【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
38 / 124

038 大軍

しおりを挟む
 残るゴブリンアーチャーは二体。

「シッ!」

 オレは、両手で構えていたヘヴィークロスボウを投げ捨てると、胸元に装備した投げナイフを左手で一つ摘まみ、手首のスナップをきかせて投擲する。

 投げナイフは、松明に照らされた洞窟内を、銀円を描きながら飛ぶ。その先に居るのは、いそいそと弓を構えるゴブリンアーチャーだ。

「GEHA!?」

 投げナイフは、まるで吸い込まれるようにゴブリンアーチャーの胸に命中し、突き立つ。その衝撃と痛みからか、ゴブリンアーチャーが矢を取り落とすのが見えた。

 これで、残すゴブリンアーチャーは一体。

 パシュンッ!

 ゴブリンアーチャーが矢を取り落とすのとほぼ同時に、まるでオモチャの楽器のような軽い音が響いた。クロエのライトクロスボウの発射音だ。

「Guッ!?」

 クロエの放ったライトクロスボウのボルトが、弓を構えていたゴブリンアーチャーへと命中する。しかし、倒れない。クロエのライトクロスボウは、速射性を重視したそこまで威力がないものだ。釣りや戦闘のアシストには使えるが、一撃でモンスターを屠るほどの威力がない。

 しかし、そんなライトクロスボウでも、最低限の仕事はしてみせた。

 ボウンッ!

 恐れていたゴブリンアーチャーの矢が、ついに発射される。しかし、ゴブリンアーチャーの矢は、まるで見当違いの方向に飛んでいった。クロエの放ったライトクロスボウのボルト。その衝撃に、態勢を崩されたためだ。

 オレの中で、クロエへの称賛が無限に溢れてくる。

 さすが、クロエはやっぱり最高だぜ!

 クロエの功績を自慢したい気持ちに囚われそうになるが、今は生死を賭けた戦闘の最中だ。悔しいが控えよう。

 後でクロエを思いっきり褒めて甘やかそう。

 そう心に誓った瞬間だった――――。

 負傷したゴブリンアーチャーたちのさらに奥、洞窟の先の曲がり角が、にわかに騒がしくなった。聞こえてくるのは、ペタペタと裸足で洞窟を闊歩するいくつもの音。最悪だ。

「GOBUGOBUGOBU!」
「GEGYAGYA!」
「GOBUGOBU!」
「GEGYA!」
「GOBUUUUU!」
「GOBUN!」

 洞窟の曲がり角から現れたのは、クロエたちよりも小柄な緑の肌をした人影。ゴブリンだ。

「マジか……」

 しかも、その数は10を超え、さらに増えつつある。実に20近いゴブリンの大集団だ。

「そんな……ッ!? どうするの!? ねぇ! どうするのよ!?」
「あわ、わ……」

 イザベルとリディも、ゴブリンたちの大戦力を目視したのだろう。恐慌状態とは言わないが、それに近いほど慌てふためき、オレに詰め寄る。

 どうするか?

 オレの頭の中には、二つの考えがせめぎ合っていた。つまり、迎撃するか、撤退するかだ。

 普通なら、即時撤退を決定する戦力差だ。

 撤退というのは、集団行動の中でも、最も難しい行動だとオレは思っている。

 誰か一人でも、己の命欲しさに逃げ出せば、即座に成立しなくなるほどのシビアな戦いだ。たった一つのミスから、パーティが瓦解することもありえる。息苦しいほどの重圧に耐え抜き、それでも力及ばずに全滅の憂き目に遭うこともしばしば。

 そんな極限状態にパーティを放り込むというのは、一つの選択肢として、とても魅力的に見えた。人は、極限状態を耐え抜いた時、著しく成長することを知っているからだ。

 ここで、撤退戦という試練を与えるのは、クロエたちの成長につながるだろう。

 しかし、クロエたちの心はどうだろうか?

 まだ、冒険者としての経験も少ないクロエたち。彼女たちを侮るわけではないが、きっと冒険者としての覚悟も決まっていないだろう。彼女たちは、まだまだ初心者冒険者。それが普通だ。

 そんな彼女たちには、この試練は重過ぎるかもしれない。

 下手に試練を課して、潰れてしまったら元も子もないからな。

 では、迎撃するのかと問われれば、それも難しい。

 今のクロエたち『五花の夢』には、あの数のゴブリンたちを殲滅するのは難しいだろう。数とは、シンプルな力だ。一体一体の性能はこちらが上でも、この数の差の前には、あまりにも無力だ。数の暴力とでも言うべき蹂躙に遭うだけである。

 オレが居なければ……な。

 オレは、最終的な判断を下すと、大きく口を開く。クロエたちを安心させるように、声がひっくり返らないように、細心の注意を込めて、雄大さを意識して叫ぶ。

「全員! 目の前の敵に集中しろ! 恐れるな! 敵の援軍は、オレが片付ける!」

 こんなオレにも、少しは信頼が築けたのか、浮足立っていた前衛陣の動きが、少しだけ安定したものとなった。

 あとは、この信頼に応えるだけだ。

「……本当に大丈夫なの? 貴方のギフトは……」
「ん……?」

 イザベルの言いかけた通り、オレのギフトは【収納】。戦闘系のギフトではない。

 戦闘系のギフトを持っているか否かで、個人の戦力が大きく異なる世界だ。

 戦闘系のギフトを持たないオレなど、普通は戦力にも数えられないことが多い。

 オレを半信半疑で見上げるイザベルとリディに、オレは意識して笑顔を浮かべてみせた。

「楽勝だ。お前たちも、自分のできることをしろよ」

 それだけ言うと、オレは迫りくる20体ほどのゴブリンの大群を睨み付けた。

 オレの新しい能力を見せてやるよ!
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...