねェとは分かってるんだが……」
「あの『進化』は……龍臣の『魔力覚醒』にそっくりだ……」
「戦国家"相伝"のですか。……だとしたら、何故彼が……?」
亜門との戦いで日向が見せた『魔力の変質』に、沢村達は疑念を抱きながらもその戦いの推移を注視していた。
◇◇◇
蒼色に変化した炎を纏った日向の新たな姿に、多くの人間が注目を寄せていた。そんな中、蒼は納得したかのように独言を零す。
「へェ……アレが、ね……」
「何アンタ、知ってたの?アレ」
「理論自体は完成したっつーのは聞いてたよ。けど、実際試して上手くいったコトは一度も無かったんだと」
冴羽の問いに対し、日向から新たな技の開発事情について聞かされていたと語る蒼。
「つまりアイツも伊織と同じで、ぶっつけ本番で成功させたってこった。――――どいつもコイツも、一瞬に生きてんね」
◇◇◇
火属性魔力×強化術式
『形態変化・"斬蒼炎"』
「……ソレがキミの奥の手か」
「あァ、そうだ。目ェカッ開いてよく見とけよ」
日向の『形態変化』に警戒を示しながら、油断無く双剣を構え直す亜門。鋭く爆ぜ続ける蒼炎は、刃のような装甲となって腕部や脚部へと展開されていた。
「これが俺の、"最高速度"だ。追い付けるモンなら……追い付いて、みやがれッ!!」
「オレ相手に速さ勝負かい……エエ度胸じゃコラァ!!」
両者は同時に地を蹴り、高速移動の魔術を発動する。
至る場所で響く剣戟音。双方の体術と剣術が、激しく撃ち合い火花を散らす。
後方へと吹き飛んで行く景色の中で、亜門は更に速度を引き上げ双刃の刺突を繰り出した。
しかしその一撃よりも速く、日向の右腕に炎が閃く。蒼く輝く魔力を宿した、超速のカウンター。
火属性魔力×強化術式
『"瞬迅"炎撃』
斬蒼炎によって更に強化された炎拳が、目にも留まらぬ速度で撃ち込まれる。その一撃は双剣の防御をも打ち破り、亜門を豪快に吹き飛ばした。
(速い――――しかも、それだけやない……!!)
「斬れた……!?」
更にその拳撃が有する性能は、『打撃』のみに留まらない。
敏捷性上昇に加えた、斬蒼炎のもう一つの付与効果。その蒼炎は日向の魔力に、"灼き斬る"『斬撃』の性質を与えていた。
『速さ』と『鋭さ』。その二つによって、日向の近接戦闘能力にもたらされた向上効果は計り知れない。それ程にこの『形態変化』は、日向の戦闘スタイルと相性が良かった。
両脚で地を削りながらも何とか持ち堪え踏み留まると、亜門は風圧を操作し上空へと飛び上がる。振り翳されるのは、魔力によって形成された風の刃。
風属性攻撃術式
『如月二刀流・双旋斬』
撃ち下ろされた双つの斬撃が、暴風を纏い迫り来る。
しかし日向は斬り払うような回し蹴りで、一撃の下に魔力刃を叩き折った。更に右腕へと魔力を集め、即座に反撃の術式を構築する。
放たれるのは、蒼の炎槍。
火属性攻撃術式
『"瞬迅"戟衝破』
撃ち出された斬炎のレーザーは、亜門が咄嗟に創り出した風の防壁をも穿ち貫いた。
◇◇◇
「何だァ……如月の野郎ォ、押されてんじゃねェか。ザマァねェな」
ケケケ、と愉快そうに笑う蛇島。その隣で観戦していた諸星は、興味深そうに日向の戦型を洞察している。
「魔力を刃のように凝縮して、速度と威力を引き上げているワケか……火属性の燃焼性質を上手く利用したな。中々面白い術式だ」
「ケッ……相ッ変わらずの魔術マニアが……」
魔力密度を上げバーナーのように火力を強化したその炎を諸星は注視していたが、蛇島はその様子を傍目に怪訝な表情で言葉を続けた。
「……けどよォ。いくらスピードが上がったっつっても、空中で如月の速さに追い付けんのか?」
「仕留めるならば直接攻撃という事か。それについては同感だが……"速度"の勝負に関してはまだ分からないぞ」
