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004 誓いとクロエ
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オレはクロエの無事を姉貴に誓った。戦闘系のギフト持ちじゃないオレ程度がどのくらいまでできるか分からないが、できる限りクロエを護ると誓った。
この誓いは必ず成し遂げなくてはならない。
幼いオレを、自分の身を犠牲にしてまで育ててくれた姉貴の願いだ。なにがあっても必ず貫き通す。なにがあってもだッ!
「ありがとう、ありがとう……」
オレの手を両手で取り、自分の額に押し付けるようにして涙を流す姉貴の姿。こんなの見せられたら奮起するに決まってる! ましてや、クロエはオレにとっても目に入れても痛くないかわいいかわいい姪だ。頼まれずともやるのが叔父というものだろう。
「任しとけよ姉貴。オレはこれでもレベル6パーティを3組も育てたベテランだぜ? 今度も必ず立派に育ててやるさッ!」
まぁ、3回とも捨てられてるんだがな。そんな言葉を隠して、オレは精一杯の虚勢を張る。もう姉貴を泣かせることが無いように。いつもの強気な姉貴が返ってくるように。
「ほどほどでいいんだよ。怪我しないのが一番なんだからね……」
不安でいっぱいだろう姉貴が、それでも笑顔を見せる。オレは姉貴の頬を伝う涙に再度誓う。姉貴の娘は、クロエは必ず護ってみせると。
◇
「それで姉貴、クロエはどうしたんだ?」
ようやく姉貴の涙は止まったところで、オレはクロエについて尋ねる。いつもはオレが姉貴の家を訪ねるとすっ飛んで会いにくるのに、今日はまだ姿が見えない。まだ寝てるのか?
まぁ、朝も早い時間だから寝ているというのも十分ありえるか。
他人の家を訪ねるなら時間を見合わせるが、姉貴の家ならまあいいか。そんな時間帯だ。
結局、昨夜はまたしてもオレの居場所を奪ったマジックバッグと、オレを追放したブランディーヌたちへの吹き上がるような怒りを感じたり、無力な自分への諦観にも似た無気力感を繰り返し、とても眠ることなんてできなかった。
酒に逃げるのは、なんだか負けた気がしてできず、宿に帰る気にもならず、仕方なく王都の大通りの片隅でいじけていたのだ。我ながらひどく惨めだな。
きっと人の優しさや温もりを求めていたのだろう。気が付けば、オレは姉貴の家に足を運んでいた。朝も早い時間だというのに、姉貴はオレを快く迎え入れてくれた。
そのことが、泣き出してしまいそうなくらい嬉しく。オレの心に積もった澱が浄化されていくような心地さえした。
やはり、姉貴の家に来て正解だったな。
あわよくば、このまま居座って愛しのクロエに会って、一緒に朝食を食べていこうなんて考えている。朝食には、朝市で多めに買った食い物を姉貴に渡すつもりだ。
女手一つで子どもを育てるなんて大変だからな。今までの恩返しの意味も込めて、オレのよくやる戦法の一つだ。姉貴は頑固だからな。金銭の類は受け取らない。だからこうして食べ物やらに変換して渡しているのだ。
姉貴も朝食を作る手間が省けるし、オレも唯一の親族である姉貴とクロエ、2人の体調を確認しながら、ゆっくりと落ち着いて食べられる。まさに持ちつ持たれつの関係だろう。
「まだ寝てるわよ。昨日ダンジョンに行ったから、疲れているのかしら? でも、そろそろ起こさないとね。クロエが起きたら朝食にしましょ。あんたも食べていく?」
だいぶ目の周りの赤みも引いてきた姉貴が立ち上がり、台所へ向かおうとするのをオレは手を挙げて止めた。
「これ、朝市で買ってきた。一緒に食おうぜ」
オレはそう言って持ってきた大きな籠を持ち上げると、姉貴が呆れたような目でオレを見ていた。なんでだ?
