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094 ギフトの気付き
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「まぁまぁお二人ともぉ。アベルさ……んも困っていますしぃ……」
エレオノールが頬に手を当てて、のんびりした口調で言った。ジゼルに呆れたような半目を向けられていたオレとしては助かる。
まったく、年頃の女の子のことは分からんな。王都に帰ったら、情報屋にでも調べさせるか? しかし、いくら情報屋といえども、ダンジョンや魔物についての情報は持っているかもしれないが、年頃の女の子の好みなんて分かるのだろうか?
「そんなことよりも! アベル! 貴方の最後のスキルは何!? いったい何をしたのよ!? あんなスキル、私は知らないわよ! それに、黒狼の足を止めたスキルも! 秘密主義は結構ですけど、一言あってもいいのではなくて?」
相変わらずリディをスカートにくっ付けたイザベルが、足取りも荒く、両腕を組んでオレを睨み付ける。
べつに内緒にしていたわけではないが、そういえば、“カット”の能力をクロエたちに見せたことはなかったな。一度、実戦で使ってみて、使えるようなら改めて皆に紹介するつもりだった。
黒狼の足止めに使った能力も知らせていなかったな。イザベルに秘密主義と詰られるのも無理はない。
オレが新たな能力を身に付けているなんて知らなければ、最初に“ショット”が黒狼に躱された時点で、オレは絶体絶命に見えたはずだ。
まるで油膜のかかったように虹色に輝くイザベルの黒い瞳を見つめると、ほんの少しだが目尻に涙が浮かんでいるのが見えた。
イザベルの語気が荒く、まるで怒っているように感じられるのは、おそらくだが、イザベルを過剰に心配させてしまったのだろう。イザベルには悪いことをしちまったな。
「すまなかったな。心配をかけた」
オレはイザベルに軽く頭を下げると、イザベルがふんっと顔が横を向く。その頬は、怒りからかピンク色に上気していた。
「……分かればいいのよ……」
イザベルが呟くように小さく漏らす。これは、許してもらえたということでいいのだろうか?
「おね、さま……?」
そっぽ向いてしまったイザベルを、リディは不思議そうな顔で見上げていた。
表情の変化が乏しいリディだが、だいぶ表情が読めるようになってきたな。オレもそれだけリディと親しくなれたということならいいんだが……。リディの心は、クロエたちの中でも一番読み取りづらいからな。一番謎の子だ。
まぁ、イザベルを心配させてしまったようだし、今度からは早めにオレの能力を開示していこう。
いや、今度からといわず、今、開示しちまうか。
「よし、皆、聞いてくれ。これからオレの使った能力や、新たに発見した能力を共有しようと思う」
「まぁ! よろしいのですか? ギフトの力は安易に教えない方がいいと聞きますが……」
エレオノールが片頬に手を添えて、コテンと首を傾げてみせる。なんとも優雅な所作だな。育ちの良さが分かるとはこのことだろう。
「構わねぇよ。パーティってのは運命共同体だからな。そうじゃなくても、オレはお前たちのことを信頼している。それによ。ギフトってのは、自分で新たな能力を発見していかなくちゃならねぇからな。オレのことがそのまま応用できるとは思わねぇが、少しでも参考になりゃいい」
ギフト鑑定のギフトを持つ奴が居れば、そいつに鑑定してもらうって手もあるが、冒険者の聖地なんて呼ばれている王都にも居ないからな。自分のギフトの新能力は、自分で発見するしかない状況だ。
ギフトは、ダンジョンのモンスターを討伐すると、成長が加速する。低レベルダンジョンとはいえ、何度も攻略してきたクロエたちも、ギフトが成長している可能性が大いにある。
オレの話が、少しでもクロエたちが、己の新たな能力に気が付くヒントになれればいい。
そんなことを思いながら、オレは口を開く。
「まず、黒狼の足止めに使ったのは、“ショット”の能力の応用だな。いつもは一発ずつ連射しているが、今回は、一斉射撃を三度放った」
「一斉射撃……?」
「そうだ」
オレはクロエに頷く。
「正確には、各100発の三連射だな」
「100発!? パねー!」
「100発……すごいですね。いったいどれほどの威力になるでしょう……」
ジゼルとエレオノールが目を見開いて驚きの声を上げた。“ショット”の能力は、わりと皆の前で使っているからな。その威力は、ジゼルやエレオノールも分かっているだろう。たった一発で低レベルダンジョンのモンスターを引き裂く凶弾。それを100発だ。しかも三連射。むしろ、ボロボロだったとはいえ、その破壊力に耐えてみせた黒狼の耐久力こそ異常と言えるかもしれない。さすがはレベル5ダンジョンのボス相当だ。
「こんな感じで、同じ能力でも、その運用方法で大きく変わるものもある。お前らもそろそろギフトが成長しているころだ。いろいろ試してみろ。次に、黒狼に止めを刺した“カット”の能力だな。コイツは……」
オレは自分のギフトの詳細を話していく。できるだけ詳しく、その想定している運用方法を、その効果を。そして、どうやってオレがその能力に気が付いたかまで。
エレオノールが頬に手を当てて、のんびりした口調で言った。ジゼルに呆れたような半目を向けられていたオレとしては助かる。
まったく、年頃の女の子のことは分からんな。王都に帰ったら、情報屋にでも調べさせるか? しかし、いくら情報屋といえども、ダンジョンや魔物についての情報は持っているかもしれないが、年頃の女の子の好みなんて分かるのだろうか?