空中を高速で飛び回る亜門を地上から狙い撃ち墜とすには、日向の遠距離攻撃では些か威力不足。しかし直接叩く為に空中へ上がったとして、亜門の主戦場で日向は彼の速度に対応出来るのか。
蛇島のその疑問に対し、諸星は彼等の術式への考察を交えながら応える。
「如月の『風神』は、速度強化による高機動戦闘を長時間継続させる為のモノだ。だか春川の形態変化はそれに比べると持続性は落ちるが、その分更に『一撃』の性能を強化している」
『斬蒼炎』が『風神』を上回っている一点。それは諸星が日向に見出した、亜門に勝利する一握の可能性。
「瞬間的な速度なら、恐らく春川は如月をも凌ぐ……!!」
◇◇◇
「何だオイ、もうバテてんのかァ!?」
荒々しい挑発の声を上げながら、超速の連撃を仕掛ける日向。対して亜門もまた、疾風の如く空を駆け高速斬撃を連発する。
衝突が生み出す爆圧。その余波を潜り抜けた亜門が、弾丸のような速度で突撃を仕掛ける。そして日向は、その爆速突進を待ち構えていた。
突き刺さるような膝蹴りが、勢い良く叩き込まれる。しかし亜門はその一撃を正確に見切り、左手で防ぎ止めていた。
「キミの方こそ無理せんときや。鈍って来とるで、反応」
蹴りで日向の身体を浮かせ、撃ち上げるような剣撃で空中へと叩き飛ばす。そこから間髪入れず亜門が追撃を放つが、日向もまた体勢を崩しながらも迎撃の魔術を繰り出した。
風属性攻撃術式『穿風槍・弐拾連』
火属性攻撃術式『"瞬迅"戟衝破・弐拾連』
旋風とレーザーの応酬が、空間中へと波動を撒き散らす。
しかし、その瞬間。
何の前触れも無く、日向の背中に不可視の『刃』が突き刺さった。
「――――は?」
唖然とした様子で大量の血を吐き出しながら、浮遊力を失い地へと墜落する。
「ホンマはこんなクソ小細工、使いたなかったんやケドな」
亜門は不本意そうな表情を浮かべながら、剣の峰で肩を叩いていた。
日向を背後から貫いていた『刃』。それは亜門が一瞬の隙を逃さず発動した攻撃術式だった。
風属性魔力×形成術式
『陰刀』
術式同士の衝突によって、空間中に霧散していた属性魔力の"残滓"。その僅かな『風』を遠隔魔力操作で掻き集め、日向の背後で『暗器』として再構築していた。
巧みな技術による、死角からの奇襲。"意識の外側"からの一撃は、戦況が拮抗している程に威力を増す。
「せやけどそんな下らんプライド守っとっても、キミには勝てんとよォ理解った。どんな手ェ使ってでも……オレは此処で、キミを倒して行く」
向けられる刃と、鋭い戦意。その先で日向は――――嗤っていた。
「そりゃ、ありがてェ……コッチとしても、全力のお前をブッ倒せなきゃ戦う意味が無ェんでな……!!」
よろめきながらも、立ち上がる。そして傷口から漏れ出していた魔力が、『炎』となって一際強く吹き上がった。
「悪ィが俺にとっちゃ……ブッ壊して超えてく壁でしかねェよ……!!」
窮地に陥る程に、力を増す『生存本能』。流れ出る『命』をも燃やし、『装甲』へと変えていく。
「そうかい……腹ァ決まったなら……勝負と、行こォか!!!!」
そう叫ぶと同時に爆風を発生させ、亜門は遥か上空へと飛翔した。そこから一気に急旋回・急降下と共に、衝撃を伴う程の猛スピードで滑空して来る。
そして掬い上げるような剣撃で、日向を再度上空へと吹き飛ばした。
そのまま荒れ狂う乱気流へと突っ込む日向だったが、爆炎を拳へと集中させ空中で迎撃態勢を取る。
(使うか……!?『神業』……!!)
その膨大な魔力の収束を、亜門は高速で飛行しながら感知していた。彼の脳裏を過っていたのは、日向の一撃に対抗し得る可能性を秘めた戦術。
(あいつまさか……『颶風王』使う気か……!?)