「あのねぇ。あんたの気持ちはありがたいけど、そんなにいっぱい食べれないでしょ? 残ったらもったいないじゃない」
「残ったら、後でクロエと2人で食べればいいだろ?」
それを見越して、日持ちのする食材も買ってきている。そんなに呆れた目で見なくてもいいじゃないか。
「それにその籠。また朝市で買ったんでしょ? まったく、あんたが市場に行くたびに籠が増えるんだから……。もったいないから買い物に行くときは、自分の籠を持って行きなさい」
「へいへい……。そんなことよりも早く食べようぜ。腹が減っちまった」
「そんなことって、もう……」
姉貴のいつもの小言をやり過ごして、食事の催促をする。実はかなり腹が減ってる。昨日のダンジョン攻略を祝った打ち上げの豪華な夕食を食いっぱぐれてから、なにも食べていないんだ。
「はぁ……。クロエー! ご飯よー!」
オレのまったく反省していない態度に諦めたのか、姉貴が溜息を吐くと大声でクロエの名を叫んだ。
その光景に、なんだか懐かしいものが込み上げてくる。昔はオレもああやって姉貴に起こされてたっけか……。
そんな感傷に浸っていると、ギィイと建付けの悪いドアが開く音が聞こえてくる。そちらに目を向ければ、気だるげな美少女が眠気眼を擦りながら大口開けてアクビしていた。
ぴょんぴょんとあちこちに跳ねた肩までかかる黒いセミロング。綺麗に整えられた眉の下には、薄っすらと開かれた濡れた黒曜石のような黒い瞳が見える。頬から顎にかけてのラインはふっくらとしつつもシャープで、優美な曲線が描かれていた。アクビのために大きく開けられた口は、しかし小さくかわいらしい。まだ化粧もしていないのだろう。淡いピンク色の彼女本来の唇の艶やかな色が露わになっていた。クロエ……しばらく見ないうちに、また魅力的になったなぁ……。
着ている服も就寝用の簡素な継ぎ接ぎだらけのワンピースのみ。はしたないと言われても仕方がない起きてすぐの格好だが、無性に愛おしい気持ちが込み上げてくる。
身内の贔屓目を無しにしても、クロエはとても魅力に溢れた美少女だと思う。それこそ、美しいと評判のエルフよりもクロエの方が美しいと思っているほどだ。
オレは知らず知らずのうちに目を細めて、慈愛の気持ちでクロエを見ていたことに気が付く。男親が娘に甘いと世間で言われているように、叔父も姪に甘くなると思う。それこそ、なんでもしてやりたくなるほどにな。
この誓いは必ず成し遂げなくてはならない。
幼いオレを、自分の身を犠牲にしてまで育ててくれた姉貴の願いだ。なにがあっても必ず貫き通す。なにがあってもだッ!
「ありがとう、ありがとう……」
オレの手を両手で取り、自分の額に押し付けるようにして涙を流す姉貴の姿。こんなの見せられたら奮起するに決まってる! ましてや、クロエはオレにとっても目に入れても痛くないかわいいかわいい姪だ。頼まれずともやるのが叔父というものだろう。
「任しとけよ姉貴。オレはこれでもレベル6パーティを3組も育てたベテランだぜ? 今度も必ず立派に育ててやるさッ!」
まぁ、3回とも捨てられてるんだがな。そんな言葉を隠して、オレは精一杯の虚勢を張る。もう姉貴を泣かせることが無いように。いつもの強気な姉貴が返ってくるように。
「ほどほどでいいんだよ。怪我しないのが一番なんだからね……」
不安でいっぱいだろう姉貴が、それでも笑顔を見せる。オレは姉貴の頬を伝う涙に再度誓う。姉貴の娘は、クロエは必ず護ってみせると。
◇
「それで姉貴、クロエはどうしたんだ?」
ようやく姉貴の涙は止まったところで、オレはクロエについて尋ねる。いつもはオレが姉貴の家を訪ねるとすっ飛んで会いにくるのに、今日はまだ姿が見えない。まだ寝てるのか?