「そんなことよりも! アベル! 貴方の最後のスキルは何!? いったい何をしたのよ!? あんなスキル、私は知らないわよ! それに、黒狼の足を止めたスキルも! 秘密主義は結構ですけど、一言あってもいいのではなくて?」
相変わらずリディをスカートにくっ付けたイザベルが、足取りも荒く、両腕を組んでオレを睨み付ける。
べつに内緒にしていたわけではないが、そういえば、“カット”の能力をクロエたちに見せたことはなかったな。一度、実戦で使ってみて、使えるようなら改めて皆に紹介するつもりだった。
黒狼の足止めに使った能力も知らせていなかったな。イザベルに秘密主義と詰られるのも無理はない。
オレが新たな能力を身に付けているなんて知らなければ、最初に“ショット”が黒狼に躱された時点で、オレは絶体絶命に見えたはずだ。
まるで油膜のかかったように虹色に輝くイザベルの黒い瞳を見つめると、ほんの少しだが目尻に涙が浮かんでいるのが見えた。
イザベルの語気が荒く、まるで怒っているように感じられるのは、おそらくだが、イザベルを過剰に心配させてしまったのだろう。イザベルには悪いことをしちまったな。
「すまなかったな。心配をかけた」
オレはイザベルに軽く頭を下げると、イザベルがふんっと顔が横を向く。その頬は、怒りからかピンク色に上気していた。
「……分かればいいのよ……」
イザベルが呟くように小さく漏らす。これは、許してもらえたということでいいのだろうか?
「おね、さま……?」
そっぽ向いてしまったイザベルを、リディは不思議そうな顔で見上げていた。
表情の変化が乏しいリディだが、だいぶ表情が読めるようになってきたな。オレもそれだけリディと親しくなれたということならいいんだが……。リディの心は、クロエたちの中でも一番読み取りづらいからな。一番謎の子だ。
まぁ、イザベルを心配させてしまったようだし、今度からは早めにオレの能力を開示していこう。
いや、今度からといわず、今、開示しちまうか。
「よし、皆、聞いてくれ。これからオレの使った能力や、新たに発見した能力を共有しようと思う」
「まぁ! よろしいのですか? ギフトの力は安易に教えない方がいいと聞きますが……」
エレオノールが片頬に手を添えて、コテンと首を傾げてみせる。なんとも優雅な所作だな。育ちの良さが分かるとはこのことだろう。
「構わねぇよ。パーティってのは運命共同体だからな。そうじゃなくても、オレはお前たちのことを信頼している。それによ。ギフトってのは、自分で新たな能力を発見していかなくちゃならねぇからな。オレのことがそのまま応用できるとは思わねぇが、少しでも参考になりゃいい」
ギフト鑑定のギフトを持つ奴が居れば、そいつに鑑定してもらうって手もあるが、冒険者の聖地なんて呼ばれている王都にも居ないからな。自分のギフトの新能力は、自分で発見するしかない状況だ。
ギフトは、ダンジョンのモンスターを討伐すると、成長が加速する。低レベルダンジョンとはいえ、何度も攻略してきたクロエたちも、ギフトが成長している可能性が大いにある。
オレの話が、少しでもクロエたちが、己の新たな能力に気が付くヒントになれればいい。
そんなことを思いながら、オレは口を開く。
「まず、黒狼の足止めに使ったのは、“ショット”の能力の応用だな。いつもは一発ずつ連射しているが、今回は、一斉射撃を三度放った」
「一斉射撃……?」
「そうだ」
オレはクロエに頷く。
「正確には、各100発の三連射だな」
「100発!? パねー!」
「100発……すごいですね。いったいどれほどの威力になるでしょう……」
ジゼルとエレオノールが目を見開いて驚きの声を上げた。“ショット”の能力は、わりと皆の前で使っているからな。その威力は、ジゼルやエレオノールも分かっているだろう。たった一発で低レベルダンジョンのモンスターを引き裂く凶弾。それを100発だ。しかも三連射。むしろ、ボロボロだったとはいえ、その破壊力に耐えてみせた黒狼の耐久力こそ異常と言えるかもしれない。さすがはレベル5ダンジョンのボス相当だ。
「こんな感じで、同じ能力でも、その運用方法で大きく変わるものもある。お前らもそろそろギフトが成長しているころだ。いろいろ試してみろ。次に、黒狼に止めを刺した“カット”の能力だな。コイツは……」
オレは自分のギフトの詳細を話していく。できるだけ詳しく、その想定している運用方法を、その効果を。そして、どうやってオレがその能力に気が付いたかまで。
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