そして観戦していた士門もまた、亜門の思考を察知し瞠目していた。
――――"それ"は蒼を倒す為に、密かに開発していた二段階目の『形態変化』。しかし強力過ぎる性能故に、過剰出力を制御出来ず術式が暴走する危険性もあった。
それでも。
(守りに入れば、敗ける――――)
亜門を突き動かす、勝利への渇望。新たな進化を恐れる者に、待ち受けるのは敗北のみ。
『強さ』は『自由さ』。その言葉に一切の迷いは無い。
風属性魔力×強化術式
『形態変化・"⬛︎⬛︎"・⬛︎風⬛︎』
更なる斬撃性能を宿した魔力が、亜門の周囲空間をも覆い尽くしていく。
吹き抜ける、瞬間最大風速。全身に暴風を纏った亜門自身が、巨大な竜巻の大槍と化す。一方で日向もまた、爆発的火力を限界まで圧縮し右の拳へと内包していた。
そして――――
風属性攻撃術式
『如月二刀流"奥義"・凱螺神閃』
火属性攻撃術式
『"瞬迅"爆皇破』
「「オオオオオオッッッ!!!!」」
死力を賭した、双方の一撃が激突した。
◇◇◇
刹那の交錯が生み出した、凄まじい規模の魔力爆発。
旋風が吹き荒れ火柱が立ち昇るその光景に、ほぼ全ての観衆が息を呑んで刮目していた。生徒会連合や大文字一派の実力者達も、決着の行方をその目で確かめるべく戦場を注視している。
そして爆煙が晴れた先で、その場に立っていたのは――――
◇◇◇
「――――楽しかった!!」
最初に口を開いたのは、亜門。
「……また戦ろうや」
「あァ。次も……俺が勝つ」
その言葉を返したのは、日向。
そして――――
亜門は地へと倒れ伏し、日向は天を仰ぎ笑った。
◇◇◇
観衆の大歓声と、実況の興奮冷めやらぬ叫び声を聞き流しながら。
「これは……俺達も改めて、認めざるを得ないな。アイツの力を」
「フン……相変わらずクソ生意気な面ァしてやがる……」
諸星と蛇島は、戦場に立つ一人の勝者を不敵に見下ろしていた。
◇◇◇
「未来!奏!見た!?亜門と日向の!!」
第二演習場観覧席の未来と奏の背後から、こちらへ走って来ていた千聖が息を切らしつつ声を掛ける。その隣には彼女と同じく、第三演習場から移動して来た雪華の姿もあった。
「うん、見てたよ……凄い戦いだったね……!!」
「まさか、一日に二人も十席が陥されるとはな……」
予想だにしていなかったその結果に、未来と奏は驚きを隠し切れない様子である。そしてその傍らで、何かを考え込むように沈黙したまま戦場を静観していた雪華。
彼女の視線の先にあったのは――――戦いを終えて、楽しそうに笑っていた日向の姿だった。
◇◇◇
「あンのボケ……一年に敗けよって、なッさけないなァホンマ」
「オメーがフラグ立てたからじゃねーのか?」
「何やねん俺の所為にすんなや」
軽口を叩き合いながら、士門と湊が席を立つ。
「私達も、後輩に敗けていられないわね」
「……当然よ」
絵恋の言葉にそう応えたハルは、鋭く日向を一瞥すると観覧席を後にした。
◇◇◇
「凄い……春川君、如月先輩に……!!」
瞠目していた沙霧の隣にいた天音は、伊織が隠し切れない喜々とした光をその眼に宿している事に気付いた。
「……アンタ、嬉しそうね」
「そりゃそうだろ……こんだけ面白く事が運ぶのも珍しいからな」
天音にそう応えた伊織は、次に自分と戦う相手に背を向けスタジアムの外へと歩き出す。
御剣伊織、春川日向。
共に3回戦進出。
◇◇◇
「これで日向は現状、学園で一番『三強』に近い人間になったワケだ……」
学園No.4の亜門を下した日向を、そう評する久世。万丈・冴羽・篠宮はこの衝撃的な幕引きに未だ愕然としていたが、一方で蒼は戦場を見下ろしながら静かに考えを巡らせていた。
(恭夜君には……この未来も視えてたのか……?)
