11 / 48
11 フアナの登場
静寂の部屋の中にコンコンコンとノックの音が飛び込んできた。
「はい!」
その瞬間、オレは弾かれたように返事をして椅子から立ち上がった。
ドアが、開く!
ついにその時が訪れたのだ!
「失礼します」
最初に姿を現したのは、協同組合の職員のエルフさんだった。エルフさんに他意はないが、少し拍子抜けした気分だ。
「ん」
続いて姿を現したのは――――ッ!
エルフさんの胸辺りまでしかない小さな人影。陽光を浴びて光り輝く銀色の髪。大きな三角のトラ耳! ちょっと眠たそうな赤い瞳。華奢な体を包む民族的な衣装の奥からは銀色の尻尾が見えている!
夢にまで見たフアナだ! オレは今、フアナと同じ空間にいる!
それだけでもう絶頂してしまいそうなくらい嬉しい。
「フアナ様、こちらが青の星香草を見つけたバルタザール様です」
急いで来たのか、フアナは肩で息をしていた。なんだか甘い香りがここまで漂ってくるみたいだ。空気が甘いぜ!
「ん。ばるたざーる? ありがとう」
フアナがぺこりと頭を下げた。もうめちゃくちゃキュートだ! ムービー! ムービーにして保存したい! なんでオレの目にはムービー機能がないんだ! こうなったら、ムービーの魔法を開発するしかない!?
「あの、バルタザール様?」
「はっ!?」
エルフさんに声をかけられて、オレは呼吸を再開する。
しまった。フアナのあまりのかわいらしさに動きどころか呼吸まで止めていた。
「お、オレがバルタザールだ。キミがフアナでいいのか?」
自分でもわざとらしいなと思いながら、オレはフアナに問いかける。
オレはゲームを通してフアナについてもいろいろ知ってるけど、フアナにとっては初めましてだからな。
それに、オレもフアナについて知ってるとは言っても、それはゲームを通して情報を知っているだけ。本物のフアナとは初めましてだ。
「ん。フアナ」
フアナはコクリと頷いた。この小さな女の子みたいな言動がかわいいんだよなぁ。
悶えそうになる体をなんとか押し止めて、なんとか頷くことで返す。
「…………」
「…………」
どどど、どうしよう? 会話が止まっちゃった!?
さっきまでいろいろ話したいことがいっぱいあったのに、いざフアナを目の前にすると、全部吹き飛んでしまった!
絞り出せ! なんとか会話を絞り出せ!
「あ、青の星香草が必要ってことは、誰か病気なのか?」
くっ! 白々しいな、オレ! そんなこと知ってるってのに!
「ん。親父、病気……」
フアナがシュンと俯いてしまった。
そう。フアナの父親は虎族の族長なのだが、病に倒れているのである。そのため、フアナは破格の条件を出して青の星香草を求めたのだ。
「そうか。治るといいな……」
「ん……」
どうしよう? 暗い雰囲気になってしまった。話題を変えないと……。
うーん、なにか話題……話題……。
話題を探して脳内を右往左往していると、ノックの音が聞こえた。
「フアナ様、お薬が完成したとのことです!」
「!」
シュンと萎れていたフアナの耳と尻尾がピンッと立ち上がった。
「いく!」
「フアナ!」
今にも部屋を飛び出そうとするフアナに慌てて声をかけた。
「なに?」
今にも走り出したくてうずうずした様子のフアナが振り返る。
「オレも付いて行っていいか?」
「ん」
フアナはコクリと頷くと走り出した。速い。
オレはフアナを追って走り出す。
フアナは協同組合のカウンターで薬を受け取ると、一目散に駆けていくところだった。
「すばしっこいな」
オレはフアナ追って駆け出し、すぐに彼女の横に並んだ。
たしかにフアナは速い。だが、ラスボスをナメてもらっては困る。
「ッ!?」
フアナは、オレが横に並んで走り出すと、少し驚いたような顔をしていた。
「これから村に帰るのか?」
「ん。こっち」
その時、フアナは樹上都市ウリンソンの端から地面に向けてジャンプした。
たしかに階段を降りるよりも早いだろうけど、無茶するなぁ。
オレもフアナに続いてジャンプして、木の枝を掴んで一回転しながら、そのまま木の枝から枝に飛び移って移動を開始した。
フアナがこれだけ急いでいる理由。それは一刻も早く父親を病から救いたいだけではない。実は青の星香草は、摘んでから少しずつ薬効成分が劣化していくのだ。それは薬に加工した今も同じである。少しでも早く父親に薬を飲ませないといけないことを知っているのだ。
まるで本物のトラのように森を疾走するフアナ。その姿を見ながら、オレは感慨にふける。
フアナは表情が乏しくて、いつも何を考えているのかわからないようなボーと顔をしているが、それは彼女の表面上の一部分に過ぎない。本当の彼女は、肉親や仲間のためならいつでも身を投げ出せるほど情の深い子だ。
他にもいろいろ理由はあるけど、だからこそ、オレはフアナを好きになったし、フアナが人生の最推しになった。
フアナと同じ世界に生きている。それだけで間違いなくオレの幸せなのだ。
「はい!」
その瞬間、オレは弾かれたように返事をして椅子から立ち上がった。
ドアが、開く!