まぁ、朝も早い時間だから寝ているというのも十分ありえるか。
他人の家を訪ねるなら時間を見合わせるが、姉貴の家ならまあいいか。そんな時間帯だ。
結局、昨夜はまたしてもオレの居場所を奪ったマジックバッグと、オレを追放したブランディーヌたちへの吹き上がるような怒りを感じたり、無力な自分への諦観にも似た無気力感を繰り返し、とても眠ることなんてできなかった。
酒に逃げるのは、なんだか負けた気がしてできず、宿に帰る気にもならず、仕方なく王都の大通りの片隅でいじけていたのだ。我ながらひどく惨めだな。
きっと人の優しさや温もりを求めていたのだろう。気が付けば、オレは姉貴の家に足を運んでいた。朝も早い時間だというのに、姉貴はオレを快く迎え入れてくれた。
そのことが、泣き出してしまいそうなくらい嬉しく。オレの心に積もった澱が浄化されていくような心地さえした。
やはり、姉貴の家に来て正解だったな。
あわよくば、このまま居座って愛しのクロエに会って、一緒に朝食を食べていこうなんて考えている。朝食には、朝市で多めに買った食い物を姉貴に渡すつもりだ。
女手一つで子どもを育てるなんて大変だからな。今までの恩返しの意味も込めて、オレのよくやる戦法の一つだ。姉貴は頑固だからな。金銭の類は受け取らない。だからこうして食べ物やらに変換して渡しているのだ。
姉貴も朝食を作る手間が省けるし、オレも唯一の親族である姉貴とクロエ、2人の体調を確認しながら、ゆっくりと落ち着いて食べられる。まさに持ちつ持たれつの関係だろう。
「まだ寝てるわよ。昨日ダンジョンに行ったから、疲れているのかしら? でも、そろそろ起こさないとね。クロエが起きたら朝食にしましょ。あんたも食べていく?」
だいぶ目の周りの赤みも引いてきた姉貴が立ち上がり、台所へ向かおうとするのをオレは手を挙げて止めた。
「これ、朝市で買ってきた。一緒に食おうぜ」
オレはそう言って持ってきた大きな籠を持ち上げると、姉貴が呆れたような目でオレを見ていた。なんでだ?
「あのねぇ。あんたの気持ちはありがたいけど、そんなにいっぱい食べれないでしょ? 残ったらもったいないじゃない」
「残ったら、後でクロエと2人で食べればいいだろ?」
それを見越して、日持ちのする食材も買ってきている。そんなに呆れた目で見なくてもいいじゃないか。
「それにその籠。また朝市で買ったんでしょ? まったく、あんたが市場に行くたびに籠が増えるんだから……。もったいないから買い物に行くときは、自分の籠を持って行きなさい」
「へいへい……。そんなことよりも早く食べようぜ。腹が減っちまった」
「そんなことって、もう……」
姉貴のいつもの小言をやり過ごして、食事の催促をする。実はかなり腹が減ってる。昨日のダンジョン攻略を祝った打ち上げの豪華な夕食を食いっぱぐれてから、なにも食べていないんだ。
「はぁ……。クロエー! ご飯よー!」
オレのまったく反省していない態度に諦めたのか、姉貴が溜息を吐くと大声でクロエの名を叫んだ。
その光景に、なんだか懐かしいものが込み上げてくる。昔はオレもああやって姉貴に起こされてたっけか……。
そんな感傷に浸っていると、ギィイと建付けの悪いドアが開く音が聞こえてくる。そちらに目を向ければ、気だるげな美少女が眠気眼を擦りながら大口開けてアクビしていた。
ぴょんぴょんとあちこちに跳ねた肩までかかる黒いセミロング。綺麗に整えられた眉の下には、薄っすらと開かれた濡れた黒曜石のような黒い瞳が見える。頬から顎にかけてのラインはふっくらとしつつもシャープで、優美な曲線が描かれていた。アクビのために大きく開けられた口は、しかし小さくかわいらしい。まだ化粧もしていないのだろう。淡いピンク色の彼女本来の唇の艶やかな色が露わになっていた。クロエ……しばらく見ないうちに、また魅力的になったなぁ……。
着ている服も就寝用の簡素な継ぎ接ぎだらけのワンピースのみ。はしたないと言われても仕方がない起きてすぐの格好だが、無性に愛おしい気持ちが込み上げてくる。
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オレは知らず知らずのうちに目を細めて、慈愛の気持ちでクロエを見ていたことに気が付く。男親が娘に甘いと世間で言われているように、叔父も姪に甘くなると思う。それこそ、なんでもしてやりたくなるほどにな。
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