獅堂へ放った爆皇破による、魔力密度の『凝縮』。
蒼の『斬界』からイメージを得た、刃の如き『斬撃』の魔力性質。
そして最後の1ピースは、徹彦の『絶対防御』、創来の『ダークナイト』、亜門の『風神』のように全身へ展開した魔力を纏う『形態』。
溢れ出す閃炎のエネルギーを、全身へと張り巡らせていく。
迅く、鋭く、研ぎ澄まされていく炎。その色はーーーー鮮やかな蒼へと変わっていた。
日向が辿り着いた新たな領域、それは魔力の『性質進化』。"第二の炎"、その力の名は――――
――――『斬蒼炎』。
◇◇◇
東帝戦のLIVE映像は魔術都市全域へと中継されており、管理局内のモニターでも放送されていた。
「……どう思いますか?」
北斗からの問い掛けに、沢村と速水は少なからぬ驚きの見える表情で声を返す。
「……そんなワケねェとは分かってるんだが……」
「あの『進化』は……龍臣の『魔力覚醒』にそっくりだ……」
「戦国家"相伝"のですか。……だとしたら、何故彼が……?」
亜門との戦いで日向が見せた『魔力の変質』に、沢村達は疑念を抱きながらもその戦いの推移を注視していた。
◇◇◇
蒼色に変化した炎を纏った日向の新たな姿に、多くの人間が注目を寄せていた。そんな中、蒼は納得したかのように独言を零す。
「へェ……アレが、ね……」
「何アンタ、知ってたの?アレ」
「理論自体は完成したっつーのは聞いてたよ。けど、実際試して上手くいったコトは一度も無かったんだと」
冴羽の問いに対し、日向から新たな技の開発事情について聞かされていたと語る蒼。
「つまりアイツも伊織と同じで、ぶっつけ本番で成功させたってこった。――――どいつもコイツも、一瞬に生きてんね」
◇◇◇
火属性魔力×強化術式
『形態変化・"斬蒼炎"』
「……ソレがキミの奥の手か」
「あァ、そうだ。目ェカッ開いてよく見とけよ」
日向の『形態変化』に警戒を示しながら、油断無く双剣を構え直す亜門。鋭く爆ぜ続ける蒼炎は、刃のような装甲となって腕部や脚部へと展開されていた。
「これが俺の、"最高速度"だ。追い付けるモンなら……追い付いて、みやがれッ!!」
「オレ相手に速さ勝負かい……エエ度胸じゃコラァ!!」
両者は同時に地を蹴り、高速移動の魔術を発動する。
至る場所で響く剣戟音。双方の体術と剣術が、激しく撃ち合い火花を散らす。
後方へと吹き飛んで行く景色の中で、亜門は更に速度を引き上げ双刃の刺突を繰り出した。
しかしその一撃よりも速く、日向の右腕に炎が閃く。蒼く輝く魔力を宿した、超速のカウンター。
火属性魔力×強化術式
『"瞬迅"炎撃』
斬蒼炎によって更に強化された炎拳が、目にも留まらぬ速度で撃ち込まれる。その一撃は双剣の防御をも打ち破り、亜門を豪快に吹き飛ばした。
(速い――――しかも、それだけやない……!!)
「斬れた……!?」
更にその拳撃が有する性能は、『打撃』のみに留まらない。
敏捷性上昇に加えた、斬蒼炎のもう一つの付与効果。その蒼炎は日向の魔力に、"灼き斬る"『斬撃』の性質を与えていた。
『速さ』と『鋭さ』。その二つによって、日向の近接戦闘能力にもたらされた向上効果は計り知れない。それ程にこの『形態変化』は、日向の戦闘スタイルと相性が良かった。
両脚で地を削りながらも何とか持ち堪え踏み留まると、亜門は風圧を操作し上空へと飛び上がる。振り翳されるのは、魔力によって形成された風の刃。
風属性攻撃術式
『如月二刀流・双旋斬』
撃ち下ろされた双つの斬撃が、暴風を纏い迫り来る。
しかし日向は斬り払うような回し蹴りで、一撃の下に魔力刃を叩き折った。更に右腕へと魔力を集め、即座に反撃の術式を構築する。
放たれるのは、蒼の炎槍。
火属性攻撃術式
『"瞬迅"戟衝破』
撃ち出された斬炎のレーザーは、亜門が咄嗟に創り出した風の防壁をも穿ち貫いた。
◇◇◇
「何だァ……如月の野郎ォ、押されてんじゃねェか。ザマァねェな」
ケケケ、と愉快そうに笑う蛇島。その隣で観戦していた諸星は、興味深そうに日向の戦型を洞察している。
「魔力を刃のように凝縮して、速度と威力を引き上げているワケか……火属性の燃焼性質を上手く利用したな。中々面白い術式だ」