ついにその時が訪れたのだ!
「失礼します」
最初に姿を現したのは、協同組合の職員のエルフさんだった。エルフさんに他意はないが、少し拍子抜けした気分だ。
「ん」
続いて姿を現したのは――――ッ!
エルフさんの胸辺りまでしかない小さな人影。陽光を浴びて光り輝く銀色の髪。大きな三角のトラ耳! ちょっと眠たそうな赤い瞳。華奢な体を包む民族的な衣装の奥からは銀色の尻尾が見えている!
夢にまで見たフアナだ! オレは今、フアナと同じ空間にいる!
それだけでもう絶頂してしまいそうなくらい嬉しい。
「フアナ様、こちらが青の星香草を見つけたバルタザール様です」
急いで来たのか、フアナは肩で息をしていた。なんだか甘い香りがここまで漂ってくるみたいだ。空気が甘いぜ!
「ん。ばるたざーる? ありがとう」
フアナがぺこりと頭を下げた。もうめちゃくちゃキュートだ! ムービー! ムービーにして保存したい! なんでオレの目にはムービー機能がないんだ! こうなったら、ムービーの魔法を開発するしかない!?
「あの、バルタザール様?」
「はっ!?」
エルフさんに声をかけられて、オレは呼吸を再開する。
しまった。フアナのあまりのかわいらしさに動きどころか呼吸まで止めていた。
「お、オレがバルタザールだ。キミがフアナでいいのか?」
自分でもわざとらしいなと思いながら、オレはフアナに問いかける。
オレはゲームを通してフアナについてもいろいろ知ってるけど、フアナにとっては初めましてだからな。
それに、オレもフアナについて知ってるとは言っても、それはゲームを通して情報を知っているだけ。本物のフアナとは初めましてだ。
「ん。フアナ」
フアナはコクリと頷いた。この小さな女の子みたいな言動がかわいいんだよなぁ。
悶えそうになる体をなんとか押し止めて、なんとか頷くことで返す。
「…………」
「…………」
どどど、どうしよう? 会話が止まっちゃった!?
さっきまでいろいろ話したいことがいっぱいあったのに、いざフアナを目の前にすると、全部吹き飛んでしまった!
絞り出せ! なんとか会話を絞り出せ!
「あ、青の星香草が必要ってことは、誰か病気なのか?」
くっ! 白々しいな、オレ! そんなこと知ってるってのに!
「ん。親父、病気……」
フアナがシュンと俯いてしまった。
そう。フアナの父親は虎族の族長なのだが、病に倒れているのである。そのため、フアナは破格の条件を出して青の星香草を求めたのだ。
「そうか。治るといいな……」
「ん……」
どうしよう? 暗い雰囲気になってしまった。話題を変えないと……。
うーん、なにか話題……話題……。
話題を探して脳内を右往左往していると、ノックの音が聞こえた。
「フアナ様、お薬が完成したとのことです!」
「!」
シュンと萎れていたフアナの耳と尻尾がピンッと立ち上がった。
「いく!」
「フアナ!」
今にも部屋を飛び出そうとするフアナに慌てて声をかけた。
「なに?」
今にも走り出したくてうずうずした様子のフアナが振り返る。
「オレも付いて行っていいか?」
「ん」
フアナはコクリと頷くと走り出した。速い。
オレはフアナを追って走り出す。
フアナは協同組合のカウンターで薬を受け取ると、一目散に駆けていくところだった。
「すばしっこいな」
オレはフアナ追って駆け出し、すぐに彼女の横に並んだ。
たしかにフアナは速い。だが、ラスボスをナメてもらっては困る。
「ッ!?」
フアナは、オレが横に並んで走り出すと、少し驚いたような顔をしていた。
「これから村に帰るのか?」
「ん。こっち」
その時、フアナは樹上都市ウリンソンの端から地面に向けてジャンプした。
たしかに階段を降りるよりも早いだろうけど、無茶するなぁ。
オレもフアナに続いてジャンプして、木の枝を掴んで一回転しながら、そのまま木の枝から枝に飛び移って移動を開始した。
フアナがこれだけ急いでいる理由。それは一刻も早く父親を病から救いたいだけではない。実は青の星香草は、摘んでから少しずつ薬効成分が劣化していくのだ。それは薬に加工した今も同じである。少しでも早く父親に薬を飲ませないといけないことを知っているのだ。
まるで本物のトラのように森を疾走するフアナ。その姿を見ながら、オレは感慨にふける。
フアナは表情が乏しくて、いつも何を考えているのかわからないようなボーと顔をしているが、それは彼女の表面上の一部分に過ぎない。本当の彼女は、肉親や仲間のためならいつでも身を投げ出せるほど情の深い子だ。
他にもいろいろ理由はあるけど、だからこそ、オレはフアナを好きになったし、フアナが人生の最推しになった。
フアナと同じ世界に生きている。それだけで間違いなくオレの幸せなのだ。
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