「ケッ……相ッ変わらずの魔術マニアが……」
魔力密度を上げバーナーのように火力を強化したその炎を諸星は注視していたが、蛇島はその様子を傍目に怪訝な表情で言葉を続けた。
「……けどよォ。いくらスピードが上がったっつっても、空中で如月の速さに追い付けんのか?」
「仕留めるならば直接攻撃という事か。それについては同感だが……"速度"の勝負に関してはまだ分からないぞ」
空中を高速で飛び回る亜門を地上から狙い撃ち墜とすには、日向の遠距離攻撃では些か威力不足。しかし直接叩く為に空中へ上がったとして、亜門の主戦場で日向は彼の速度に対応出来るのか。
蛇島のその疑問に対し、諸星は彼等の術式への考察を交えながら応える。
「如月の『風神』は、速度強化による高機動戦闘を長時間継続させる為のモノだ。だか春川の形態変化はそれに比べると持続性は落ちるが、その分更に『一撃』の性能を強化している」
『斬蒼炎』が『風神』を上回っている一点。それは諸星が日向に見出した、亜門に勝利する一握の可能性。
「瞬間的な速度なら、恐らく春川は如月をも凌ぐ……!!」
◇◇◇
「何だオイ、もうバテてんのかァ!?」
荒々しい挑発の声を上げながら、超速の連撃を仕掛ける日向。対して亜門もまた、疾風の如く空を駆け高速斬撃を連発する。
衝突が生み出す爆圧。その余波を潜り抜けた亜門が、弾丸のような速度で突撃を仕掛ける。そして日向は、その爆速突進を待ち構えていた。
突き刺さるような膝蹴りが、勢い良く叩き込まれる。しかし亜門はその一撃を正確に見切り、左手で防ぎ止めていた。
「キミの方こそ無理せんときや。鈍って来とるで、反応」
蹴りで日向の身体を浮かせ、撃ち上げるような剣撃で空中へと叩き飛ばす。そこから間髪入れず亜門が追撃を放つが、日向もまた体勢を崩しながらも迎撃の魔術を繰り出した。
風属性攻撃術式『穿風槍・弐拾連』
火属性攻撃術式『"瞬迅"戟衝破・弐拾連』
旋風とレーザーの応酬が、空間中へと波動を撒き散らす。
しかし、その瞬間。
何の前触れも無く、日向の背中に不可視の『刃』が突き刺さった。
「――――は?」
唖然とした様子で大量の血を吐き出しながら、浮遊力を失い地へと墜落する。
「ホンマはこんなクソ小細工、使いたなかったんやケドな」
亜門は不本意そうな表情を浮かべながら、剣の峰で肩を叩いていた。
日向を背後から貫いていた『刃』。それは亜門が一瞬の隙を逃さず発動した攻撃術式だった。
風属性魔力×形成術式
『陰刀』
術式同士の衝突によって、空間中に霧散していた属性魔力の"残滓"。その僅かな『風』を遠隔魔力操作で掻き集め、日向の背後で『暗器』として再構築していた。
巧みな技術による、死角からの奇襲。"意識の外側"からの一撃は、戦況が拮抗している程に威力を増す。
「せやけどそんな下らんプライド守っとっても、キミには勝てんとよォ理解った。どんな手ェ使ってでも……オレは此処で、キミを倒して行く」
向けられる刃と、鋭い戦意。その先で日向は――――嗤っていた。
「そりゃ、ありがてェ……コッチとしても、全力のお前をブッ倒せなきゃ戦う意味が無ェんでな……!!」
よろめきながらも、立ち上がる。そして傷口から漏れ出していた魔力が、『炎』となって一際強く吹き上がった。
「悪ィが俺にとっちゃ……ブッ壊して超えてく壁でしかねェよ……!!」
窮地に陥る程に、力を増す『生存本能』。流れ出る『命』をも燃やし、『装甲』へと変えていく。
「そうかい……腹ァ決まったなら……勝負と、行こォか!!!!」
そう叫ぶと同時に爆風を発生させ、亜門は遥か上空へと飛翔した。そこから一気に急旋回・急降下と共に、衝撃を伴う程の猛スピードで滑空して来る。
そして掬い上げるような剣撃で、日向を再度上空へと吹き飛ばした。
そのまま荒れ狂う乱気流へと突っ込む日向だったが、爆炎を拳へと集中させ空中で迎撃態勢を取る。
(使うか……!?『神業』……!!)
その膨大な魔力の収束を、亜門は高速で飛行しながら感知していた。彼の脳裏を過っていたのは、日向の一撃に対抗し得る可能性を秘めた戦術。
(あいつまさか……『颶風王』使う気か……!?)
そして観戦していた士門もまた、亜門の思考を察知し瞠目していた。
――――"それ"は蒼を倒す為に、密かに開発していた二段階目の『形態変化』。しかし強力過ぎる性能故に、過剰出力を制御出来ず術式が暴走する危険性もあった。
それでも。
(守りに入れば、敗ける――――)
亜門を突き動かす、勝利への渇望。新たな進化を恐れる者に、待ち受けるのは敗北のみ。
『強さ』は『自由さ』。その言葉に一切の迷いは無い。
風属性魔力×強化術式
『形態変化・"⬛︎⬛︎"・⬛︎風⬛︎』
更なる斬撃性能を宿した魔力が、亜門の周囲空間をも覆い尽くしていく。
吹き抜ける、瞬間最大風速。全身に暴風を纏った亜門自身が、巨大な竜巻の大槍と化す。一方で日向もまた、爆発的火力を限界まで圧縮し右の拳へと内包していた。
そして――――
風属性攻撃術式
『如月二刀流"奥義"・凱螺神閃』
火属性攻撃術式
『"瞬迅"爆皇破』
「「オオオオオオッッッ!!!!」」
死力を賭した、双方の一撃が激突した。
◇◇◇
刹那の交錯が生み出した、凄まじい規模の魔力爆発。
旋風が吹き荒れ火柱が立ち昇るその光景に、ほぼ全ての観衆が息を呑んで刮目していた。生徒会連合や大文字一派の実力者達も、決着の行方をその目で確かめるべく戦場を注視している。
そして爆煙が晴れた先で、その場に立っていたのは――――
◇◇◇
「――――楽しかった!!」
最初に口を開いたのは、亜門。
「……また戦ろうや」
「あァ。次も……俺が勝つ」
その言葉を返したのは、日向。
そして――――
亜門は地へと倒れ伏し、日向は天を仰ぎ笑った。
◇◇◇
観衆の大歓声と、実況の興奮冷めやらぬ叫び声を聞き流しながら。
「これは……俺達も改めて、認めざるを得ないな。アイツの力を」
「フン……相変わらずクソ生意気な面ァしてやがる……」
諸星と蛇島は、戦場に立つ一人の勝者を不敵に見下ろしていた。
◇◇◇
「未来!奏!見た!?亜門と日向の!!」
第二演習場観覧席の未来と奏の背後から、こちらへ走って来ていた千聖が息を切らしつつ声を掛ける。その隣には彼女と同じく、第三演習場から移動して来た雪華の姿もあった。
「うん、見てたよ……凄い戦いだったね……!!」
「まさか、一日に二人も十席が陥されるとはな……」
予想だにしていなかったその結果に、未来と奏は驚きを隠し切れない様子である。そしてその傍らで、何かを考え込むように沈黙したまま戦場を静観していた雪華。
彼女の視線の先にあったのは――――戦いを終えて、楽しそうに笑っていた日向の姿だった。
◇◇◇
「あンのボケ……一年に敗けよって、なッさけないなァホンマ」
「オメーがフラグ立てたからじゃねーのか?」
「何やねん俺の所為にすんなや」
軽口を叩き合いながら、士門と湊が席を立つ。
「私達も、後輩に敗けていられないわね」
「……当然よ」
絵恋の言葉にそう応えたハルは、鋭く日向を一瞥すると観覧席を後にした。
◇◇◇
「凄い……春川君、如月先輩に……!!」
瞠目していた沙霧の隣にいた天音は、伊織が隠し切れない喜々とした光をその眼に宿している事に気付いた。
「……アンタ、嬉しそうね」
「そりゃそうだろ……こんだけ面白く事が運ぶのも珍しいからな」
天音にそう応えた伊織は、次に自分と戦う相手に背を向けスタジアムの外へと歩き出す。
御剣伊織、春川日向。
共に3回戦進出。
◇◇◇
「これで日向は現状、学園で一番『三強』に近い人間になったワケだ……」
学園No.4の亜門を下した日向を、そう評する久世。万丈・冴羽・篠宮はこの衝撃的な幕引きに未だ愕然としていたが、一方で蒼は戦場を見下ろしながら静かに考えを巡らせていた。
(恭夜君には……この未来も視えてたのか……?)
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多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
ダンジョン学園サブカル同好会の日常
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ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。
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至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
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